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FireEmblem 覚醒:希望に咲く闇 4
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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<4話目>




これで良いんだよね…。


僕が居ない方が、未来は良く見える。
ルフレも苦しまなくていいんだ。
傷つく人が少ない方が良いに決まってる。
未来ある世界を確実なものにしたい。

ペレジアに居た頃は、そんな風に考えた事がなかった。
全部壊れてしまえば良いと思っていた。
でもイーリスで大事なモノがいっぱい出来て、失いたくないって思った。

初めて守りたいって思ったんだ。

でも僕にはこうするしか出来ない。
この忌まわしい痕は消せないのだから…。


「こんな朝っぱらから散歩か?」
ふと声をかけられ足を止める。
安心する聞き慣れた声だ。
「ガイア…」
「おはよう、ヘンリー。どこへ行くんだ?」
朝の挨拶をして、訊いてくるガイアに笑みはない。
声をかけてもらえるのは嬉しい、でも答えてあげる事ができなくて…。
「はあ…。追いつくの早いよ〜。僕、まだ野営地の外にすら出てないよ…」
「素早さが取り柄の盗賊だからな。まあ、迷いがあるからだろ、お前に」
「あはは、ガイアには適わないな〜」
笑いながら頭をかき、野営地の出口へ止めていた足を進める。
「おい、ヘンリー止まれ。戻ってこい」
「…駄目だよ、もう決めたんだ。邪魔しないで」
「俺の言った事を忘れたのか?」
―ずっと、側に居ろよ―
忘れようとしたって、忘れる事なんか出来るわけない。逆はよくあったけど、側に居て欲しいなんて言われたのは初めてだったから…。
僕を必要としてくれてるんだって思えて、そのガイアの言葉が凄く嬉しかったんだ。
「忘れてないよ。でも、僕が居ない方が未来が良く見えるんだ。わざわざ苦労する必要ないからね」
「そんなの苦労のうちに入らないだろ」
肩を掴まれ、強引に歩みを止められる。
その掴まれた手に、ヘンリーは自分の手を添えて、ガイアを見上げた。
「しつこいよ、ガイア。忌まわしい存在なんて、消えた方が良いに決まってるよ」
「お前は忌まわしくなんかない。軍に戻れ」
「ヤダ。迷惑かけたくないから…」
「俺の側から離れるなよ」
強く抱きしめ耳元でガイアは囁く。
その言葉に負けてしまいそうになる…。
「有り難う、ガイア」
「ヘンリー…」


でも…、
僕はルフレから離れなくちゃ。
ここに居て良い存在じゃないんだ。

いきなりヘンリーとの間に閃光が走り風が舞う。
「なっっ!!?」
勢いを増し鋭利な刃となった風は、そのままガイアの身体を襲った。
「ぐあっ…、ヘンリー…ッ?」
「ごめんね、ガイア」
油断していたせいか、思った以上にダメージを食らったらしく、ヘンリーの肩を掴んでいた手は力なく離れ、身体はそのまま地面に崩れ落ちた。
「大丈夫?手加減って難しいね〜」
持っていた魔道書をマントの中にしまい、また野営地の外へ向かって歩き出す。
その後ろ姿に、ガイアは痛む身体を支え必死に叫んだ。
「ま、待てっ!!ヘンリー!戻ってこい!!」
「ちゃんと手当てしてもらってね。さようなら、ガイア」
微笑んで手を振り、ヘンリーは野営地の外へ出て行った。
「ヘンリーッ!!!」
追いかけようと身体を動かすが、激痛が走り意識が飛びそうになる…。
「くっ…」




「なに?」
まだ薄暗く寝静まっているはずの野営地に違和感を感じ、寝台から身体を起こす。
遠くで音がした気がして、ルフレは上着を羽織り外に出た。
ただの話し声だったとは思えず、辺りを注意深く見回る。

「!?」
野営地から外へ続く道に、人が倒れているのを見つけ、ルフレは急いで駆け寄った。
「ガイア!」
「ッルフレか…」
「大丈夫?なにがあったの?!」
ルフレは地べたに伏せていたガイアの身体を起こし、その尋常じゃない姿に敵襲かと身構える。
だが、ガイアからは意外な人物の名前が告げられた。
「ヘンリーが出て行った…」
「え?じゃあ、この傷…」
「ああ、油断した…」
傷からはまだ血が流れ出ている。
魔道書を扱うルフレに、その無数の切り傷が魔法によるモノだとすぐに分かった。そして、それがヘンリーの仕業だという事も…。
「手加減無しね。止血しないと…」
「いや、そんな暇はない。早くアイツを追わないと…」
「無理に決まってるでしょ!死んじゃうわよ?!」
起き上がろうとするガイアの身体を、ルフレは力ずくで制止する。
必死で押さえ込もうとするが、女のルフレにはそれが適わず、逆に引きずられてしまう。
「血がっ…。お願い、動かないでっ!」
傷ついた身体の何処にそんな力が残っているのか…。
ヘンリーの事も気になるが、今は目の前のガイアの状態が心配だった。負った傷はもちろんだが、それだけではない…。
「ルフレさん!ガイアさん!」
「リズッッ!」
必死にガイアを引っ張りながら、ルフレは声の主の名前を叫ぶ。
「うん、すぐ回復の杖を使うから!」
リズの手にはしっかり杖が握られている。
彼女もルフレ同様、外の異常な物音で目を覚ましたのだろう。
「…リズ…」
駆け寄ってきたリズをルフレは弱々しくもう一度呼んだ。
杖を使えば傷は塞がり血は止まる。
傷は深く完治は無理だろうが、動けるまでには回復するはずだ。
そうなれば、ガイアはヘンリーを追って行ってしまう。
これだけの傷を負わせたのだ、次相対すれば今度こそ…。
「有り難う、リズ。助かったよ」
礼を言い身体を起こそうとするガイアをリズは慌てて押さえた。
「駄目だよ、ガイアさん!まだ安静にしてないと!」
「このくらい平気だ」
二人の手を払って、今度は余裕で立ち上がる。
そして、ガイアはルフレに視線を向けた。
「すまない、ルフレ。お前の心配は分かるが、アイツを止められるのは俺だけだ」
「そんな…、ヘンリーはあなたを…」
「いや、手加減が難しいって言ってたからな、殺す気は無いだろ。今度こそ、連れ戻すよ」
余裕の表情を見せ、そのままガイアは野営地から姿を消した。

「ルフレさん…」
リズは状況が飲み込めず、不安な表情でルフレを見つめる。
ずっとガイアの出て行った方角を見つめていたが、視線を感じルフレはリズに向き直った。
「ごめん、リズ。後で説明するから、クロムにも…」
申し訳なさそうにルフレは言い、ゆっくりと立ち上がった。
「え…、ルフレさんも行くの?」
「ええ、私の責任だから…」
これ以上、誰にも傷ついてほしくない。全ては私が軍に居るせい…。

「あ、待って!わたしも行くよっ!」
歩き出したルフレの後を追って、リズも野営地の出口へ向かった。



「それは駄目です」

走り出したルフレの視界を青い物と言葉が遮る。
「!?」
足を止めたルフレに、後ろから来たリズがぶつかった。
「わっ!」
「ルフレさんを行かす訳にはいきません」
「ルキナ…」
「え?」
ルフレの後ろからリズは顔を覗かせる。
剣を構えたルキナから鬼気迫る何かを感じ、リズはルフレから少し離れた。

「ルフレさんはここを動かないでください」
「でも、私が行かないと…。二人に何かあったら、私は…」
私を守ろうとヘンリーは離れ、連れ戻そうとしてガイアは傷ついた。
自分さえ居なければ二人は苦しまずにすんだのに…。
そしてルキナまで私を…。
「貴方は行ってはいけません。私が二人を追います」
自分を責めるルフレにルキナは冷静に言葉を返し、構えた剣を鞘に納めルキナは二人に頭を下げる。
「リズさん、ルフレさんをお願いいたします」
「う、うん」
リズは頷き、ルキナは頭を上げルフレをじっと見つめた。
「未来を見てきた私を信じてください」
「ルキナ…」

最後にもう一度礼をして、ルキナは野営地を後にする。



未来は変えられるんです。


いいえ、変えてみせます。






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つづく

ヘンリー酷いですね?ガイアがボロボロです…。
ですが、絆を感じて頂ければ!!?無理ですか?
ルキナはお決まりの台詞な感じです。まるで口癖のように…。

5話目に続きます>>

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