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FireEmblem 覚醒:軍師と私のエトセトラ 後編
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FireEmblem覚醒

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入れ替わりネタ後編。




「きゃあ!」
ガイアとヘンリー?が、書庫用の天幕に近づくと、中から女性の悲鳴が聞こえてきた。
「ルフレッ!」
ガイアは軍師の名前を叫び勢い良く天幕に入るが、そのまま硬直してしまう。
中にはルフレと、彼女に股がった男がいて、男はこちらをじろりと睨みつけてきている。
「何よ。ノックぐらいしなさいよね」
「ヘンリー、お前…何やってんだ?」
初めて自分に向けられるヘンリーの鋭い眼光に、らしくなくガイアはたじろいでしまう。
「ガイア、僕はこっちだよ〜」
隣のサーリャ?が服の裾を引っ張ってくる。
ヘンリーがサーリャだと頭では分かっているが、今はルフレに股がっているヘンリーの方が気になってしょうがない。
「あ、ああ。とにかく、ルフレから離れろ」
「とんだ邪魔が入ったわね…。折角、手に入れた男の身体なのに…」
「おまえ…、何する気だったんだよ?」
「決まってるじゃない」
そう言って、ペレジアの装束に手をかける。
「待てっ!!ヘンリー、脱ぐなっっ!!!」
「だから僕はこっちだってば〜!」
ガイアの横でサーリャがマントを引っ張って抗議をする。もちろん、中身がヘンリーのサーリャだ。
ルフレの上に居るヘンリーは不満たっぷりにガイアを睨みつけてくる。もちろんこちらは、中身がサーリャのヘンリーだ。
「ガイア、貴方は何なのよ…。男が脱ぐくらい別に良いじゃない」
「駄目だっ!状況を考えろよ!?ヘンリー、お前なら分かるだろ?」
ガイアは必死にヘンリーなサーリャに向けて説得をする。
その姿にヘンリーも必死に声をかける。しつこいようだが、もちろん外身はサーリャのままだ。
「ガイアー!!僕はこっちだってば〜!?サーリャ、もう良いでしょ?早く戻してよ〜」
「しょうがないわね…。惜しいけど、貴方達が居たんじゃ、私の計画は台無し。またの機会にするわ」
残念そうにサーリャは言い、ヘンリーの姿のまま小さく解呪の呪文を唱える。
指で無をなぞり、そこから煙が現れ天幕内を白く覆う。
そして、数秒後に煙は何処かへ消え、何事も無かったかのように元の空間に戻った。
「…これで文句はないでしょう?」
「はあ、やっと戻れた〜」
ヘンリーは戻った身体を確認して、大きく安堵の息を漏らした。
「ヘ、ヘンリーなの…?」
ルフレは怪訝な表情で、下からヘンリーを見上げる。
「うん、僕だよ〜。わっ!」
後ろから両脇を抱えられ、ルフレに乗っかっていたヘンリーは宙に浮く。
「いつまで股がってるんだよ。ルフレ、大丈夫か?」
「ええ、有り難う。だけど、ヘンリーが…」
「ん?ヘンリーがどうした?」
抱えたヘンリーの表情を後ろから少し身体を横にずらし覗く。
「泣きそうな顔してるんだけど…」
「どこか痛めたか?」
持ち上げた時に何処か痛くしたかと、ガイアはヘンリーから手を離し床に下ろした。
「僕ばっかりガイアに怒られてる…」
「そ、そうだったか?すまん、動揺してて…」
「僕、悪くないのに…」
「あ、ああ、そうだな。すまない、ヘンリー。だから、泣くなよ?」
「泣きはしないけど〜…」
「ヘンリー、貴方も悪いのよ」
サーリャが二人の間に口を挟む。やはり、その姿が一番しっくりくる口調だ。
ヘンリーの方はいつもの笑顔が無いままで、本人ではあるが何となくしっくりこない。
「サーリャ…」
「はっきり言えば良かったじゃない。言ってくれれば、手伝いだけで後は何もしなかったわよ」
「だって…」
「なによ?言えない理由でも?私はルフレが好き。それとどう違うというの?貴方達の関係。男同士でも私は軽蔑なんかしないわ」
サーリャはそう言うが、伝えたところで本当に諦めてくれただろうか?
そして、ルフレに迫るなんて、まったく予想していなかった事だ。
「お手伝いだけだと思ってたし…」
「甘いわ。男の身体を手に入れたら、興味が沸くのは当然でしょ」
「何が当然なんだよ」
即、ガイアがサーリャにツッコミを入れる。
男の身体を手に入れて、すぐ女に股がる女はそう居るとは思えない。
「貴方には解らないわよ」
確かに解らないだろう。ガイアに限らずルフレやヘンリーにも…。
ルフレは困った笑顔をサーリャに向けた。
「えーと、サーリャ。気持ちは嬉しいけど、やっぱりこういうのはちょっと…」
「羨ましかったのよ。ルフレの手伝いが出来るヘンリーが」
「お前、手伝いだけじゃすまない所だったじゃないか」
またガイアはサーリャにツッコミを入れる。
まったくもって、サーリャの事が理解出来ない。
「ちょっと魔が差しただけよ」
「魔。ね…」
もう突っ込む気にはなれず、呆れ口調でサーリャの言葉を反復した。
「じゃあ、これからお手伝いをお願いする時は、二人にお願いする事にするわ。それで良いでしょ?サーリャ」
「ええ、嬉しいわ。本当は二人っきりが良いのだけど…」
「やっぱり、男手は外せないのよね」
ルフレはやんわりと二人っきりになるのを拒む。
男の姿じゃなくても、サーリャと二人っきりというのは、身の危険を感じてしまう…。
「ヘンリーでも、男として役に立ててるのか」
ガイアがちらっとヘンリーを見て目が合う。
ヘンリーの表情はいつもの笑顔に戻ってはいたが、少し微妙な顔をガイアに向けてきた。
「どういう意味〜?」
「いや、まあ…俺とかに比べたら、体格とかがさ」
「ガイアも手伝ってくれて良いのよ?書物を運んでもらえれば、それだけでも助かるし」
「人手が要るなら、もちろん呼んでくれて良いぜ。お前ら三人にしとくのも心配だしな…」
「ガイア、僕は何もしてないってば〜…」
「ああ、分かってはいるが…。俺が安心なんだよ、一緒にいる方がな」
ヘンリーではルフレを守れないだろう。それは、今回の件で確信できた事だ。
そして、サーリャが一緒だとヘンリーがまた変な事に巻き込まれる可能性が高い…。
「…ごちそうさまでした。私は、もう行くわ。またね、ルフレ」
「え、ええ…。サーリャ、無理はしないでね?」
「有り難う、ルフレ…」
最後に含み笑いをし、サーリャは天幕を出て行った。


サーリャの後ろ姿を見送り、ガイアは大きな溜め息をついた。
「はあ…、どっと疲れたな…」
「同感。まだヘンリーを見ると、ドキドキするわ…」
ルフレは自分の頬を両手ではさみ、ちらっとヘンリーの方を見る。
それに気づいたヘンリーは困った顔をした。
「ええ〜。僕は何もしないよ…」
「来てくれて本当に良かった…。ヘンリーに責任取ってもらわないといけなくなる所だったわ」
「だから、僕じゃないってば〜」
さらに困った顔になる。
その顔にガイアは優しく微笑みかけ、ヘンリーの肩を数回軽く叩いた。
「分かってるって。災難だったな、ヘンリー」
「そうね。一番の災難はヘンリーかもね…」
「ルフレもだな…。二人とも、お疲れサマ」
やれやれとガイアは二人を気遣う。
「助けにきてくれて有り難う、ガイア。そして、ヘンリーも」
「無事で何よりだ…」
あのままサーリャを放置していたらと思うとゾっとする。
まだルフレは未婚だが、数日後には未来から子供が来るんじゃないかとさえ思ってしまう。
しかも、ヘンリーとの子だ。ヘンリーの知らない所でという…。「あなたの子よ」「覚えていない」なんて、泥沼な想像をしてしまう。
「さてと、片付けも終わったし、私は次の軍事会議に向けて戦術でも練ろうかな」
ルフレの声でガイアはハッと我に帰る。過ちは起きなかったのだから、それで良かったじゃないかと変な妄想から頭を切り替えた。
「相変わらず、忙しそうだな」
「ええ、あなた達みたいにイチャついてられないのよー」
相手も居ないけどね…と、小さく呟きルフレは寂しく鼻で笑った。
「だれがイチャって…!?」
「ガイア〜、菓子作りの続きをしよう〜?」
ルフレに言い返そうと口を開いたが、途中でヘンリーが口を挟む。
今日は怒ってばかりだと言われたせいか、ガイアは無視する事が出来ずヘンリーに向き直った。
「あぁ、そうだったな…。作りに戻るか」
「うんうん、戻ろう〜。今度は近くで見てて良いよね?」
「ああ、もちろん」
やっと機嫌を直してくれたかと、ガイアはヘンリーを見て微笑んだ。

「やっぱり、イチャついてるじゃないのよ…」
「ん?」
「ううん、何でもないわ…」
ルフレは戦術書を数冊手に取り、小さく溜め息をついて天幕を後にする。

そんなルフレを見つめる二人に手を振って、イーリスの軍師はもう一度溜め息をついた。
「はあ、ちょっとでもヘンリーにドキッとした私って馬鹿みたいね…」





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おわり。

一番の災難はヘンリーに見せかけて、ルフレかもしれません…。
ヘンリーにドキドキしちゃうルフレさんです。
ヘンリー(サーリャですが、ややこっしい)に襲われてときめくルフレさん。彼女も乙女ですから(多分)

サーリャの旦那は不明のままです。
ガイアに攻撃出来る人物らしい…という以外は謎です。ご自由にご想像していただければ…。

サーリャのルフレへの執着心は異常ですが、絆の夏を見ているとこれくらいアリなんじゃないかと思ってしまいます。
しかし、サーリャに旦那居る設定で、こんな事をしでかすサーリャって一体。
彼女だから許されると思います。多分。だ、駄目ですか?私の中の彼女はこんな人です…。

サーリャがコワイ作文になってしまいましたが、最後までお付き合い有り難うございました!
誤字脱字は…いつもドキドキです。

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