EBI-EBI
FireEmblem 覚醒:希望に咲く闇 One編 5
絵と文とか

FireEmblem覚醒

TOP
INDEX

<5話目>




野営地から遠ざかり、道を外れて林の中を進む。
朝方だとは思うが、今は何時ぐらいだろうか…。

…ガイアは大丈夫かな?
もう会えないけど、きっと怒ってるよね。
人を傷つける事が、こんなに苦しいだなんて…。
最後までガイアは僕の中から消えてはくれないみたいだ。

もっと一緒に居たかったな…。


「ん?」

「あ、雨…。傘、持ってくれば良かったかな」
頭に冷たいモノがあたり足を止め、ぼ〜と空をヘンリーは見上げた。
「…別に要らないか。雨宿りは向こうでしよう〜」

「?」
雨音が次第に強くなる中、誰かに問いかけられたような気がした。
耳を澄ますと確かに声は聞こえ、もう一度その低い声は問いかけてくる。
「向こうとは、ペレジアの事かな?」
「あぁ、違うよ〜?」
やっと姿を確認する事ができ、その問いに答えた。
いつも通りの口調で言葉は返すが、目の前に居る男は味方などではない。
「いつから居たのかな〜?」
「ずっとだよ。離れるのを待っていた」
「ふーん。僕に何か用?」
口調は変わらないが、背中に嫌な汗を感じる。
すでに雨に濡れてはいたが、雨なんかよりずっと気持ち悪く、少し息苦しい。
「自分の役目は分かっているのだろう?手伝ってもらいたいのだよ。ギムレー復活のな」
「んー、分からないな〜。役目なんて誰が決めるの?僕は誰の指図も受けないよ〜」
やっぱりと思った。
僕はルフレではないが、血のつながりのある姉弟だ。そして、目の前にいるのは実の父親…。
自分は邪竜の器ではないが、見逃してくれるはずがないんだ…。
「では、訊こう。お前は、これからどうする?」
「死んじゃうよ〜。ギムレー復活を阻止するのに、生きてる僕は邪魔な存在だろうからね」
躊躇いもなく死を口にする。
もう自分が出来る事は一つしかない。それは、自分の命を絶つ事。
「無駄な事を」
「そうだね、無駄かもしれない。でも、このまま死んじゃうのも勿体ないかな〜?」
雨に濡れた重いマントの中から魔道書を取り出す。
自分が扱える魔道書の中で、一番破壊力のある書だ。
「ほう…、実の親を殺すか?」
「僕に親なんていないよ。出来るか分からないけど、道連れに出来たら大成功かな〜?」
小首を傾げて、魔道書に落ちた水滴を払う。
しかし雨脚が強く、またすぐ濡れてしまう。そんな書を眺めつつ、ゆっくり構えた。
「随分、謙虚なのだな。お前の力は知っているぞ?」
「ふふ、褒めても何も出ないよ〜?」
余裕な表情をしてみせるが、勝てない事ぐらい分かっている。
すでに数えきれない程の屍兵が周りを取り囲んでいて、ファウダーの命令一つで襲ってくるのだろう。
屍兵だけならこれくらい多くても倒せる自信はあるが、狙いは屍兵なんかじゃない。
狙いは邪竜復活を目論む、現ペレジアの王にして実の父ファウダーのみだ。
「僕、みんなを守りたいんだ〜」
そう呟いた瞬間、魔道書から閃光が走り、ファウダーに被弾する。
「ぐぅ!?」
「あはは、びっくりした?無詠唱って油断するよね〜」
笑いながら間合いをつめ、今度はしっかり呪文を唱えて魔道書を振りかざす。
襲ってきた無数の屍兵は爆発とともに、あっさりと壊滅したように見えた…が。
「はあ、やっぱり無理なんだね〜」
溜め息をつき見つめる先は、新たな屍兵で埋め尽くされ、何処に居るのか分からなくなってしまいそうだった。
「諦めがついたか?」
「うんうん。屍兵は無視する事にしたよ〜」
頷きながらファウダーに狙いを定め、呪文を唱える。
しかし、屍兵は待ってくれるはずもなく、鈍い痛みが身体を襲う。
「う…」
無数に襲ってくる屍兵の攻撃を避けきれるはずもなく、身体がどんどん傷ついていく。
それでも諦めずファウダーに攻撃を仕掛け、その合間に何とか屍兵を退けながら呪文を唱える。
何回かに一回くらいはファウダーに魔法が被弾した気はするが…。
どれぐらいのダメージを与えられたかは分からないが、少しくらいは怯んでくれただろうか?

絶え間なく屍兵はヘンリーを襲い続ける。
奴らの攻撃を確かに受け続けてはいたが、痛いなんて感覚はもう無くなっていた。
槍が脚を貫通しても足を止める事なくファウダーを追い、無我夢中で魔法を唱え続ける。
そんな中、屍兵に守られ余裕の笑みを浮かべるファウダーと目が合い、改めて自分は死ぬんだと思った。

これで、僕の全てが終わる…。


「…」
雨なのか、汗なのか、血なのか…、目がかすむ…。
色んなモノに視界を遮られ、ファウダーを見失った。
屍兵くらいならと思っていたが、ファウダーを殺せないんじゃ意味がなく…。
「沸き過ぎだよ〜?僕、疲れちゃったな〜…」
最後の力を振り絞って屍兵に魔道書をぶつけ、その場に横になって目を閉じる。
ぶつけた魔道書は地べたに落ち、無数の屍兵に踏まれ何処かへ行ってしまった…。

魔道書なんて要らない。



もう何も要らないよ…。



最期に、ファウダーが何かを言った気がするが、そんな事はどうでもいい。
もうどうでもいいんだ…。








-------------------------------------
つづく

今度はヘンリーがボロボロです…。
※補足です。本来、屍兵の死体は残りません。が、残った方が都合がいいので(オイ)モッサリ転がっております。そこは捏造という事で!ヨロシクデス。


6話目に続 きます>>

UP