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FireEmblem 覚醒:希望に咲く闇 One編 後日談
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FireEmblem覚醒

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<後日談>




野営地を移動し、次の戦闘に備えて準備をし、今日もそれなりの時が流れる。

ヘンリーの体力も順調に回復し、天幕を出て外で過ごす時間も増えてきた。
とは言え、まだ傷は完治しておらず、戦のある日は野営地で皆の帰りを待つ日々が今も続いている。

今日は日差しが柔らかく、微かに吹く風が気持ち良い。
気温も丁度よく、外出するには良い感じの天気だった。
戦の準備を適当に終わらせ、ガイアはヘンリーに付き添って、近くの草原へ出かける。
そこは野営地から近く、体力の回復しきっていないヘンリーには丁度いい距離だった。

「あふ」
横を歩いていたヘンリーが何も無い所で転び、ガイアは隣にしゃがんで声をかける。
「おい、大丈夫か?」
「あはは、足がもつれちゃった」
いつもの笑顔で笑うヘンリーに安心し、ガイアはそのまま芝生に座った。
「無理するなよ?」
「はーい」
ヘンリーもガイアに倣って、隣に腰を下ろす。
座ったのを確認して、ガイアは持っていた布袋から菓子袋を取り出した。
「じゃあ、ちょっと休憩しようぜ。ほら、菓子」
さらに菓子袋の中から焼き菓子を数枚取り出し、ヘンリーの手のひらに乗せる。
「美味しそうな菓子だねえ〜」
「俺の手作りだぞ」
「えー、いつ作ったの?僕、見てないよ〜?」
得意げに言うガイアに、ヘンリーは残念そうな声を上げた。
一緒に菓子を作ろうとガイアが言ってくれたのを覚えている。忘れる事の出来ない特別な日に交わした約束だから…。
「お前がぐーたら寝てる間にな」
「あはは、眠いんだよね〜。残念だな〜」
「それはしょうがないだろ。まだ完治してないんだ、身体が疲れてるんだよ」
気遣うように背中を数回撫でてやると、満足そうな顔でヘンリーは深呼吸をした。
まだ何処か痛むところでもあるのだろうかと少し心配になってしまう…。
「はー、早く戦争に復帰したいな〜」
「もう少しの辛抱だ。甘い菓子でも食って体力を付けろ」
そう言って、さらに数枚焼き菓子をヘンリーに渡す。
「え〜?菓子で力が付くの…」
呟いて菓子を頬張るヘンリーをガイアは満足そうに眺めていた。


「ちょっとガイアッ!ヘンリーが糖尿病にでもなったらどうするのよ?」
後ろから不満たっぷりの声をかけられ、ガイアは後ろを振り向いた。
「ん?ルフレか」
つられてヘンリーも菓子を口にしながら後ろを向く。
「もぐ、っはよ〜!ルフレ〜」
「あら、ヘンリーは寝起き?」
「違うよ〜、ガイアと散歩してたんだよ〜」
菓子を頬張りながら笑顔で答えた。
その姿を見て、順調に回復しているんだなと安心する。
「だって、おはようって…言ったんじゃ?」
「あはは、今は昼だっけ?」
「体内時計のリハビリが必要なようだな…」
溜め息まじりにガイアはヘンリーを見つめる。
ルフレも呆れた表情をヘンリーに向けていたが、ポンッと何かを思い出したかのように持っていた荷物を叩く。
「そうそう、ヘンリーに良い物持ってきたのよ」
「なに〜?」
「ちょっと早いかもしれないけど快気祝い。開けてみて!」
言いながら持っていた荷物をヘンリーに渡す。
「何かな〜?」
ヘンリーは受け取り、素っ気ない紙袋から、本らしき四角い物を取り出した。
横で見ていたガイアは、興味無さそうに口を開く。
「菓子箱…な、わけないよな。魔道書か?」
「見た事ない呪文が記されてるね〜?」
中をペラペラ捲り、ヘンリーは言う。
その様子を満足そうに眺め、ルフレは自慢げに微笑んだ。
「ふふふー。その魔道書はね、錬成品なの!結構お金かけたのよー?」
「わあ、凄そうだね〜」
「ヘンリー、魔道書無くしたでしょ?だから、もっと強いのをと思って」
「あはは、屍兵に投げちゃったんだよね〜。ありがとう、ルフレ〜」
魔道書を持っていない手で頭をかき笑ってみせる。
あの日、どんな戦いをしていたかは、誰にも言っていない。
ヤケクソになって屍兵に魔道書を投げただなんて、そんな事をガイアに言ったらどんな顔をするだろうか…。
チラッとガイアの方を見るが興味がないらしく、無言で魔道書の入っていた紙袋を奇麗にたたんでいる。快気祝いが菓子じゃなかったからだろう…。
「ちなみに愛着が沸くように、名前もつけたのよ」
「名前?」
「錬成品には好きな名前がつけれるからねー」
得意げに言うルフレに、ヘンリーは魔道書のカバーを眺める。もちろん何処にも名前は書かれていない。
「ルフレが付けてくれたんだ。何て付けたの〜?」
「ガイア」
「ガイア?」
どや顔でルフレは言い、ヘンリーはいつもの顔でそれを反復した。
そして、紙袋をいじっていたガイアの手が止まる。
「ガイアって、お前…」
たたんだ紙袋から視線を外し、微妙な表情でガイアはルフレを見た。
「ガイアよ。ガイア。良いでしょ?」
「連呼するなよ…」
不満そうに言葉を返すガイアを他所に、ヘンリーは笑いながら魔道書を撫でた。
「あはは、確かに愛着沸きそうだね〜。屍兵にガイアを投げないように気をつけるよ〜」
「投げるなら、本体をどうぞー!?じゃあ、私は行くわねー」
ガイアに文句を言われる前にと、ルフレは手を振って遠ざかって行く。
「待てっ!ルフレ!!」
「定例の軍事会議があるから、待てないわよー」
呼び止めるガイアを無視して、さらに遠くへ行く。
「逃げるなっ!」
「軍師は忙しいのよー」
ガイアは立ち上がったが、ルフレは止まる事なく走り去ってしまった…。
その後ろ姿に大きな溜め息をついて、ガイアはヘンリーの横に座り直す。
「…最後に酷い事言ってったなアイツ。俺を投げろって、何か恨まれるような事したか?」
さらに溜め息をついて、自分の名前の付いている魔道書を何とも言えない表情で見つめた。
ヘンリーも一緒に魔道書を見つめているが、ガイアと違って表情は笑顔だ。
「さあ〜?でも僕は凄く嬉しかったな〜」
「まあ、なら良いが…」
「試しにガイア使ってみたいな〜」
「完治すれば、いくらでも敵に使えるだろ」
「でもちょっと勿体ないかな〜。使いすぎるとガイアが壊れちゃう」
「壊れるとか言うなよ…」
「だってガイアの使用回数は決まってるからね〜?」
「名前、変えれないのか…?」
ヘンリーが嬉しいなら良いかと思ってはみたものの、やっぱり気分がいいモノではない。
魔道書の事だと分かってはいるが、自分の使用回数って何だよと、ツッコミたくなる…。
「えー、せっかくルフレが付けてくれたのに〜」
「あいつは、おもしろがってるだけだろ…」
「そうかな〜?」
ヘンリーは首を傾げて魔道書を見つめている。
大事そうに魔道書に触れるヘンリーの手を見ていると、なんとも複雑な気持ちになってしまう。
魔道書の名前がガイアだから大事にしてくれているのか…。それはそれで確かに嬉しいが、隣に本体が居るぞ?と言いたい。

「ガイアにハマーン使ってもらおうかな〜」
「お前、わざと俺の名前連呼してるだろ」
文句を言うと、ヘンリーは屈託のない笑顔を向けてくる。
いつもの事だが、何考えているかサッパリ分からない笑顔だ。
「えー、違うよ〜?魔道書のガイアの事だよ〜」
「それは分かっているが、わざとだろ?」
「違うってば〜」
わざとだとしても悪気がない。これも、いつもの事で、どう言葉を返していいか困ってしまう。
「…本当か?」
「うんうん。ガイアの名前を連呼できて嬉しいだけ〜」
そう、悪気はない。だから手に負えないのだ。
不意にそんな事を言われたら、誰だって動揺くらいするだろう。
告白のように聞こえたその言葉に、らしくなく自分の顔が赤くなっているのが分かる。
「別に魔道書じゃなくても…」
そして、ついそんな事を言ってしまう。
なんとなく口をついて出た言葉が、魔道書に嫉妬してるかのように聞こえ、自分が凄く格好悪く思えた。
「ん?」
気まずそうにしているガイアの顔を覗き込んで、ヘンリーは小首を傾げてくる。
悪気がないというのは、本当に手に負えない。でも、そこが可愛いと思ってしまうのは重症だろうか…。
「いや…、まあ、隣に居るんだから直接俺を呼べば良いだろ」
「えー、何か恥ずかしいよ〜。ガイアにガイアって連呼するの〜」
「ややこしいっつの!」
恥ずかしそうに名前を連呼されると、格好悪いと思っていた自分が何処かへ吹っ飛んで行ってしまった。
自分の事なんてどうでもよくなり、目の前のコイツが愛おしくてたまらない。
「わっ!」
感情のままに押し倒し、驚いているヘンリーの顔に手を添える。
「…ガイア」
「もっと恥ずかしい事いっぱいしてきてるだろ?俺たちは」
耳元でそんな事を囁いてやると、ヘンリーの身体がぴくりと反応した。
「ガイアの言ってる事が一番恥ずかしいよ…」
言葉通り恥ずかしそうに口を開き、控え目に見てくる姿にキュンとくる…。

「…俺もそう思う」
そう言って、優しく抱きしめ、キスを交わす。
久しぶりに重ねた身体は、欲情を我慢する事を忘れ、本能のまま相手を求めてしまう。

これもまた快気祝い…、なんて都合が良すぎるだろうか?






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おわり

ヘンリーとルフレは、今まで通りですよ〜な、後日談をと。
平和な日常に戻りました。を感じて頂ければ…。

最後は、そこ外だけどね!?みたいな…。
久しぶりのパターンです。

ながーい?お話にお付き合いいただき有り難うございました。
誤字脱字は…ドキドキ。

錬成品で「ガイア」という魔道書をオーダーしてみたのは秘密です(秘密になってない)
もちろん、ヘンリーが持ってます。
なぜかウチでは魔戦士ヘンリーなので、風魔法です。ガイアに風似合いますよね?

※一カ所だけ、One用に書き換えています。分かりますでしょうか…?

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