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FireEmblem 覚醒:ガイ誕2014 5 |
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「ノノ、待て!!」 前を走るノノにやっと追いつき、ロンクーは力任せに自分の方へ抱き寄せる。 「きゃっ!」 「す、すまん」 女の子らしい声を出され、ロンクーは慌てて距離を取り、ノノは足を止めロンクーをじっと見つめた。 「…袋の中身を見た」 言ってロンクーは、握りしめていた小袋を自分の腰にくくり付ける。 「すまなかった」 「ううん、ノノも心配かけちゃってゴメンね。ロンクーにすっごい迷惑かけちゃって…」 「い、いや、迷惑ではない。早く探しに行こう。そして、帰ったら二人で…その、この菓子でも食べよう」 照れくさそうにロンクーが言うと、しょんぼりしていたノノの顔がパッと明るくなった。 「ロンクー、ガイアみたいだね!」 「なっ!あんな奴と一緒にするな!!小袋に菓子を詰め込んだのは、お前だろ…」 「それ、ガイアと二人で作ったんだよ!ヘンリーのためにっ!!」 満面の笑みで言うノノに、ロンクーは少しだけ残念そうな顔をしてしまう。 確かに菓子といえばガイアで、誰のためと言えばヘンリーだろう。 「そうか…」 「ロンクー、妬いちゃったー?」 「いや…」 ノノが自分のために率先して菓子を作るなんて、もとから想像もしていないし期待もしていない。 「ノノはロンクーのために作ったから安心してね!」 「別に言い直さなくてもいい…」 とはいえ、ノノの口から自分のためと言われると、やはり嬉しく顔が緩んでしまう。 ひとりで控え目に照れていると、ある一点を指差してノノが急に走り出した。 「ロンクー、来てっ!ここ!!崖が崩れてるよ!!」 「ノノ、あまり近づくと危ないぞ」 「誰か落ちちゃってるかも!!」 ノノは崖から身を乗り出して、下を覗く。 「おーいっ!!」 崖下に声をかけ、ノノは目を凝らして、その先を見る。 暗がりで良くは見えないが、何かが動いた気がして、さらに身を乗り出す。 「あまり覗き込むな、落ちるぞ」 「下に誰かいるよ!」 「ノノ、下がってろ」 荷物からロープを取り出し、丈夫そうな木にくくり付ける。 そしてロープの端を自分に巻き付け、ロンクーは崖下を注意深く見つめた。 「ノノ、ロープが外れないように掴んでてくれ」 「わあ、ロンクー準備が良いね!」 感心しながらノノは言われた通りロープを掴む。 しっかり掴んだのを確認して、ロンクーは大きな溜め息をついた。 「…、何しに来てると思ってるんだ」 ロープを伝って慎重に崖を下り、はっきりと人の頭が見えたところで声をかける。 「ヘンリーか?」 「あ、ロンクー〜。おはよ〜」 声に気づきヘンリーは顔を上げ、下りてきたロンクーに笑顔で挨拶をした。 「…朝ではないが」 「ノノは〜?」 「上にいる」 「よかった〜、ガイアもここにいるんだよ〜」 ヘンリーは安堵の息を漏らし、腕に抱いたガイアを撫でる。 二人の無事を確認し、ロンクーもホッと息をついた。 引き上げる準備を整え、ロンクーはヘンリーに手を差し伸べる。 「届くか?」 「先にガイアをお願いしても良い〜?」 「ああ」 「落とさないようにね〜」 ヘンリーは抱いていたガイアをゆっくりロンクーの腕に預ける。 大事そうに渡されたガイアをロンクーは片手で支え、自分に掴ませようとするが…。 「…反応無いが、大丈夫なのか?」 「ん〜、疲れて寝ちゃったみたい〜」 「はあ、起きたらコイツに言っとけ、身の丈に合った行動を取れと」 溜め息をつき、片手でガイアの位置を器用に変え、小脇に抱え直す。 「あはは〜、ガイアに文句言われそう〜」 困った顔でヘンリーは笑い、落とさないかな〜?と、心配そうに見つめる。 そして、しっかり小脇に抱えられ、自分から離れていくガイアを見上げ、大丈夫そうだね〜と最後にもう一度ヘンリーは笑った。 崖下からヘンリーが見守る中、無事に上まで辿り着き、ロンクーはノノにガイアを渡す。 「ノノ、コイツを頼む」 「ガイア!!」 両手で受け取り、ノノは嬉しそうに名前を呼ぶ。 呼ばれても起きないガイアをギュと抱きしめ、ノノは頬をスリスリする。 「下にヘンリーもいる」 「わあ、よかったあ!!」 ノノは歓喜の声を上げ、手放したロープをもう一度掴む。 小さいガイアを抱っこしたままロープを掴み、ノノは「忙しい母親気分」をこっそり味わった。 子供を抱っこしてロープを引っ張る忙しさというシチュエーションは、ノノのオママゴト設定だ。 ロープを掴んで崖下へ下りる旦那役であろうロンクーは、勝手にオママゴトに参加させられている事を知る由もないだろう…。 ノノが上機嫌で掴んでいるロープの先で、旦那役のロンクーは役柄不明のヘンリーに手を差し伸べる。 「怪我してるのか。俺に掴まれるか?」 「うん〜、大丈夫〜」 よいしょとヘンリーはロンクーに掴まり、ロンクーは落ちないようにしっかりヘンリーを支え、ロープを上っていく。 崖上が見えたところで、ロンクーはヘンリーを下から押し上げ、先に崖から這い上がらせる。 じっと崖を見つめていたノノの視界に銀髪が入り、嬉しさのあまりオママゴトは頭の中で強制終了し、急いでヘンリーの元へ駆け寄った。 「ヘンリー!!」 「ノノ、お久しぶり〜」 ヘンリーは地べたに座ったまま、笑顔でノノを見上げた。 よく見ると、ヘンリーの身体はあちこちに擦り傷があり、脚にも手当てした痕がある。 ヘンリーの後ろからロンクーが現れ、慎重にその傷の深さを確認する。 「しっかり手当してあるな。これなら、野営地まで歩けるだろう」 「わあーんっ!二人とも無事で良かったあっ!!もう、会えないんじゃないかって思ってたんだよー!!」 「あはは〜、縁起が悪いよ〜、ノノ〜」 「うう、だってーっっ!」 泣きながらギュウっとノノはガイアを抱きしめる。 「ノノー、ガイアが潰れちゃうよ〜」 「だってーっっ!!」 その様子を黙ってみていたロンクーが口を開く。 「まったく起きないが、大丈夫なのか?」 泣き叫ぶノノにずっと抱っこされ、強く抱きしめられても反応がないのは、本当に寝ているだけなのか?と心配になってしまう。 訊かれてヘンリーは小首を傾げ、笑顔でガイアの頭を撫でた。 「う〜ん、死んでないと思うよ〜?多分ね〜」 「お前も縁起悪いな…」 お前がそう言うならと呆れ口調でロンクーは言い、ヘンリーに肩を貸して歩だす。 そして、少し遅れてノノは歩き出し、ロンクーの横に並んだ。 「ロンクー、どこ行くの?」 「野営地に戻る。怪我人と子供を連れていては、俺たちは戦えないからな」 「ゴメンね〜、僕のせいだね」 「いや、気にするな。お前達を助けると、ノノと約束してたからな。それに、討伐はおそらくもう終わっているだろう」 「もしかして、みんな、ノノたちを探してるかな?」 後ろを振り返り、ノノは不安な表情で暗がりを見つめる。 討伐が終わったと思うと、ただでさえ静かだった山が、さらに静かに感じ、闇が深くなった気がする。 ノノと一緒に振り返り、目を細めてロンクーは闇の中を見つめた。 「かもしれないな」 「どうしよう!?」 「平気だろう。野営地に居れば、みんな戻って来る」 組織的に動いている軍なんだ。捜索の伝達くらい問題なくこなすだろう。 「そっか!じゃあ、早く戻ろう!」 即納得したノノは、得意げに袋から竜石を取り出す。 「いや、それは何かを落としかねない…」 ちらっとノノの腕に抱かれて寝ているガイアを見る。 そして、肩を借りて脚を引きずりながら歩くヘンリーに声をかけた。 「ヘンリー、お前は俺の背中に乗れ。その方が早く野営地に戻れるだろう」 「ん、おんぶ?」 おんぶと言い直されて、少し抵抗を感じてしまうが、確かにそっちの方が分かりやすい。 言い慣れない言葉に、気恥ずかしさを感じつつロンクーは頷く。 「あ、ああ。おんぶだ」 「あはは、僕も子供になったみたいだね〜」 「えー!ノノにこんな大きな子供はいないよっ!!」 何故かノノは頬を膨らませて、ヘンリーに抗議する。 一体、誰がノノの子と決めたのだろうか…。 「小さな子供もいないだろ…」 ロンクーがヘンリーに代わりツッコミを入れる。 もちろん小さなガイアもノノの子供ではない。 だが、ノノの脳内設定では、小さいガイアは我が子になってしまっているらしい。 オママゴト設定を否定されたためか、ノノの不機嫌は倍増し、ガイアを抱く腕に力が籠る。 「ぶーっ!」 「だから潰れるってば〜」 ロンクーにおんぶされながら、ヘンリーは心配そうに潰れそうなガイアを見つめる。 呪いを解く前に、ガイアが子供の姿で圧死なんて、いくらヘンリーでも笑えない…。 「ん…」 瞼を透して微かに光を感じる。 ずっと暗がりの中に、ヘンリーと二人きりでいたはずだが、いつ朝を迎えたのだろうか…。 薄目を開けてみるが、やはり外は明るかった。 周りを確認したかったが、身体が怠く起き上がる気にはなれない。 重い瞼を無理矢理持ち上げ、目だけで辺りを見回す。 ふと視界に入った自分の手が大きく感じる。そして、足は凄く小さく感じる…。いや、小さいわけじゃない、これは遠くにあるんだ。 俺の脚はこんなに長かったか? 「ガイア、おはよう〜」 考え込んでいると、頭上から声が聞こえ、目線を上に向ける。 見上げた先にはヘンリーの笑顔と、空ではなく建物の天井が見えた。 「ここは、天幕か…」 そして、手に触れるシーツで寝台の上だと分かり、頭に伝わる温もりでヘンリーの膝枕で寝ていた事が分かった。 「うん、戻って来たんだよ〜」 にっこりとヘンリーは微笑んで、ガイアの頭を撫でる。 優しく触れるその手は、もう大きく感じられない。 「俺は…」 「うん。呪いは解けたよ〜」 「そうか」 ヘンリーを見上げたまま、今の状況を一つ一つ頭の中に入れていく。 崖下でヘンリーを見つけ、二人で誰かが来るのを待っていた。そして気づくと呪いは解けている。 これは夢ではないんだ…。 「ガイア?」 「ん…」 「あまり嬉しそうじゃないね?」 心配そうにヘンリーは顔を覗き込んでくる。 「そう言うわけじゃないんだが、目が覚めたら戻ってたからさ…」 やっと戻れたのだから、嬉しくないわけがない。だけど素直に喜べなくて、複雑な笑顔をヘンリーに向けてしまう。 「ぐっすり寝てたから、起こすの可哀想だな〜て思って〜」 「起こしてくれても良かったんだぞ?」 「え〜、大人のガイアなら、無理矢理起こしても良いかな〜て思うけど、子供のガイアは可愛かったから可哀想だな〜て〜」 「どうせ、大人の俺は可愛くないよ。まあ…、戻る前に、もう少し甘えたかったなと思っただけだ。ヘンリーに」 わざとふてくされたように言い、少し身体を起こしてヘンリーの首に腕を回す。 「僕もだよ〜。ノノが羨ましかったな〜」 「じゃあ、戻すの遅らせてくれても…」 溜め息まじりに言うヘンリーの耳元で、つい本音を漏らしてしまう。 早く戻そうと頑張ってくれたヘンリーに向けて言うのは、少し申し訳なく感じるが…。 「うーん、でも戻しちゃったし…。また、呪いかけようか〜?」 「いや、それは遠慮しとく…」 だからと言って、再び呪われた人間にはなりたくない。 「え〜、屍兵は居なくなったから、材料の調達は楽ちんだよ〜?」 「そう言う問題じゃないだろ」 呪いは邪悪なモノだという認識は、やはり直ぐには変えられない。ヘンリーやサーリャのおかげで、かなり慣れてはきたが…。 いや、おかげも何も呪いに慣れるのは、おかしいだろ?と、頭の中で自分にツッコミを入れ、ヘンリーを見て苦笑をしてしまう。 「ん?」 「戻ったんだから、戻ったなりに甘えれば良いだけさ」 「うん」 首に回した腕を引き寄せ、優しく口付ける。 こうやって抱き合うのは久しぶりだなと、身体が戻った事を再確認するようにヘンリーを強く抱きしめる。 久しぶりと言っても数日ぶりの行為で、いつもよりちょっとだけ情熱的に求めてみる。 親子みたいな関係もたまになら良いが、やはりこっちの方が良いなと改めて思う。 求め合って今の関係になったのだから、当然なのかもしれないが…。 「ねえ、ガイア」 「ん?」 少し身体を起こしてヘンリーはガイアの顔を覗き込む。 天井を見ながら物思いに耽っていたガイアは、視界に入ってきた銀髪に目を向けた。 「遅れちゃったけど、お誕生日おめでとう〜」 「ありがとな、ヘンリー」 「プレゼントは無いけどね〜」 いつものようにヘンリーは笑うが、その笑顔のままガックリと肩を落とす。 良くわからない態度だが、申し訳なく思っているんだろう…、多分。 「いや、じゅうぶん貰ったぞ。失敗した呪いは、あれはあれで楽しかった。思い出に残る良いプレゼントだったよ」 「本当〜?じゃあ、来年も〜」 来年も子供の姿が良いかな〜なんて、ヘンリーは笑顔で訊いてくる。 まったく悪気の感じられない態度に、少し警戒してしまう…。 「い、いや。それは…」 「ふふふ〜」 悪気を感じられないどころか、その含み笑いはかなり禍々しい…。 これは、来年も確実に呪われるな…と諦め、今から覚悟を決める。 「じゃあ、子供にしてくれ」 きっと来年の呪いは成功するだろう。 来年こそは、思う存分ヘンリーに甘えてやる。 そう心に誓い、ガイアはヘンリーを見て、いたずらっぽく笑う。 「ガキはワガママだから覚悟しとけよ」 ----------------------------- おわり。 ガイア、お誕生日おめでとう!!! 結局、ヘンリーからプレゼントを貰えてないんですけどね!? 呪いがプレゼント…、いえ、最後は抱いてますから、そっちがプレゼントでも。 来年も幼児化なの?な、伏線になってしまいました…。 はたしてどうなるのか…。 ルフレが今回も幼児化ヘンリー同様、幼児化ガイアすら抱っこできていません。 ロンクーですら小脇に抱えてるというのに…。 ウチのルフレさんは、すべてを逃しまくってる気がしてならないです。私のせいですけど…。 一番美味しいのはノノですね。やっと(?)ロンクーがギュッとしてくれたよ〜!みたいな…。 相変わらずの読みにくい作文ですが…、少しでも楽しんで頂けると嬉しく思います。 誤字脱字は〜無いと良いな〜と; UP |