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FireEmblem 覚醒:居る場所 後編
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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噴水周辺はなかなかの賑わいだったが、辺りが暗くなるにつれ行き交う人もまばらになっていった。
ヘンリーはガイアと別れた時と同じ場所で、行き交う人をずっと眺めていた。
「はあ、見てるのも飽きてきちゃった…」
ため息と同時に、お腹の虫も鳴く。
「…。夕飯食べてないの忘れてた…。お腹減ったな〜」
もう一度ため息をついて、菓子の袋に目をやる。そして、数回袋をつついて空を眺める。
雲ひとつない夜空には、月と一緒に幾つもの星が散りばめられていた。
「ガイア遅いな〜」
首が痛くなるくらい上を向き、今度はずっと夜空を見続ける。
「おや、確か昼間の…」
「?」
声をかけられ夜空から目を離すと、2回ほど来店した菓子屋の店主が立っていた。
「あ〜。菓子の家のおじさん〜」
「どうも。お一人ですか?お友達の方は…」
店主は辺りを見回すが、記憶にあった橙色の頭の男は居ない。
「どっか連れてかれちゃった〜」
「ええ?それは心配ですね…。待ってるんですか?」
「うん〜。待ちくたびれて、お腹もペコペコだよ〜」
「うーん。困りましたね…」
菓子屋の店主は少し考えて、抱えていた袋から2個菓子パンを取り出し、別の袋に移す。
「店の残り物ですけど、良かったらどうぞ。お友達の分も…」
そう言って、菓子パンを入れた袋をヘンリーに渡した。
「良いの〜?ありがとう〜」
「早く戻ってこられると良いですね。夜はあまり治安が良い所とは言えませんので、気をつけてくださいね」
一礼して店主は噴水の場を後にした。
「は〜い。またね〜」
手を振り店主が見えなくなったところで、袋を開けて菓子パンを一つ手に取った。

貰った菓子パンを食べ終えて、ひと息つく。
「喉かわいた…」
ぼそっと呟いて、噴水の水を飲んでいる野良猫に目をやる。
「キミも誰か待ってるのかな〜?」
「ニャ〜」
猫は一声鳴き、何処かへ走っていってしまった。
「はあ、噴水の水は美味しいのかな…」
少し躊躇いながら水に指を入れて、濡れた指を舐めてみる。
「ん〜、しょっぱい?ん?指の味??」
小首をかしげてブツブツと独り言をいう。

「おいっ!ヘンリー!!」
少し離れた所から声がして、見慣れた服装の男が近づいてきた。
すぐガイアだと分かり、ヘンリーは笑顔で立ち上がる。
「おかえり〜、待ちくたびれたよ〜」
「暗くなる前に帰れって言ったろ。賊にでも襲われたらどうするんだ?」
無事を確認するように、ヘンリーの頭を数回軽く叩く。
「大丈夫だよ〜。お金持ってないし、男だからね〜」
心配をよそに、ニコニコしながら言葉を返してくる。
確かにコイツなら、賊に襲われても平気だろう。
正当防衛の域を遥かに超えた殺戮を笑いながらするような気がする。実際には起きていない事だが、賊が可哀想に思えた。
「まあ…。何もなかったんなら、それが一番だ…」
安堵の息を漏らし、ゆっくり噴水の縁に腰を下ろす。
ヘンリーも倣って隣に座り、ガイアとは逆に不安そうな顔を見せる。
「僕が居なかったら、ガイアはココに戻ってきた?」
「え?」
一瞬耳を疑う。
いきなり何を言うんだ?と返答に困っていると、ヘンリーは言葉を続けた。
「もう会えないかもって、思ってたんだよ」
そんなわけないだろと言ってやりたかったが、口からは何も出てこない。
「僕がココに居なかったら、軍に戻らないでどっか行っちゃう気だったんじゃない?」
「どうしてそんな事を…」
何を根拠に言っているのか…。そう思われてしまうような態度でも取ってしまっただろうか?
考え込んでいると、不意にヘンリーが視界に入ってきた。
「ガイアは何も悪くないよ?」
面と向かって、そんなことを言ってくる。
適当に冗談で返事を返そうとしたが、今のヘンリーにそれは通じるとは思えず黙り込んでしまう。
「変な事を言って、ごめんね。戻ってくるのが遅かったから、ちょっと不安で…」
「いや…、その通りだよ。ヘンリーが居なかったら、このまま軍を離れようと思ってた」
やっと話しだしたガイアをヘンリーはじっと見つめている。
いつもの笑顔なのに、どこか違う表情。普段は何を考えているか分からない笑顔だが、今回だけは分かる。自分の事を、すごく考えてくれていると…。
真剣に向き合ってくれるヘンリーに、全てを話しても良いと思えた。
「もう限界かなって思ってたんだ。軍に盗賊がいるなんて、そもそも変だろ?盗みがあれば、真っ先に今回みたいに疑われる。良い印象がないのは始めから分 かっていた事だ。これ以上、軍の評判が落ちないようにと抜けるつもりだったんだよ」
「盗賊がいるのって変かな?鍵開け便利だよ〜?」
「…宝の鍵ってのがあるだろ。別に、俺なんか居なくても平気だ」
そこかよ?と、思ったが真面目に言葉を返す。
ヘンリーも不真面目に言ってる訳じゃない。それは声の調子で分かった。
「どうして?平気じゃないよ?クロムだってガイアの事、必要としてくれてるよ?」
「アイツはお人好しすぎるんだよ。それに、腕の印の事だって知らないからな…」
言いながら印のある腕を強く掴んだ。矢で射抜かれた時の痛みはもうないが、それとは違う嫌な痛みを感じる。
一生、消す事も忘れる事も出来ない昔の過ちだ。一生涯背負わなければならないこの印は、軽いもんじゃない。
ちょっとヘマをしたと、笑い飛ばして話せたらどんなに楽かと思う。自分が笑えたとしても、まわりは軽蔑し印ある者の全てを否定してくるだろうが…。
「ヘンリーは、この印の意味を知っているのか?」
「うん、知ってるよ。それがどうしたの?ガイアは良い人だよ」
「みんな、お前みたいだと良いんだけどな…」
どんな過去でもヘンリーなら受け入れてくれるだろう。言葉は少なめだが、他の奴とは違うと分かる。
「僕だけじゃ駄目?ルフレだって印の事知ってるんでしょ、でも今まで通りだよね。それだけじゃ足りないかな?」
「いや、国や軍に迷惑はかけたくないんだ。それに、このまま印を隠しきれるか、そんな事を考えてしまうのが苦痛で…。印の事が知れたらと思うと…」
途中で言葉を切り、大きく息を吐く。
これ以上続けると、印を取りたい捨てたい忘れていちからやり直したい。そんなワガママを言ってしまいそうだった。
そんな事を言ったところで何も変わらず、ヘンリーを困らせるだけなのに…。
「すまない…。自分の事ばかりだな。ヘンリーの事、考えてなかった…」
「僕の事は気にしないで良いよ〜。ガイアと一緒だから平気だよ?」
「俺と…?」
「うん。ずっと一緒に居たいな〜て思ってるんだよ。菓子屋巡りとかも凄く楽しかったし。ガイアが居なくなっちゃうの嫌だよ〜?」
相変わらず笑顔で見てきている。
初めは表情から感情が掴めず不安だったが、今では安心する笑顔だ。
その笑顔を見ていると、つい本音が出てしまう。
「じゃあ、一緒に旅でもするか?」
「?」
一瞬きょとんとした顔を見せてきたが、すぐいつもの表情に戻り笑ってくる。
「あはは、良いね〜。軍追い出されたら、二人で旅しよう。それまでは軍に居ようよ?何があっても僕はガイアと一緒にいるからね?」
そして真っすぐな瞳をガイアに向けてくる。
いつもは見せないその瞳に、心から感謝し誓いを立てる。
「ヘンリー、ありがとう。逃げるのは、やめるよ…」
「ふふ。僕の前から姿消したら駄目だよ〜」
「何処にも行かないよ」
「約束だよ〜?」
「ああ」

約束を確かめ合うように、優しく抱き寄せ唇を重ねる。
何度も確認するように角度を変えてキスを交わした…。

「甘い味がするな…」
少し唇を話してガイアはぼそっと呟いた。
一瞬何かな?という顔でヘンリーはガイアの顔を伺っていたが、何か思い出したようで声を出した。
「あっ!これ、ガイアに〜」
抱えていた袋を一つガイアに渡す。
「お前、金無いって…」
「うんうん。ガイアが戻ってくる前に、菓子の家のおじさんに会ったんだよ。お腹空いたって言ったら菓子パンをくれたんだ。これ、ガイアの分〜」
「あの、店主か…」
受け取った袋を眺めて言う。
「ガイアの事、心配してたよ〜」
「そっか…。また明日、礼しに来るか」
「うん、ありがとうしよう〜」
「じゃあ、今日はもう帰るか。夜も遅いし、賊に襲われないように気合い入れて行くぞ」
腰に手をやり武器を確認する。
武器を確認するガイアを見て、ヘンリーは菓子袋の中を確認する。そして、中から魔道書を取り出した。
何処にしまってんだよと突っ込みを入れて、ガイアは魔道書のニオイを嗅ぐ。
「甘い匂いがうつってるぞ…」
「ふふ、僕の闇魔法が炸裂するよ〜」
「甘い魔道書だが…、頼もしいな」
「帰ったら、お茶しよう〜!」
ヘンリーは菓子の入った袋を高く掲げて歩き出した。
「…。今、何時だと思ってるんだよ…」
呆れた顔をしながら、ガイアも並んで歩き出す。



一生背負っていかなければならない、人の道を外した者に押される烙印。
いっそ死んでしまえば、どんなに楽だろう…。

それでも生きなければならないと今は思える。

「お前の存在は大きいな…」
「ん〜?」



「…ありがとう」







ーーーーーー

おわり。

最後がちょっと重い?でしょうか…。
ヘンリーの愛は重いんだよ〜。て事で…。
もっと可愛い感じになる予定が…。テーマがよろしくないですね。やはり。
印ネタというよりは、モヤモヤガイアな話しに。
モヤモヤ言うても、欲求不満とかそんなんじゃないですが。
あとアレです。なんで、ヘンリーは文無しなんだと(笑)

予定より長くなった気もしなくはなく…。
相変わらず読みにくい作文を最後まで読んで頂きありがとうございました。



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