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FireEmblem 覚醒:鍵3 恋が始まる。
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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カギから始まる。の続きです。
本当にタイトルどーにかならないのかと…。鍵の完結となります。
ハラヘリヘンリー(笑)




砦を占拠してから数日が経ち、やっと昨日で野営地全ての移動が終了した。
翌日となる今日は、ここ数日の肉体労働を労うようにと、兵士達には丸一日自由な時間が与えられた。

占拠した日に一人だけ腕に重傷を負っていたガイアだったが、宝箱の傷薬2つを使いほぼ完治させ、周りには怪しまれずに済んだ。
最初は傷薬を1つだけ使い、残りの二つは1つをヘンリーが使い、もう1つは袋に入れていた。
だがそれだと1つだけを軍に渡す事になり、何故1つだけなのだと怪しまれるのは明白。それならと、軍に合流する前に1つでは治りきらなかった腕に、最後の傷薬を使った。
これで傷薬は無くなり、証拠隠滅となる。宝箱は探したけど見つからなかったと告げて…。

朝食を食べ終え、やる事も無く少し寝るかと惰眠を取るのに最適な場所へ移動する。
その場所は昨日のうちに見つけていて、この野営地に留まっている間はココで惰眠を貪ろうと決めていた。
しかし、そこには先客がいて思わず溜め息が出てしまう。
「はあ、俺の特等席が…」
言われて先客は人が居るのに気づき、寝ていた体を起こしてガイアの方を見た。
そして辺りをキョロキョロと見渡す。
「ええ?何処にも名前書いてないよ〜?」
「ヘンリーとも書いてないだろ。まあ、冗談だよ。そこは日当りが良くて寝心が地良さそうだなと、目をつけてたんだ」
「あはは、そういう事か〜。じゃあ、早い者勝ちだね〜」
いつもの笑顔で笑いかけてくる。
しょうがないかと軽く溜め息をつき、ちょっと横にずれろと手で合図をした。流石に、これから他の場所を探すのは面倒くさい。
「退かなくていいから、半分場所よこせ」
「しょうがないな〜」
口では不満そうに言っているが、嫌な顔をする事なくヘンリーは少し横にずれた。
よっこらせと隣に腰を下ろし、すぐ寝転がった。思った通り、程よく良い風が吹き日差しも心地良く快適だ。
すぐ寝れそうだなと目を閉じてウトウトしていると、隣から変な音が聞こえてくる。
ぐきゅるるるぅぅう。
閉じた目を開き、顔は向けずに目だけを動かして隣を見た。
「…。元気のいい腹の虫だな?」
「あはは。寝坊して朝食べてないんだよね〜」
「朝弱そうだもんな、おまえ」
ぐううぅううぅうぐきゅ。
「うるさくて寝れないんだが…」
体を起こして、隣で腹を鳴らしまくるヘンリーを呆れ顔で見る。
「うるさいよね〜。僕も寝れないよ〜」
「たく、しょうがないな…。俺の天幕まで歩けるか?」
「ガイアの天幕?」
「菓子を分けてやるよ。少しは腹の足しになるだろ」
そう言いってガイアは立ち上がり、天幕へ行くぞとヘンリーにも立つように即す。
ぐぐぅうぐぅ…
「どこで返事してんだよ…」
「あはは。ごめんね〜」
ヘンリーは腹の虫を鳴らしながら、ゆっくりと立ち上がった。

天幕に入り、ヘンリーを椅子に座らせてから、ガイアはすぐ紅茶の用意を始める。
「飲み物あった方が腹膨れるよな」
「なんか、ごめんね」
ガイアは用意をする手を止めなかったが、少しヘンリーの方を見て不満げな声を漏らす。
「前から思ってたんだが…、俺ってそんなに怖いか?」
返答を待ったが、訊かれたヘンリーは「何で?」という顔をするだけで、言葉を返してこなかった。
ティーカップをテーブルに置き、菓子の入った袋を持ってガイアは席に着く。
そして再度ヘンリーに訊く。
「何でそんなに謝るんだよ?」
「うーん、なんでだろう?ガイアに迷惑な事をしちゃってるからかな〜」
良くわからないという表情をしてただけあって、やっと口にした返答も曖昧なモノだった。
「別に迷惑じゃないが…。まあ、そんなに謝るなよ。なんか俺まで謝りたくなってくるからな」
もともと良くわからない奴だし、これ以上追求するのは無意味な事だろう。
そして謝りたくなるのは冗談ではなく、謝られるとこっちまで謝りたくなってくる。それは人間の心理ってもんだろう。…多分。
「え〜、変なガイアだね〜」
「お前ほどじゃないと思うが」
そう言い、テーブルに菓子を並べる。
「ほら、食べろよ」
「わあ、美味しそうだね〜。いただきま〜す」
美味しそうに食べるヘンリーを見て、自分も1つ焼き菓子を口にくわえる。
そして空いた手で袋から色んな菓子を次々と取り出し、テーブルの上に置く。
「すごい、いっぱいあるね〜。あ、コレすごい奇麗だね〜」
木の枝に小鳥が二羽とまっている菓子をヘンリーは興味津々に眺めた。
その菓子は繊細な作りで、角度により多彩な光を放っている。その何とも言えない美しさは、本当に食べ物なのかと疑うほどだ。
「見せてやるって約束だったからな。それは、フェリアで手に入れた限定物の飴細工だ。奇麗な色してるだろ?」
「うんうん。食べるの勿体ないよね〜」
「ああ、これはまだ食べるつもりはない」
「あはは。ガイアの宝物なんだね〜」
「まあ、そんなの一杯あるぞ。これもそうだしな…」
言いながら袋に手を入れたが、すぐ動きを止める。
「ん?」
微かな揺れを感じて、天幕の中を注意深く見渡す。
少し黙っていると、テーブルの上で物がカタカタと音を立て始めた。
「地震か?」
「ノノが暴れてるのかも〜?」
次第に揺れは大きくなり、棚に置いてあった菓子が床に落ちる。
「わわ、ノノ暴れ過ぎ〜」
「いや、地震だろ…コレは…」
軽く突っ込みを入れて、菓子の袋を床に置く。
「あっ!!」
テーブルの上から菓子が落ち、ヘンリーは床すれすれの位置で受け止める。
そのまま床にうずくまって、飴細工の菓子を大事そうに眺めた。
「は〜、良かった〜。壊れなかったよ〜」
「大丈夫か?」
うずくまっているヘンリーに声をかけ、ガイアは立ち上がった。
テーブルの下に入るか、外へ非難するべきか?と考えながら周りに気を配る。
揺れは更に激しくなり、棚が揺れに絶えきれず倒れそうになっているのに気づいた。そして棚の前でうずくまっているヘンリーに声をかける。
「そこから離れろ!」
しかし退くのが間に合いそうもなく、ガイアは素早くヘンリーに覆いかぶさった。
「ぐ…」
その直後に棚は二人の上に倒れ、ガイアは小さく苦痛の声を漏らした。
なんとか片手で自分の体を支えてヘンリーに負担をかけないようにし、揺れが感じなくなるまで棚を背負ったままの体勢で耐える。
程なくして揺れがおさまり、ガイアは自分の下にいるヘンリーに声をかけた。
「大丈夫か?」
「あ!」
ゴッッ!
「い゛っ」
鈍い音がして、ガイアは顎を押さえてヘンリーの後頭部を睨む。
「…いきなり頭上げるなよ」
「あ、ゴメンね〜。大丈夫〜?」
「舌は噛まずにすんだ。それより、あんまり無茶するなよ」
そのままの姿勢で、棚を片手でずらして背中からどかす。
「大事な菓子は壊れなかったよ〜」
床に寝そべった姿勢で、菓子を左手に持ち替えてガイアに見せた。
一応、菓子に目を向けるが、壊れていないかなんて確認するつもりはない。
「確かに菓子は大事だが、壊れたら胃に入れるだけだ。お前は怪我したら、そうはいかないだろ」
「菓子は直せないけど、怪我は治るよ〜?」
「食べるから良いんだよ。お前は食べれないだろ」
「…」
ヘンリーは笑う事もなく無言になり、ガイアは自分の失言に気づく。もちろん、そんな意味を込めたつもりはない。
「へ、変な意味じゃないぞ?とにかくだ、そんな事のために無茶はしないで欲しい」
失言を誤摩化すように、すぐ言葉を続けた。
ヘンリーも一瞬微妙な表情をしたが、さほど気にする様子もなく、そこには触れず言葉を返す。
「ん〜。ガイアの大事な菓子だから、壊れるの嫌だよ?ガイア悲しくなるよね?」
「いや、ちょっと食べるのが早まるだけだ。俺のために無茶はするなって言ってるんだよ」
「え〜、役にたちたいんだけどな〜」
「じゅうぶんたってるって」
ヘンリーの上から頭を数回ポンポンと軽く叩く。
叩かれてヘンリーの頭は上下に数回揺れる。その後、小首を傾げた。
「そうかな〜?」
「ああ、笑っててくれるだけで良い」
「ええ?なんか恥ずかしいよ〜?」
「お前だって俺に名前呼べって言ったろ。何回恥ずかしい思いしたと思ってんだよ」
「そんなに言ったかな〜?」
もう一度ヘンリーは小首を傾げた。

本当に数えているのか、ヘンリーは黙って空いている自分の右手を見つめている。
そんなヘンリーの後頭部を眺めつつ、ガイアは数日前のヘンリーの行動を思い出していた。
そして一つの疑問が頭に浮かぶ。
「一つだけ訊いていいか?」
「ん〜?」
訊かれて自分の手を見るのをやめたが、後ろを振り向くには少し苦しい姿勢なため、持っていた菓子を眺めながら返事をする。
「鍵開けは本当に興味があったからか?どうして、あんな無理までして俺んとこに来たんだ?」
「…無理をしたのは、忘れられちゃうと思ったからだよ。それは、前も言ったけど嘘じゃないよ。あと鍵開けは…」
そこまで言って、ヘンリーは黙ってしまう。
次の言葉が気になり「鍵開けは?」とヘンリーの言葉を繰り返し、続きを言うように催促をする。
それに気づいたのか、言いにくそうにしていたヘンリーは、ゆっくりと話しだした。
「鍵開けじゃなくて、本当に興味があったのはガイアの事だよ」
「俺…?」
「うん、変かな?」
「それは変だな。俺に興味持ったって、良い事なんてないぞ?」
「ん〜、自由で羨ましいっていうか、うまく言えなけど良いな〜って」
自分の何処が羨ましいんだ?と理解出来ないという表情をヘンリーの後頭部に向ける。
「お前の方が自由にみえるんだが…」
「あはは、今はとっても自由だよ〜。でも、居場所が欲しいんだ。イーリス軍は僕の居場所を作ってくれたけど、そういうんじゃなくて…もっと身近な感じのが良いんだよね〜」
「俺に居場所を求めてるのか?」
「駄目?やっぱり迷惑かな。嫌われないようにって頑張ったんだけど…」
言われてヘンリーの事が少し理解出来た気がする。
行動自体は理解出来ないモノだが、嫌われたくないから取りあえず何でもかんでも謝っていたのだろう。そして、鍵開けは自分に近づくためのきっかけにすぎない。だからかは知らないが、覚えは良くなかったなと今更ながら思う。
「いや、迷惑じゃない。役にたってるってさっき言ったろ?」
「笑ってるだけってヤツ〜?」
「ああ、それで俺は嬉しくなるらしい。あと嫌ってないからすぐ謝るのはやめろ。それと…」
そこまで言って、後ろからヘンリーを抱きしめる。
「わっ!」
いきなり抱きしめられて持っていた菓子を床に落とし、華奢な音とともに飴細工の破片が床に散らばった。
「あ〜、結局壊れちゃったよ〜…」
「いいって、後で食べようぜ」
抱きしめた腕を緩め、ヘンリーの肩に手を回し自分の方を向かせる。
向かい合わせで組敷かれた体勢になり、ヘンリーは少し困った顔をガイアに向けた。
「えーと…、ガイアに嫌われてると思ってたんだけど…」
「嫌ってないって、何回言わせるんだよ?」
ずっと後頭部を見て話していたが、今度はちゃんとヘンリーの顔を見て話す。
そのヘンリーはまだ困った顔をしていた。
「でも…」
「まあ好きとも言ってないが、お前のアプローチに負けたよ」
「あぷろーち?」
意味が分からないらしく、言葉のイントネーションがおかしい。
分からなければ、それはそれで構わないと、ガイアは話しを続けた。
「気絶してまで俺んとこに来たりしただろ。最初は何やってんだと呆れたが、一生懸命だったのは伝わった。あとは、お前の満面の笑みにやられたって感じだ」
「ん〜。良くわからないけど、近くに居ても良いのかな〜?」
「おまえ…、ここまで言わせといて分からないのかよ…」
告白のつもりで言ったセリフは、ものの見事に躱されてしまった。
「好きでも嫌いでもないんだよね〜?それって良くわからないよ〜?」
「そうか…、じゃあ愛してるって言えば分かるか?」
そう言い、ヘンリーの頬に手を添える。もちろん拒否されないだろうと思っての事だ。ヘンリーに自分への恋愛感情がないとしても。
「ええ?ずいぶん、飛んじゃった…」
確かに拒否はしていないが、少し驚いた表情をガイアに向ける。
本当に何も分かっていないのかと、予想外だという表情をガイアはする。呆れ顔と言った方が正しいのかもしれないが…。
「飛ばさせたのは、お前だろ…。それで、お前の俺に対する気持ちは、どうなんだ?」
恋愛感情はないのかもしれないと思っても、告白してしまった身としては、やはりそこは気になる。
「どうだろう?こういう感じかな?」
そう言って、控えめにガイアの首に手を回し距離を縮めた。その行動で、無いと思っていた感情がヘンリーにもある事を確信する。
「分からないとか言ってたわりに、積極的なんだな」
「ガイアのせいだよ〜」
「いや…、お前だろ…」
「ガイア〜、なまえ、なまえ〜」
「やっぱり、ヘンリーのせいだろ…。どう考えても…」
さりげなく名前を呼んでやると、ヘンリーは少し照れくさそうに笑った。
その笑顔を見て、ガイアも控えめに笑う。
そして気持ちを確認するように見つめ合いキスをする。


きっかけは、鍵開けだったのかもしれない。
気になったのは、笑顔だったのかもしれない。

そして見つけたのは、お互いの居場所。
愛おしく大事な存在に、これからなっていくのだろう…。


そんなところから始まる恋もあるかもしれない。




ーーーーーーー
おわり。

結局、菓子だらけ(笑)
はたしてノノは暴れて地震を起こすのか?ンンはやりそうですが…。て、ノノが暴れて揺れてた訳じゃないですよ…。

ガイアとヘンリーの自由の違いとか、ヘンリーが羨ましがるガイアの自由とかとか…
もっと詳しく書きたかったんですが、無駄に長くなりそうなんでやめました。
機会があれば、そこが中心の何かを書いてみたいな〜と思います。

3話という事で、長い駄文に付き合って頂き有り難うございました。
誤字脱字等は…な、ないといいな〜て;


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