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FireEmblem 覚醒:無題
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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ヘンリー女体化3話目。
という事で、設定とかが「がいあのよあけ」「幸せになろう」から続いてます。
『昔いた施設の人に遭ってしまう』〜お話しです。
変な男が出てきます。嫌な予感がしたら読むのはやめましょう!
最後はハッピーエンドが基本です。






平和な日が続く。
戦争中だなんて嘘のよう…。

今日も戦は無く、兵士達は自由な時間をすごす。
イーリスの敏腕軍師も戦術書を机に置き、羽を伸ばそうと街へ繰り出す。
一人で買い物しても楽しくないとか、らしくない女の子な一面を覗かせ、街へ一緒に行こうと誘う。

街での買い物は、誰の趣味なのか、可愛い店ばかりを選んで中に入った。
完全に軍師ではなくひとりの女の子になっているルフレに、荷物持ちの男は次に入ろうとする店の前で足を止める。
「外で待ってて良いか?どうも、この手の店は入りづらい…」
「なに言ってるのよ?パパになるのよ?」
「ま、まだ早いだろ?パパとか言うなよ!?」
まだ実感はなく、言われると恥ずかしく動揺してしまう。
「なーに照れちゃってんの?あ!あの服可愛い〜。ヘンリーに似合いそうよ」
ショーウィンドーを指差して、ルフレはヘンリーに声をかける。
「え〜。あれ、マタニティでしょ?まだ早いよ〜」
「はあ…、ガイアと同じ事言うのね。早くないと思うけどな〜、すぐ大きくなるわよ」
そう言ってルフレはヘンリーのお腹を撫でた。確かに少しふっくらしてきた気がする。
「でも、女の子っぽくて恥ずかしいよ〜」
「そこが良いんじゃない。折角、可愛い下着も買ったんだし、もっと女の子を楽しまないと勿体ないわよ〜。ね?ガイア」
「ねっ?て言われてもな…」
異性に同意を求める事じゃないだろうと困ってしまう。もちろん、ルフレの言う事も分からなくはない。
ずっと性別を隠して生きてきたんだ。我慢してきた分、今は本当の性をもっと堪能しても良いと思う。


可愛らしい店を出て、ルフレは広間で足を止める。そして、持っていた荷物を空いているベンチの横に置いた。
「少しここで待っててもらってもいいかしら?凄い戦術書が、この街にあるって噂が…」
「あはは、やっぱりルフレはルフレだね〜」
「ルフレ、お前も女を楽しめよ?」
ガイアは呆れた口調でルフレに言う。
持たされた荷物の大半はルフレが選んだが、その殆どはヘンリーの物だ。
「十分楽しんだわよー?じゃあ、ちょっと行ってくるわね!」
「ゆっくりで良いよ〜。ベンチに座って待ってるから〜」
「はーい、ありがとー!」
ルフレは足早に本屋を目指し、人ごみに消えていった。
「凄い戦術書って、胡散臭いな…」
「見つかると良いね〜」
「俺が思うに、凄くない戦術書だな。アイツ自身が凄い戦術書だからな」
「ウマい事言うね〜、ガイア」
「別にウマくはないさ」
凄い軍師が満足出来る戦術書なんて、そう無いだろう。まあ、凄いの基準も分からないが…。
「さて、今のうちに用でも足してくるかな」
ベンチにヘンリーを座らせ、その横にルフレ同様荷物を置き、ガイアは周辺を見渡す。
「荷物番は僕に任せて〜。あ、菓子買って来たら〜?」
「菓子か…、何か食べたいのあるか?」
「ん〜、ガイアにお任せ〜」
「了解。じゃあ、ちょっと行ってくる」
「はーい、いってらっしゃ〜い」
ヘンリーは手を振って、ガイアを見送る。
そして一人になったところで、荷物を眺めて小さく呟く。
「ルフレは可愛いって言うけど、こんなの着て歩いたら笑われちゃうと思うんだけどな〜」
僕なんかには似合わないよ…と、今度は小さく溜め息をついた。

二人が戻ってくるまで、広間を行き来する人々をヘンリーは眺める。
そして、子供連れの夫婦を見つけ、つい目で追ってしまう。
別に羨ましい気持ちがある訳じゃない。自分を捨てた両親の事なんてどうでもいい。
そんな過去より今は、自分達もああいう感じになるのかな?と想像し、幸せで胸がいっぱいになった。



「ヘンリーだよな?」
幸せだな〜と微笑んでいると、不意に声をかけられる。
その声に聞き覚えがあり、ヘンリーはハッと顔を上げた。
「あ…、ちが…」
とっさに嘘が口をついて出る。

ペレジアの施設に居た男だ…。
もう会う事なんてないと思っていた男が目の前に現れ、忘れたハズの記憶が鮮明に蘇ってくる…。

「男?じゃねぇよな?やっぱり、ヘンリーだよな?」
「ち、違う…。人違いじゃ…」
施設で受けた仕打ちを身体が思い出し、息苦しく嫌な汗が出てくる。
「いや、間違う訳ねぇよ。毎日一緒にいたんだ。何で男装してんだ?」

…この男を人間だと思った事はない。

「ペレジア軍を裏切ったって聞いてるぜ?イーリス軍にいんだって?」

全てを奪ってきた男だ。どうして遭ってしまうのだろう。

「おいおい、黙りかよ?久しぶりなんだし、昔話でもしようぜ」

この男から逃げる事は出来ないのだろうか?

「何から話そうか?施設がもう無いのは知ってるよな?ペレジアは今、大変なんだぜ?」

息苦しい…。同じ空気を吸うのも嫌だ…。

「お前、軍では女だって隠してんのか?んな格好して」

言ってる事が耳に入ってこない。

「勿体ねーな。欲求不満じゃねぇ?昔みたいに抱かれたくね?」

話したくない…。

「たまにはしたいよなあ?俺も久しぶりに、お前と遊びたくなったな」

「…」

「ああ、どうせなら俺んとこ来るか?今度は、ガキ産んでも良いぜ」
そう言って、腕を掴んで強引に引き寄せる。
「や、やだ…」
全身が男を拒絶し、呼吸がうまく出来ず苦しい。
「あん?聞こえねーな?もっと、こっち来いよ」
さらに引っ張られ抱かれ、全てを壊される恐怖に身も心も支配され、身体が硬直する。
「やだ…助け、て。ガイ…、ッ…!」
「ガイ?」
「おい、何してる」
男が振り向くと、可愛らしい菓子袋を抱えた男が睨みつけてきていた。
「誰だ?」
不機嫌に男が問うと、菓子袋の男はそれ以上に不機嫌な顔を見せる。
「それはこっちの台詞だ。ヘンリーから離れろ」
「おいおい、どうなってんだ?なあ、ヘンリー。お前が女だって、そいつ知ってんのか?」
「それがどうした?嫌がってるだろ」
持っていた菓子袋を地面に起き、ガイアはヘンリーの様子を伺う。
黙って男に抱かれたままだが、ヘンリーの目は必死に助けを求めている。
「嫌がってねぇよな?嬉しいよな?また昔みたいに俺が抱いてやるんだからなぁ。ハハッ」
「っ!!」
「あがっ!」
素早く間合いを詰め、至近距離から力任せに男をぶっ飛ばす。
男はベンチに突っ込みそのまま倒れ込み、腕から解放されたヘンリーは地面に落ちる事なく、ガイアに受け止められた。
「ガイアッ!!」
「ヘンリー、大丈夫か?」
「う…」
「無理するな、ゆっくり呼吸しろ」
そう言って、優しく背中を擦ってやる。
ヘンリーの身体を心配しつつ、ガイアの目はずっと倒れたままの男を睨みつけていた。

「おまたせ〜。て、ん?なに?」
本を数冊抱えて戻ってきルフレは、ただならぬ雰囲気を感じて足を止めた。
その横を必死な形相で男が凄い勢いで駆け抜けて行く。
「わっ!?」
「ルフレ!ヘンリーを頼む!!」
男に驚いてよろけているルフレに、ガイアは声をかけヘンリーを預ける。
いきなりの事で、さらによろめいたルフレは、何とか倒れる事なくヘンリーを支えた。
「え?なに、どうしたの??つわり??え?産気付いちゃった??」
「んなわけないだろっ!」
状況が把握しきれず的外れな事を訊いてくるルフレを、ガイアは一言で片付け走り出した。
「え?ちょっと、ガイア!!」
すぐガイアは見えなくなってしまい、とりあえずベンチを起こしてヘンリーを座らせる。そして、ルフレは大きく息を吐いた。
「何があったの…」
「ガイア、追ってっちゃったんだ。…僕のせいで」
やっと呼吸を整えてヘンリーは口を開く。
「誰を?」
「…」
「んー、まあ良いか。心配だけど、戻ってくるまで待つしかないわね」
気にならない訳じゃないが、口数も少なく下を向いてしまったヘンリーをしつこく追求する気にはなれなかった。
「ヘンリーとお菓子のために、すぐ戻ってくるわよ」
そう言って、男を追っていった方角をルフレは見つめる。
まあ、ガイアなら平気かな?なんて、思ってしまうのは無責任だろうか…。
ルフレは散乱した荷物を整頓し、最後に可愛い菓子袋を拾ってヘンリーに渡した。





街中を抜け、人通りの無くなった路地で、男は足を止め息を整える。
後ろを振り返り人が居ないのを確認して、血の味のする唾を吐き捨てた。
「ケッ、たかが女一人に目くじら立てんじゃねーってな!」
地べたに落ちた唾を見下ろし、血の混ざった赤い土を蹴り飛ばす。
「悪かったな」
「!?」
男が振り返ると、殺気を隠す事なく一人の男が近づいてきた。
「撒いたつもりか?そんなんじゃ、俺からは逃げ切れないぜ」
「おいおい、もう良いだろ?アイツに近づくなってんだろ?もう会わねえよ」
「ああ、それで良い」
そうガイアは言い、頭をかきながら、止まる事なく歩き続ける。
「おいっ、止まれ…」
さらに近づいてくるガイアに、男は数歩後ろに下がる。
「止まれって!」
「そうだな。もう会わない…それで確かに良い。だが、それで償えるか?」
「償うだぁ?」
「償うべき事がいっぱいあるだろう?」
そう男に問いかけ、素早く腕をのばし男の肩を力一杯掴む。
男は抵抗するが、掴んだガイアの手はビクリとも動かない。
「は、離せっ!」
「償ったらな。お前の命じゃ足りないが…」
肩を掴んだ手はそのままに、もう片方の手で剣の柄を握る。
「な…」
「ヘンリーから何を奪った?どれだけ奪ってきた?生きてたって償いきれないだろう?」
握った柄を鞘から抜き、鋭利な剣先を男に向ける。
「た、助けてくれ!」
「それは無理な願いだ。まあ、俺は甘い男だから、お前の安い命ひとつで許してやるよ」
ゆっくりと、剣先を男から離した。そして、片手で器用に構え、狙いを定める。もちろん、もう片方の手は男の肩を掴んだままだ。
「や、やめてくれ!」
「それも無理だ。俺は、そこまで甘くはない」
「!!!」





可愛い菓子袋…。
いつもなら恥ずかしいからと包装は断って、すぐポケットなりに入れてしまうのに。
リボンまで結んであって、ただ買い求めただけでは、してくれなさそうな包装だ。

「ねえヘンリー、そのお菓子はガイアが買って来たの?」
菓子袋をじーっと見つめているとルフレが声をかけてきた。
「うん、ルフレが凄い戦術書を探してる間にね〜」
「そっか、戦術書より先に行かせてあげるべきだったわね…」
「ねえ、ルフレは凄い戦術書、見つけられた〜?」
「んー、噂は噂でしかなかったわ…。一応、数冊見繕ってはみたけど…」
そう言って、戦術書をペラペラと捲る。そして、今イチかな〜と呟いて、すぐ小脇に抱えた。
「ガイアがね、ルフレ自身が凄い戦術書だって言ってたよ」
「あら、何それ?褒めてくれてるのかしら?戻ってきたらガイアのために、お菓子でも買ってあげようかな〜」
「あはは」
笑うヘンリーを見て、ルフレはホッと一息つく。
「良かった…」
「ん?」
「ううん、何でもないわ。ちょっと、自分を責めてたの」
小脇に抱えた戦術書を、もう片方の手でキュっと強く掴む。
本当にあるか分からない戦術書のために二人から離れて、その間に何が起きたのか…。
その場に居なかったルフレには知り得ない事だが、軽はずみな行動だったと自分を責める。
「ルフレ?」
思い詰めた表情のルフレをヘンリーは心配そうに見つめた。
「ヘンリーをひとりにするつもりはなかったのよ…」
「ん〜?違うよルフレ。僕はひとりになっても平気だよ?ただ、今日はちょっと運が悪かったんだ。それに、ガイアも居たからね〜」
「ありがとう、ヘンリー」
「ふふ、礼は変だよ〜?」
微笑むヘンリーに、ルフレも微笑んでみせる。
「そのお菓子の包装可愛いわね」
「うん。ガイアのために菓子買って来たら〜て言ったんだけど、ガイアらしくないよね〜」
「可愛いお店に入るの嫌がってたのにね」
「それは、女の子のお店だったからかも〜?僕も入りづらかったし〜」
「ヘンリーまで…。はあ、しょうがないのかな…」
せめて女の子らしい格好をさせて、連れてくれば良かったかな?と、ルフレは今さらながら思う。
今の格好は、いつもの装束で何故か胸を隠したままだ。
本人は、まだ恥ずかしいと言うが…、お腹が出てきたら胸が恥ずかしいとか言ってる場合じゃない気もする…。
「そのお菓子は、ヘンリーのために買って来たんでしょうね」
「僕、別に可愛い包装とかは〜」
「なんだかんだ言って、可愛くして欲しいのかもよ?ガイアらしいじゃない、口で言えないの」
「ん〜。ガイアの好きな菓子を自分のために買ってきて欲しかったのにな〜」
ヘンリーが唸って言うと、ルフレは両手を合わせ目を輝かせて声を上げる。
「熱いわ!ラブラブって、きっとこういう事を言うのね。うらやましいわ…」
最後だけ溜め息まじりの声だが…。
「ルフレ、なに言ってるの〜?」
「ううん、独り言。ヘンリーもだけど、ガイアに自分の事をーなんて言っても無駄みたいね」
キョトンと見てくるヘンリーを他所に、ルフレは勝手に納得して頷いている。
「よし、ガイアが戻ってきたら、お菓子を大量に買いに行くわよ」
「ええ〜?これ以上、荷物を増やすの…?」
ベンチの横に山積みにされた荷物をヘンリーは眺めた。
その荷物を何個かルフレは持ち上げて、余裕の表情をみせる。
「平気平気!軽いから私もまだまだ持てるし、目一杯ガイアに持たせればいいわ」
「あはは。誰のために菓子を買うんだろ〜」
「お菓子なら、ガイアは喜んで運ぶでしょ!」
そうルフレは言って、ガイアが男を追って行った方角を見つめる。
口に出す勇気はないが、ガイアも自分自身を責めている…。ヘンリーを託された時にそう感じた。
逃げて行った男が誰なのかは知らないが、きっと無事では済まないだろう…。

「ヘンリー、体調大丈夫?疲れてない?」
「うん、平気〜」
笑顔でヘンリーはルフレを見る。
そして、すぐ遠くへ目線を移した。
「あ!」
ひとつ声を上げてヘンリーは立ち上がって歩き出す。
「ガイア!」
ヘンリーが名前を呼び、ガイアは急いで二人のもとへ向かい、歩いて来るヘンリーを優しく抱き寄せた。
「すまない」
「どうして謝るの〜?」
「大丈夫か…?」
「うん。ガイア、おかえり〜」
「ただいま…」
何とも言えない表情でガイアはヘンリーを見るが、そのヘンリーは微笑んでいた。
多分、ヘンリーは分かっている。
何をしてきたか言う気はないが、その必要もないだろう。
誰を責める訳でもなく優しく出迎えてくれる。それだけで、自分の気持ちが救われる気がした。

「ねえ、ガイア。ルフレと話してたんだけど、菓子を一杯買いに行こう〜」
「え?」
「ハイハイ!いつまで広間で抱き合ってるの!?見せ物になっちゃってるわよ〜」
手を叩いてルフレは、二人に声をかけた。
ちょっとした人だかりが出来てしまっているのに気づき、ガイアは急いでヘンリーから離れる。
「は、早く言ってくれよ…。て、今から買いに行くのか?」
「ええ、もちろん。ガイアの物も買わなくっちゃね〜」
ルフレがそう言いうと、ヘンリーは可愛い菓子袋を大事そうに抱えて、ガイアを見上げて頷いた。
「今度はガイアの番だよ〜」
「これ以上、荷物増やすのかよ…」
「お菓子は持てるでしょー?」
「ルフレ…、お前の根拠が分からんのだが」
すでに両手が塞がってただろ?と、呆れた表情でルフレを見た。
「あはは、僕は分かるよ〜。ガイアは甘い物を無限に持てるからね〜」
「いや、持てないぞ?無限はありえないだろ?」
何言ってるんだ?と抗議するが、ルフレもヘンリーも笑いながら菓子屋を目指して歩き出した。
その後ろ姿に溜め息をつきつつ、ガイアは荷物を両脇に抱える。
「はあ、何が俺の物で、俺の番なんだ…」
小さく愚痴を漏らし、数歩遅れて歩き出す。

…街で起こった事がなかったかのように。

しかし、過去を忘れる事は出来ないだろう。
それでも何もなかったかのように、今日を過ごす。

そして、明日を過ごす。

その次の日も、毎日を幸せに過ごす…。

今を幸せに出来るなら、それで良い。
それだけで良いんだ。




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おわり。

内容的には、あっちと一緒です。
あっちより軽い感じになっちゃいましたが…。妊娠中の女性には優しくしたかったとか、なんだかんだと色々ありまして…。
アンケートで頂いたネタから〜なのですが、昼ドラっぽくもなく、ドロドロもしていない気が…。
思ったより明るい感じの話しになってしまいました。
内容は重くはないハズはないんですが…、ウチのルフレが能天気っぽいのがイケナイのかもしれませんね…。
ドラマCDのルフレとは別人だ…;スミマセン。

このような作文を最後まで読んで頂き有り難うございます。
誤字脱字は〜。


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