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FireEmblem 覚醒:がいあのよあけ<後日談>
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FireEmblem覚醒

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「がいあのよあけ」から続いているお話です。
※ヘンリー女体化です。





あの戦から数日が過ぎ、軍は少しずつ平穏な日常を取り戻しつつあった。

『戦争で失うモノは数えきれない程ある』
もちろん得るモノもあるが、失うモノの方が心の奥深くに残ると思う。
犠牲となった兵士の亡骸を見るたび、何とも言えない感情が込み上げてくるのだ。

『もう、軍師なんて辞めてしまおうか?』
口に出しては言えないが、そんな事を考えてしまう。

私が貴方達の命を預かって良いのでしょうか…?


「…」
「なんて顔してんだよ」
被害報告書に目を通していると、菓子で視線を遮られる。
「邪魔な事をしてくれるな」なんて言葉は口からでず、どんな顔をしていたのだろう?と、相手の顔に視線を移す。
「甘いもんでも食べて、少し気分転換でもしろよ」
その人物は菓子の棒をくわえたまま、口の端を持ち上げこちらに笑顔をみせてくる。
「…ガイア、私そんな変な顔してた?」
「変というか、苦しそうで追いつめられた表情…って感じだな」
「そっか…」
やっぱりそうかと溜め息をつく。
自分が完璧な指示を出せていたら、犠牲は出なかったかもしれない。あの日から毎日、自問自答している。
軍師を辞めて逃げたいなんて、誰にも言えないから顔に出てしまうんだ。
もちろん、この軍を去るなんて選択肢は今の私には無い。どんなに辛くても…だ。
「いや、辛い事ばかりじゃないし!」
楽しい事もいっぱいあった!
死に際じゃないが、楽しい事が一瞬だけ走馬灯のように脳内を駆け抜けていった。
辛い事ばかりだったら、今頃自分は廃になっているに違いない。
「いきなりなんだ?」
「何でもない!それよりどうかした?ガイア」
「どうかって…変な顔してるから心配で声をかけたんだが?」
「変だなんて失礼ね。それと、用もないのに仕事中の軍師に声をかける?わざわざ天幕まで来て」
ガイアという人物は、そう言う人間だ。『わざわざ』という行動が全く似合わない男。
理にかなえば『わざわざ』は、あるのかもしれなが…。
「お前もじゅうぶん失礼な奴だな。まあ、用はある」
「ほらね」
やっぱりあるんじゃないのと報告書を机の上に置き、軍知ルフレは盗賊のガイアに向き直った。
「数日以内に、また敵の動向を偵察に向かわせるだろ?」
「そうね、前回の闘いで消耗が激しかったのは、こっちの軍。体勢が有利なうちにまた敵は攻撃を仕掛けてくると思うの」
「どれくらいの兵力が残っているか、詳しい情報を知りたいんだろ?」
「ええ、そうだけど…?」
前回の戦の何処に敗因があったか、戦場に出た者なら誰しもが考える事で、その原因が自分の得意分野ともなれば口を出さずにはいられない。
もちろん原因はそれだけじゃない。私の指揮も至らなかったからだろう…。
「俺に任せてくれないか?」
「どうしたの?らしくないじゃない」
こちらから指示しなければ動かなさそうな人なのに。
偏見でしかないが、どうも正義感で動くような人物には見えない。私の見解では、甘い物にしか目がなく自分の利でしか動かない盗賊…という印象だ。
「そんな事もない。自分の目で確かめたいだけさ。兵糧等詳しく調べて来てやるよ」
誰が悪いとハッキリ言わないあたりが彼らしい。
「へ〜。報酬は高級菓子?」
「ああ、それで手を打とう」
いくら甘い物に目がないとは言え、すこぶる安い人件費だ。
この軍の資金事情から考えれば、凄く有り難いことだが。
「誰かと組む?」
「いや、単独行動の方がいい」
「じゃあ、ガイアに任せるけど、無理はしないでね」
「言われるまでもない。だが、五日経っても戻ってこなければ、他の奴を寄越してくれ。俺の事は気にしなくていい」
「それはクロムが許してくれないと思うけど?」
「下手な行動をとらなければ殺されはしない。掴まれば捕虜確定だろうが、こっちの情報を漏らす気は無いから安心しろ」
「安心できないわよ…」
もちろん情報漏洩を心配しているわけではない。
素直にガイアの身を案じての言葉だ。
「放っといても良いし、助けてくれても良い。その辺は任せる」
「わかってるくせに」
この軍はそういう軍だ。ガイアも分かっているからこその台詞だろう。
「まあ、ドジを踏む気はないが。もしもの話しだ」
「うん、慎重にね」
「了解。しっかり調べ上げてくるよ。あんな辛勝はもう懲り懲りだ」
最後に呟くように言い、ガイアは天幕を後にした。
誰かを責めるなんて事は出来ないけど、みんな悔しい思いをした戦だったんだ。
どこかで今回は楽勝だなんて思っていたのかもしれない。だからあんな結果になったんだ。
何とか勝てた戦だったけど、もっと上手く戦えたはずだった。後悔したって結果は変わらないけど、気を引き締めなければ…。


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「今日で何日目かな?」

「今日は戻ってくるかな?」

「明日は、えーと〜?」

野営地の出入り口の前で、腕を組み悩む男がひとり…。

「ルフレ〜、ガイアが偵察に出てから何日たったかな〜?」
「えーと、四日目かな?」
「だよね〜、遅すぎだよね〜?」
うーん…と腕を組んでいた男は空を見上げながら呟く。
「確かに遅いけど、まだ五日は経ってないから、あと一日待ちましょ」
「ん〜…」
「仲間思いなのね?」
ルフレは微笑み、考え込んでいる男を見つめた。
「あはは、そうだね〜。前に助けてもらったから、僕もガイアの力になりたくってね〜」
「なるほど、でも無茶しちゃ駄目よ」
「はーい」
元気に返事をし、男は野営地の外へ足を向けた。
「あ、ヘンリー!」
「あはは、呪いの道具を買いに行くだけだよ〜。ルフレは心配性だね〜」
「もう、早く帰ってくるのよ!」
「はーい、お母さん〜」
「誰がお母さんですって!?」
「あはは〜」
笑いながら野営地を出て行く男…。
それを見送る軍師ルフレは、その後ろ姿を見送る。
何も疑う事なく…。
そう、ガイアを追いかけていくなんて、これっぽっちも。
そして、ヘンリーが男ではなく女だなんてことも…。

いや、追いかけていくかも?と、少しは疑っているだろう。
でも、女だなんて…。

「うーん、明日になったら、纏めて捜索に行くしかないわね…」
溜め息をつき、ルフレは自分の天幕に重みを増した足を向ける。
「はあ、何も起こらなければ良いけど…」
天幕に入りルフレは、もう一度溜め息をついた。




「えーと〜、敵さんは〜あっちの人たちだから〜、ここより北側だね〜」
ルフレの心配を他所に、ヘンリーは町の道具屋ではなく、町の反対側へ突き進んでいく。

前回の戦は敵が攻め込んできたので、敵地にヘンリーは足を踏み入れていない。
今回は戦闘をするわけではないが、既に敵地の中だ。
この林の中の何処に敵が潜んでいるか、どの辺に敵の陣営があるのか…。偵察に行く者なら場所はある程度特定できているだろうが、ヘンリーは違う。
だからガイアを探す以外は、何となく敵地を進んでいるだけ。
ただ歩いていてガイアを見つける事が出来れば運が良い。
敵に出くわしても運が悪いとは思わない。
「見つかったら殺すだけ〜♪」の事。

見つかったら…
「おい、そこで何している?」
あ、見つかっちゃった〜。
「術士か…、その身なりはペレジアか?」
茂みから3人。盗賊ひとりに護衛の剣士?…傭兵かな?が2人。術士は0。
見張りだろうか?いや、盗賊が要るという事は、ガイアと同じ目的?
「いやまて、ペレジアはイーリス軍に壊滅させられただろ」
「じゃあ…」
「だが、ひとりのようだ。残兵か?」
ヘンリーが状況を確認している間、敵も同じく状況を確認している。
まだ、ヘンリーがイーリス軍だという事は分かっていないようだが…。
「どうだろうな…。迷い込んだという雰囲気でもない」
「念のため、報告しておくか」
「了解」
そして、盗賊がマントを翻し来た道を戻る。
…はずだったが、断末魔もなくその場に崩れ落ちた。
「?」
他の者達は何事かと、その場に息絶えた盗賊を見やるが、既にヘンリーは別の所を見ていた。
「君たちがこの道を歩いてたという事は、こっちであってるんだね〜」
「お前、イーリス軍か?」
死体に外傷は特に無かったが、魔法による残光が微かに残っている。
盗賊の死体を確認しつつ、ひとりが剣を鞘から抜く。
「術士ひとりだが、偵察か」
「残念〜、偵察じゃないよ〜」
「まさか、攻めてきたのか?」
「あはは、流石に僕ひとりじゃ無理かな〜」
そう言われ、残された敵兵はありとあらゆる可能性を推測する。
何ひとつこれだという目的を見いだせぬまま、思考が停止。そして、すべての時が止まってしまう。
三体となった遺体をまたぎ、ヘンリーは少し前に進む。
聞き耳を立て、神経を研ぎすます。
…まだ、何かがいる。
大群ではなく、それはひとつだ。
だが、それが何なのかが分からない。微かに感じるその気配は、殺気とは違う…。
でも、多分、人間。
だとしたら?
「ガイア〜!」
「流石だな」
振り向くとそこには、思った通りの人物が立っていた。
少し呆れたような表情をしているが、口元で微かに笑っている。
「お迎えにきたよ〜」
「そりゃどうも…と、言いたい所だが…」
今度は大きく溜め息をひとつつく。
その様子を小首を傾げてヘンリーは見つめていたが、ガイアに強く引っ張られよろめいてしまう。
そして強く抱きしめられ、苦しいと思いながらもガイアの背中にヘンリーは手を回した。
「ガイア…」
「ったく、心配かけさせんなよ」
「え〜、ガイアもね〜?」
「立場が違うだろ。俺は計画的に敵の情報を探ってんだ。お前は無計画だろ」
「ガイアのお迎えっていう計画があるよ〜?」
「それ計画じゃないだろ。それにお前は…」
「うん?」
見つめてくるヘンリーをガイアはじっと見つめ返す。
相変わらずのペレジア装束姿だが、その中身をガイアは知っている。
「女だろ。こんな所にフラフラやってくるなんて、男の俺からしたら心配以外何も無い」
「それは差別だね〜」
「これは差別じゃないだろ」
不満そうにしているヘンリーの頬に手を添え、ガイアは口付ける。
「とりあえず、何事も無くて良かったけどな」
「ガイアもね〜」
「そうだな、問題なく偵察は終了した」
「おつかれさま〜」
「サンキュ、お前の顔を見たら疲れも吹き飛んだよ」
「あはは」
そしてもう一度キスをする。
「これからどうする?」
「これから〜?」
訊かれ、ヘンリーは空を見上げる。
見上げた空は、青色に少しオレンジがかかった、夕焼けというには少し早いくらいの空色だ。
もう少し経てば、もっとガイアの髪の色に近づくだろう。
じーっと空とガイアの頭髪を交互に見ていると、目の前に菓子が現れる。
「お菓子〜?」
「腹減ってないか?」
「ん〜」
「もう少し敵地から離れれば安全だから、今はこれで腹ごしらえを…」
「ガイアはお腹減ってるの〜?」
今度は菓子から目を離し、ガイアのお腹辺りを見つめる。
特に腹は鳴っていないようだが、腹を擦る仕草がとても空かしているように感じた。
「ああ、ほぼ飲まず食わずだったからな。今は緊張も溶けて、空腹が一気に襲って来ている」
「あはは、お菓子で足りるの〜?」
「菓子しかないからな…」
「ん〜、じゃあ…」
少し考えて、ヘンリーは横道に逸れ、林の中を進む。
「ヘンリー?」
どんどん進んでいくヘンリーにひと声かけ、ガイアも後に続く。
「何処行くんだ?」
「…」
ガイアの問いかけには答えず、ヘンリーは小さく何かを呟く。
その言葉は聞き取れないが、多分呪文だろう。
「!」
ヘンリーの指先が光り、すばやく呪印を描く。そして、林の中にその光を解き放った。
少し先で小さな爆発が起き、ヘンリーは鼻歌を歌いながら、爆発の先に足を進める。
「お…」
煙が鼻先をかすめ、肉の焦げた匂いが食欲をそそった。
「焼き肉か…」
「はいガイアどうぞ〜」
「…」
何の肉か?それを訊くのは野暮ってもんだが…。
多分、何か獣。四足歩行の…なにか…。
ヘンリーは何か知ってて捕ったのだろうか?
「美味しいよ〜?」
じーと焼けた肉を眺めていると、ヘンリーが先に口へ運ぶ。
その食べてる姿が幸せそうで、つい美味しいのだろうと思ってしまうが…。
「獣臭いな…」
「贅沢言わない〜」
「ヘンリーの言う通りだな。とりあえず、腹は満たされそうだ」
「ふふ」


いつの間にか空は夕日から夜空に変わりつつある。
獣臭く美味しいなんてお世辞にも言えなかったが、魔法で焼いた獣を食べ腹を満たし、小休憩をとる事にした。
すぐ野営地に戻らないのは疲れているからではなく、まだ1日余裕があるからだ。
今日はまだルフレは動かない。ヘンリーは動いてしまったが…。
動いてしまったからには…、
「責任もって連れて戻らないとだが…」
「ガイアに責任はないよ〜?僕が勝手に来ただけだからね〜」
「そうは言ってもだな、ヘンリーが一緒じゃないと、問われるのは俺だろ」
「そっか〜、ゴメンね…」
しゅんっとしてしまったヘンリーの肩をガイアは抱き寄せる。
「いや、謝る必要はない」
「じゃあ、戻ろう?」
「いや、大丈夫だろ。もう少し二人っきりでいるってのは嫌か?」
「嫌じゃないけど、どうして?」
腕の中で上目遣い。女だと知っているからだろうか?つい、どきっとしてしまう。
「戻ってしまうと、こうやって一緒に居れないだろうからさ。ほら、お前は男として軍に居るわけだし…」
「そっか〜、でも天幕なら大丈夫じゃない?」
「天幕か…」
確かに天幕の中なら何をしてても問題は無いのかもしれない。
聞き耳を立てたり、覗く奴なんて居ないだろうし…。うん、多分そんな奴は居ない…。居ない…と、思いたい。
「男が二人でずっと天幕に籠っているっていうのは、どうなんだろうな…」
「いいんじゃない〜?男女がずっと籠ってたって、どうなんだろう〜?って思うよ〜?」
「まあ、確かにそうかもしれないな…」
同性と異性じゃ、天幕でやってる事の印象はかなり違うと思うが…。
て、やってる事って何だ?
「…」
「…」
多分、同じ事を思っている。
だから黙りの時間が流れていく…。

さて、どうしたものか。

この前の続きをしようだなんて、思ってても口にしていいものかどうか…。

「いいんじゃない〜?」
「え?」
いきなりヘンリーから言葉を返されてしまったが、思っただけで口には出していないはず。
だがヘンリーの言葉は、それ以外の返事に当てはまるとも思えないが…。
「せっかく二人っきりなんだし、僕も今日は大丈夫だよ?あと〜あの日の事が忘れられなくて、今もドキドキしてるんだ…」
「あ、ああ…なるほど」
なるほどってなんだと、自分に脳内で突っ込みを入れる。
自分だって、ヘンリーの身体に触れてからずっと、もやもやしてたんだ。しかも中途半端で終わってしまった行為…。
続きはいずれと思ってはいた。そして、まさにこの時だとも思っていなかった訳ではない。だから、心の中で自分に問いかけていたんだ。
「なるほど〜?」
「い、いや、じゃあ…改めて言うのも変だが、今日はここで一泊しようかって、まあ野宿だけど…」
「あはは、誰もいないし別に気にしないよ〜」
「気にしないでいられるのは、これから先もうないかもな…」
「戦争が終わるまでだよ〜」
「確かにそうだな」
「早く終わると良いね〜」
「だな」
日も沈み、星がきらめきだした夜空を見上げ、戦争が終わった平和な日々を思い描いてみる。
それは今まで考えられなかった平和な日々だ。
ヘンリーと一緒に毎日楽しく暮らす日々。
もしかしたら新しい家族が増えているかもしれない。
そんな日々を想像していしまう。

まだまだ戦争は続くだろうが、幸せな未来はそう遠くはないだろう。

この軍に居れば戦争は終わり、平和がやってくる。

そう信じている。



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おわり。

エビエビアンケからのリクです。
ヘンリー女体の続きです。
がいあのよあけとしあわせに〜の間くらいです。いや、よあけの数日後で、しあわせに〜の数か月前ってところでしょうか…。
何気に女体は続き物で、4作目です。
楽しんでいただければ幸いですが、はたしてどうか…。

相変わらずの読みにくい分ですが、少しでも気に入ってくださると嬉しく思います。

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