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銀 魂:銭湯。
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銭湯2。
続、銭湯。寸止め劇場編です。(なんだソレは)


今日の仕事も無事終わり、いつものように食事も屯所の食堂で済ませる。
そして各々自由な時間を過ごす。

「お疲れさまです。副長」
「おう、おつかれ」
山崎に声をかけられ、土方は足を止めた。
その手には、お互い風呂道具を抱えている。
「今日も銭湯ですか?」
そう聞かれ土方は「ああ」とだけ答える。
「沖田隊長とですよね?」
「ああ」
まったく同じ返事をもう一度する。
「やはりそうか」と呟き、山崎は土方に近づき小声で話しだした。
「副長。毎日二人っきりで銭湯ってヤバイですよ…」
耳元でそう言われ、土方は「は?」と声が出た。
「分からないんですか」と呆れた表情で山崎は言う。
「屯所の風呂場使わないで、皆の居ない所で二人っきりでですよ?変な噂たってますよ…」
「はあ?」
思わず大きな声が出てしまった。
変な噂って何だ?と思ったが、すぐにそれは理解した。もちろんそんな事はしていない。噂は噂でしかない。
だが、たかが銭湯へ一緒に行っただけで?と、そこは理解出来なかった。
「屯所の風呂を利用した方が良いんじゃないんですか」
そう山崎に言われ、考え込む。
だが屯所の風呂の利用は総悟がまだ避けている…。
「いや…俺は良いんだが、総悟が入りたがらないから」
山崎から軽蔑の目で見られている事に気づき、慌てて弁解をする。
「違う!そういう意味じゃねェ!!入りたがらない理由は俺も知らないんだ!聞いても言わねーから。とにかく、そんなんじゃねーからな!」
「だからって、副長まで一緒に銭湯に行っちゃあ…」
「…。なんとなくだ。流れ的に」
最初は心配して一緒に銭湯に行ったが、いつの間にか銭湯に行くのが日課になってしまっていた。
その間、何度か「聞いてしまった噂話」を聞き出そうとしたり、屯所の風呂にも誘ったが、状況は変わらなかった。
「じゃあ、沖田隊長が屯所の風呂に入りたがらないのは、聞いちゃったからなんでしょうね…」
山崎がボソっと言ったのを土方は聞き逃さなかった。
「どういう事だ?何を聞いたんだ?」
聞かれて山崎は言いにくそうにしている。
土方の方は言うまで山崎を風呂場に行かなさない気だ。
混む前に屯所の風呂に入りたかった山崎は、しょうがないなと話しだした。
「多分ですよ…沖田隊長は…」
「…」


「大人二人」
銭湯に着き、いつものように土方は番頭に金を渡して言う。
最近はおつりが出ないように小銭を用意するようになった。
「土方さん。たまには俺が払いますよ」
「いいって言ってんだろ。今度回数券でも買っとくか」
「んじゃそれ俺も買いますぜ」
などと会話をしつつ脱衣所を出て、いつもの手順で風呂に入る。
最近は沖田も土方と一緒に一般風呂に入っている。
だが、すぐ火照ってしまう沖田の肌を見て、土方はいつも同じ事を訊いてしまう。
「熱くないか?」
「だいぶ慣れましたぜ」
「そうか。少し大人になったって事だな」
「そりゃどーも」
嫌な顔をするかと思ったが、特に変わった様子は見せなかった。
それならと土方は話す。
「俺を信じてるって意味。分かったぞ」
「?何ですか。いきなり」
沖田は土方の方を見た。その目は少し相手を警戒しているように見える。
気にせず土方は続ける。
「確かに俺はお前をそういう目では見てないからな」
「…。土方さん。それ何処で聞いてきたんですかィ」
沖田はさらに警戒心を強める。
「ただ噂が俺の耳にも入ったってだけだ」
「…」
「さらに俺と二人で毎日銭湯行くから、噂に尾びれが付いたぞ」
沖田は溜め息をつき、ウンザリした顔をした。
「屯所は女子校かよ。どんだけ噂話が好きなんでィ…」
「まぁ、逆だな。男しかいねェからだろ。女が数人居たら違うんだろうよ」
もう一度、沖田は溜め息をつく。
その溜め息を見て土方は訊いてくる。
「どうする?銭湯通い続けるか?それとも慣れるか?」
「慣れるって?」
沖田は意味が分からず土方の言葉を反復する。
その土方は沖田をじっと見つめて言う。
「エロイ視線に。そして、屯所の風呂に戻る」
「エロ…。露骨に言うんじゃねーや」
湯船の中で土方は沖田に蹴られる。
さすがに水圧で痛くも痒くもない蹴りだ。沖田も本気で蹴ったわけではなく、その動作は遅く脚を掴まれる。
脚を掴まれバランスを崩し湯船の中に落ちた。
「ぶはっ!何するんで…あぶねーじゃねェか!」
湯船から顔を出し土方を睨みつける。
その土方の顔は、脚を掴まれているせいで結構な至近距離にある。
「脚。離してくだせィ…」
「なるほどな。分からなくもないな」
土方は沖田の言葉を無視して勝手に納得する。もちろん脚を捕まえたままだ。
「なにが…」
嫌な予感がして土方から体を離そうとしたが脚を掴まれているため距離を取れない。
それどころか掴んでいた土方の手は脚の付け根の方に移動してきて、さらに距離を縮める。
「ちょっ…そこは…」
顔を近づけて土方は言う。
「これで慣れたか?屯所の風呂は俺が付き添ってやるよ。鬼の副長が一緒なら、んな目で見てこねーだろ」
「わ、わかったから。離れて…」
「本当に慣れたか?」
慣れる事じゃないだろ!と沖田はツっ込みを入れたかったが、それどころじゃない状況に焦りが出る。
どう言えば土方が体を離してくれるか…。取りあえずと口を開く。
「土方さんは、そういう目で見てないってさっき言ってたじゃないですかィ…」
「さっきはさっき、今は今だ。アイツらお前の事良く見てんな…」
言いながら沖田の顔や体を至近距離で眺める。
「近すぎるって…。他に人が入ってきたら変に思われる…」
「湯船ん中じゃわかんねーだろ」
「な…!?何考えてるんでィ?」
離せと湯船の中で抵抗しようとするが、脚の付け根を掴まれている手が気になって無理に動かせない。
変に動くと一番触れて欲しくない所に土方の手が行きそうな気がする…。
「噂だ何だってくだらねェな。事実にして堂々とするか」
「はあ?事実にしたらヤバイだろ?名実ともに変態じゃねーか!!」
「開き直りも肝心って事だ」
そう言い、沖田の心配していた所に手を移動させる。
「やっ、ちょ…。ない、それはないって!」
必死に抵抗するが、どんどん土方のペースにのまれてゆく。

「悪ィな総悟。他の奴らに持ってかれるんだったら、俺が頂くわ」
「…。させるわけないだろ…。アンタ以外には、やらせねェ自信ありますぜ…」

貸し切り状態の銭湯で、二人は噂を事実にした…。



翌日。

屯所の風呂場は相も変わらず混んでいる。
その脱衣所に今日は土方と沖田がいた。

浴場の混み具合を確認して沖田は言う。
「土方さん。もう何個か風呂場を設置するとか、シフト制にして入る人数制限するとかしたらどうでィ?」
「どこにそんな予算があるんだ?誰がそのシフトを管理するんだよ?」
「フォロ方さんしかいないでしょ」
「誰がフォロ方だ」
風呂の引き戸の前で下らない会話をしていると、後ろから山崎が声をかけてきた。
「あれ。銭湯行かないんですか?珍しいですね」
「ああ、山崎か…」
土方は気まずそうな顔をした。
その様子を見て、沖田がかわりに答える。
「銭湯は立ち入り禁止になりやした。土方さんのせいで」
「おま…。言うなよ…」
「事実でしょ。しょーがねーから、狭っ苦しい屯所の風呂で我慢でさァ」
沖田はそう言って風呂場に入って行った。
土方もそれ以上は何も言わず後に続く。

閉まった引き戸を眺めて山崎は独りごちる。
「銭湯で何したんだよ…アンタら…」




ーーーーーー
おしまい。

汚しちゃイケない公共の場が…。
どうも土方さんは、いつも欲情の塊に…。


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