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銀 魂:沖田誕生日2013
絵と文とか

銀魂

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※去年の沖田誕生日から続いています。
糖度は低め…。
なんとな〜く、沖田目線かも。




「最悪…」
襖の隙間から差し込む日差しが顔に当たり目が覚めた。
身体を起こそうとしたが腰に手を回されている事に気づき、大きな溜め息をついてから隣で寝ている奴の腹をグーで殴る。
「いつまで触ってるんでィ、離しやがれッッッ!!」
「痛てえ…。起きて早々、騒がしいな」
「誰のせいだと思ってるんでィ。散々な誕生日にしやがって…」
隣で余裕かまして寝そべってる奴が腹立たしく睨みつける。
「最高の間違えだろ?」
さらにそんな事をドヤ顔で言われると、頭の中の何かが切れそうになった。
「は?楽しかったのはアンタだけだろ」
「気持ち良い声出してたのは何処のどいつだ?」
身体を起こし煙草を口にくわえ、片手で器用に火をつけながら、相変わらずのドヤ顔を見せてくる。
プツンっと切れた音が頭の中に響き、包帯が巻かれた腕をおもいっきり蹴飛ばす。
「一回死ねッッッッッッ!!!!」
「痛ッッッッッッッ!!!!」

「おーい。起きてるのかー?総悟もそこにいるのかー?」
廊下から声がして、部屋の前で止まる。この声は近藤さんだ。
「ヤバイ」
腕の激痛を我慢して、まだ攻撃を仕掛けようとする沖田に頭から布団を被せて押さえ込む。
「おーい?トシ、怪我は大丈夫かー?」
「あ、ああ。問題ない」
「今日は非番だろ?騒いでないで、ゆっくり休めよー」
「ああ」
「…」
足音が遠のいて行くのを確認して、布団を押さえる力を緩める。
「総悟、もういいぞ」
布団の中から沖田は顔を出し、不満たっぷりに土方を睨みつけた。
「いいぞじゃねェや。だから、屯所はイヤなんでィ…」
「じゃあ、どっか行くか」
「は?」
「いいから、支度して行くぞ」
「土方さん。アンタ、俺の言ってる意味分かってねェだろ…」
そう言葉を返したが、返事は返ってこない。
布団から出て支度を始める土方を止める気にはなれず、横になったまま着替えるのを眺める。
「いつまでそうしてるんだ?早くしろよ」
「だりィし、めんどくせェ…」
「じゃあ、そのままでいろ。俺が着替えさせてやる」
「馬鹿じゃねーの?行くわけねェだろ。屯所ですんのが嫌だって言ったんでィ」
「ああ、分かってる」
何が分かってるんだ?と、突っ込みを入れたかったが、敢えて黙る。
別に一緒に出かけるのが嫌な訳じゃない。言い返すより、このまま言いなりになって支度をするのが、一番楽な気がしただけだ。

7月の日差しが強く照りつけてくる。
こんな日は部屋でゴロゴロしていたい気分だが…。
「とりあえず飯食うか。腹減ってるだろ」
「…別に」
まだ腹が減るほど動いてはいない。そして、動く気もない。
土方は一軒の洋食屋の前で足を止め、数歩遅れて歩く沖田の方を振り向く。
「ほら、入るぞ」
「へい」
店のドアを開けて、沖田を先に通してから土方は中へ入る。
レディーファーストのつもりか?と、微妙な表情で土方をチラっと見た。
土方は特に気にする様子もなく、当然というような表情をしている。もちろん、レディーなんかじゃないし、なんか癇に障る…。

ウェイトレスに案内され、席に着いてメニューを眺める。
「好きなの頼めよ」
「言われるまでもねェや。ナポリタンで」
「随分庶民的だな。もっと良いもん頼めよ」
「今、ブームなんですぜ。ナポリタン」
好きなの頼めって言ったのは、どこのどいつだよ?と、口には出さないが、頭の中で突っ込みを入れる。
「へえ、初耳だな。じゃあ、俺もソレで」
「大した興味もねェくせに…」
つい聞こえるかどうかくらいの声で愚痴ってしまう。
いつもの事だが、ひとつひとつの言動や態度が気に食わない。だが、嫌いな訳じゃない

悶々と頭の中で愚痴っていると、注文の品がテーブルに置かれる。
おもむろに土方が食べ始め、沖田もフォークを手にした。
「土方さん。マヨネーズはどうしたんで?」
「忘れた」
「店の人に持ってきてもらいやしょうか?」
「いや、いい。お前の誕生日だし、気にすんなよ」
たまに気を利かすと、すぐコレだ…。やっぱり、気に食わない。
「おや?気にしてたんですかィ?犬の餌だって事」
だから、つい憎まれ口を叩いてしまう。
「誰もそんな事言ってねーだろ?いつ俺が自分で犬の餌だって言ったんだよ!!!??」
「今さっき」
「…、いいから食べるぞ」
もっと言い返せば良いのに…。
もう何を聞いても、不満しか出てこない。

もちろん土方のおごりで食事を終え、店を後にする。
すぐ土方は次の店に足を向けたが、沖田には何処に向かっているのは当然分からない。
すかさず声をかけて足を止めさせる。
「何処行くんで?」
「誕生日だからな。当然ケーキを食べに行く」
何が当然なんだと、呆れた顔を土方に向けた。
「飯食ったばかりで?少しは胃袋と相談したらどうでィ」
「入らないか?」
「もう少し消化してからにしやせんか?」
「そうか、じゃあ…」
「そのへんの公園で良いですぜ」
土方が考えを口にする前に、沖田は言葉を重ねる。
どうも土方の言葉を待ってられない。いや、待ってられない訳じゃないが、言いなりになってしまうのは何かムカツク。


公園に着き、空いているベンチに座って一息つく。
土方の隣に座り、大きな溜め息をついて沖田は公園を見回した。
特に変わった事はなく、遊具で遊ぶ子供が数人はしゃいでるだけだ。
そんな光景を見ても喋る事はなく、黙って公園を眺め続ける。
「おい、総悟」
不意に横から呼ばれ、声の主に視線を移す。
「欲しい物とか、何か無いのか?」
「別に…ていうか、誕生日プレゼントは買ってあるって言ってなかったですかィ?」
そう記憶を辿って答える。そういえば貰っていないな…というか、渡す気があった事に驚いた。
「ん?ああ…そうなんだが」
「それで良いですよ」
「いや…」
「いやじゃねーよ、俺がそれで良いって言ってんじゃねーか」
またコレだ。そんなに俺を否定したいのか?それとも、言いなりにならないのが気に食わないのか?
どっちにしろ、「いや」と言う土方が気に食わなく腹が立つ。
「いや、もっと喜んでもらえるような…」
「土方さん。俺は何を貰っても、きっと喜びませんよ?」
どう思われてるか考えた事なんてないに決まってる。物で喜ぶなんて、随分軽くみられたモンだ。
「はっきり言ってくれるなよ…。たまには、そういう顔を見せろ」
「嫌です」
「…やっぱり、嫌いか?俺の事…」
「嫌いですねィ」
訊かれりゃ当然そう答える。分かってるくせに訊くんじゃねーやと頭の中で言う。
「そうか、じゃあ帰るか…」
「ケーキは?言った事は実行しなせィ。ほら、行きやすぜ」
「…良いのか?」
「分かんねェ野郎だな。本当に嫌いな奴と、あんな事やそんな事しますかィ?甘いケーキ食いながら、産まれてきてくれて有り難う。のひとつでも言いやがれ」
「ばッッ!!誰がそんなハズカシイ事言えるかッッッ!!!!!」
何を狼狽えてるんだと、呆れた視線を土方に向ける。
「つべこべ言ってねーで行きやすぜ。大人なんだから言った事はちゃんと実行しないと?俺を喜ばせてみやがれってんだ」
あんな事やそんな事なんて今さらな事で、布団の中で余裕かましてたヤツは何処へ行ったんだと突っ込みを入れたくなる。
まあ、そこがこの人らしいといえば、それまでなのだが…。


「何処のケーキがウマいんですかねィ?」
「あの店なんかどうだ?」
「良いですぜ。あそこは団子屋ですけどね」
「マジで?」
天然なのか?フリをしているだけなのか?
こっちの機嫌を伺っているようにも思え、これまた腹立たしい…。

「看板見えてないんですかィ?」
「ケーキもあるかもしれないだろ…」
「別に団子で良いですよ」
そう言って、沖田は先に店の中に入っていった。

別にケーキじゃなくても喜べる。
まったく気持ちが分からない訳じゃない。
自分も好きだって、ちゃんと分かっている。

だが、やっぱり腹立たしい…。



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おわり。

去年より糖度が下がったような感じに…。

買ってあるというプレゼントの中身は謎のままです。
もう流石に決めれません…。

と、とりあえず、お誕生日オメデトウ!

このような作文にお付き合い頂き有り難うございました。

誤字脱字は…無いと良いな〜…


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