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銀 魂:続:沖田誕生日2015。 |
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沖田誕生日2015(2012〜2014の後日談) 好きな奴から貰うソレは、大抵の人なら喜ぶだろう。 もちろんその中に自分も含まれる。 この気持ちに同性異性は関係ない。愛のカタチが大事なんだと思う。 だからプレゼントされて素直に嬉しい。その気持ちに偽りは無い。 だが…… 「どうやって持ち歩くかだ」 そう小さく呟き、制服のありとあらゆるポケットに手を突っ込んでみる。 何気ない生活を何気なく平穏に過ごすだけなら、ポケットの中で十分だろう。 だが、自分の置かれた境遇では、そうはいかない。 ポケットなんかに押し込めただけじゃ、安心できるわけがない。 奴さんと剣を交えれば、衣服は乱れる。それどころか、衣服が破れポケットから飛び出す可能性だってある。 あんな小さなモンを現場で落としたらなんて、想像しただけでぞっとする。 自分ですぐ拾えれば問題ないだろうが、高い確率でそれは叶わないだろう。なんせ、戦闘中だ。 だからと言って、その場を鎮圧した後じゃ遅すぎる。誰に拾われるかなんて分かりゃしない。そして誰の物だと問われ、最悪は遺留品扱いだ。 名乗り出ることも出来ず、愛する人から貰ったソレは持ち主不明となり破棄されてしまうだろう。 「ポケットが駄目なら…」 財布の中じゃ簡単に落とすし、安易に中を開けれなくなってしまう。コソコソ開かなきゃいけない財布なんて、どんだけ面倒くさいんだ。 じゃあ糸でも付けて首からぶらさげるか? 制服ならスカーフもあるし、そう簡単に衣服の外には出ないだろう。 糸が切れる可能性があるなら、もっと丈夫な鎖とか…。 「鎖っつーとなんか、SMっぽいな…」 ぶつくさ言いながら土方から貰った指輪をポケットの中で、こねくり回す。 「っと」 「おっと、悪い」 ドン、コツン、バサバサ… 後ろから何かにどつかれ、思わずポケットの中から手を出してしまう。 そしてその拍子に、握っていた指輪を落としてしまった。 それは音で分かり咄嗟に床を見たが、床は書類で埋め尽くされていた。 「総悟、悪ぃ。怪我はないか?」 「大丈夫でさァ、近藤さんこそ大丈夫ですかィ?すごい書類の量ですけど」 「ああ、平気だ」 言いながら近藤は書類を掻き集める。 沖田も指輪を探すため、散乱した書類を拾う。近藤さんより先に指輪を見つけ出さなければ…。 「お、何だコレは」 「!!」 どうやら願い叶わず、近藤は拾ったそれを沖田に見せた。 「総悟、この指輪、お前のか?」 「違います。…けど、俺のです」 「ん?」 「……」 咄嗟に違うと口をついて出た言葉に、それじゃあ駄目だと正直に自分の物だと付け加える。 しかし、それ以上は何も言うことが出来ない。 近藤さんに言える分けないじゃないか…。 「そうかそうか!!わっはっはっ!!」 「!?」 無言で突っ立ていると、近藤は沖田の背中をバンバン叩き、指輪を沖田の手のひらに乗せた。 「水臭いぞ、総悟!まさか、俺やトシが先を越されるとはな!!なんで言ってくれなかったんだ?プロポーズする前に紹介くらいしてくれよ?お前を好いてくれる娘さんだ。反対する奴はいないぞ!いやあ、俺も早くお妙さんと…」 「ま、待ってくだせィ、そうじゃないんです!」 「ん?ま、まさか…、悪い…総悟。無神経なこと言ってしまったな。今回は残念だったが、良い娘さんはまたすぐ…」 「勝手に話しを進めないでくだせィ。これ、土方さんの持ち物ですぜ。買いに行くのが恥ずかしいからって、俺が代理で買って来たんでさァ。だから、俺は女も居なきゃ振られてもいませんよ」 咄嗟に付いたウソは、嘘に嘘を重ねた特大のデコレーションだ。 土方さんから自分が貰ったなんて口が裂けても言えない。自分の腹心が同性愛者だなんて知ったら、近藤さんはどんな顔をするだろうか? 俺や土方さんの人格が疑われるのは別に構わない。だけど局長である近藤さんの立場を考えると、やはり口外は出来ない。しちゃいけないんだ。 だから、嘘に嘘を重ねるしかない…。 「え、なになに!?トシの!!??じゃあ、プロポーズすんのは、トシ?」 「そうです」 「総悟は、相手の娘さんのコト知ってるのか?」 「まあ…、強くて気だての良い人ですよ」 「ほう、俺も会ってみたくなったな」 こんな素直な馬鹿に、どんな面で言えば良いってんだ…。 近藤さんには余計な心配をかけたくない。こんなアホみたいな面倒ごとをこの人に持ち込む訳にはいかない。 このお人好しな馬鹿は、俺たちの唯一無二の局長なんだ。 「おい、なにバカな事言ってんだ」 何処から沸いて出てきたんだ、この人は。て、廊下からだが、タイミングが悪すぎる。 特大デコレーションのケーキが潰れてしまうじゃねーか。 「おお、トシ!今、お前の話しを…」 「土方さん、遅いですぜッ!」 「何がだ?仕事はもう終わって…」 「男としての仕事が残ってるでしょう?デートに遅れたら、フィアンセがカンカンに怒っちまいますよ」 ならば潰れる前に更なるデコレーションを重ねるだけだ。 「ほら、早く!俺が格好良くコーデネートしてあげますから!」 「な、ちょ?こら!!押すな!!」 「んじゃ、近藤さん失礼します。このプロポーズ大作戦が成功したら、ちゃんと土方さんの彼女を紹介しますんで」 「何でお前が!?」 「俺が仲人だからでしょ!!」 「はあ!?」 「早く部屋に入りやがれッ!!」 「あだッ!!!」 パニクっている土方の背中をおもいっきり蹴飛ばし部屋に押し込み、近藤さんに任せてくださいと目で合図を送る。そして、スパンっと沖田は襖を閉めた。 もちろん、これで丸く収まるなんて思っちゃいない。 この場をやり過ごすのに必死で、近藤さんの顔は見ていないが、多分疑っているだろう。 土方さんが女性とそんな関係になったとしても、自分に協力なんか絶対に求めない。そんな事、近藤さんだって分かってる。 今、襖の向こうで近藤さんは何を考えているだろうか…。 「はあ…」 畳に突っ伏していた土方は起き上がり、トレードマークの煙草に火をつけ口にくわえた。 そして煙草に火をつけつつ溜め息まじりに言った台詞は予想通りの言葉だった。 「何考えてんだ。お前は…」 「それは俺の台詞です。ちゃんと口裏合わせてくださいよ」 「あんな嘘突き通せる分けないだろ」 「だからって本当のことなんか言えるわけないでしょうが」 言った本人だって、あんな嘘を突き通せるなんて思っちゃいない。 思っちゃいないが、近藤さんに本当のことが言える訳がない。 「言ってみなきゃ分かんないだろ」 「いくら何でも幻滅されますよ。近藤さんの許容範囲を超えちまいます」 「何でそんなことが分かるんだ?お前は近藤さんじゃないだろ」 「違うけど、困らせたくないんです。部下の不祥事で、ここまで築き上げてきた真撰組を壊したくないんですよ」 近藤さんの真撰組に対する思いは、土方さんだって知っているはずだ。もちろん、自分も土方さんも同じ思いはある。だけどきっと近藤さんには敵わないだろう。 だからこそ、壊したくないんだ。近藤さんの大事な真撰組を。そして大事な仲間を。 「これの何処が不祥事だって言うんだ?ただ恋愛してるだけだろ?その相手が同僚で同性だった、それだけの事じゃないか」 「ずいぶん楽観的な考え方ですね。泣く子も黙る真撰組がですよ?ホモですよ?屯所に男ばかり詰め込んでるからだって笑われるのがオチでしょ。真撰組まるごと軽蔑されますよ」 なのに、この人は分かってくれない。副長がそれで良いのか?やっぱり副長の座から引きずり下ろすべきか…。 いや、現在進行形で引きずり下ろす気はMAXだが。 「それで良いじゃないか、笑わせとけ。近藤さんだってそう言うぞ」 「あんただって近藤さんじゃないでしょ。近藤さんの何が分かるってんだ」 「今のお前よりは分かっているつもりだ。よく考えてみろ、何処まで嘘が通用するか。スッパリ関係を絶てば、近藤さんに何も報告することなく事は収まる。だが、絶てるか?この関係を」 「それは…」 適当な言葉が見つからず、口ごもってしまう。 本当は憎まれ口の一つでもついて困らせたいが…。 「俺は絶つ気ないからな」 「…」 先にそんな事を言われてしまったら、何も言えなくなってしまうじゃないか。 自分だって別れる気なんかない。 「…ずるいですぜ…」 「何がだ?」 そう一言だけ耳元で囁き、優しく頬に手を添え唇を重ねてくる。 気づかなかったが、いつの間にかくわえていた煙草は灰皿の上で吸い殻になっていた。 煙草の残り香が少々気になるが、まあいつものことだ。 ―次の日― 朝起きると、隣で寝ていたヤツはもう居ない。 いつもは仕事に遅れるぞと起こされるのだが…。 時計に目をやると、時刻は午前十時十分。既に勤務時間中だ。 サボりは得意だが、これは土方に仕組まれたサボりであって、素直に喜べない。そして落ち着かない。 落ち着かない理由は、多分ここが土方の部屋だからだろう。 なら自室に戻って2度寝でもするか? 仕組まれたサボりは納得いかないが、これから出勤する気ももちろんなく、真面目に働く気もない。 朝飯くらい抜いても平気だし、昼飯まではまだ時間がある。 となれば、選択肢は無く、2度寝決定だ。 そう決まれば、この部屋に留まっている訳にはいかない。 布団を片してやる気は毛頭なく、枕元に脱ぎ捨ててあった服を着て、あくびをしつつ土方の部屋を後にした。 自室に戻り、ささっと布団を敷いて、ささっと布団の中に潜る。 そして、枕に頬擦りをし、至福の深呼吸をする。 清潔な自室の布団は、なんて気持ちが良いんだろう。 この2度寝は最高に幸せだ。 廊下を歩く足音が耳に届き目を開ける。 どれぐらい寝ただろうかと、手を伸ばし時計を掴み目を凝らす。 時間は午後一時を回ろうとしていた。 「ちょっと寝すぎたか…」 昼飯には少し遅い時間だが、まだ食堂に少しぐらい何か残っているだろう。 腹を擦りながら食堂に入ると隊士の姿は殆ど無く、いつも狭いくらいの食堂が凄く広く感じた。 「これから午後の勤務か…、ご苦労なこって」 誰に言うでもないが小さく呟き、残り少ない飯を釜からよそい、テキトーに味海苔や生卵を手に取る。 そして席に着き、飯をかき込む。 味気ない昼食だが、これはこれで自由な気分を満喫できて好きだ。 なんたって、自由な時間が無限大にあるんだ。いや…無限は言い過ぎだが、今日一日はやりたい放題だ。 「総悟」 「あ、近藤さん…」 飯を頬張りながら振り向くと、そこには心配そうに見てくる近藤の姿があった。 昨日の事が頭をよぎり、つい警戒してしまうが…。 「具合は大丈夫か?」 「ぐあい?」 言われた言葉に、間の抜けた声が出てしまった。 昨日の事じゃないにしても、サボった事を叱咤されると思ったが、そのどちらでもないって…。 「具合が悪いから今日は休みを取ってるって、トシが言ってたぞ」 「あ、あぁ、そうでしたそうでした。もう大丈夫でさァ」 なるほどと脳内で状況を把握する。 ここもまた土方の息がかかっている訳だ。どこまでも仕組まれたサボりだ…。 「まあ、今日一日ゆっくり休んどけ」 「へい」 お膳立てされたサボりは素直に喜べないが、働かなくていいならそれに越した事はない。 「近藤さん、仕事は?」 なかなか席を立とうとしない近藤に、もう一度警戒心を強める。 最初に声をかけて来た時も昼食は持っておらず、何かあるだろうと感じてはいたが…。 まだ席を離れないのは、まだ言いたい事があるからなのだろう。 「ちょいと休憩だ。それより総悟、昨日のトシのプロポーズはどうなったんだ?」 「覚えてたんですかィ」 これが本題なのだろう。 警戒していた事は、大当たりだ。 「当たり前だろ?トシの一大イベントじゃないか!」 「そんな大げさな…」 近藤さんは知る由もないが、自分と土方さんの事な訳で、俺からすれば大げさという印象しかない。 「伴侶を得るかどうかだぞ?大げさな事じゃないだろ?」 「そうですかねェ…」 このご時世、どうも近藤さんの言葉がピンとこない。 祝福され結婚した奴らが、数年後には別れ、新しい家族を得ている事も珍しくはない。 「幸せになれるとも限らんでしょうけどねィ」 「それで良いんだと俺は思うぞ。幸せとともに苦難を一緒に乗り越えてだな、真撰組を支えてもらえれば、俺は安心だ」 「嫁を真撰組に巻き込むつもりなんで?」 「今さらだろ、これからも支えてやってくれ」 「へ?」 今何て言った?誰が誰を支えてやれって? 「よし、休憩終了だ。総悟はトシの部屋でも片付けといてやったらどうだ?」 「は?」 誰が誰の部屋を片しとけって? 「はっはっは、冗談だ。でもまあ、喧嘩ばかりのお前たちだから心配をしてたんだが、心配し過ぎだったようだな」 「いや、なに言って…」 支えるのも片付けるのも嫁の仕事だろという近藤さんの言葉は、間違いなく自分に向けられた言葉だ。聞き間違いなんかじゃない。 ハッキリ言っていないが、ハッキリ言ってるのと何ら変わりがない近藤さんの台詞だ。 すべてお見通し―、関係を理解した上での言葉なんだ。 どうしてバレた?というより、顔色一つ変えない近藤さんをつい不審な目で見てしまう…。 それに気づいているかどうか、近藤はもうひと仕事するかと伸びをして、食堂を出て行った。 「マジでか…。つか、逆に心配するところじゃねーの?」 その後ろ姿を複雑な表情で沖田は見つめ、姿が見えなくなった所で大きく息を吐いた。 つまり近藤さんを理解していたのは、俺じゃなく土方さんだったって訳か…。 少し腹立たしいが、安堵してる自分もここにいる。 反対されるより、こっちの方が良いに決まってる。そんな事は分かってる。分ちゃいるんだ…。 ただ、自分がまだ未熟なんだと、あの二人に言われたような気がした。分かっちゃいたが、やっぱり敵わないんだ…。 「もう少しだけ副長の座は土方さんで我慢してやらァ」 いずれ逆転劇をお見舞いしてやる。理解してくれる奴は居ないだろうが、これと恋愛は別だ。 「なにが我慢してやらァだ」 「っと、土方さん。いつからそこに?」 近藤さんと入れ替わりで入って来たのは、言うまでもなく現役の副長だ。 示し合わせたかのようなタイミングに、つい嫌な顔をしてしまう。 「近藤さんに何吹き込んだんで?」 「人聞き悪いな」 言いながら隣に座り、いつも通り煙草を吹かす。 何一つ動揺の無い仕草がムカつく。 「知ってるみたいでしたぜ。アンタが洩らしたんじゃないんですか?俺たちの関係を」 「んな事言う分けないだろ」 一つ溜め息をつき、また煙草を吹かす。 どうせなら溜め息と煙を一緒に吐きやがれ。 「嘘は突き通せないって言ってたクセに?」 「嫌なんだろ?だから言ってない」 「信じろって言うんですかィ?」 言う気満々だったのは何処のどいつだ?と脳内で突っ込みを入れる。 口に出さなかったのは、言った所で何も状況は変わらないからだ。 「信じたくなきゃ別にそれでも構わない。どっちにしろ知られちまったんだ」 「余裕ですねィ」 「俺は最初から近藤さんに隠す気はなかったからな」 この余裕は何処から来るのか? まあ、バレてしまったし今さらどうでもいいが、近藤さんの反応は予想通りだったのだろう。 俺には近藤さんの考えは理解できないが、土方さんには理解できているんだ。 こういう関係を許せるなんて、良く出来た上司だ。…じゃなくて、真撰組がそれじゃ駄目な気もする。でもまあ、こっちの方が都合がいい。 許された関係なんて、最高の結果じゃないか。 「ね、土方さん」 「ん?」 煙草を吹かしながら、不思議そうな表情をこちらに向けてくる。 いいかげん煙草をしまえ。 「良い上司を持ちましたね」 「まったくだな」 今度は上を向いて、少し呆れた表情で煙草を吹かす。 早く煙草をしまえってんだ。 「近藤さんは土方さんと違って器がデカイですねィ」 「まあ、否定はしない。だが、その近藤さんはストーカーだからな…」 ここでやっと煙草を口から離し、灰皿に押し付ける。 何気ない仕草だが、少し気分が晴れた自分に気づく。 「不祥事だらけの真撰組…か」 「ま、今さらだろ」 「ですねィ」 ニッと笑ってみせると、そっと首に土方の腕が回された。 煙草を吸う土方さんは嫌いじゃないが、やっぱり吸っていない方が良いなあなんて思ってしまう。 だから煙草が口からはなれた時、顔が緩むんだ。 その理由は既に分かっている。 「ここ、食堂ですぜ」 「今は俺たちだけだ。キスぐらい平気だろ」 こういう事なんだ。 なんだかんだで、やっぱり触れ合っていたい。 それには煙草が少し邪魔で…、 だから煙草がはなれると嬉しくなってしまう。 こう見えて独占力が強い。…なんて自己分析をしてみる。 まあ、男相手に指輪を渡してくる土方さんには到底敵わないが…。 --------------------------- おわり。 ハッピーバースディ!沖田!! 2012年から続いた誕生日ネタは、今年もまだ続いていた。 近藤サンの公認の仲になり、真のハッピーエンドです(多分) 相変わらずグダグダ言って素直じゃない沖田さんです。ウチの沖田サンはこんな人…。 それをすべて許せるの土方さん。 ウチの二人はこんなんです。 ネタ的には誕生日ではないのですが、2012年の誕生日の日から続いているという事で、誕生日という事にさせていただきます。 相変わらず読みにくいとは思いますが; 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 最後まで読んでいただき有り難うございます! #UP |