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FireEmblem 覚醒:軍師と私のエトセトラ 前編
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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入れ替わりネタ。
タイトルどうにかしろよ!?と思います(いつもなんですが…)
サーリャは既婚者です。旦那は誰かは不明です。
出だしのヘンリーは男らしいです(多分)




「憎いわ…」
「ん?」
物陰から恨み節が聞こえ、持っていた大量の書物の隙間から、声のする方を見る。
「サーリャ〜。なんか怖いんだけど〜…」
「…当然よ。ヘンリー、貴方を恨んでるんだから」
「ええ〜?」
何か恨まれる事をしただろうか?と、足を止めて考え込む。
物陰から出てきたサーリャは手にしたトカゲのようなモノを見つめて口を開く。その姿は、かなり禍々しい…。
「貴方、ルフレの手伝い中よね…」
「うん。書物の整頓のお手伝いだよ〜」
よいしょと書物を持ち上げて、ヘンリーは答えた。
「なぜ、私じゃなくて、貴方なのよ…」
「ん〜。サーリャが女の子だからじゃない?僕の方が背が高いし、力もあるだろうからね〜。書物は分厚くて重いの多いし、本棚の上はサーリャの身長じゃ届かないよ〜」
野営地を移動するたびに、必要な書物を棚に並べ直す。天幕は広さに限りがあり、本棚は天井まで届きそうなくらい高い。
移動後の整理整頓は毎度の事だが、かなりの重労働で男手無しでは厳しいだろう。
「ずるいわ…」
だが、サーリャの恨み節は続く…。
「ずるくないと思うけどな〜…。確かに、魔道書とかの知識はサーリャもあるけど、体格はしょうがないよ〜。サーリャだけじゃなくて、リヒトやミリエルもだよ?」
「自慢してるの…」
「ええ〜?どうしてそうなるの…。サーリャが出来るなら、僕は代わっても良いんだよ〜?」
「じゃあ、かわって」
「サーリャ、これ持てる?」
そう言って、ヘンリーは持っていた書物をサーリャに突き出す。
目の前に出された書物で、サーリャの視界は本だらけになってしまう。
そして、ヘンリーからはサーリャが書物で隠れて見えなくなり、その陰でサーリャは不適な笑みをこぼす。
「ふふ…、そういう事じゃないわ。私と替わりなさいよ」
「え?」
突き出した書物を横にずらして、ヘンリーは不審な目でサーリャを見る。
「そうよ、それが良いわ。ヘンリー、私と入れ替わりなさい。私がルフレの手伝いをするわ。貴方の身体なら文句はないのでしょう?」
「ええええ?そんなの困るよ〜」
「どうしてよ。かわっても良いって言ったじゃない」
「そういう意味じゃないよ〜。中身かわっちゃうの困るよ〜」
「何が困るの。ちょっと身体を借りてルフレの手伝いをするだけよ」
自分の事だけしか考えていないサーリャの言動に、ヘンリーは何も言えなくなってしまう。
困るのは確かで理由を伝えたい気持ちもあったが、きっとサーリャは受け入れてはくれないだろう。
彼女はルフレしか見えていない。ヘンリーが困る理由なんて聞く気もなければ、同情する気も無いに決まっている。
「うーん。その間、僕はどうするの…」
「好きにしてて良いわ」
「そう言われても〜…」
「なによ、不満?」
「そうじゃないけど〜…」
「触っても良いわよ。大サービス」
そう言うサーリャの身体を見つめる。
確かに普通の男なら大喜びするだろう。サーリャはスタイル抜群だ。胸が大きく、腰もくびれていて、お尻の形も良い。そして、女の子独特の柔らかそうな身体をしている。
でも、別に触りたいとは思わない。女性に興味がないとは言わないが、今は女性より…ひとりの男性に興味があって…。
「ええと、そう言うのは別に…」
「ほら、さっさと呪術始めるわよ」
持っていた書物を下に置くように指示し、サーリャはトカゲのような死体を床に置き、その周りを指でなぞる。
「用意してたの?」
「なにかしら、呪おうと思ってたから…」
「サーリャ、怖いよ〜…」
「ふふ、ふふふふ」
サーリャは不適な笑みをし、邪術を唱え始める。
それをヘンリーは不安な表情でじっと見つめていた…。

サーリャの呪文とともに、トカゲのような死体から煙が溢れ出て、辺りを包み込む。
「…」
黙っていると何とも言えない感覚が身体を襲う…。
ヘンリー自身も使った事のある呪術だが、他人に使われるのとでは身体に感じる違和感が違う気がした。
「う…」
「成功…ね」
入れ替わった自分の身体を眺めて、サーリャは満足そうに言う。
立ちこめていた煙は、何処かへ吸い込まれるように消えていき、トカゲの死体も無くなっていた。

「…この書物をルフレの所に持って行けば良いのね」
「うん〜」
姿の入れ替わった二人は、それぞれの持ち物を交換し、お互いの姿を確認する。
そして、ヘンリーは大きく溜め息をついた。
「はあ、サーリャは本当にルフレの事が好きなんだね〜」
「当然よ。私が興味あるのはルフレだけ。ウフフフフ」
ヘンリーの姿で彼とはまた違う微笑みを浮かべ、サーリャは去って行った。

「…。サーリャ、旦那さん居るんじゃなかったっけ〜…。まあ、良いけど〜」
さて、僕はどうしようかな?と、ヘンリーは着慣れない服の裾をいじりながら、もう一度溜め息をついた。



食事時ではないが、調理場として使われている天幕の周りをうろついている人影があった。
両手で紙袋を抱え、中の様子を伺っている。
「おはよー!ノワール。菓子作りでもするのかな〜?」
その後ろ姿に、能天気な声が響く。
「ひいいぃぃい!?」
ノワールと呼ばれた女の子は、振り向き悲鳴を上げた。
そして紙袋を両手でギュッと抱きしめ、怯えた目で声をかけてきた相手を見る。
「か、母さん…なの?笑顔が眩しすぎて怖いわ…」
「母さん?ノワールはおもしろいことを言うね〜。あはは〜」
「そ、そんなっ!母さんが…壊れた!?明るい母さんなんて、この世の終わりよーーーっ!!!!」
持っていた紙袋を放り投げ、ノワールは悲鳴を上げて立ち去ってしまった。
ノワールの母は…サーリャなのだが、今現在サーリャの中身はヘンリーだ。
ヘンリーは小首を傾げて、地べたに放置された紙袋を眺めた。落とされた衝撃で紙袋は無惨に破け、中の物が周りに散乱している。
「あ〜あ、タマゴが割れちゃってるよ〜…」


ノワールが覗いていた天幕の中に、一人の男がいた。
黙々と菓子作りに没頭していたが、外から聞こえる声で手を止める。
「…悲鳴か?」
注意深く聞き耳を立ててみるが、それ以上の音は聞こえず、まあいいかと作業を再開させた。

「ガイアー!」

「ん…」
名前を呼ばれて男は生地を練る手を止め、不審な目で天幕の入り口を見た。
「さっきの悲鳴は、お前が原因か…」
「菓子作りを見に来たよ〜」
警戒されても気にする事なく、入ってきた人物はガイアに躊躇なく近づいて来る。
「え、お前が?めずらしいな…」
「そうかな〜?」
「お前を調理場で見た記憶が一度もないんだが…」
「ん〜?」
首を傾げて、さらに近づいて来る。
そして、少し距離を取ろうとするガイアの袖を掴んで、開くはずの距離を縮めてきた。
「ガイア、なんで逃げるの〜?」
「そりゃ逃げるだろ…。あまり近づくな」
「どうして〜?」
不満そうに口を開き、今度はぴったりくっついて来る。
「ぬあっ!胸、押し付けてくんなっ!!」
「変なガイアだね〜?」
「変なのは、お前だろ!?」
肩を掴まれ突き放されて、不満たっぷりにガイアを見る。
「冷たいな〜」
やっと距離を取る事ができたガイアは、サーリャ?に文句を言う。
「何なんだよ、一体?こんな所、お前の旦那に見られたら、俺は殺されちまうぞ…」
「あっ!!!」
ポンッと手を打って、声を上げる。
そしてまたガイアに詰め寄って口を開く。
「そうそう、忘れてたよ〜。僕だよ、ガイア。僕、ヘンリーだよ〜」
「はあ?頭、大丈夫か?サーリャ…」
理解出来ないという顔をして、ガイアもまた距離を取る。
「だから、ヘンリーだよ〜。サーリャに替わってって頼まれたんだ」
「かわってって…、どういう事だ?」
「呪いだよ〜。僕は困るって言ったんだけどね〜」
「まったく、困ってるようには見えないんだが…」
いつもの笑顔で…サーリャの姿なのだが、あの張り付いた笑顔を向けてくる。
見た事もないサーリャの笑顔は、何を考えているのかサッパリ分からない…。
「え〜、凄く困ってるのに…」
不満そうに言うが、サーリャだと不満というより、恨まれているような…そんな気分になってしまう。
口調でヘンリーだろうと理解はしたが…。
「あー、そうそう、身体に触って良いって言ってたよ〜?」
そう言って、離れた距離をまた縮めてくる。
「いや、それは、お前にだろ?俺が触ったらヤバいだろ…」
「良いんじゃない?好きにして良いって言ってたよ?」
「いやいやいや、少しは頭を使えよ、ヘンリー」
「だって、つまんないよ〜」
「何がだよ?俺がサーリャとイチャつけるわけないだろ」
からかってんのか?と、少しムッとしてヘンリー?を見る。
「ヘンリーだよ?」
「外身はサーリャだろ。あいつには旦那が居るんだぞ?こんな所見られたら、俺の命がだな…」
「でも、僕だよ」
分かった分かったと、お手上げのポーズをガイアはしてみせる。
そして、離れた所にあるイスを指差して、溜め息まじりに指示を出した。
「はあ、とにかく見てても良いから、離れてろよ」
「え〜」
予想通り不満たっぷりの声が返ってくる。
とは言え「じゃあこっちへおいで」と、言う気にはなれない。
「不倫だとか誤解されるのはゴメンだからな」
「ガイア、冷たいよ〜」
「お前がサーリャだからだ」
「なりたくてなってるんじゃないよ〜」
「分かってるが、我慢しろ」
言われてじーっとガイアを見てくるが、視線だけで呪われそうな感じだ…。
「…」
「嫌なら呪い解けばいいだろ」
「サーリャに怒られちゃうよ」
「じゃあ、我慢しろ」
ヘンリーの視線なら慣れているが、サーリャの視線は…。
「…」
「ったく、サーリャは何処に居るんだ?」
やはり呪われそうで居心地が悪く耐えられない。
「書庫だよ。僕の代わりにルフレのお手伝いしてる」
「…お前の身体で?」
「うん」
「…」
作業を完全に止めて腕を組んで考え込む。
サーリャの異常なルフレへの執着心は知っている。
今風に言えばリスペクトか?いや、敬意とかそんなんじゃなく、もっと危険な感情があるような気がする…。

「行くぞ、サーリャの所へ」
大人しく離れたイスに座っていたヘンリーは、言われてふと顔を上げる。大人しくと言っても表情は不満たっぷりだが…。
「え?」
「サーリャに言って、解いてもらえば問題ないだろ?俺も一緒に行ってやるから」
「いいの?」
「ああ、嫌な予感がするしな…」
菓子作りを途中で止め、ガイアは天幕を出る。
その姿を目で追い、少し遅れてヘンリーも席を立った。





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つづく

前編には出てきませんが、軍師はいつもの軍師です。女軍師で元気な子です。
たまには愛されたい、ウチのルフレさん。サーリャにですが。

後編に続きます>>

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