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FireEmblem 覚醒:それは甘くて… 前編 |
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ヘンリー幼児化 ガイヘン&ロンノノな前編です。 ※捏造呪いが出てきます。 「ふんふんふーん♪」 地面に描いた魔方陣の真ん中に、蜂の死骸が盛られている。 そのてんこ盛りの死骸に怪しい呪文を唱えながら何かの灰を振りかけ、手元のメモを見て手順を確認する。 「えーと、味覚となる魔法の構築はこれで完成。次に食感の〜…」 ブツブツ呟きながら、用意してあった土団子を死骸の山の上に置き、ぐっと押し付けて手を離す。 「こんな感じかな〜?」 少し出来上がった魔方陣を満足そうに眺めてから、魔道書片手に得意の呪術を唱え始める。 すると蜂の死骸から青白い煙が立ち上り魔方陣を覆い、辺り一面を包み込んでいった…。 バサバサバサッ…! 羽ばたく音が聞こえ、何かが後頭部をかすめ飛んでいく。 そして、その直後に元気な女の子の声が聞こえてきた。 「まってーっっ!!」 何だろう?と気になりはしたが、唱え始めた呪術を中断する訳にもいかず、そのまま術に集中する。 もし呪術を中断した場合、呼び出した悪魔との交渉は決裂し、術は唱えた者に向けられてしまう。 交渉に失敗した呪いが、どのような形で術者に跳ね返ってくるのか…それは失敗した者しか分からず、術の種類によってもことなる。 とりあえず、呪いの失敗はどう転んでも面倒な事にしかならないのは確かだった。 「もうっ、ノノおこったよー!竜石を返さないなら…」 持っていた神竜石をかざして、走りながら少女はマムクートに変身する。 ドンッ! 「!!?」 何かに躓いた感触があったが、少女は気にせず鳥を捕まえ竜石奪取に成功する。 そして、変身を解いて後ろを振り向いた。 「あれ?この跡なにかな?」 マムクートの足跡と共に不自然な蜂の死骸や地面に描かれた模様が目に入る。 多分ぶつかったのは、この跡と関係するモノだろうと、ノノは辺りを見回した。 「あっ!」 少し離れた所に、うずくまっている人影を見つけ、ノノは急いで駆け寄って声をかける。 「大丈夫?」 「う〜ん…」 「あれ?」 ノノは自分より小さな身体を起こしてあげて、その小さな子供の姿に目をぱちくりさせた。 怪しい呪いが行われた所から少し離れた広場では、敷物の上に置かれたママゴト一式と一緒に一人の男が座っていた。 「何処まで行ったんだ…、ノノは…」 男は溜め息をつき、ママゴトの道具を見つめる。 まだ女性は苦手なままだったが、少しずつママゴトを介してノノとは接する事が出来るようになってきた。 ママゴトは恥ずかしいが、ノノと過ごす時間は心が癒され、今は一緒に居たいとさえ思える…。 なのにノノは竜石をくわえた鳥を追いかけて、何処かへ行ってしまった…。 「ロンクー!!」 根気よくママゴト道具と一緒に黙って待っていると、やっと元気な少女の声が聞こえてきた。 「ノノ、何処まで行ってたんだ…」 「えっとね、ノノがドーンしたら、ヘンリーが潰れちゃったの!」 そう言って、ノノは抱っこしていた子供をロンクーに見せる。 ロンクーと子供は目が合う。だが、ノノの言ってる事が理解できず、そのまま少しの沈黙が流れた。 「ロンクー、どうしよう?」 「あ、ああ…。ヘンリーなのか?喋れるなら、ノノの通訳を頼む…」 ノノが抱っこ出来る程の小さな子供だったが、どういう訳か普段ヘンリーの着ている装束はピッタリ子供サイズだ。 こんな禍々しい服装をしているのは、ヘンリーとサーリャくらいなもんだろう。 「喋れるよ〜。おはよ〜ロンク〜」 「おはよう…」 状況を把握出来てるのかどうか、子供からは能天気な挨拶が返ってきた。 口調からもヘンリーだと分かるが…なぜこうなったのかは、ノノの説明からは全く理解出来ない。 「えーとね、呪術中にノノがぶつかったみたいで、呪いを失敗しちゃったんだ〜。気づいたら子供になってたんだよ〜。あはは」 「笑い事なのか…」 笑いながら話す小さなヘンリーに、ロンクーは呆れた目を向ける。 「ヘンリー、ゴメンね。ノノが潰しちゃって…」 「あはは、潰れてはいないんだけど〜」 「戻る方法はあるのか?」 「ん〜。それが、難しい事が分からないんだよね〜、脳ミソも小さくなっちゃったみたい。あははは〜」 「自分の事なんだぞ、笑い過ぎじゃないのか…」 ずっと笑いながら話すヘンリーを見ていると、打ち所が悪かったのではないかと心配になってくる。 確かにいつも笑顔でヘラヘラ笑っている印象はあるが…。 「でも、どうする事も出来ないしね〜」 ヘンリーの言う事は間違ってはいない。でも、やはり笑い過ぎではないか? 「こうしてると、ノノとロンクーの子供みたいだね!」 「あはは〜、僕はマムクートじゃないけどね〜」 ノノに抱っこされた小さなヘンリーはまた笑い、ノノも一緒になって笑っている。 その姿は親子に見えなくはないが、面と向かって言われると動揺してしまう。 「わ、笑ってる場合じゃないだろ?!」 「ロンクー、顔赤いよ?照れてるのー?」 子供を抱っこして訊いてくるノノに、不本意ながらときめいてしまう。 自分とノノの将来を想像して、ロンクーは慌てて頭を振って妄想を打ち消した。 「ち、違う…。早くガイアの所にでも連れて行け!」 「えー!?どうしてガイアなの?ガイアは子供をイヤがるよ?」 ノノは不満たっぷりな顔をロンクーに向ける。 ガイアが子供を避けている事は、子供扱いされてるノノが一番分かっている。 「ヘンリーは子供じゃないだろう。連れて行けば分かる」 そうロンクーに言われても納得がいかず、残念そうにヘンリーの頭を撫でた。 「嫌になったらいつでもノノの所に戻ってきてね!ヘンリー」 「あはは、里子に出されるみたいだね〜」 何故そんなに笑っていられるのか…、ロンクーは理解出来ないという顔でヘンリーを見つめた。 「ガイア何処かな〜」 ノノは小さなヘンリーを抱っこして、野営地内を歩き回る。 子供を抱っこしたノノに周りは不審な目を向けていたが、その視線に気づいていないらしく黙々とガイアを探す。 「あ、ガイア見つけたーっ!」 「ん?」 広場を横切ろうと歩いていたガイアは呼ばれて足を止めた。 街で買い物をしてきた帰りらしく、その手には菓子袋を抱えている。 「ガイアに預かってもらえって」 そう言ってノノは子供をガイアに差し出した。 一瞬ガイアの動きは完全に止まり、広間にいた他の者の視線は二人に集中する。 「…、すまんノノ。言ってる意味が分からん」 ノノの言ってる意味は分からないが、周りの視線の意味は分かる。もちろん誤解だ。 「ロンクーがガイアの所に連れて行けって。ノノはもっと一緒にいたかったんだけど」 「ノノ…、ちゃんと説明してくれないか。周りの視線が痛いんだが…」 差し出された子供を受け取る気にはなれず、菓子袋を持っていない手を左右に振って周囲の者に「違う」と伝える。 しかし、刺さるような視線は向けられたままだ。 「説明したよ?」 「じゃあ、そのガキは何なんだ?見た事あるような服装をしてるが…」 「ヘンリーだよ。ノノが潰しちゃったの」 「そうか…、潰しちゃったのか…」 やれやれとガイアはノノの説明を受け入れた。もちろん、理解出来た訳じゃなく、納得もしていない。 だが、ヘンリーと言われて、そこだけは理解した。 「まあ、その装束と薄っぺらな笑顔、銀髪。ヘンリー以外いないよな」 「でしょー!?」 「で、何でちっちゃくなったんだ…て、ノノが潰したんだったな…」 溜め息まじりにガイアは言う。 理解は出来ない説明だったが、ノノの口からこれ以上の説明が聞けるとは思えない…。 「とりあえず、預かるよ」 「やっぱり預かっちゃうの?」 名残惜しそうにノノはヘンリーから手を離して、ガイアに抱っこされるのを見つめていた。 「ロンクーに言われたんだろ」 「うん、どうしてガイアなの?」 訊かれて言葉に詰まってしまう。 ノノに自分達の関係を言ったところで、理解出来るだろうか?いや、純真なノノに言ってはいけないと思う。 確かにロンクーはガイアの所へと言ったが、ノノに関係をバラせという意味じゃないだろう。バラしたら逆に怒られる気がする…。 「え?えーと…そうだな。こいつはヘンリーだから、ノノが抱っこしてるのに嫉妬でもしたんだろ。で、テキトーに俺の名前を出した。そんなところだろう」 「テキトーなの?」 「ん、いや…まあ、ちゃんと大事にするから心配するなよ」 不安そうに見上げてくるノノに微笑み、ヘンリーの小さな背中を優しく撫でてみせる。 「ちっちゃなヘンリーを泣かしちゃ駄目だよ?」 「泣くどころかコイツは笑いまくるだろ。早く嫉妬してるロンクーの側に行ってやったらどうだ」 「あ、そうだね!ちゃんと愛してるって言ってあげなきゃ!」 ノノは二人に手を振り、走ってロンクーの元に戻って行った。 その後ろ姿にガイアは苦笑いを浮かべる。 「ロンクーの慌てる姿が目に浮かぶな…」 嫉妬心で小さなヘンリーをこっちに寄越した訳じゃない事ぐらいは分かっている。 戻ってきたノノに予想外な言葉を告げられ、きっとロンクーは動揺しまくるだろう。 それはなんとも微笑ましく笑える光景に違いない。 だが、今の自分は笑えない状況で、周りの視線が痛く刺さる…。 小さいヘンリーを抱っこしたままのガイアは、じっと見てくる一人の女性に声をかけた。 「頼む、ルフレ…、そんな目で見ないでくれ」 「あら?どんな目??」 気づいた?と白々しくルフレは呟き、笑顔でガイアの元に寄ってきた。 「凄い目で見てただろ、俺の事」 「だって、子供よ?どこで作って来たの?」 「おまっ、誤解されるような言い方はやめろよ!?よく見ろ、ヘンリーだぞ」 予想はしていたが、やっぱりそうかと声を荒らげてしまう。 ルフレも否定される事は想定内だったらしく、顔色一つ変えず懲りずに訊いてくる。 「ヘンリーとの子?」 「お前…本気で言ってるのか?男同士で子供が出来るわけないだろ」 「冗談よ?ムキになって怒ると、あやしいわよ〜?」 「…、あやしくても、子供は出来ない」 分かってるくせに…と、ガイアはテキトーに言葉を返す。 「ふふ、そうね。ちょっと、見せてくれる?」 「ああ」 少しかがんで、ルフレに小さなヘンリーを見せる。 「ヘンリー、言葉は理解出来る?」 顔を近づけて声をかけるルフレの姿は、ヘンリーにというより赤ちゃんに話しかけているようだった。 中身はヘンリーでも小さい子供なら母性をくすぐられるんだろうなと、年頃のルフレを少し照れくさそうに見つめる。 「そこまで小さくないだろ…」 「ん〜、でもお人形さんみたいで可愛い〜」 ルフレは人差し指でヘンリーの頬を撫でる。 満足そうに微笑んでいるヘンリーを見て、ガイアは小さく溜め息をついた。 「女は小さいもん大好きだよな」 「ヘンリーはガイアが大好きだもんねー?」 「お前、なに訊いてんだよ…」 呆れ顔のガイアとは対照的に小さなヘンリーは満面の笑みを浮かべ、ルフレはすぐその表情に反応を示す。 「笑った!可愛い〜っ!」 「中身はヘンリーだからな?」 「分かってるわよー?見た目もヘンリーでしょ、小さいけど。で、どうするの?」 「どうするって言われてもな…、ノノからは潰したって事しか聞いてないんだよな…」 「潰れたの…?」 「違うと思うが…」 二人は微妙な表情で、ヘンリーを見つめた。 「えーと、呪いを失敗しちゃったんだ〜」 やっとヘンリーが口を開き、その口調でやっぱりヘンリーだった。と、二人は再度納得する。 「なるほどね…。子供になるくらいで済んで良かったわね」 「良かったのか?コレ…」 言ってガイアは抱きかかえたヘンリーを目の前で持ち上げた。 「あははは、たかいたか〜い!」 「子供か、お前は…」 呆れ口調でヘンリーにツッコミを入れ、ガイアはよっこらせと抱っこし直す。 そして、抱かれたヘンリーは残念そうな顔をして、ガイアの襟元に小さな顔をうずめた。 「可愛い〜」 「ルフレ、お前ね…、可愛い可愛い言ってないで、なんとかしろよ」 「なんとかって?私、呪いは専門外よ?」 「あっさり返すなよ…、俺はおまえ以上に専門外だぞ」 「まあ、とりあえずヘンリーに聞くしかないでしょ?ヘンリー、解呪の方法は分かる?」 ガイアのマントに顔を埋めていたヘンリーは、顔を上げてルフレの方を向く。 残念そうな顔は既にいつものヘラヘラ笑顔に戻っていた。その笑顔を見ると子供の姿のヘンリーでも安心してしまう。 「えっと…呪いはね、呼び出した悪魔と契約する事で成立するんだよ。もし失敗しちゃった場合、悪魔は怒っちゃうんだ。それで、術者は呪われちゃうんだけど。解呪はその悪魔に解くように交渉しないといけないから、もう一度呼び出さないと駄目なんだよ」 「じゃあ、呼び出せば万事解決か?」 「うんうん。悪魔はいっぱいいて、どの悪魔を呼び出したか思い出せないんだけどね〜。子供になってから、どうも頭がハッキリしなくて〜。あはは〜」 「俺は笑えないんだが…」 能天気に笑うヘンリーを見てガイアは大きな溜め息をつき、その横ではルフレが相変わらず可愛い可愛い言いながら微笑んでいる。 周囲の者に、この光景は一体どう見えているだろうか…。 「困ったな…、このままじゃ戦力にもならないだろ」 戦力にはならないが、戦で疲れきって帰って来る兵士達の癒しくらいにはなるだろうか? まあ、そんな癒しより戦力の方が大事だとは思うが…。 「ん〜、サーリャに相談してみたらどうかな?彼女なら呪術に詳しいし」 「なるほど、それが一番よさそうだな」 普段から訳の分からない呪いを使っている奴と言えば、この二人しかいない。 一癖も二癖もある人物だが…て、それはヘンリーも一緒で、彼と同じ呪いが本業のサーリャに頼むのが一番だろう。 「じゃ、あとは頼んだわよー?私は軍事会議に行ってくるからー」 ルフレはヘンリーの頭を撫でて、名残惜しそうに手を振り広場を後にした。 「ヘンリーだって言ってんのに、完全に子供扱いだな…」 呆れた表情を遠ざかっていくルフレに向けてガイアは何度目かの溜め息をついた。 そしてサーリャでも探すかと広間から移動しようとしたが、気持ち良さそうな寝息が耳に入ってきて足を止める。 「…寝ちまったのかよ」 自由すぎるヘンリーに、またしても溜め息が出る。今日は何回溜め息をついただろうか…。 このままサーリャの所に連れて行こうと思ったが、不意に寝顔を見て思いとどまる。 きゅっとマントを小さな手で握り、幸せそうに微笑みながら寝息を立てている姿が愛らしい…。 ルフレじゃないがその仕草にキュンときて、中身はヘンリーだと分かっていながらも起こすのが可哀想に思えた。 「とりあえず、昼寝でもするか…」 天幕に戻り、持っていた菓子袋を床に置き、ガイアは寝台の上にヘンリーを寝かせる。 少し甘い物をと床の菓子袋に手を伸ばすが、ヘンリーに引っ張られギリギリのところで菓子に手が届かず、諦めてゆっくり寝台に腰を下ろした。 そしてマントを掴んだ小さい手を見つめて溜め息をつく。 「中身まで子供になってんじゃないのか…」 流石にその手を払う気にはなれず、毛布を腹にかけてやり自分もゆっくり目を閉じる…。 ------------------------------------- つづく 中編に続きます>> UP |