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FireEmblem 覚醒:呪いと恨みのエトセトラ 後編
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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後編です。




二人が天幕に籠ってからそれなりの時間が過ぎた。だが、まだまだ昼は長く、言うまでもなく野営地は元気に稼働中だ。
二人の天幕の前を行き交う人物もいるだろう。
その一人が天幕の前で足を止めて、じっと出入り口を見つめていた…。

「ん…」
布団の中でヘンリーがモソモソと動く。
情事を終え抱いたまま横になっていたが、落ち着きの無いヘンリーに不満げな声を漏らす。
「何やってんだよ…」
「シッポどこ?」
「もう少し休んでからで良いだろ」
すぐ尻尾に触れられるのは、やっと落ち着いてきた身体に、また火をつけそうだ。
流石に昼間から何回もというのはどうかと思う。ヘンリーもそれは望んでいないだろう。
「え〜、触りながら寝たいよ〜」
「俺は目が覚めそうだ…」
はあ…と溜め息をついてヘンリーの頭を撫でて宥めたが、ヘンリーはまだ布団の中をごそごそしている。
「お前なあ…」
もう一度溜め息をつくと、何処からかもう一つ溜め息が聞こえてきた。
「ん?」
ヘンリーかと思ったが、そんな近くからではない。
ごそごそしていたヘンリーと目が合ったが、微笑んでいてやはり溜め息をついた様子はない。
「そろそろ気づきなさいよ」
「!?」
ゆっくり寝台に横になっていたが、女の声が聞こえ慌てて身体を起こす。
そこには水晶玉を手に持って禍々しい空気を背負った女が立っていた。
「サ、サーリャ!ノックぐらいしろよ!?」
「天幕の何処をノックするのよ…。視線で気づきなさいよね」
「せめて声をかけてから入れ…」
確かにサーリャの視線は冷たく刺さるような感じがして気づきやすい。が、今はその視線より尻尾を探すヘンリーに気を取られていて、他の気配に気づけなかった。
いや、それより誰が無言で天幕に人が入ってくると思うか?
「自業自得じゃない。真面目に調べていた私のおかげで解呪の方法が分かったわよ。貴方達がお楽しみの間にね…」
「本当か?」
この際、嫌味の言葉なんかはどうでも良い。解呪の方法が分かった事にホッと胸を撫で下ろした。
「ええ、だからさっさとこっちへ出てきなさい。呪いを解いてあげるから」
「あ、いや…。こっちから、サーリャの天幕に行くよ」
嬉しいお言葉だが、このまま裸で布団を出るほど、切羽詰まってはいない。
サーリャも分かって言っているとは思うが…。
「まだ楽しむつもり?」
…にしても、ルフレ以外には、本当に容赦がない。
「なわけないだろ。直ぐ着替えて向かうから、先に天幕へ戻っててくれ」
「しょうがないわね。私の気が変わる前に早く来なさいよ…」
「…了解」
サーリャは天幕を出て行き、大きな溜め息をガイアはつく。
その横でヘンリーは残念そうにやっと見つけた尻尾を眺めていた。
「触っちゃ駄目?」
「駄目だ。すぐ着替えて行くぞ」
後で触らすという約束ではあったが、流石にそんな暇はもうない。サーリャの機嫌を損ねると、一生呪いを解いてもらえない気がする。
「約束守れなくてすまない。後で菓子作ってやるから」
しょんぼりしているヘンリーの頬に優しくキスをして、ほら着替えて行くぞと背中をポンと押しガイアは衣服を手に取った。
それから少し遅れてヘンリーも着替え始める。


フードをしっかりかぶり尻尾もズボンの中に押し込んで、人目を避けながら急いでサーリャの天幕へ向かう。
天幕に着き一声かけ、呪いの道具が敷き詰められた中に足を踏み入れた。
「やっと来たわね」
「かなり急いだつもりなんだが…」
「ゴメンね〜、サーリャ。僕がとろいからだね〜」
「ふん、さっさと始めるわよ。早くフードを取りなさい」
「あ、ああ…」
フードを取りサーリャの指差した場所に座り目を閉じる。目は開けてても良いのかもしれないが、何となく呪いの儀式は見ない方が良い気がした。
黙って座っていると頭上にサーリャの殺気を感じ、何処の言葉か分からない言葉を呟き始める。きっとこれが呪文というヤツなのだろう…。
少し経って背中に別の殺気を感じた。振り向く勇気はないが、悪魔というヤツが召喚されたに違いない。そして、サーリャともヘンリーとも違う聞いた事のない声色で何かを喋りだした。
内容はよく聞き取れなかったが、サーリャが言葉を返す。どちらの立場が上なのかは知らないが、サーリャの口調は相変わらずで、これで悪魔が言う事を聞くのかと疑ってしまう…。
今度は後ろの殺気がする方から呪文が聞こえ、身体から力が抜けるような脱力感に襲われる。
「ぐ…」
座っているだけだったが身体を支えきれず地面に手をつき、なんとか姿勢を保つ。耳や尻尾が生えた時は少しこそばゆいくらいで、こんな感覚はなかったが…。
大丈夫なのかと不安になっていると、ふと周りの空気が軽くなったのが分かった。
「もう良いわよ…」
サーリャに声をかけられ目を開けると、自分の身体も軽くなっている事に気づき、少し疑っていたが成功したんだなと確信する。
「礼を言うよ」
「どういたしまして…。私のせいだったみたいだけどね」
「そこは、まあ…」
一応、頭を触って耳が無いのを確認しながら、言葉を返す。
とんだ災難だったと思いながらも取りあえず元に戻れてホッとする。…が、少し離れた場所ではヘンリーが残念そうにしていた。
「えーと、菓子作ってやるから、元気出せよ?」
そうヘンリーに声をかけるが残念そうなままだ。
「それじゃ駄目か?」
「は〜、僕もガイアのために菓子作ってたのにな〜」
「え、お前が?」
ヘンリーが一人で菓子作りなんて想像出来ず、変な声が出てしまう。
たまに手伝ってはくれたが、見てる方が好きだと言うような奴だ。こっちから誘わない限り、自ら厨房に入り菓子なんて作るとは思えない。
「うん、呪いでね〜」
「の、呪いでって…」
まず、それは食べられるモノなのかと疑わずにはいられない。
素直に「今度、作ってくれよな!」なんて言えず、引きつった顔を向けてしまう。異界の海水浴で貰ったペレジアの菓子でさえ、まだ食べていないんだぞ…と。
「それで魔力の込められた水晶玉から甘い匂いがしたのね…」
不適な笑みをこぼしながらサーリャは口を開く。
「うん、美味しく作る下ごしらえだよ〜」
「ふふふ、土団子だろうと美味しくなるでしょうね…」
「うんうん。水晶玉に魔力を込める時も土団子を使ったけどね〜」
「つ、土団子?」
聞き間違えだろうか?呪術士二人の会話は、土団子を食べさせようとしているようにしか聞こえない…。
疑いの目を二人に向けていると、サーリャはにやりとしてみせた。
「ヘンリー、ヒントを有り難う」
「ん?ヒント?」
「食べ物に呪い…。これは使えるわよ…」
「ん〜?僕は食べ物を呪おうとしていた訳ではないんだけど〜」
ヘンリーの言ってる事は正しい。ヘンリーがしようとした事は、食べられるモノに呪いではなく、食べられない土団子に…だ。
「細かい事は良いのよ。楽しくなってきたわ…。ふふ、ふふふふ」
「まあ何でも良いが、とばっちりだけはもう勘弁してくれよな…」
「それは、貴方次第よ」
何て都合のいい言葉なんだ…。
今回だって、サーリャの逆恨み以外の何ものでもないというのに。
「何も起きない事を祈ってるよ…」
「ふふ、ふふふふ…」

止まらないサーリャの不適な笑いを聞きながら天幕を後にして、やっと頭に太陽を浴びる。
「やっぱり、人も光合成が必要だな」
ほんの少しの間だったが、この開放感がたまらない。
昔は闇に潜んでいるのが当たり前の生活だったが…、別にそれを望んで生きてきた訳じゃない。
「ねえ、ガイア。菓子作ろう〜?」
「ああ、そうだな。美味しいの作ってやるぞ」
そういえば、詫びに作ると約束してたなと、自分の天幕に向けていた足を止め、厨房の方へ向き直る。
「僕も作るよ〜」
「呪いだけは勘弁してくれ…」
「え〜、美味しく作る自信あるのにな〜」
「その自信だけ貰っとくよ…」

そして、腹を壊す自信があるぞ…と、心の中で呟く。

呪いに振り回された一日だったが、何故か心の中はさっぱりと晴れ渡っている。
まだまだ呪いに安心は出来ないが、命に関わるような事は起きないだろうと、変な安心感があった。
「コイツらが使う呪いは可愛いもんだ」と、思ってしまうのは味方の呪術士だからだろうか?
サーリャにそう思ってしまうのは不本意だが、ルフレしか見えていないサーリャは微笑ましい。度が過ぎている部分もあるにはあるが…。
ヘンリーに関しては言うまでもなく、一生懸命な呪いには愛すら感じてしまう。

だが、土団子は食べない。
ここだけはヘンリーが相手でも譲れない。

菓子は偉大だ。
もちろん、愛も偉大なのだが…。






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おわり。

補足(?):以前の作文でサーリャが「ノックぐらいしなさいよね」とか言ってます。今回、同じ事をガイアに 言われて「天幕の何処にノックする所が〜」等と言っています。ミスではないです。私の中のサーリャはこんな人です。なぜか、ガイアに容赦ない…。嫌いな訳 じゃなく、同性でいちゃつけるのが羨ましいのでしょう!そんな感じです(どんなだ)

ガイアに猫ミミで、お送りした(?)今回の作文。
立場が一瞬逆転?な、シーンもあったかも?ですが…、読んでどう感じられたかドキドキでございます。
自由奔放なヘンリーに振り回されるガイアです。

今回もケアルから…の、つもりなんですが。
ケアルからヒントを得たと書いた方が正しいかもしれないですね。
すみません。ヘンリーに猫ミミじゃなくなって…。動物の耳やシッポに夢中になるヘンリーをお楽しみください!と、言う事で…。

相変わらずの読みにくい作文ですが…。
誤字脱字は無いと良いな〜と決まり文句を添えて…、最後まで読んで頂き有り難うございます。
こんな文ですが、少しでも気に入って頂けると幸いです。


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