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FireEmblem 覚醒:One 1
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FireEmblem覚醒

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ルフレ&ヘンリー異母姉弟ネタ。※ガイヘン。
13章の終わりからです。





ペレジアに要請を求め会談の場に指定されたのは屍島という島だった。
そこでは以前に対峙したことのある顔があり、その男はペレジアの王だと名乗った。
そして、その国の最高司祭は…。

ペレジアの王を名乗るファウダーという男は私に親子だと告げ、隣にいた最高司祭は私と同じ顔をしていた。
父がファウダーで最高司祭は双子の姉妹という事なのだろうか?
頭の中は混乱し何一つ理解する事が出来ない。
これから一体、私はどうなっていくのだろうか…。

訳の分からないまま屍兵に追われ戦いを余儀なくされる。
屍兵を排除し戦いが終わると、そこには未来から来たというクロムの娘ルキナと、一人の呪術士が軍に加わっていた…。




屍島を離れヴァルム大陸へ向け陸路を進む。
その道中、何度目かの野営地を設営し、移動で疲れた身体を労う。

ゆったりと進む時間の中、
新しく軍にやってきた呪術士は木陰からイーリス軍の軍師を見つめていた。

この軍の軍師ルフレがファウダーに親子と告げられた時、イーリスの者も数人居合わせたはずだ。
なのに何も無かったかのように毎日を過ごしている。

何がこの者達を結びつけているのだろう…。

「おい」
「ん〜?」
声をかけられペレジア装束の呪術士はルフレから目を離す。
「何をしている」
「キミは〜?」
「俺はガイアだ」
ガイアと名乗る男は無表情に見てくる。
その男の利き手は腰の柄に添えられていて、いつでも剣を抜ける状態だ。
「よろしくね〜、ガイア」
だが呪術士は警戒する事なく笑顔で挨拶をする。
「質問に答えろ」
「何もしてないよ?」
「…」
「あはは、僕、警戒されてる?」
魔道書片手に薄っぺらな笑顔を向けてくる。
何を考えているか分からない顔だが、ガイアは手に持った魔道書を警戒する。
「当たり前だろ。こそこそ嗅ぎ回って何が目的だ?」
「僕、臭うかな?」
笑いながらクンクンと自分の腕の臭いを嗅いでいる。
馬鹿にしてるのか、それとも天然なのか…、少し癇に障る仕草だ。
「ペレジアの偵察だと俺は睨んでいる」
「ふふ、残念でした〜。偵察だったら、こんな格好でイーリスの王子様に話しかけたりしないよ〜」
「堂々としすぎてて、逆に怪しいんだよ。ここの奴らは、お人好しばかりだからな」
かく言う自分も元々は敵軍に雇われていた身だ。見る者が見れば十分怪しい人物のはず。
…なのに軍の者は誰一人として警戒する事なく、仲間として迎え入れてくれた。それをお人好しと言わず何という。
「ガイアもだね?」
初対面に近いヤツに何を言っているのか…、全く読めない言動に剣から手を離す事が出来ない。
「俺は違う。お前を疑ってるから声をかけた」
「ふーん。でも、違うよ。僕はペレジアから逃げて来たんだよ」
「逃げて?」
「今の目的はイーリスにあるからね〜」
「それまた怪しい話しだな」
前の目的は?なんて突っ込みを入れたくなるが、目的というからには何か事を起こす気なのだろうか?
ペレジアの呪術士なのだ、到底まともな目的だとは思えない。
「じゃあ、ずっと僕を見張ってても良いよ」
「そうさせてもらう」
既に監視していたわけだが改めて宣言する。
本人の同意を得てなんて少し変な気はするが、ここで「しない」と宣言するのはコイツの思うツボだろう。
まあ、どちらでも監視をやめるつもりはないが…。




やっとフェリアの港を肉眼で確認出来る所まで軍を進め、陸路から少し離れた場所に野営地を設営する。
今回の野営地を最後に、港に着けばヴァルム帝国軍との戦争が始まるだろう。
毎日夜遅くまで帝国との決戦に備えて軍事会議が行われていた。

「はあー、疲れたぁー」
軍事会議を終え、イーリス軍の軍師は大きく伸びをし、自分の天幕を目指して歩く。
見上げた空は既に太陽が沈み、少し欠けた月が雲の隙間から顔を覗かせている。
「明日は晴れるかなあ?」
「明日は晴れだよ〜」
「ん?」
誰に言ったわけでもない問いかけに、答える声が物陰からして振り返る。
「誰?」
声の聞こえた暗闇の方を目を凝らして伺う。
「こんばんは〜、ルフレ」
「あ、ヘンリー?」
声と共に闇から現れたのは、ペレジアの装束を身に纏った呪術士だ。
ここはイーリスだが仲間になってからもずっとペレジア装束姿の男。
いつも笑顔で何を考えているのか分からない男だが、クロムが仲間と認めた呪術士だ。警戒しても拒むわけにはいかない。
「覚えててくれたんだね〜。みんなルキナの事ばかりだったから、僕の事忘れてるんじゃないかな〜て心配してたんだ〜」
「そんな事ないわよ。ヘンリーも軍の仲間なんだし」
「そうかな〜?ガイアは僕を仲間だと思ってないみたいだよ〜」
「あの人は、あまり仲間に興味ないみたいだから、気にしない方が良いわよ」
ひょっこり現れたペレジアの呪術士を警戒するなという方が難しいだろう。
名前の挙がったガイアという人物は、他の者より仲間意識の薄い人間だ。
「あはは、気にはしてないけど〜。ルフレは僕に興味ある?」
「ええ、カラスまみれで現れたペレジアの呪術士ヘンリー。かなり印象は強かったわよー」
本体が見えずカラスが喋っていると勘違いし、カラスがイーリス軍の仲間に加わるのかと思った程だ。
もちろん違ったわけで、本体は呪術士らしくなく笑顔の絶えない銀髪の少年だった。
「ふふ、うれしいな〜。僕、ルフレに注目して欲しかったんだ〜」
「私?クロムにじゃなくて?」
「うんうん、ルフレにだよ。なんたって、僕はルフレと父親が一緒だからね〜」
「…え?」
薄っぺらな笑顔で言われた言葉が理解出来ず変な声が出てしまう。
聞き間違えだろうか?と自分の耳を疑う。
父親が一緒だなんて、間違いじゃなければペレジアの王ファウダーが父親だと…。
「ふふ、驚いた?ペレジアの最高司祭はルフレの双子なんかじゃないよ。ルフレそのものなんだ。兄弟というなら、僕の方が近いよ〜」
「ヘンリー、待って。貴方の言ってる事は…」
言ってる事はおかしいと言いたいのに、言葉が口から出てこない。
否定したくても、その根拠を示す事が出来ない。逆も然りなのだが、ヘンリーの口調には迷いがなく、嘘をついてるようには思えなかった。
「いきなりで信じられないよね〜。僕にもルフレの手の甲にある邪痕があるんだよ。位置は違うし焼けちゃってるけど、見てみる?」
「どうして、それを…」
クロムに助けられた時は露出していた痕だが、今は見えないようにしている。
何の痕かは知らなかったが、少し禍々しく感じ自然と隠すようになっていた痕だ。
「血のつながりがあるからだよ」
「でも」
何か…、何でも良い、信じられないヘンリーの言葉を否定したい。
全てを信じてしまうと、きっと私はイーリスに居られなくなってしまう…。
「ファウダーがルフレの存在に気づいた時、僕も気づいたんだ。だから、会いに来たんだよ〜」
「目的は何…?」
ヘンリーが自分と同じくファウダーの子供だというならば、ペレジアに連れ帰るためと考えるのが妥当だろう。
「そんな警戒しなくても良いよ〜。僕はルフレの味方だよ。たった一人の姉弟だからね〜。あ、母さんは違うけどね〜、あはは」
「本当に…?」
味方と言われ、少し身体の緊張がほぐれた気がした。
まだ全てを受け入れる事は出来ないが、ヘンリーが嘘をついているとは思えない。
こんな嘘をついたところで、誰の得にもならないだろう。
「うん、お姉さんを失いたくないからね〜。さすがに邪竜をお姉さんって呼びたくないし〜」
「じゃ、邪竜?」
思いもよらない単語が耳に飛び込んで来た。
邪竜というのは確かペレジアが信仰するギムレー教団が崇める存在。ペレジアの王ファウダー自身、熱心な信仰者だと聞いている。
ファウダーが自分の父親だというなら、それはどういう事なのだろうか…?
「あれ?そこまでは知らなかった?あはは、余計な事言っちゃったかな〜」
「ヘンリー、邪竜って…」
「ん〜、今のは忘れちゃって!とにかく、父さんにルフレは渡さないよ〜」
ずっと笑顔のヘンリーは、何を言っても笑顔を崩さない。
こちらとしてはかなり衝撃的な内容だったわけだが…、ヘンリーにとってはさほど深刻な事ではないのだろうか…。
「あまりルフレと一緒にいると、ガイアに感づかれちゃうから僕は天幕に戻るね〜。またね〜、おやすみ〜!」
「まって!ヘンリーッ」
「バイバ〜イ!」
呼び止めたが、ヘンリーは止まる事なく来た道を戻り、闇の中に消えていった。
暗闇に入っていったヘンリーを追いかけようとしたが、思った以上に闇は深くヘンリーの姿を見つけ出す事が出来ない。
「笑ってても呪術士は呪術士って事かしら…」
直ぐ追ったはずなのに暗闇の中に気配は何もなく、ヘンリーは闇に溶けてしまったかのようだった。
そんな怪しい呪術士をどこまで信用することが出来るだろうか…。







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つづく

2に続きます>>

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