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FireEmblem 覚醒:One 3
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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慣れない海戦に何とか勝利し、ヴァルム帝国に上陸する。
ここから帝国との本格的な戦争が始まる。

大変な戦争になるだろう。
圧倒的に不利だという事は分かっている。
だけど負けるわけにはいかない戦いだ。
この戦争で全てが終わるわけじゃないが…、終わらせなければならない。

ただ眺めていた戦術書を閉じて、ルフレは大きく息を吐く。

『神竜族の巫女』
ヴァルム帝国に抵抗する小国ソンシンの王女サイリから聞いた存在。
相対する邪竜を思い出し、少し遠のいていたファウダーの事を考える。
そしてヘンリーの言葉が頭から離れない…。
忘れてと言われたが、忘れる事なんて出来るわけがない。

巫女に会えば邪竜の事も聞けるだろう。
不安しかないが耳を塞いでいるわけにはいかない。
ちゃんと自分に向き合わなければ、自分を見失ってしまう気がする。

だけど巫女の言葉を聞くのが怖い…。



今日からはこのヴァルム帝国の地で夜を過ごす事になる。
この大陸に初めて上陸した者も多く、寝付けず天幕を出て数人で晩酌する者や、野営地内を散歩する者がいたりと、なかなか野営地は静まらない。
もちろん早々に寝てしまっている者もいるし、これから始まる戦争に気が高ぶってしまって悶々としている者もいる。
敵地で緊張感が足りない気もするが、命はいつ尽きるか分からない。
最後の日になってたまるかとは思うが、少しくらい楽しみが無ければやっていけないのも事実。
度が過ぎなければ良いかと、適度な賑わいが夜遅くまで続く…。

広場の賑わいから少し離れた場所に、大きな布袋を抱えた男が歩いていた。
その男は静まり返った天幕の前で足を止め入り口に声をかける。
「ヘンリー、起きてるか?」
「起きてるよ〜、いらっしゃ〜い」
声と共に入り口は開かれ、中からヘンリーが顔を覗かせた。
中は静かだったが言葉通り寝ていた様子はなく、いつもの笑顔を見せてくる。
「ガイアが僕の天幕に来るなんて珍しいね〜、何かあったかな?」
「菓子を持って来たぜ。見たいって言ってただろ」
そう言って大きな布袋を目の前に下ろす。
「わあ、持って来てくれたんだね〜」
「紅茶も入れて来た」
そして今度はもう片方の手に持っていたポットをテーブルの上に置いた。
ただ見せてくれるだけだと思っていたヘンリーは紅茶の入ったポットをつついてガイアを見た。
「食べていいの?」
「ああ、色々と見繕って来た」
早速ガイアは椅子に座りテーブルに菓子を広げる。
その大量の菓子に圧倒されながらもヘンリーは笑顔でガイアの自慢の菓子の説明に耳を傾けた。
「ねえ、それは?」
自慢の菓子とは別に、無造作に置かれた菓子に目が止まる。
ヘンリーに訊かれ、まだ話し足りない自慢の菓子を眺めながら、簡単に自慢じゃない菓子の説明をする。
「これは食べる用の菓子だ。俺の手作り」
「え〜!?ガイアが作ったの?」
だが、ヘンリーの予想外な反応に、自慢の菓子から目を離す。
「ああ、意外か?」
「菓子って作れるものなんだね〜」
訳の分からない感心をするヘンリーにガイアは呆れた表情をする。
「お前、菓子をなんだと思ってるんだ?道ばたに生えているもんじゃないからな?料理と一緒で人が手を加えたもんだぞ」
「あはは、そっか〜、そうだよね〜」
「本当に変なヤツだな」
笑っているヘンリーを見て、ガイアも控え目に笑う。
菓子が道ばたに生えているなんて、それは夢のような世界だ。自分で言った事だが、その夢が現実になれば良いと咄嗟に願った。
こんな事を考えている自分も、じゅうぶん変なヤツだと思う…。
「ガイアは凄いね〜」
「いや、誰でも作れるぞ。今度一緒に作ってみるか?教えてやるよ」
「本当〜?楽しみだな〜」
「今の軍の状態じゃ、少し後になりそうだが…」
敵地で菓子の材料が容易に調達出来るとは思えない。
それより能天気に菓子を作っている場合か!?と一部の者に怒鳴られそうだ。案外、息抜き程度ならと許してもらえるかもしれないが…。
「忘れないでね〜?」
「ああ、まずは戦争…だな」
いつ終わるとも分からない戦争に溜め息が出る。出来れば戦争にではなく菓子に没頭したい。
「ガイア、嫌そうだね〜」
「俺はお前じゃないからな…、平和が一番良い」
「僕も平和は好きだよ〜」
「戦争大好きって言ってなかったか?俺の耳は誤摩化せないぞ」
直接聞いたわけじゃないが、軍の者なら大抵知っている事だ。
笑いながら敵を殺す姿は、誰が見たって戦いが嫌いなヤツには見えないだろう。
「仲間が傷つく戦争は好きじゃないよ〜」
「お前に仲間が理解出来るのか?」
コイツはペレジアで味方殺しを繰り返していたとも聞いたが…、味方を殺していいと思っているヤツに仲間が理解出来るとは思えない。
味方と仲間は確かに少し意味は違うが、仲間に限らず味方だって殺していい存在ではないはずだ。
「うん、ここで学んだんだよ。イーリスはペレジアとまったく違うね〜」
「一緒じゃ困る」
会ったばかりの頃に感じていた危険な雰囲気は今のヘンリーからはしない。
それがコイツがイーリスに来て、お人好しだらけの軍に触れた結果なのだろう。
「あはは。ガイアと仲良くなれるとも思ってなかったよ〜」
「仲良くか…。ほら、遠慮せず菓子食え」
確かに菓子を一緒に食べる仲になるとは思ってもみなかった。
思えば警戒していたのは自分だけで、コイツは最初から何も警戒はしていなかったんだ…。
「いただきま〜す」
「食うのも良いが、まだ見せたい菓子があるんだからな?」
美味しそうにガイアの手作り菓子を頬張るヘンリーに、新たに袋から出した菓子を見せる。
「うんうん、ちゃんと見てるよ〜」
「説明も聞けよ?」
「はーい」
返事は良いが、菓子を食べる手は止めない。
まあ良いかと自己満足に近い菓子の説明をしつつ、自分も手作りの菓子を頬張る。
そんな菓子中心のお茶会はまだまだ続く…。







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つづく

4に続きます>>

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