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FireEmblem 覚醒:One 4
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FireEmblem覚醒

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ガイヘンオンリーな4です。




いつしか広場に人影がなくなり、やっと野営地は眠りにつく。
時刻も日付変更線を越え、夜の闇はさらに深くなっていった…。

暗い野営地に、光が漏れる天幕がまだ何カ所か残っている。
それぞれ何をやっているかは分からないが、ある一つの天幕では甘いお茶会がやっと幕を閉じようとしていた。

「は〜、もう甘いものは食べられないよ〜」
ポットに残っていた紅茶を全部カップに注ぎ、ヘンリーは大きく息を吐いた。
「思った以上に食べたな。なかなか素質あるぞ」
テーブルの上に残っていた最後の菓子を口に放り込みガイアは満足そうに言う。
「なんの素質〜…」
ヘンリーは困った顔をして言い、一気に紅茶を胃に流し込んだ。
「さて、今日はこの辺にしといてやるか」
「もしかして、まだあるの?」
ガイアの言葉をヘンリーは心配そうに訊き返す。
今日だけで数日分の糖分を取った気がする…。
「もちろん、まだまだ秘蔵の菓子はあるからな。覚悟しとけって言ったろ?」
「あはは、どんだけあるのかな〜」
ついガイアの天幕は菓子で出来ているのではないかと想像してしまう。

パパッと秘蔵の菓子を袋にしまい、ガイアは席を立つ。
「じゃあな、今日は楽しかった」
「あ、待って」
天幕を出ようと出入り口に向かうガイアをヘンリーは呼び止める。
何か忘れ物をしたかとガイアは振り返りテーブルの上を確認した。
「ん?」
「僕の天幕で寝ない?」
「…」
「あ、変な意味じゃないよ?その、もっと色んな話しが聞きたいし、ガイアと話すの楽しかったから…」
何も言わないガイアに誤解されたのではないかとヘンリーは慌てて言葉を続ける。
「いいぜ、別に」
言葉の途中でガイアは返事を返し、その言葉で変な誤解はされていなかったとヘンリーは胸を撫で下ろした。
「本当〜?」
「誘ったのは、お前だろ。どこで話す?さっきと同じがいいか?それとも寝台で話すか?」
「夜だし寝台がいいかな〜…」
だが、寝台と口にすると、やっぱり少し意識してしまう…。
でもガイアが変な誤解どころか意識もしていない事は彼の口調で何となく分かる。
「了解、ちょいと狭いが、お邪魔させてもらう」
「う、うん」
意識しちゃ駄目だと思えば思うほど、返す言葉がぎこちなくなってしまう。
「どうした?…まさか、俺は床の上か?!」
一人で勝手にぎくしゃくしていると、ガイアが厳しい顔を向けてきた。
ヘンリーの天幕は床に何も敷いておらず、外と変わらない土の床だ。流石にそれはないだろうと、ガイアは見てくる。
「え?ち、違うよ?一緒に寝台で…」
その視線に気づき違うと口にするが、一緒に寝台での次の言葉に詰まってしまう。
悟られないようにと思うが、もう頭の中はいっぱいいっぱいだ…。
「ヘンリー」
「な、なに?」
「お前のその態度、ただ俺と話したいだけには見えないが?」
「!」
言われて一気に顔が紅潮する。
意識してしまったのは、そう思われたんじゃないかって思った事を知られるのが恥ずかしかったからで…。
「そ、そんな事ないよ。…一人で寝るの寂しいな〜て思って、ガイアが一緒なら良いな〜って思っただけで…」
本当に誤解で意識してるわけじゃない。何とか分かってもらおうと正直な気持ちを口にするが、もう手遅れなんじゃないかと声がどんどん小さくなってしまう。
勝手に一人で変な感じになって慌てて、ガイアはそんな僕を軽蔑してるだろう。ガイアが男色家じゃない事ぐらい知ってるし、自分だって違う…。
「寂しいなら、ずっと一緒にいてやっても良いぞ」
「本当?」
でもガイアは優しい。
多分ガイアは僕が何を考えていたか知っている。それでも軽蔑しないで一緒にいてくれるって…。
ちゃんと寂しいからって分かってくれてるんだ。
「俺とずっと一緒に居たいか?」
「うん!ガイアと一緒にいると寂しくないから。もう独りになりたくないんだ」
だから素直に気持ちを伝えてしまう。
ガイアなら全部理解してくれる。そう感じたから…。
「そうか…。だが、ずっと一緒にいるって簡単な事じゃないぞ」
「ガイアは僕のこと迷惑?」
ずっと一緒にいるならば、自分もガイアの事を分かってあげないといけない。
でも、人の心を分かってあげるってどうすればいいのだろうか?
「いや」
「じゃあ…」
「俺と寝れるか?」
「あ…」
また最初の気持ちが舞い戻ってくる。
意識はしたけど、誤解だと弁解した事をガイアは面と向かって言ってきた。
僕にはやっぱり人の心は分からないみたいだ…。
「お前は愛が無いヤツと一生を共にできるか?」
「…僕たち、男同士だから」
「だよな?そう思うなら、それは愛が無いからだ。…なんて言ったら引くか?」
訊かれて無言で首を振る。
男同士なんて考えてもいなかったし、意識はしてしまったけど本心じゃなかった。
でもガイアとなら…。
「一緒になるには、それなりの覚悟が必要だと思わないか?しかもそれが一生なら、なおさらだ」
「僕…、ガイアのこと好きだよ」
どんどん好きになってしまってる事が自分でも分かる。
覚悟が必要だとするならば、それは自分の気持ちを素直に伝える事だ。
「ほう?」
「だから、誘ったんだ。最初は一緒にいたかっただけだけど、今は違うよ」
言いながらガイアの目の前まで進み、顔を見上げる。
もう言葉だけじゃ足りない…。
「良いのか?俺の言葉に流されてるだけなじゃないのか?」
「ううん、ちゃんと考えたよ。嫌ならガイアは僕を拒否すれば良いだけだから。でも、拒否しないで僕に気持ちを訊いてくるガイアは…」
「愛してくれているから、か?」
「うん。そう思っちゃうのは、やっぱり流されてるからかな?」
僕が言おうとしてる事をガイアは全部分かっている。
大好きになってしまったけど、ガイアが言う通り流されてるだけなのかな?
「いや、違う」
「ねえ、ガイアの口から聞きかせて」
もっと人の気持ちを分かるようになりたい…。ガイアの気持ちを…。
ガイアの気持ちを知りたくて、背中に腕を回して胸に顔をうずめる。
「ヘンリー」
名前を呼びガイアは手をヘンリーの頬に添え至近距離で優しく囁く。
「愛してるよ」
「うん」
満足そうにヘンリーは頷き、唇を重ねる。

こんなに好きになってしまうなんて…。
ガイアのどこにそんなに惚れてしまったんだろう?
抱かれながら色々と考えてみたけど、すぐにそんな思考は止められてしまう。
「俺の事だけ考えろよ?」
「あはは、ずっとガイアの事で頭がいっぱいだよ〜」
とりあえず、惚れちゃったんだからもうしょうがない。

その日見た夢も過去の事ではなく、甘い菓子の夢だった。
もうこのまま苦しい事を忘れられるんじゃないかって思ってしまう。
もっと菓子に触れていれば…、違う。
ガイアと触れ合っていれば、過去を忘れられる気がする…。




日が昇り、嫌でも開戦の日が近づいてくる。
今日も朝早くから戦の準備に野営地は慌ただしく動く。

「おはよう、ヘンリー」
優しくヘンリーの髪を梳いて、ガイアは朝の挨拶をする。
「あ、おはよう〜…。ガイア」
至近距離で声をかけられ夜の事を思い出し、恥ずかしくて顔を毛布で隠してしまう。
「ぷっ、お前でもそんな仕草するんだな」
「え〜、僕だって恥ずかしいんだよ〜」
「からかって悪かった。ほら、顔出せって」
そう言って、ヘンリーの手ごと布団をずらしてキスをする。
「もっと中身の空っぽなヤツだと思っていたが、全然そんな事ないんだな」
「多分、空っぽだったと思うよ。ガイアが詰め込んだんだよ〜」
「菓子をか?」
「あはは、そうかもね〜」
最近、菓子の夢しか見ていない。
あながち菓子を詰め込んだというのは間違いではないのかもしれない…。


「ガイアー!何処にいるのー!?天幕を撤去するわよー!片付けないと、お菓子捨てるわよー!?」

布団の中でまったりしていると、外から呼ぶ声が聞こえてきた。
この天幕に向けて言ってるわけではないので、なんとなく他人事に聞こえてしまうが…。
「あはは、ルフレの声だ。ガイアのお母さんみたいだね〜」
「笑ってる場合じゃないぞ?!俺の菓子が危険だっ!!」
俺の母さんはあんなのか?と突っ込みをいれたかったが、それどころではない。
ルフレの声がしたのはガイアの天幕の方からで、今まさに菓子は危険に晒されている。
ガイアは慌ただしく服を着て、それをヘンリーは布団の中から眺めていた。
「ここにあるのは、僕が死守しといてあげるよ〜」
「ありがたい。お前も呪いの道具片しとけよ。こっちの天幕もすぐ撤去しに来るはずだ」
「は〜い」
のんびりと布団の中にいるヘンリーに忠告し、ガイアは急いで自分の天幕へ向かった。

「待てっ!ルフレ、菓子だけは…!」
「ガイア!どこ行ってたのよー?今日の予定、忘れちゃったのー?!」
「いや、その、寝てて…」
「天幕にいなかったのに?」
「あ、いや…」

外から微かに聞こえるガイアとルフレの会話を何となく聞きながら、ヘンリーはゆっくり身体を起こす。
「ふふ、僕も着替えようかな〜」

今が平和じゃない事は分かっているが、この空間に幸せを感じてしまう。
これから辛い戦争が始まって、近いうちにファウダーと対峙する事になるだろう。
そのとき僕はこの幸せを守りきれるだろうか…。







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つづく

あわあわするヘンリーです。
嫌われたくないという気持ちとか、初めて芽生えた感情に戸惑いあわあわしそうだなと…。
そういうヘンリーは可愛いな〜という妄想です。
作文は妄想と愛情で出来ています(あと捏造)


5に続きます>>

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