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FireEmblem 覚醒:One 5
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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完結です。




野営地をヴァルム大陸の端から内陸へ移した数日後、神竜の巫女を救うためミラの大樹へ向かった。

ヴァルムは信仰の厚い国だと聞いている。
神竜の巫女に会うのも目的の一つだが、信仰心の強いヴァルムの民を味方につけるためでもある。
巫女がこちらに加担すれば、幾分か戦況が良くなるはずだ。
だが帝国軍が黙っていてくれるわけなく、神竜の巫女を奪回するための戦いが始まる。
色々な思惑を抱え戦場を駆け巡り、やっとの思いで敵将を討った先には、天国と見間違う程の尊厳な世界が広がっていた。
そこまでの階段がキツかったとリズは文句を言ったが、その雄大な景色に魅せられリズの文句は絶賛の言葉に変わる。
周りの空間に圧倒されながらも、神竜の巫女と会話を交わす事が出来た。
だが、永い眠りについていたせいか巫女の言葉は少なく、私は自分が分からないまま…。

いや違う、皆の前で訊くのが怖かっただけだ。自分が何者なのかを…。
巫女と二人っきりで話しが出来れば、もう少し自分の事が聞けたかもしれない。
巫女が知っているとは限らないが、最後に巫女は同じ力を感じると私に言った。
それは私の血に「竜」が関わっているからで…。

ヘンリーの言葉が頭の中に響く…。



「おかえり、ルフレ。何か分かったかな〜?」
「…ただいま、ヘンリー」
いつも通りの軍事会議を終え、自分の天幕に入ろうとしたところでヘンリーに声をかけられる。
神竜の巫女の元へ行く編成に、当初ヘンリーを組み込んでいたが、本人の希望で除外した。
本来なら一兵士のそんなワガママは通用しないが、素直に申し出を受け入れ編成を組み替え、行く直前に作戦を立て直した。
今の私にはヘンリーの言葉を無視する事が出来ない。
その申し出を受けたとき、ヘンリーは『同じ血が巫女の元に集まっちゃ駄目だから』と言った。
意味は分からなかったが、私の知らない事をヘンリーは知っている。彼の全てを信じたわけじゃないが…。
「巫女は邪竜が復活するって言ってた」
「あ〜、やっぱりそうなんだね〜」
「知ってたの?」
「なんとなくね〜」
居合わせた者にはかなりの衝撃的事実だったはずだが、ヘンリーからは緊張感の無い返事が返って来た。
知ってたからなのかと疑うが、あっけらかんとした態度が事の重大さを認識できているとは思えない。
邪竜といえば、世界を滅ぼすほどの巨大な力を持った存在だ。それが復活するというのに…。
「私と同じ力を感じるって巫女に言われたの、どういう事か分かる?」
「さあ?」
「本当に?何か隠してない?ヘンリーは私に邪竜を姉さんって呼びたくないって言ったのよ?それって、邪竜が私って事じゃないの?巫女の言葉だって、同じ竜だからじゃ…」
今までヘンリーが告げた言葉の数々が、私の中で何も知らないわけがないと訴えてくる。
「あはは、ルフレ、落ち着いて〜。一気に言われちゃ、何から説明していいか分からないよ〜」
「ご、ごめん…。でも、あなたの言葉が頭から離れなくて…」
「はあ、忘れてって言っても、やっぱり無理なんだね〜。僕の自業自得だけど〜」
「やっぱり、私は邪竜なの?」
とても違和感のある言葉だが、ヘンリーの言葉はそう言っているように聞こえた。
自分が邪竜というのはどういう事なのか…。
「ルフレはルフレだよ。そして邪竜は邪竜」
「どういうこと?」
「べつに〜」
「私をからかってるの?」
それなら私と邪竜に繋がりがなく、ヘンリーの言葉の説明がつかない。
そんな彼の無責任な発言に少し苛立ってしまう。
「からかってないよ。ルフレは邪竜になりたいの?」
「なりたくないけど、でも私は邪竜と関係してるんじゃ…」
「うんうん」
「じゃあ、巫女が言う邪竜復活って…」
聞くのが一番怖い言葉。
でも聞かないまま自分がどうにかなってしまうのは、もっと怖い…。
「阻止すれば良いんだよ。未来から来たルキナって子。あの子、使えるよ〜」
「違う。私が言いたいのは、私がこの世界を壊してしまうの?」
もう我慢出来ない。
どうなってしまうのか、ちゃんと知りたい。
「壊れないってば〜。みんなが守ってくれるよ〜」
そんな気休めの言葉は要らない。
いっそ引導を渡してもらった方が楽になれるのに…。
「私、邪竜になってしまうの…」
「ならないよ」
なのにヘンリーはしてくれない。
「ヘンリー…」
「僕ね、もっと早くルフレに会うつもりだったんだ。でも、ヘマして遅くなっちゃったんだよ〜」
「ヘマ?」
邪竜の事で一杯の頭に、ヘンリーは別の言葉を押し込んでくる。
少し理解するのに時間がかかり、ヘマが何の事か理解出来なかった。
「そう、失敗。ルフレのそっくりさんがいるように、別次元の僕も発見したんだ」
「えぇ?」
そして、やっと理解出来たところで、ヘンリーは言葉の爆弾を落としてきた。
「それって危険だよね?だからルフレに会う前に、自分ぐらいはなんとかしないとって思って。でも強かったんだよ〜、なんたって僕だからね〜。あはは」
「ま、まさか…自分を…?」
自分を手にかけるなんて…、正確に言えば自分ではなく別次元から来た自分で…。ややこしいが、殺したところで自分が死ぬわけじゃない。
今現在、ヘンリーが笑いながら立っている時点で、それは証明出来ている。
普通なら自分そっくりな人を手にかけるなんてと思うが、普段から笑いながら敵を殺すヘンリーなら躊躇う事なんてなさそうだ。
「ん〜。それが分からないんだ。わあ、互角だ〜て思って、当たり前なんだけどね〜。あはは」
「分からないって、どういう事?」
「ファウダーに感づかれちゃって、兵がいっぱい来たんだ。だから僕、凄い頑張ったんだ〜。でも、そこから記憶が無くて、気づいたら真っ暗な所に閉じ込められてたんだよ〜」
「捕まってたの…?」
緊張感のないヘンリーだが喋っている内容は笑顔で話すような事ではない。
「うん、幽閉されちゃった。でも、頑張って出て来たんだよ〜」
「よく無事でいたわね…」
それでもヘンリーは終始笑顔で、どう言葉をかけて良いものか悩んでしまう…。
楽しいはずはなく苦しかったと思うのだが…。
「ふふ、殺す気は無かったみたいだよ。僕も同じ血を引いてるから使えると思ったんじゃないかな〜?」
「じゃあ、もう一人のヘンリーはいるのね」
「いないよ。何も感じられないから」
そう言って、口元に人差し指を立てて周りの気配に気を配る素振りをする。
「ヘンリーが殺しちゃったの?」
「さあ?別にどうでも良いよ〜、いなくなっちゃったんだし〜」
「楽観的ね…」
「ふふ、だからルフレも邪竜にこだわらないで、戦争を頑張ろう!」
魔道書を頭の上にかざして笑顔でルフレを見てくる。
そのヘンリーの言葉に、これからの自分が見えた気がした。
「有り難う、ヘンリー。あなたと話したら少し楽になったわ」
「どういたしまして〜」
ヘンリーの伝えたかった事は、ルフレは邪竜だと言う事ではなく、私から邪竜を消せるという事。
そして、どうすれば良いのか分からないままだが、諦めるにはまだ早すぎるという事。


「じゃあまたね〜ルフレ〜」
「またね」
手を振ってルフレは天幕に入っていき、ヘンリーはそれを確認してから天幕に背を向ける。
そして顔を上げると、一人の男がこっちを見て来ていた。
「あ、ガイア〜」
「…ルフレと仲良いんだな」
敵地だから菓子の調達が難しいのか、いつもより小さな布袋を手に不満そうな顔をヘンリーに向けている。
イーリス軍とバレないように変装でもすれば、町での買い物は出来そうではあるが…。
「うん、大事な人だからね〜」
「そういや、最初に声をかけた時もルフレを見てたな」
「軍ではどうしてるのかな〜?て思って〜」
ルフレの記憶が無いと知り、どう切り出そうかと様子を伺っていたのだが、その行動がガイアの目に留まってしまったのだ。
そんなに怪しかったかな〜?と今でも思うが、ガイアに言わせれば「ペレジア装束で味方と思えというのが間違っている」だそうだ。
確かにそうかもしれないが、呪術士らしいこの服装を気に入っていて、同じ呪術士のサーリャも好んで着ている。
「最初から決まってたんじゃないか」
「ん?なにが?」
服装の事を考えていると、ガイアが何かを訊いてきた。
咄嗟に呪術士の服装の事かと思ったが、何が決まっていたのかと首を傾げる。
「お前が一緒に居たいヤツ」
「ガイアだよ」
言われて、ああ〜!と思ったが、考えるより先に口から名前が出た。
「いや、ルフレだろ。大事にしてやれよ」
だが、即否定されてしまう。
なんで?と意味が分からなく考えていると、ガイアはヘンリーから視線を外し歩き出した。
「待って!ガイア、違うよ?」
「もう、俺は良いだろ…。まあ、数日だけだったけどな」
待ってと言われて少し足を止めたが、ヘンリーの方を見る事なくまた歩き出す。
「違うってば、話しを聞いてよ!」
意味が分からなく、らしくなく大声を上げガイアを呼び止める。
ガイアの言葉は理由は分からなくても意味は分かる。
ずっと一緒に居てくれると言い、好きだと抱いてくれたのに、今は別れを告げてくる…。
どうして僕から離れようとするの…?
僕は幸せを手に入れては駄目なのかな?どうしてみんな僕の前から居なくなるのかな…。
わけが分からなくて涙が止まらない…。
「必死だな」
足を止めてガイアは見てくる。でも近くには来てくれない。
もっと近くに居て欲しい…、触れて欲しいのに…。
「だって、もう嫌だから…」
もう独りにはなりたくない。
人の温もりを感じたい。ガイアの温もりが恋しい…。
「ルフレがいるだろ」
「違うよ。ルフレはガイアじゃない…」
「大事なんだろ?」
「お姉さんだから…」
辛くて嘘なんて思いつかない。
まだ言うつもりはなかったけど、もう耐えられそうもない。
「なに?」
「ルフレは僕のお姉さんなんだよ。母さんは違うけど…、ルフレは僕の大事な家族なんだ」
「それは本当なのか?初耳だが…」
「誰にも言ってないからね。ルフレも記憶喪失だったし…。僕はルフレの存在に気づいてイーリスに来たんだよ。それが僕の目的の一つだったんだ。隠しててゴメンね…」
何処まで信じてもらえるか分からないが、本当の事を伝える。
信じてもらえなければ諦めよう。ガイアにとって僕はそこまでの人間だったって事だ。
でも止まらない涙で、諦めきれない自分に気づかされる。信じてもらえなくても、自分の気持ちは変えられないから…。
「そうだったのか、てっきり俺は…。無神経な事を言っちまって、すまん…」
ふと目尻にガイアの人差し指が触れる。顔を上げるとガイアが目の前に立っていた。
表情は涙のせいで良くわからなかったが、優しい声に安心してガイアの胸に顔をうずめる。この温もりを失いたくない。
「ううん、ちゃんと言えなかった僕が悪いんだよ」
「いや、その…男の嫉妬は格好悪いよな」
ガイアは頭をかきバツの悪そうな顔をした。
そんな仕草から誰を一番に考えてくれているかが分かって、らしくなく泣いてた顔にやっと笑顔が戻る。
「ううん、ガイアはカッコいいよ〜」
「ごめんな…、悲しい思いをさせて…」
「もう大丈夫。ガイアが側に居るから〜」
いつもの笑顔でガイアにしがみつき温もりを再確認する。
人の温もりとガイアらしい甘い香りが心地良い…。
「ああ、ずっと一緒に居るからな」
そうガイアは耳元で囁き、ヘンリーを優しく抱きしめる。
「お前が嫌がっても離さないぞ」
「うん、僕も〜」


カタン
微かに物音がして天幕の入り口が開く。

「えーと…、私の天幕の前で何かしら?見せびらかし?」
開かれた入り口から控え目に「姉」が顔を覗かせた。
「ル、ルフレ!?」
「そんな驚く事ないでしょー?誰の天幕の前だと思ってるのよ」
入ってったの見てたでしょー?と、ルフレは呆れた表情でヘンリーを見る。
そのヘンリーはガイアにくっついたまま、ルフレに言葉を返した。
「ルフレ〜、ガイアに僕たちの事バラしちゃった〜」
「そ、そう…。私もあなた達の関係、知っちゃったけど…」
ルフレはまだヘンリーが異母姉弟とピンっときていないらしく少し吃ってしまう。
記憶がないからしょうがない事で正直まだ戸惑いはある。だけど自分の事を思って色々助言してくれるヘンリーが弟というのは悪くはない。
そして、この二人の関係も別に悪い気はしない。自分が狙っている相手なら話しは別だろうが…。
「じゃあ…、お互い様だな」
「弟を宜しくね?ガイア」
「…、反対しないとは、器の大きな姉さんだな」
「あはは〜」
「お前は本当、能天気だな…」
男同士なんだから反対されるとか少しは心配しろよ?と、ガイアは呆れた表情でヘンリーを小突いた。
そのヘンリーは小突かれてもやはり笑っている。
「羨ましいわね」
「羨ましがるような事か?」
思わず笑いっぱなしのヘンリーの顔を覗く。
ヘンリーのような能天気な笑いをルフレはしたいのだろうか?女にはどうかと思うが…。
「はあ、私も恋がしたい…」
「そっちかよ…」

こっちは男同士だが、弟に先を越されたという意識でもあるのだろうか?
何を言ってやれば良いのか、まったく気のきいた言葉が出てこない…。

とりあえず、婚期は逃すなよ…と、心の中で忠告してみる。
戦闘に明け暮れる日々では逃しやすいだろうと…。






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おわり。

もっと真面目な終わりになる予定が…。
ルフレの婚期を心配するガイアで〆という…。
話しの中心が異母姉弟というよりガイヘンになってしまいました。
一応アンケからのネタです。希望に添えているかは謎ですが…。なんたって、異母姉弟の部分が薄く…スミマセン。
そして、相変わらずの読みにくい文章で…。誤字脱字が無い事を祈ります…。
ここまで読んで頂き有り難うございます。
よろしければ、下記の方にも目を通して頂けると嬉しく思います。

これでOneは完結ですが、続きのような『希望に咲く闇:異母姉弟編』というのがあります。
少し書き換えただけの、ほぼ『希望に咲く闇』のままですが、より深くこの三人の関係が深まるよ〜な感じになるかと思います。(思うだけですが…)
『希望に咲く闇:One編』 2       後日談 ××

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