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FireEmblem 覚醒:ガイ誕2014 2
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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「ルフレ!!起きろっ!!」

まだ朝靄がかかった野営地に子供の声が響く。
起きている者はまだ少なかったが、何事かと音に敏感な者達が天幕の外に顔を出した。

「起きてるわよー?」

声をかけた天幕の中からも、やっと返事が聞こえ、入り口が開かれる。
「あら?誰もいない…」
「下だ、下!俺だ、ガイアだ!」
「あ、ああ…ガイア。どうしたの?」
キョロキョロと左右を見ていたルフレだが、下と言われて目線を落とした。
そこには、昨日見たままの小さいガイアが立っており、厳しい表情でルフレを見上げている。
「ヘンリーが居なくなった」
「えっ?まさか…」
「多分、ひとりで山に…」
「いつ頃?」
訊かれて記憶をたどってみるが、ヘンリーが目を閉じるのを確認して、そこで自分の記憶が止まっている。
記憶はないが分かっている事は、最初からヘンリーは寝るつもりがなく、山へ行くつもりだったという事だ。それは寝る前の会話でも分かる。
とは言え、子供の身体は言う事をきいてくれず、結局ヘンリーより先に寝付いてしまったのだ。
「起きたら既に…」
「そう…、責任を感じてるみたいだったから、討伐前にガイアを戻そうとして…」
「それって、かなり前って事だよな。いや、まだ戻って来てないって事は、何かあったんじゃ?」
寝たのは日付をまたぐ前…、なら既に5時間以上は経っている。そんな遠い山ではない事は、前に蜂蜜を採取した場所なので知っている。
奥まで入った事はないが、討伐前に呪いを解こうとしたのなら、既に戻って来ていなければおかしい。
「待って!ガイア!!」
「ぶっ!」
走り出したガイアのマントをルフレは引っ張り、またしても前のめりに倒れてしまう。
「あ…」
「早く探さないと!」
申し訳なさそうにルフレは声を出すが、ガイアは気にせず立ち上がり、また走ろうとする。
そのマントを慌ててもう一度掴み、ルフレはガイアを宥めた。
「分かってるけど、落ち着いて!すぐ討伐に向かうから」
「だが…」
「ガイアは野営地でヘンリーの帰りを待ってて。私たちが見つける前に、戻ってくるかもしれないでしょ」
「じっとしてられるかよっ!」
「だからって、子供の身体で何が出来るの?ヘンリーのためにも野営地に残るの!良いわね!?」
ルフレはガイアのマントを自分の方へ引っ張り、身動き取れないようにマントのフード部分をがっちりと掴む。
「必ず連れて戻るから」
ルフレを見上げて、ガイアは頷く。
「分かった…。ガキはガキらしく待ってるよ」



慌ただしく討伐の準備が進められ、野営地では出撃の最終確認が行われている。
その様子をガイアは不満そうに見つめていた。
「で、俺は何でノノに抱っこされてるんだ…」
「何故かしらね」
「ルフレ、お前、俺を信用してないな…」
野放しにするとヘンリーを追って行くと思ってんだろと、ガイアは疑いの目でルフレを見る。
真剣な表情で配置図をチェックしていたルフレは顔を上げ、笑顔でガイアの方を振り向いた。
「そんな事ないわよ?ひとりでいるより心強いでしょ」
「だからって…」
笑顔で言われても、ガイアの不満そうな顔は変わらない。
「よーしよしよし、ノノが遊んであげるから、機嫌なおしてね!」
あやすようにノノは身体を揺すり、ガイアの頭をなでなでする。
「あのなぁ…」
「えへへ、ノノ、お母さんみたい。ねー?ロンクー」
ノノは満足そうに抱き直し、親子みたいでしょ?と、ガイアを抱っこする姿をロンクーに見せた。
「…ああ」
ノノに訊かれたロンクーは素直に頷き顔を赤らめ、そのまんざらでもない態度にガイアはイラッとする。
お前の女が抱いてるのは、子供じゃないんだぞ…と。
「なに素直に頷いてんだよ。他の男を抱いてるんだから、少しは嫉妬でもしたらどうなんだ」
「子供相手にそれはない」
「誰がっ」
誰が子供だ?と言い返そうとしたが、ノノが先に口を開く。
「ねえ、ロンクー。ヘンリーをお願いね!」
「…分かっている」
「お、俺からも頼む」
「ああ」
ノノの言葉で言い返す気はなくなり、らしくないがヘンリーの事をロンクーに託す。
ガキの姿じゃ足手まといだという事ぐらい分かっている。
今は言い合ってる場合じゃないんだ。


ルフレやロンクーを見送り、ノノに抱っこされたままガイアは溜め息をつく。
「むう、子供らしくないよ!」
「…溜め息をついただけだろ。ったく、何処にも行かないから下ろしてくれないか」
「えー、やだー!」
ノノの腕の中でモゾモゾ動くと、逆に強く抱きしめられてしまう。
「ぐっ…、何処にも行かないって言ってるだろ?」
「むぅ、ノノは抱っこしてたいの!」
「はあ、これが溜め息つかないでいれるわけないだろ…」
腕の中でぐったりと項垂れ、もう一度溜め息をつく。
その様子に気づいていないのか、ノノは笑顔でガイアの顔を覗き込んできた。
「ねえ、遊ぼうー?」
「ママゴトはしないからな」
「えー!」
「お前のママゴトは、旦那が必要不可欠だろ?」
ただの役なのだから、子供の姿だろうと自分が旦那役を引き受ければ万事解決だ。が、ノノの旦那役と言えばロンクーだろう。
本人に言うと怒るだろうが、他は考えられない。まあ、ママゴトは最初からやるつもりはないが…。
「じゃあ、何して遊ぶのー?」
「だったら遊びじゃないが、ちょっと付き合って欲しい事がある」
「ヘンリーを探しにいくのは駄目だよ!」
「分かってるよ、菓子を作るのさ。ヘンリーが戻って来たら、出来立てを食べさせてやろうと思ってな」
夜遅くに出かけたのなら、きっと腹を空かせているだろう。
温かい御飯も良いが、やっぱり自分と言えば菓子で、その方がヘンリーに気持ちが伝わるはずだ。
危険だと怒るより、無事に戻って来たら、まず労ってやりたい。自分の言葉が足りなかったせいで、ヘンリーは出て行ったんだ…。
「わあっ!ヘンリー喜ぶよ!!」
「だろ?だが、ガキの身体じゃ色々と不便でな、ノノに手伝ってもらいたいんだ」
「うん、ノノ手伝う!!」
大きく頷いて、ノノはガイアを抱き直し、張り切って厨房へ向かった。

午後を回り、討伐隊は屍兵と戦っている頃だろうか…。
野営地の一角では、それとは真逆のほのぼのとした空間が広がっていた。
「ノノ、ちょっと抱っこしてくれないか?」
「わあ!ガイアが抱っこをおねだりしてくれたー!」
ノノは目を輝かさせ、ガイアを見つめる。
「ちがっ!そろそろ焼き上がったか、確認したくてだな…。まあ、椅子もって来るからいいや…」
何の気無しに言った事に大喜びされ、ノノの台詞に恥ずかしくなってしまう。
下から釜を見上げ溜め息をつき、面倒くさそうに一番近くにある椅子に視線を移した。
「えー!!椅子は駄目だよー、落ちたら危ないよ!!ノノがちゃんと抱っこしてあげるっ!!」
「はあ、どっちでも良いよ…」
これはもう子供扱いとかそんなんじゃない。
母親になりきって、子供の面倒を見れるのが楽しくてたまらないのだろう…。
もういいやと大人しくノノに抱かれ、釜の中をのぞく。
「どうー?」
「ああ、良い感じだ」
生地はふっくらとキツネ色に焼き上がっていて、釜の隙間から甘い香りがほんのり流れてくる。
「やった!じゃあ、ノノが出してあげるね!」
「ああ、頼む」
ノノはミトンをはめ、釜の中をのぞく。
「火傷するなよ」
「うん、だいじょうぶー」
危なっかしいノノの手つきをガイアはじっと見つめる。
ゆっくり焼き上がった菓子をテーブルの上に置き、ノノとガイアは大きく息を吐いた。
「ふうー」
「サンキュ、ノノ」
満足そうに焼き上がった菓子を眺めて、二人は菓子を一つずつ手に取って試食をする。
「もぐ…、わあっ、美味しい!!」
「よし、上出来だな」


厨房の外から複数の声が聞こえてきて、焼き上がった菓子を籠に移す手を止めた。
内容までは聞き取れなかったが、慌ただしさを感じる。
「なんだろう?外が騒がしいね」
「行ってみるか」
「うん!」
当たり前のようにノノはガイアを抱っこして、人だかりの方へ向かった。
「何があった?」
「ん?ああ、ガイアかって、わはっ!本当に、ちんちくりんだな!!」
声をかけられた人物は、振り向きガイアと目が合い、指をさして笑う。
だが、もう何も言い返す気になれない。なぜ子供の姿なのかをいちいち説明するのが面倒くさく疲れる…。
「そんな事より、何の騒ぎだ?」
「ああ、討伐部隊から援軍の要請だ」
「援軍?」
「戦況がヤバイみたいだな。今、ティアモが戻って来て、ルフレの指示をこっちで待機してる奴らに伝えてるところだ」
「…」
周りを見渡すと、慌ただしく武器を運ぶ者や、さっきまで普段着だった者が武具を装着している。
広間を行き来する者の表情は険しく、状況が厳しいという事は詳しく説明を聞かなくても分かった。
「で、俺様に与えられた指示は、お前らの見張りだ」
「はあ?なんでオマエに見張られなきゃならないんだよ!?」
「そうだよ!ヴェイクに見張られるなんてイヤだよー!」
「何だよ、お前らよってたかって…。俺様だってガキのおもりは冗談じゃねーよっ!」
ヴェイク自身、なぜ見張らなきゃいけないのか、よく分かってはいなかったが、こんなに反発されるなんてとたじろいでしまう。
二人の見た目が子供のため、なめてかかっていたせいでもあるのだが…。
「じゃあ、見張らなくていいから、お前はクロム達の援護にでも行け」
「ガキが俺様に指図すんなっつーの!俺様だって援護に行きてーよ?だけど、ルフレの指示だからな…」
だが、見た目三歳児に指図されるのは癪に障る。
そして、その三歳児はヴェイクの不満を他所に真剣な表情で呟く。
「ルフレのヤツ…、そんなに俺が信用できないのかよ…」
「ガイア、どうしよう…。ノノ、ヘンリーが心配だよ…。ロンクーも大丈夫かな…」
「くそ…」
今もこうしている間に、ヘンリーは危険に晒されている。
想像したくはないが、戻って来ていない以上、元気でいるとは考えにくい…。
「お前ら、助けに行きたいのか?」
「ヘンリーは単独で山に入ってんだよ…。討伐隊が向かう前からな」
「まだ戻って来てないのか」
「ああ」
「なるほどなあー。それで、お前らを見張っとけって俺様は言われた訳か…。ルフレのヤツ水くせぇな。ヘンリーの事、何も言ってくれなかったぜ?」
ルフレがヴェイクに話さなかったのは、同情して見張りを拒否すると思ったからだろう。
だが、こっちから話すのも、ルフレの中では想定内な気がする。
「ヴェイク、見逃してくれないか?もう、待ってるだけじゃ…」
「ノノからも、お願い!ガイアはノノが守るから、行かせて?マムクートのノノは強いよ!!」
「そう言われてもなあ、俺様だって…」
「責任は全部俺が取る。だから頼む、俺たちを行かせてくれ」
そして、俺がこう言うのも全部お見通しなんだ。
無責任な行動をとるつもりはないが、ルフレに再確認させられた気分だ…。
「んー…」
「お前だって、援護に行きたいんだろ?こんな所にいたって、何も出来ないからな」
「それはそうなんだけどよ…」
「ヴェイク、頼む。アイツを…、ヘンリーを助けるどころか、見つける事すら出来ないなんて、俺は耐えられないんだ」
このまま会えなくなってしまうなんて考えたくない。
解呪の材料なんてどうでもいい。ヘンリーさえ無事でいてくれれば…、自分は一生このままでも構わない。
「だから、頼む…」
「わーったよ!しゃーねーなっ!!ティアモは堅物女だから、内緒で行くぞ。俺は軍の援護、お前らはヘンリーの救出。それで良いな?」
「ああ、助かる」
「ありがとうっ!!ヴェイクッ!!」
「まあ、俺様もじっとしてるのは性に合わないからな」
二人に感謝され、恥ずかしそうに頭をかいてヴェイクはヘヘッと笑う。
「よっしゃ、行くぞ!ティアモにバレないように静かになッ!!」
「…お前が一番心配だ」








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つづく

3に続きます>>

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