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FireEmblem 覚醒:ガイ誕2014 3 |
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出来立ての菓子を袋につめ、簡単な準備をして、こっそり三人は野営地を離れる。 山道に入り、ノノは来た道を振り返った。 「誰も何も言わなかったね!」 「ピクニックだとでも思ってんのかもな。自分で言いたくはないが、子供二人とヴェイクなわけだし…」 「だな、子守りにしか見えねーよな!」 言ってヴェイクは、ノノに抱っこされているガイアを見て笑う。 「…まあな」 不満げに返事を返して、ガイアは辺りを見回した。 まだ山の入り口付近だが、嫌な空気が漂っていて薄暗い。 不気味な静けさもあり、最悪の事態をつい想像してしまう…。 「みんな、大丈夫かな…」 「まだ、山に入ったばかりなんだ。奥の方に居るんだろ」 「だと良いがな」 ヴェイクは徐々に狭くなる山道の先を見つめて言う。 今のところ、通った道と見える先に、争った形跡はない。 「ヴェイク、先に行って良いぞ。ひとりの方が身軽だろ?俺たちは、ヘンリーを探しながら進む」 「そうか?この辺にも敵が居ないとも限らないからな、気をつけろよ」 「ああ、ノノが居るから平気だ」 ガイアはそう言うが、小さいノノがさらに小さいガイアを抱っこしていて、どう見ても道に迷った幼い姉弟にしか見えない。 確かにノノはマムクートなのだから強いハズなのだが…。 「ガキくせぇノノだから心配してんだろーが。お前もちんちくりんだしな」 「ノノはガキじゃないもん!!ノノが竜になったら、ヴェイクなんてペッチャンコなんだからね!!」 「なんだとっ!?せめてブレス吐けよな!!踏むなよっ!!」 ヴェイクは馬鹿にしてんのはどっちだ!?と、ノノに指をさして抗議した。 「ベーッ!!」 ノノは負けじとヴェイクにアッカンベーをして対抗する。 「おい、騒ぐなよ。こんな所で、敵に見つかったら厄介だろ」 言い合う二人に挟まれ、ガイアは疲れた表情で口を開く。 「おう、そうだな。じゃあな!気をつけろよ」 「ヴェイクもねー!」 「ああ、また後でな!!」 斧を背負い、ヴェイクは大きく手を振って、薄暗い山の中へ消えていった。 「さて、俺たちも行くか」 「うん!」 まだ時刻は午後を過ぎたくらいだと思うが、木々に遮られているせいで太陽の光が殆ど入ってこず、どんどん時間の感覚が失われていく。 微かに差し込む光を頼りに、二人は慎重に山道を進む。 「ノノ、注意しろよ。まだ新しいキズだ」 ガイアが指差した先には、黒い大木に白い鋭利な線が斜めに刻まれていた。 注意深く辺りを見渡すと、折れた剣先や壊れた武具が地面に散らばっている。 「ガイア…」 ノノは不安な表情で辺りを見回し、ぎゅっとガイアを抱きしめた。 「ああ、ここまで屍兵が下りて来てたんだろう」 「まだ、この辺に居るかな?」 「どうだろうな…、気を抜くなよ」 「うん」 パキ ノノが頷くと、茂みの中から枝が折れる音が聞こえてきた。 ガサ 次に、草木が擦れる音が耳に入ってくる。 「!?」 「ノノ、下ろしてくれ。もしもの時は、分かってるな」 「う、うん。竜石はちゃんと持ってるよ」 ノノは腰に付けていた袋をガイアに見せる。 「よし」 グゥルリュルル… 獣の唸り声のような尋常じゃない人の声が、薄暗い密集した木々の奥から聞こえてくる。 「屍兵?」 「多分」 注意深く気配を探り、徐々に近づいてくる唸り声に耳を傾ける。 「ノノ、来るぞ」 「うん!」 ノノは頷き、袋から竜石を取り出す。 「あっ!」 「どうした…って…」 光るモノがノノの手から落ちて、草むらを転がっていくのが見えた。 「竜石がっ!!待ってー!」 慌ててノノは走り出し、ガイアも慌ててノノを止める。 「コ、コラ!!ノノ、待て!!俺が拾うから、ノノは早く隠れろ!」 「でもっ!」 「竜石はいいから!まだ姿が見えない内に、隠れるんだ!!」 ノノのマントを引っ張って、ガイアは隠れるのに良さそうな木々の密集した場所を指差す。 「ガイアはー?!」 「俺は平気だ!隠れて待ってろ!」 その木々の中にノノを押し込んで、ガイアは竜石を追いかけて草むらに出る。 ガイアの走って行ったその後ろから、赤く光る二つの点が浮かびあがり、黒い影が大きく揺れた。 「うわーん!」 「泣くな!!見つかっちまうぞ!!」 赤い光が小さなガイアを捉えたのか、動きを止め、手に持った武器を大きく振りかぶった。 グギャアアーーー!! 獣のような汚い断末魔が聞こえ、鈍い音と共に何かが倒れる振動が地面に伝わる。 ノノは恐る恐る顔を上げて、音がした方に目を向けた。 「ガイ…、あっ!」 そこには、黒い物体から剣を抜く男の姿があった。 「ロンクー!!」 「お前たち、こんな所で何をしている…」 ロンクーは険しい表情でノノを見る。 そして、もう一人居るはずの人物を目で追う。 「まだ、討伐は終わっていないぞ」 「知ってるよ!助けに来たんだよ!!」 ホッとした表情をノノは見せ、隠れていた木陰から出てきた。 「ここは危険だ、早く戻れ」 「危険なのは分かってるよ!」 「足手まといだ」 「ならないもん!」 頬を膨らませ、ノノはロンクーを睨む。 「おい、ノノ」 睨み合う二人の間にガイアは声をかけ、ノノに石を投げて渡す。 受け取った石を眺めて、ノノは笑顔を見せた。 「竜石!!有り難う、ガイア!」 「これで足手まといにはならないだろ。ノノを一緒に連れて行ってやってくれ」 言ってガイアは、ロンクーを見る。 「…」 「え?ガイアは?」 「俺は足手まといだからな。ひとりでヘンリーを探す」 「ええ?駄目だよ!!危険だよ!!」 ノノは抱っこしようとガイアに近づくが、その手を躱しガイアはノノと距離を取る。 「いや、小さい分、屍兵に見つかりにくい。職業柄、潜むのは得意だしな。小回りも利くし、今の俺にはぴったりの身体だよ」 「でも」 「ノノはロンクーを守ってやれよ。マムクートが一緒なら、そいつも心強いだろ」 「そんなあ…」 もう一度ノノはガイアに近づこうとするが、今度は後ろからロンクーに肩を掴まれてしまう。 無言でロンクーはガイアを見て、ガイアは頷いて小さなマントを翻す。 「じゃあな!」 「ガイア!待ってよー!!」 ノノは呼び止めようとするが、小さなガイアの姿は木々の中へ消え、すぐ見えなくなってしまった。 じっとガイアが走って行った方をノノは見つめ、ロンクーの手を自分の肩から払う。 そして払った腕を引っ張って、ノノはロンクーにせがんだ。 「ロンクー、ガイアが行っちゃったよ!追いかけようよ!?」 「駄目だ。追いかけところで、俺の説得を聞くような奴じゃない。止める事は出来ないだろう」 「ロンクーの馬鹿!!嘘つき!!!!!」 今度は引っ張っていた腕を力いっぱい放る。 「な?馬鹿だと…」 「ヘンリーを助けてくれるって言ったのに!!」 「いや、屍兵と戦いながら探してた」 「じゃあ、今は?ノノとの約束を破るの?」 ノノは泣きそうな顔でロンクーを睨みつけ、ガイアが拾ってくれた竜石をぎゅっと握った。 「だから探して…」 「じゃあ、ヘンリーを探しに行ったガイアを追いかけて!!」 もう一度ノノはロンクーの腕を掴んで、奥へ行こうと引っ張る。 「アイツはアイツなりの考えがあって、一人で…」 「もういい!!ヘンリーもガイアも助けてくれないロンクーなんて大っ嫌い!!!!!」 またロンクーの腕を力いっぱい放り捨て、ノノは山の奥へ走って行った。 「待て!!」 「ヤダ!待たないもん!!ロンクーのバカーーーッッッ!!!!」 呼ばれてノノは振り返り、もう一つ腰に付けていた小袋をロンクーに投げつけた。 「!?」 小袋は胸にぶつかり地面に落ち、ロンクーはそれを拾い上げる。 袋を開けてみると、中には焼き菓子が数個入っていた。 「ちっ…」 ロンクーは小袋を握りしめ、ノノが走っていた方を見つめる。 ------------------------------------- つづく 4に続きます>> UP |