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FireEmblem 覚醒:ガイ誕2014 4 |
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これから明るくなるのか、それとも暗くなるか…、空を見上げてもサッパリ分からない。 時刻は午後を回っていると山に入る時に確認したので、これから明るくなる事はないだろうが、時間の感覚はもう完全に無くなってしまっている。 「はあ、いつもの倍は歩いてると思うんだが、半分も進んでない気がするな…」 ガイアは足を止めて辺りを見回す。 「視界が低くて駄目だな…」 溜め息をつき、何か落ちていないかと、草むらをかき分けて進む。 少し視界が開けた場所に出て、山に合わない色が目に入ってくる。 「あれは…」 辺りを確認してから草むらを出て、ガイアはそれを手に取った。 「魔道書…。色からして闇魔法か?」 紫色のカバーがかかった書物は、よくヘンリーが持っていた魔道書に似ている。 ヘンリーの物かどうかは分からないが、魔道書を拾い、他に何か無いかと周辺を隈無く探す。 「ん…」 崖を見つけ近づくと、新しい土が見えている部分を発見する。 そこから下を覗き、見た事のある頭頂部に目が止まった。 「ヘンリー!?」 落ちそうなくらい身を乗り出して、崖下の頭に声をかける。 「おいっ!ヘンリー返事をしろ!俺だ!!」 だが、頭は動く事なく、返事も返ってこない。 「まさか…、っ!?」 もっと近づこうと身体を崖下に向け、土砂の崩れる音と共に視界が回り、何かに跳ね返って地面に身体が転がった。 「げふっ」 「ぐっ」 自分のモノじゃない声がして振り返ると、崖を背に座り、腹を擦っている人物が目に入ってきた。 「ヘンリー!」 すぐヘンリーだと分かり、急いで近づき、小さな手でヘンリーの腹に触れる。 「あれ、ガイア?どうしてココに〜…」 「大丈夫か?」 「ガイアは大丈夫〜?」 「俺はヘンリーのおかげで…」 言いながら申し訳なさそうに、ヘンリーの腹を擦る。 「あはは、よかった〜」 「怪我はないか?」 確認するようにヘンリーの全身を見回し、下半身に目が止まる。 投げ出された右脚の衣服が破れ、露出した肌から血がにじんでいる。 「足を滑らせちゃって、崖から落ちちゃったんだ〜」 「今、手当てしてやる」 ガイアは腰のポーチから傷薬を取り出し、額に巻いていた布を外す。 「大丈夫だよ〜」 「駄目だ。血が出てるぞ」 傷口に触れ、自身のマントで血を拭い、薬を塗る。 「ごめんね」 「謝るなよ」 「いっぱい迷惑かけて…」 「迷惑なんかじゃない」 手際よく手当をしながらガイアは言葉を返す。 身につけている物も小さくなっているため、包帯の代わりにしようと頭から外した布も短く、代用品としてはギリギリの長さだった。 手当を終え、ガイアは少し物足りない表情をし、余った薬をポーチに戻す。 「心配かけてるよね」 「もういいだろ、お前らしくないな。いつもみたいに笑えよ」 溜め息をついて、ガイアはヘンリーを見上げる。 反省するなとは言わないが、あまり謝られるのは好きじゃない。 「無理だよ…。ガイアの誕生日を台無しにして…、みんなに迷惑かけて心配させて…、笑ってなんていられないよ」 「そんな事、まだ気にしてんのかよ。誕生日なんて毎年来るんだから、1年くらいどーなったって良いだろ」 ヘンリーの隣に腰を下ろし、ガイアは崖にもたれかかる。 その動作を目で追い、ヘンリーは首を傾げた。 「そうかな〜…、1年に1回だけだからって思うけど〜」 「これから毎年、何十年もずっと一緒に祝えるんだ。その中のたった一回だよ」 「うーん、ガイアがそう言うなら…」 ずっと一緒なんて言われると、年に1回の特別だと思っていた日が、普通に感じてしまう。 それはすごく残念な事だけど、ずっと一緒ならそれでも良いのかなと、ガイアの言葉に同意する。 「それに、なかなか気に入ってるんだぜ、この身体」 そう言ってガイアは照れくさそうに微笑んで、ヘンリーを見上げた。 「本当〜?すっごく嫌そうに見えたけど…」 「ん、まあ…ガキ扱いされたり、ノノにくっつかれたりと、不満も一杯あるけどな」 小さくなってからの事を少し振り返ってみるが、ヴェイクに笑われ、ノノに抱っこされっぱなしだったりと、不満しか出てこない…。 「あはは」 「だが、ヘンリーに可愛がってもらえるのは、悪くない」 ガイアはニヤリとしてみせ、ヘンリーは少し不満な表情をする。 「悪くないだけ〜?」 「いや…、嬉しかった。でも、寝てる間に消えちまうから、あまり甘えれなかったのが残念でな」 「ゴメンね…。早く戻してあげなきゃって思って…」 「その気持ちは嬉しいよ。だが、無理はするな」 労るようにヘンリーの腹をポンポンと軽く叩く。 責めたつもりはなかったが、ヘンリーにはそう感じてしまったのだろう。 もっと気の利いた言葉をかける事が出来ていれば、こんな危険な目にヘンリーは遭わなかったはずだ…。 「お前さえ無事に戻って来てくれれば、俺は一生このままでもいい」 「ええ?それはちょっと…」 真剣な表情で言うガイアをヘンリーは困った表情で見下ろす。 「不満か?」 「確かに、小さいガイアは可愛いんだけど〜。でもやっぱり、いつものガイアと一緒に居たいかな〜。このままだと僕は、ガイアのお父さんにしかみえないよ〜」 ヘンリーは困った顔のまま、ガイアの頭を撫でる。 「俺の親父は、こんなのか」 そしてガイアの真剣な眼差しは不満の表情に変わり、ヘンリーの顔もガイアと同じく不満の表情に変わった。 「こんなのなんてヒドイな〜。僕はガイアと愛し合いたいんだよ〜。親子愛じゃないからね〜?」 「分かってるよ。俺も同じ気持ちだ」 お互いの気持ちを確認し、二人から不満の表情が消える。 いつもの笑顔に戻ったヘンリーは、背中に敷いていた袋を取って、その袋をポンポンと叩いてみせた。 「材料は揃えたから、ちゃんと元に戻してあげるよ〜」 「熊の手もか…、流石だな。ありがとう」 「礼を言うのは僕の方なのにな〜、助けにきてくれて有り難う〜」 「助けてはいないけどな。俺も一緒に崖下だ」 さてどうするかなと、ガイアは崖を見上げる。 かろうじて滑り落ちた崖上まで見えるが、子供の身体と怪我人だけで這い上がれるような斜面ではない。 「あはは〜、呪いの道具も持参すればよかったな〜」 「まあ、討伐さえ終われば、誰かが探しに来てくれるだろ。ルフレはヘンリーが山に来てる事を知ってるからな」 ヴェイクもきっと合流してるだろう。 まだヘンリーが野営地に戻っていない事や、自分やノノの事も聞いているはずだ。まあ、ルフレにとっては想定内の事だと思うが…。 「ガイアはひとりで山に?」 「いや…、ノノと一緒だったんだが、色々あって途中で別れた。ノノはロンクーと一緒にいるはずだから心配無用だ」 「そっか〜、よかった」 ノノも無事なんだね〜とヘンリーは呟き、安堵の息を漏らしたと同時に腹も鳴る。 グキュルル…。 「腹減ってるのか」 「あはは、昨日から何も食べてないからね〜」 腹を擦りながらヘンリーは笑う。 ガイアはちらっと呪いの材料の入った袋に目を向ける。この袋の中には熊の手が入っているはずで、他の部位はどうしたのだろうと、つい考えてしまう…。 「おいおい、手ぶらで山に来たのかよ?もう、夕時じゃないのか…」 「すぐ戻って来れると思ってたからね〜」 「楽観的すぎるだろ」 まあ、ヘンリーにとって熊は呪いの道具であって、食べ物という認識は無いのだろう。 ヘンリーが熊を食べる姿なんて想像したくはなく、腹は空かしているだろうがホッと胸を撫で下ろす。 そして腰に付けていた小袋から、焼き菓子を取り出してヘンリーの手のひらにのせた。 「ヘンリーのために焼いて来たんだぜ」 「わあ、有り難う〜!」 嬉しそうにヘンリーは焼き菓子を口に押し込み、その姿を満足そうにガイアは眺める。 「結構、自信作なんだ」 「うん、おいしいよ〜!」 小袋に入っていた焼き菓子を全部平らげ、ヘンリーは満たされた腹を撫でる。 その横でガイアは自身のマントの中を探り、隠し持っていた菓子の大きさを確認していたが、ふとその手を止めてヘンリーを見上げた。 「寒くないか?」 「ん〜、少し」 「冷えてるな…」 ヘンリーの手や脚に触れ、ガイアは呟く。 「じっとしてるからね〜」 「いつからココにいるんだよ…」 「いつからだろ?忘れちゃったな〜。あはは」 相変わらずの緊張感の無さに溜め息が出る。もう半日以上…いや、あと数時間で丸一日経つんじゃないのか? 「笑い事じゃないだろ。まあ、これからどんどん冷えるだろうし、くっついてるか」 「ガイアは寒くないの〜?」 「俺は暑いくらいだな。ガキは体温が高いって言うだろ?」 そして自分自身、子供じゃなくても体温は高い方だと思う。 まあ、どちらにせよヘンリーよりは高いだろう。 「じゃあ、抱っこさせてもらおうかな〜」 「ああ、良いぜ。重かったら言えよ」 「あはは、子供のガイアは軽いよ〜」 よいしょとガイアを抱き上げて、自分の膝の上に向かい合わせに乗せる。 膝の上に座ってガイアは、ヘンリーの顔を見上げた。 「どうだ、温かいか?」 「うん〜」 ヘンリーは満足そうに返事をして、ガイアをぎゅっと抱きしめる。 抱きしめられたガイアも満足そうな表情で、ヘンリーの首に短い腕を回す。 「じゃあ、誰かが見つけてくれるまで、甘えさせてもらおうか」 「あはは、見つけてもらえるかな〜」 「駄目そうなら、派手に魔法でもぶっぱなしてみるか?」 そう言ってヘンリーから少し身体を離し、ベルトに挟めていた魔道書を背中から取って見せる。 「あ!それ、僕の〜」 「落ちる前に拾ったんだ」 「ありがとう〜」 魔道書を受け取って、空いている手でガイアの頭を撫で回す。 撫でられ頭髪がぐちゃぐちゃになったが、ガイアは満足そうな表情をヘンリーに向けた。 「礼には及ばないさ。これのおかげで、ヘンリーを見つける事ができたようなモンだしな」 「やっぱり、ガイアは凄いや〜」 「いや、凄いのは俺たちの絆だろ?」 「あはは」 どや顔でガイアは言い、ヘンリーは笑いながらギュッとガイアを抱きしめた。 この絆は何があっても切れたりはしないだろう。 今はデコボコなサイズだが、それ以外は何も変わらない。 絆も愛も、何も変わりはしないんだ。 いや、変わらないんじゃない。 絆も愛も、もっと深まっていくんだ…。 ------------------------------------- つづく 5に続きます>> UP |