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FireEmblem 覚醒:アイたくて 1
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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ヘンリー魔力暴走ネタ。ガイヘン。
※いつものように捏造呪術設定です。
※相変わらずサーリャ→ルフレの一方通行です。





定例の軍事会議を終え、広場でホッと一息つく。
配置図や偵察からの情報をまとめた資料をテーブルに広げ、ルフレは現在進行中の策を確認する。
「はあ…」
マリアベルがいれてくれた紅茶を片手に配置図を眺めていると、溜め息が一つ聞こえてきた。
自分がついたんじゃない溜め息に不安を感じ、ルフレは顔を上げ目の前に座っている人物に声をかける。
「ねえ、ヘンリー。今回の策、どう思う?」
「ん?」
自分に向けて溜め息をつかれた気がして声をかけると、その人物は首を傾げてこちらを見てきた。
「今、溜め息ついたでしょ?私の策に不満があるんじゃないの?」
「あはは、僕は軍師じゃないから分からないよ〜。でもルフレの策はいつも凄いと思うよ〜」
「うーん、そうかしら…」
じゃあ今の溜め息は?とルフレは疑いの目をヘンリーに向ける。
「うんうん、だいじょうぶだよ〜」
「ウソ」
らしくない返事に、ヘンリーは不思議そうにルフレを見つめる。
「うん?」
「不満があるくせに」
「あれ?」
だがルフレの口は動いておらず、ヘンリーはキョロキョロと辺りを見回した。
ルフレもヘンリーと一緒に周辺を見渡し、暗がりから恨めしそうにこっちを見てくる視線に気づく。
「サーリャ」
名前を呼ばれて静かに近づき、その者はルフレの前に座っているヘンリーを睨みつけて言う。
「はっきり言えば良いじゃない」
「別に不満なんてないよ〜」
「私は不満よ。ガイアが居ないからって、ルフレにべったり…」
「え〜?べったりしてるかな〜。ちょっと、見てただけだよ〜」
困った顔でヘンリーはルフレを見る。
目が合ったルフレは、ヘンリ−の溜め息の理由を何となく理解した。そして、サーリャの不満も…。

サーリャとヘンリーの間に何とも言えない空気が流れる。
そんな空気の中、どうしたものかと腕を組み、ルフレは新たな策を絞り出す。
「じゃあ…、ヘンリーに特別な任務を出しちゃおうかな」
配置図をヘンリーの目の前で広げて、ルフレはにっこりと微笑んだ。
「任務?」
「ガイアの護衛なんてどうかしら?」
「ん、ガイアはココに居ないよ〜?」
ヘンリーは不思議そうにルフレを見る。
戦は始まっていて、ルフレの策でガイアは既に野営地を離れて行動している。
それは一部の者だけで、軍本体は野営地で待機中だ。
ヘンリーの溜め息は多分その事で、早く会いたいという気持ちがあるのだろう。
隠しているようだが、二人が恋仲だと言う事は、サーリャを通して何となく分かってしまった。
羨ましいな〜とルフレは心の中で呟き、広げた配置図を指でなぞる。
「ガイアは今この辺に居るはずなんだけど…」
「結構、遠いね〜」
「廃墟の宝箱漁りと周辺の偵察、敵の動向を確認しつつ進んでるから、遠いようで近いわよ」
そう言って、ペンを取ってルフレは等間隔で数個の○を配置図に描く。
「ココとココとココ、そしてココの四カ所でガイアは休憩を取るって言ってたわ。最後に記した場所で次の指示を待つ事になっていて、指示があるまでココで待機する事になってるの」
「ふーん、僕はガイアを追いかけて、この丸の場所を進んで行けば良いのかな?」
「そうね。ガイアの所には報告を定期的に受け取る兵が行き来してるから、一緒に行くと安全かもしれない。けど、自分のペースで進んでも問題ないと思うわ」
野営地とガイアの間を行き来する兵は機動力に優れた者を起用している。一緒に移動できるかどうかはヘンリーの体力と足の早さ次第だ。
馬やペガサスを駆るのも手だが、そこまでの急用でもない。
「あと、食料も少し運んで欲しいかな」
「はーい」
「いい返事ね。屍兵の排除が優先で、この任務はその後でね」
「はーい、いっぱい現れたって場所の排除だね〜」
「ええ、確認できてるだけで、屍兵は4カ所に固まって出現しているって、ガイアからの報告よ。その中の一カ所で、場所は覚えてる?」
地図に視線を落としてルフレは訊き、ヘンリーは指で場所を示してニッコリ微笑んだ。
「ここだよね?戦う場所は忘れないよ〜。忘れたら戦えなくなっちゃうからね〜」
「持ち場の排除が終わったら、ガイアの元へ。別の部隊が厳しそうだったら、援護を先に」
地図をもう一枚用意して、ルフレは同じ所に印をつけていく。
「お願いね、ヘンリー」
印をつけ終わった地図を畳んで、ルフレはヘンリーに差し出した。
「戦うのは僕におまかせ〜」
地図を受け取ったヘンリーは張り切って広場を離れ、自分の天幕へ戻って行った。
その後ろ姿を見つめて一息つくルフレに、サーリャは不服そうな表情を向ける。
「ヘンリーだけ特別だなんて、羨ましいわ…」
「じゃあ、サーリャにも、お願いしちゃおうかなー」
そうくると思ったわ〜とルフレは心の中で呟き、地図をもう一枚用意して先ほどと同じ印を書き始めた。
そして、地図をなぞりながら任務の説明をするルフレをサーリャは満足そうに眺める。
ただ、任務の内容は、あまり喜べるモノではなかったが…。


日付が変わり、待機していた部隊も目的地に向けて行軍を開始する。
屍兵の排除が目的の今回は、屍兵が集中する数カ所に部隊を分けて、同時に戦闘を行う。
各個撃破という手もあるが、それだと移動時間と一カ所に集中する兵力が大きすぎて無駄が多く、良策とは言い難い。
それよりも部隊を分けて、それぞれ指示された場所で屍兵を撃破する方が、効率が良く無駄も少ないだろう。
分けられた部隊もバランスが良く、特に難しい作戦だとは思わなかった。
いつも通り戦い、今日も問題なく討伐は終わると思っていた。だけど、倒しても倒しても屍兵は現れる…。
数カ所に屍兵は集中していると聞いてはいたが…。
「ん〜、おかしいな〜。減らないよ〜…」
屍兵数体を一気に魔法で焼き、ヘンリーは小首を傾げる。
その首元の風が揺らぎ、金属音が鳴り響いて、折れた矢先が足下に刺さった。
「危ないよ…」
今度は何処かからか声が聞こえてくる。
敵ではない事は声色ですぐ分かったが、この声は誰だっただろうか…。
姿を確認しようと、ヘンリーは辺を見渡す。
「ココだよ…」
後ろから声が聞こえ、ハッと振り向くと急に視界は暗くなり、何が目の前に現れたんだろう?と顔を上げる。
そして少し離れてみると、それは大きな鎧を身に纏った男で、確かに同じ軍の者だった。
「あ、カラム〜」
「ぼーとしてたら危ないよ。ヘンリー」
カラムはフウと息を吐き、ヘンリーと同じくらい開けているかどうか分からない目で、ヘンリーを見てきている。
矢がかすめた首に手を添え、いつものようにヘンリーは微笑んだ。
「ゴメンね〜、気づかなかったよ〜。助けてくれて有り難う〜」
「いいんだ。僕は皆の盾になるのが仕事だからね」
もう慣れてしまったヘンリーの緊張感のない態度に、カラムは分かりやすく盾を構えてみせた。
矢が喉元を貫いていたらなんて、ヘンリーの頭の中には無いみたいだが…。
「あはは、攻撃もだけど、カラムにも気づけなかったよ〜」
「それも別にいいんだ。慣れてるからね…」
言ってカラムは、向かって来た屍兵の攻撃を槍で受け止め、盾で弾き返した。
飛ばされて体勢を崩した屍兵に、ヘンリーの魔法が追い討ちをかけ、屍兵は跡形も無く消え去ってしまう。
「はあ、屍兵を殺すの飽きちゃったな〜」
「ヘンリーが戦うの飽きるなんて珍しいね」
存在感のないカラムにも、ヘンリーの戦争好きは耳に届いている。
むしろカラムは存在感がないぶん、彼の存在に気づかず噂話をする者が多く、軍の者の秘密は大体把握している。
ヘンリーの戦争好きは別に噂ではなく、本人もよく言ってる事ではあるが…。
「単調なんだよね〜、屍兵の強さは変わらないし〜。もっと大きくなったり、強くなったりしたら楽しいんだけどな〜」
「僕は嫌だなあ…それ」
「あはは。今はそれより、早く居なくなって欲しいんだけどね〜」
少し眉間にしわを寄せて、ヘンリーは言う。
いつも微笑んでいるヘンリーが?と思うが、その理由は何となく知っている。噂や秘密なんて本当は聞きたくないけど…。
「同感だよ…」
自分は想いを寄せる人なんて居ないが、早く戦いを終わらせたい気持ちは一緒だ。
カラムは頷いて、ある一点を見つめた。
その横でヘンリーはブツブツ言いながら、次から次へと襲ってくる屍兵を魔法で焼き払っている。
「どうして減らないのかな〜」
つまらなさそうに言い、ヘンリーは倒れていく屍兵を眺めた。
「ヘンリー、ちょっといいかい?あっちを見てくれるかな」
声をかけられ、興味の失せた屍兵から目を離し、ヘンリーはカラムの指差す方に視線を移す。
「ん、どこかな〜?」
「もっと僕の方へ、ココからなら見えると思うんだけど…」
「宙に浮いてる魔方陣?」
カラムの目線を追って、木々の隙間に目を凝らすと、ぼんやりと光を放つ円が見えた。
宙に浮いたそれは、自分が描く魔方陣の模様に何となく似ている。
「やっぱり、あれは魔方陣なのかい?」
「さあ?」
だが、それらしい術者の姿は何処にもなく、自分が使うそれとはやはり違う…。
「あそこから屍兵が出てくるみたいなんだ。さっきも、屍兵が落ちて来て…」
「え〜、どうしてもっと早く教えてくれなかったの〜」
カラムの言葉で、召喚魔法の一種かな?と思ったが、今はそんな事どうでもいい。
早く戦いを終わらせて、早くガイアに逢いたい。
「…」
じーっと見てくるヘンリーに、カラムは申し訳なさそうに口を開いた。
「ずっと言ってるんだけど、誰も僕に気づいてくれなくて…」
「あはは、ここの部隊は魔導士が中心だから、みんな術に集中しちゃってるんだね〜」
自分もカラムの気配に気づけなかったんだ。文句を言える立場ではないと、ヘンリーは笑う。
「そうかな…、僕はそう思わないけど…」
「うんうん。じゃあ、あの魔方陣みたいのに攻撃を仕掛けてみよう!」
でも、早くこの戦いを終わらせたい気持ちに変わりはない。
「え、大丈夫なのかい?」
「ん〜、あの空間を歪ませれば、壊せるんじゃないかな〜?」
ヘンリーは唸って、魔道書を持ち替える。

絶対壊せるなんて確証は何処にもないけど…。

「本当かい?」
「やった事ないからわからないけどね〜。特大のをお見舞いするよ〜」
真新しい魔道書を開き、これならと頷いて、印を指でなぞる。

永遠にここで戦い続けるのは冗談じゃない。

「無理しないでね…」
「ふふふ、つまらない戦いをずーっとさせようとした罰だよ〜」
ヘンリーは魔道書をかざし呪文を唱え、急に辺りが暗くなる。

少しでも早く僕はガイアに逢いたいんだ。

「うわ、ヘンリー!?」
ヘンリーの周りの空気が舞い、カラムの身体も少し浮く。
重い鎧を着込んだ身体が浮き、慌ててカラムは近場の岩に掴まった。
「カラムは危ないから、僕から離れててね〜。そこに居ると死んじゃうよ〜」
舞った空気はヘンリーの周りで渦を巻き激しくうねる。
竜巻にも似たそれは辺りを飲み込んでいき、どんどん大きくなっていった。
「待って、ヘン…うあぁっ!」
カラムの身体は自分の意志とは別に、勝手にヘンリーから遠ざかっていってしまう…。

早くガイアに逢いたい。
独りは不安で寂しくて、本当は一日たりとも離れたくなんかない。

皆が居るだろとガイアは言うが、それは違う。
空っぽな僕に生きる意味を与えてくれたのはキミだから…。

だから離れてしまうと、その意味が無くなってしまいそうで怖いんだ。

過去に飲み込まれてしまう前に、ガイアに逢いたい…。
もう、闇の中には戻りたくないよ…。



ドンッ!

空が真っ白に光り、少し遅れて地震のような揺れが、屍兵と戦闘中のイーリス軍を襲う。

「なに?」
魔法を唱えようとルフレは魔道書を構えたが、ただならぬ空気に詠唱を止め、注意深く辺りを確認する。
爆発のような衝撃だったが、目の届く範囲に異常な変化は見られない。
しかし、緊張の続く空気がピリピリと肌にあたり、衝撃の強さだけは身体に伝わってきた。
「天変地異…、ではないようですね」
「フレデリク」
手綱を引き、馬を宥めながらフレデリクはルフレの横に馬を寄せる。
「あちらから煙が上っています。人為的な爆発でしょうか?」
「それにしては威力が…」
多分、あの衝撃は魔法によるモノだろう。
ただ、威力が凄まじく、自分の知る限りでは、そんな魔道書は知らない。
「新たな敵の可能性がありますね」
「あの辺は、まだ仲間が屍兵と戦ってるはず…」
魔道書ではなく、個人の魔力による力だとしたら、かなり危険な存在だ。
そんな魔力を操る屍兵なんているだろうか?
フレデリクが言うように、新たな敵だとしたら、それは屍兵を操る者…。
「では、私が確認に…」
「待って、私も行くわ」
馬を駆って煙の上がる方へ向かおうとするフレデリクの背に、ルフレは声をかけた。
ルフレは徒歩だが、フレデリクの馬に手を添えて、乗せて欲しい素振りをしてみせる。
「危険です。ルフレさんは、ここで指揮を」
「大丈夫、クロムがいるから」
今度は言いながら手を振っている。
何処に手を振っているのかと、その先を見つめ、フレデリクは大きく息を吐いた。
「しょうがないですね。では…」
ルフレの手を取って自分の馬に乗せ、フレデリクは見つめた先に一礼する。
落ちないようにルフレはフレデリクに掴まり、同じ方を見て軍の将に頷いた。
「では、行きますよ。ルフレさん」
「ええ、お願い」


何かあるかもしれないと、それなりの速度で馬を進め、馬上から景色をじっと見つめる。
不自然な箇所は今のところなく、生い茂った木々に爆発の傷は見られない。
もっと進んだ先だとすれば、やはり仲間の戦っている所なのだろうか…。

ブルルル…

えぐられた土砂に馬の蹄が沈み、これ以上進むのを拒み首を振る。

「これより先を馬で進むのは難しいようですね。徒歩で進みましょう」
フレデリクは言い、下馬して足場を気にする愛馬を宥める。
次いで馬を降りたルフレは慎重に足を進めて、えぐられた地を歩いて先へ進む。
「ルフレさん、お待ちください。足が地面に…」
ルフレの後を追ってフレデリクも進むが、鎧が重いせいなのか、足が地面に取られて、なかなか前に進まない。
「大丈夫よ、屍兵は居ないみたい。仲間もだけど…」
「まさか、あの爆発に飲み込まれて…」
二人は最悪の事態を想像し、厳しい表情で辺りを見回す。
野営地ひとつぐらい余裕で入ってしまう程のえぐられた大地。それは、生い茂る木々の中、異彩を放っていた。
この深い闇に覆われてしまった黒い地に、自分まで堕ちてしまいそうだ…。
「でも、なんか気配を感じるような…」
「敵、ですか?」
「殺気とは違うけど…」
ん〜と唸って、ルフレは周辺に気を配る。
野営地でも感じた事のある、馴染みのある気配…。
確か、この気配は…。
注意深く辺りの気に集中し、ルフレは足を土砂に取られながら、黒い地を進む。
「…ルフレ」
「ん?」
誰かに名前を呼ばれた気がして、ルフレはフレデリクを見る。
だが、目の合ったフレデリクは「私ではありませんよ」と告げ、辺りを注意深く見渡す。
「そこに誰か居るのですか?」
「居るよ…」
フレデリクが問うと、ルフレの足下から返事が返ってた。
「きゃあ!?」
声のする方に視線を落とし、ルフレは思わず悲鳴を上げてしまう。
「やだっ、カラム!?」
すぐ名前は出てきたが、その姿は生首でルフレは口に手を当て息を飲む…。
「ルフレさん、よく見てください。カラムさんの身体は埋まっているだけですよ」
やっとルフレに追いついたフレデリクは、そう言ってカラムの周辺の土をかき出し始める。
その横でルフレはホッと胸を撫で下ろし、フレデリクに倣って土を払う。
「助かったよ…、ありがとう」
「どうしてこんな事に…」
二人でカラムを引っ張り上げ、なんとか生首状態から解放する。
「他の皆は?」
辺りを見回してみるが、やはり他に人の気配は感じられない。
真っ黒い焦げた地にいたっては、人どころか虫けらの生存すらあやしい…。
「ここの討伐が終わったから、他の隊の援護に行ったよ」
「カラムはどうして…」
「僕はヘンリーの近くにいたから、巻き込まれちゃって埋まっちゃったんだ。でも、誰も気づいてくれなくて…」
「え…、これはヘンリーのせいなの?」
やっぱり魔法なのかと思ったと同時に、ヘンリーの予想外な力に背筋がぞっとした。
もともとヘンリーはペレジアの呪術士で、イーリスに来てからの日が他の者より浅い。
底知れぬ魔力の持ち主だという事は、ヘンリーと同郷のサーリャから聞いている。
その噂は数年前のペレジアでの話しだが、一体どれほどの力をヘンリーは持っているのだろうか…。
「うん、宙に浮いた魔方陣みたいのから屍兵が出てくるのを発見して、魔法で壊せるかもって言って、本当に壊しちゃったんだよ」
「なんという、デタラメな事を…」
フレデリクは真っ黒い地を眺めて大きく息をついた。
「ねえフレデリク、それって前にリズが言ってたヤツに似てると思わない?」
ルフレが言い、フレデリクは自分の顎に手を添え記憶をたどる。
「ああ、ルキナさんが一緒に現れたという…」
リズの話しでは…、屍兵と一緒にルキナが妙な模様の空間から現れ、屍兵に追い込まれたところを助けてくれたという。
そして、ルキナの仲間たちもナーガの力を借りて、この地にやって来ているらしい。
どうやって未来から来るのかは知らないが、もしルキナと同じような空間を通ってくるならば…。
「壊しては駄目だったのかもしれないわね…」
「そう言われましても、もう手遅れですよ。それに、ヘンリーさんは知らなかった事ですし、彼を責める訳にもいきません」
「それはそうなんだけど…。まあ、ルキナの仲間が現れるためのモノじゃない事を祈るしかないわね…」
だったとしても、どうする事も出来ないが…。
しょうがないとルフレとフレデリクは頷き合い、そんな二人をカラムは不安そうに見つめた。
「…大丈夫なのかい?」
壊したら駄目だったかもなんて、自分がヘンリーを力ずくで止めなければいけなかったのかと思う。
止めれるとは思えないが、ヘンリーに屍兵の出現場所を教えたのはカラム自身だ。
「ん〜まあ、しょうがないわよ。カラムも一緒に私たちの隊に合流しましょ」
「ヘンリーは?みんなとは逆の方向に走って行ったんだけど…」
「彼は別の任務があるから」
「いいんですか?また何処かで、無茶な魔法を使ってしまうのでは…」
得体の知れない物体に、躊躇なく攻撃を仕掛けてしまうような人物だ。また他人を巻き込まないとも言いきれないだろう。
今回だって発見できたからいいものの、このままカラムが埋まっていたらと思うと、ヘンリーの単独行動はかなり心配だが…。
「まあ、平気じゃないかな〜」
「ずいぶん、楽観的ですね…」
「ふふ」
不安な表情で見てくるフレデリクに、ルフレは含み笑いをしてみせた。







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つづく

2に続きます>>

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