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FireEmblem 覚醒:バレンタイン
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FireEmblem覚醒

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バレンタイン2014です。




「ヘンリー」
ガイアの天幕へ行こうと広場を横断中に声をかけられる。
「はい、チョコレート!」
可愛く包装された菓子をヘンリーの手のひらに乗せ、ルフレはニッコリと笑う。
その包みは手のひらに乗る程の小さな物だった。そして、ルフレのもう一方の腕には大きな布袋が下げられていて、中から同じ柄の包装が幾つも顔を覗かせている。
「チョコレート?」
「あら、知らない?甘い物好きのガイアと一緒に居れば、知ってるかな〜て思ったんだけど」
あまり馴染みがないかな〜?と、ルフレはチョコレートの説明を始めようとしたが、ヘンリーが困った顔で先に口を開く。
「えーと、チョコレートは知ってるよ〜。でも、今日は僕の誕生日じゃないよ?」
「誕生日プレゼントじゃなくて、バレンタインチョコレートよ」
「ばれんたいん?」
初めて聞く単語にヘンリーは首を傾げてルフレの言葉を反復する。
「異界の風習なんだけど、2の月14の日に女の子が男の子にチョコレートを贈って告白する日なの」
「告白?」
今度は受け取った包みを見つめてヘンリーは言葉を返す。
「あ、別に告白じゃなくてもいいのよ。私の場合は感謝の気持ちを込めて、軍の男性陣に贈ってるの」
ルフレはそう言って、大きな布袋の中身を見せた。
全員に贈る気なのか、かなりの数が布袋の中に詰め込まれている。
「へー」
「他に、同性でも贈ったりするのよ。その場合は友チョコって言ってね…」
ルフレの話しに耳を傾けていると、ふと視線を感じルフレの後ろに目を向ける。
物陰からじっと見てきている女が一人、不満たっぷりな表情でこちらを睨みつけていた。
「ふーん」
「まあ、異性でも同性でも、好きな人にチョコレートを贈って、気持ちを伝える日って感じかな」
「ふんふん」
まだ見てくる女と目を合わせたまま、ヘンリーはルフレの説明を聞く。
その女もチョコレートらしき包み紙を手にしている。それは、ルフレのくれた物より数段上の豪華な包装だ。
「異界の風習だから知ってる人は少ないんだけどね」
「今日だけなの?」
「えーと、バレンタインは年に1回で今日だけだけど、3の月にホワイトデーというのがあって、バレンタインのお返しに焼き菓子を送るの」
「今年はもう無いんだ〜」
「逆に言えば毎年よ」
ルフレは笑顔で布袋から、もう一つ包みを取り出してヘンリーに渡す。
「これ、ガイアにも」
「はーい」
受け取ってヘンリーはルフレに手を振り、止めていた足を進める。
「やっと、渡せるわ…」
すれ違い様に、ずっと見てきていた女性は呟き、そのままルフレの方へ歩いていく。
その後ろ姿を見つめ、ヘンリーも呟く。
「サーリャのは、友チョコってヤツかな〜?」

ガイアの天幕に入る前に、辺りを何となく見回してみる。
ルフレが配っているチョコとは違う包装を手にしている男を数人見かけ、ヘンリーは少し焦りを感じてしまう。
ルフレやサーリャ以外にも、異界の風習を知ってる者が結構いるんだと…。
「どうした?」
人様のチョコを眺めていると、急に天幕の入り口が開かれた。
「そんな所に突っ立ってないで、中に入れよ」
「ガイア、これ、ルフレから」
天幕に入って、持っていた包みを一つガイアに渡す。
一瞬、ガイアは不思議そうな顔をしたが、何の躊躇いもなく受け取った包み紙をあける。
「ガイアは知ってるの?」
『女の子が男の子にチョコを送って告白する日』そうルフレは言っていた。
なのにガイアは同性ではあるが恋人の前で、女の子からの贈り物をあっさり開けてしまうなんて…。
ルフレに告白されたとは思わないのだろうか?
「ああ、バレンタインだろ?で、ルフレのこれは義理チョコだろ」
そう言って、ガイアはヘンリーが持っている、もう一つの包みを指差した。
「愛のこもった一点物じゃなく、これは量産型だ。それに本命なら普通、直接よこすだろ」
「はあ、ガイアも知ってたんだね〜」
しかも詳しい。ルフレが軍の男性陣にあげているのが、ガイアの言う義理チョコなのだろう。
「異界に行った時に小耳に挟んだ」
「知らないの、僕だけなんだね…」
知ってる人は少ないとルフレは言ったが、知らないのは自分だけなんじゃないかと思ってしまう。
サーリャにしろ、ガイアにしろ、異界の風習を当たり前のように受け止めている。きっと他の皆も毎年やり取りしているのだろう。
「いや、二年前に異界で聞いた話しだ。知らない奴がいて当然だろ?お前だけじゃないさ」
「僕もガイアに贈りたかったな…」
包装を取ったルフレのチョコを眺めて、ヘンリーは溜め息をつく。
知っていれば、今ここでガイアが口にするのは義理チョコではなかったはずだ…。
「その気持ちだけで嬉しいよ」
「でも、僕だけ仲間はずれみたい…」
甘い物好きのガイアにピッタリのイベントなのに…。ハッキリとは言わないが、きっと楽しみしていたんだろう。
そう考えると、やっぱり自分もあげたかったなと残念に思う…。
「そんな事ないって、お前もルフレからチョコ貰えただろ」
「貰ったけど、そうじゃなくて〜」
「しょうがないな。俺からチョコやるから、ちゃんと3の月によこせよ」
言いながらガイアは天幕の隅にある木箱の蓋を開け、ゴソゴソと何かを物色し始める。
その背中をヘンリーは不思議そうに見つめ、ガイアに声をかけた。
「ガイアから?」
「不満か?どっちからなんて関係ないだろ」
「そうだけど〜、甘い物でしょ?」
不満げに言うヘンリーに背を向けたまま、今度は棚に手を伸ばしてゴソゴソしている。
「正直、俺らには不要な行事なんだが…」
「男女じゃないから?」
まだ背を向けたままのガイアに、ヘンリーは問いかける。
甘い物が好きなガイアに不要な行事と言われてしまうと、渡したかった気持ちが少し揺らいでしまうが…。
「いや、告白の必要が無いからだ。まあ、今は男女間だけじゃなく、多様化されてるみたいだけどな」
「友チョコ?」
「ほう、よく知ってるな」
やっとガイアは振り向いて、感心したようにヘンリーを見つめた。
「ルフレから聞いたんだよ〜」
「だが、俺たちのは友チョコとも違う」
「うん」
それは分かっているとヘンリーは頷き、ガイアは奇麗に包装された箱を差し出す。
咄嗟にヘンリーはルフレの包みに目をやるが、その包み紙はテーブルの上に広げられたままで、ガイアが差し出した包みとは柄も違う。
つまり、ガイアが手にしているのは、別に用意した物で…。
「まあ、手作りとかそんなんじゃないが…」
「僕に?」
即席で用意したわりには、ちゃんと包装されていてリボンまで付けられている。だが、他人から貰った物ではない事は分かる。
きっと木箱にしまってあった自分用のチョコを包装したのだろう。
やっぱりガイアは器用だな〜と感心していると、ガイアが真面目な表情で見てきている事に気づく。
そしてヘンリーの手にリボンの付いた箱を乗せ、ガイアはゆっくりと口を開いた。
「これからもずっとヘンリーを愛し続けると誓う」
「…ガイア」
「俺の気持ちだ。受け取ってくれるか?」
「うん、僕も…」
ぎゅっと貰った包みを抱きしめ、その包みごとヘンリーはガイアに抱きしめられる。
「甘い菓子のお返し、期待してるからな」
「うん」
もう一度ガイアはヘンリーを抱きしめ、優しくキスをする。

「たまにはこうやって愛を確かめ合うのも良いもんだな」
ガイアはそう言って、ルフレから貰ったチョコを口にした。

バレンタインは異界の風習だが、良い日だなと改めて思う。
別に甘い物が貰えるから良い日だと言っている訳ではない。

義理チョコを口にしながら言ったところで、説得力はないかもしれないが…。








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おわり。

ハッピーバレンタイン!

ガイアとヘンリーが仲良くやってる裏で、ルフレとサーリャの暗黒のバレンタインが展開されているであろう…バレンタインのお話です。

一体、二年前にどんな異界に行ったのか…。
そのへんは完全な捏造です。
呪い同様、異界も便利ですよね!?

そんな感じの、バレンタイン作文です。
少しでも楽しんで頂ければ…嬉しく思います。


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