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FireEmblem 覚醒:夢で逢えたら 1 |
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夢で逢えたら 作中に「恋バナ」という言葉が出て来ます。 「恋の話し」の略なので、FEの世界で言ってても問題ないですよね? 他にも捏造が一杯です(いつもの事ですが) ここは、何処だったか… 薄暗く、朝か夜かも分からない…。 身体も重く寝返りをうつのも怠い。 四方が岩で囲まれた狭い部屋の真ん中で、一体自分は何をしているのだろうか? …多分、ここは監獄だ。 俺は失敗しちまったのか? 何を失敗したか思い出せないが、きっと裏切られたんだろう。 誰と仕事していたかも忘れてしまったが…。 これから拷問を受け、腕に烙印を刻まれるんだ。 過去の事のように<される事>が分かる。 その苦痛も。 間もなく鉄格子の扉が開かれ、地獄へ案内されるだろう…。 「ぐ…」 何処も痛くはないが、身体が苦痛を訴えハッと<閉じていたらしい>目を開ける。 「大丈夫か?」 「あ、ああ…」 身体を起こし、辺りを見回す。 ずっと起きていたつもりだったが…。 ここは監獄ではない。見渡す限り、自然に溢れた屋外だ。 「…夢」 実際に体験した過去の夢というのは、現実味があって何とも言えない気怠さが残る。 そして、夢だと分かっていても寝起きの頭では昔の事だと直ぐ理解できず、じっと篭手に隠れた烙印を見つめ過去の失敗を振り返ってしまう。 「おい、ちゃんと寝ろよ」 消えかけの焚火を挟んで、こっちを見てきている男が低い声で言う。 もう一人男がいるが、少し離れた場所で既に寝息をたてている。 「いや、寝れそうもないから、少し起きてるよ」 「おいおい、明日の見張りはお前だろ?ちゃんと寝とかねえと辛くなるぞ」 「分かってるよ。ガキじゃあるまいし」 そう言って気を紛らわそうと、菓子を何処かからか取り出し口に運ぶ。 人と話して少しは気がまぎれたが、やはり甘い菓子が一番だ。いや、今は一番じゃない。アイツが居てくれれば…。 「…はあ」 ヘンリーの事を思い出し、つい溜め息をついてしまった。 嫌な夢を見た時は、お互いの存在を確認しあい、安心して眠りにつく事が出来ていたが…。 「なんだなんだあ?溜め息なんかついて悩み事か?」 「いや、そんなんじゃないが…」 今は離ればなれで、存在を確認する事が出来ない。 ヘンリーが居ないから寝れないなんて、とてもじゃないが言えず言葉を濁してしまう。 「悩んでるから寝れないんだろ。俺で良かったら相談に乗ってやるぞ?」 「グレゴじゃなあ…」 この男に正直に話すと、爆笑されて終わりな気がする。 男同士がどうのこうのではなく、ひとりじゃ寝れないお子様に仕立て上げられ、この先ずっとガキ扱いされること必至だ…。 「オッサンじゃ不満か?」 「すぐ横になったら、嫌な夢の続きを見そうで寝たくないだけだ」 「なんだ、そんな事か。若ぇな〜」 「そんな事で悪かったな。どうせ俺はガキだよ」 結局、そんな事と馬鹿にされ、若いと言われてしまった。 確かにグレゴよりは若い。だが、その言葉には「青臭い」という意味が込められているような気がして、少し癇に障る。 「だ〜れもガキだなんて言ってないだろ?お前って、そんな事でふてくされるような奴だったかねぇ?」 「別にふてくされてる訳じゃないが…」 ような奴って何だよ?と、ふてくされて菓子を頬張る。 そんな事で…じゃないが、結局ふてくされてしまっている自分に溜め息をついて、焚火に食べ終わった菓子の棒を放り投げた。 棒が焼け少し舞った火の粉の向こうで、グレゴは小さな酒瓶を鞄から取り出して言う。 「好きな女はいるか?付き合ってるのとか」 「はあ?いきなりなんだ?」 「まあまあ、良いじゃねぇか。オッサンに言ってみろよ?」 「グレゴと恋バナしろってのか…」 人の恋愛話を酒の肴にでもする気かと、面白くなさそうな表情をしてみせる。 その顔をちらっと見て、グレゴは酒を一口飲み、にやりとした。 「寝れない時の定番だろ?」 「定番かどうかは知らないが…。まあ、付き合ってる奴は居るよ」 酒が入ったんじゃ、しつこく聞いてきそうだと、素直に居るとだけ伝える。 もちろん、誰とは言わないが…。 「まじか〜、羨ましいなぁ。で、どんな娘だ?」 「いいだろ、どんな奴でも。よし、俺はもう寝る」 とは言え、これ以上付き合う気はない。 このまま酒飲みに付き合っていると、根掘り葉掘り聞かれそうだ。 「おいおい、寝れないんじゃなかったのか?」 「寝れないが寝る」 寝たふりは自己防衛だ。 うっかり相手の名前を言ってしまうより、無理矢理でも寝てしまう方がいい。悪夢は見てしまうかもしれないが…。 「なんだよ、照れちゃってんのかぁ?じゃあよ、寝るなら好きな女を数えながら横になってみろよ」 「それ、羊じゃないのか…」 「いーんだよ。頭ん中、好きな女だらけになって幸せだろ。一生懸命数えたら、嫌な夢も忘れられるってもんだ」 「逆に目が覚めそうだな」 相手が離れているからこそ、頭の中を切り替えなければ駄目だと思うが…。 ここで欲求不満を爆発させるなんて、あってはならない事だ。それこそ、ガキだと馬鹿にされてしまう。 「嫌な夢見るより、良い女でモンモンとしてるほうが楽しいだろ?まあ一応、気づいたら寝てるって寸法なんだが、良い夢を見れると俺が保証してやるぜ」 「グレゴの保証か…、あんまり信用ないな」 そして相手は良い女ではなく男な訳だが…。 「厳しいねぇ〜。年上の言う事は聞いといた方がいいぞ?」 「分かったよ、実践してみる。じゃ、おやすみ」 パパッと話しを片付け、消えかけの焚火に背を向けガイアは丸くなる。 「ったく、若いねぇ〜。寝れないなら少しくらい酒に付き合ってくれても罰は当たらないと思うんだがなあ…」 焚火の向こうでグレゴは愚痴り、鞄の中に手を突っ込み今度は酒のつまみを探す。 人の恋愛話を酒の肴にするつもりだったが、のろけ話をするような奴じゃなかったなとガイアの背中を眺めつつ酒を食らう。 「はあ、男三人の遠出は色気が無くていけねぇな。見張りにも気合いが入らないねえ…」 やっと見つけた酒のつまみをかじり、夜空を見上げる。 まだまだ空は暗く、朝は遠い…。 やっと真っ暗だった空に、太陽の光が射し始める。 朝靄が立ちこめる中、三人は軽い朝食を済ませ、足早に野営地を目指す。 「おい…」 ガイアは一声かけ、道の先を指差す。 「なんだね?」 左右の崖を眺めながら進んでいたヴィオールは指された先を見つめる。 「道が塞がってないか?」 「そのようだね」 「まいったな〜、崖崩れかあ…」 グレゴは大きく溜め息をつく。 確かめるべく急いで崖下の道を進み、目の前に立ちふさがった土砂を三人は見上げた。 「いやぁ〜、これは圧巻だなあ〜」 「感心してる場合かよ。引き返すか?」 「冗談はよしたまえ。何日この左右崖の道を歩いて来たと思ってるんだね?」 言われるまでもなく三日だ。 途中、草木が生えている場所もあったがほぼ岩山で、すれ違う者もなく黙々と歩いて今に至る。 「じゃあ、よじ上るか?」 「貴族的に無理だね、それは」 「土砂を取り除くか?」 「それこそ何日かかるんだね?食料も底を尽いてしまうよ、華麗にね」 狩りをしようにも、めぼしい生き物が見当たらない。そして、川等も無く飲み水の確保すら難しい状況だ。 「…手詰まりじゃないか」 「そうだなあ〜…。魔導士でもいりゃあ、土砂を魔法でぶっぱなして貰えたかもしれねえなあ〜」 「それは無い物ねだりってヤツだ」 「まあ、そうなんだがよ。一人ぐらい術使いを連れてくるべきだったんじゃねえか?回復も道具だけなんだぞ」 「同感だねぇ」 グレゴとヴィオールは不満を漏らし、その二人を見てガイアは眉間にしわを寄せる。 「簡単な任務だったんだ。人員をそんな事で割きたくなかったんだろ」 「そんな事がこんな結果になっちまってるんだぞ?」 「誰も予測できなかった事態だ」 「そうかね?崖下を何日も歩くんだ。まったく予測できなかったとも言いきれないよ」 「何を言っても後の祭りだ。愚痴るより打開策を考えろよ」 ルフレの肩を持つ訳じゃないが、二人との会話に少しイラッとしてしまう。 文句を言って早く野営地に戻れるなら、聞きたくもない愚痴も喜んで聞くが…。 「お前さんの言う通りだが、さてどうしたもんかねえ」 「野営地に救援を求めるのはどうかね?」 『どうやってだ?』 ヴィオールの提案に、残りの二人が同時に疑問の声を上げる。 誰が行くかというより、この土砂をどう乗り越えるかだ。この崖を突破できるなら、救援要請は必要ない訳で…。 「華麗にハモったね。私の伝書鳩でだよ」 『何処に居るんだ?』 またガイアとグレゴはハモってしまう。 一度もヴィオールの周りで飛ぶ鳥なんて見ていない。 「もちろん空に」 「ついて来てるのか?」 「いいや。四六時中ではないが、呼べば来る範囲にいるよ」 「ほお〜、それは便利だな」 グレゴは空を見上げ、感心してみせる。 「便利だが、野営地に飛ばして、そこからだろ?どれくらいかかるんだ?」 伝書鳩なんて扱った事もなく、どれくらいで戻って来るかなんて見当もつかない。 ガイアも空を見上げてみるが、つい溜息が漏れてしまう。 「どうだろうねえ…、二、三日ってところじゃないかな。鳩は空を飛んでるから私たちのような障害がない」 「食料が保つかどうかだなぁ…」 「保たせるしかないだろ。いざとなれば俺の菓子を…」 ガイアは空っぽに近い布袋を片手に持ち、衣服の中に隠してある菓子を数える。 「年寄りに糖分はちぃとばかし気になるところだがなあ〜」 「贅沢言うなよ」 酒を飲んでた奴に言われたくないと、ガイアはグレゴの荷物をさりげなく持ち上げる。 この軽さだと酒瓶の中はもう空だろう。昨夜、どれだけ飲んでいたのかと呆れてしまう。 「さて、じゃあ書状を書くとしよう。何が必要かね?」 そう言ってヴィオールは荷物の中から筆記用具を取り出し、ちょうど良さそうな岩を見つけ腰掛けた。 そして、まだ白い書面を眺め、ガイアは腕を組む。 「土砂を排除するための魔導士とかか?」 「じゃあ、ヘンリーだな」 「別にヘンリーじゃなくても…」 グレゴにヘンリーと言われ少し動揺するが、ここで悟られては昨夜のやり取りが水の泡になってしまう。 もちろんヘンリーが来てくれれば嬉しいが、グレゴの前で素直に頷く訳にはいかない。 「ここはヘンリーだろう?男三人に、女や子供じゃ可哀想じゃねえか?」 「あ、ああ、確かにそうだな…」 そう言う理由ならと頷いてみせる。 「お前さんも、ちゃんと寝れるようになるだろ」 「はあ!?」 が、素直に頷いた首をぎこちなく動かし、何を言ってるんだ?とグレゴを見る。 「あと何か必要なモノはあるかね?」 ぎこちないガイアを無視してヴィオールは白い紙にペンを走らせる。 グレゴもまたガイアを無視して、ヴィオールの問いに口を開く。 「食料だろうなあ、少し持って来てもらった方が安心だろ。ヘンリー以外の人選は向こうに任せるとしてだな」 「了解」 二人は話しを進め、白い書面はヴィオールの貴族的に華麗な字で埋められていった。 それを横目に、ガイアはグレゴに厳しい目を向ける。 「おい、グレゴ」 「なんだあ、ガイア。何か不満か?」 「どうして、ヘンリーの事を…」 「ああ、それはだなあ…て、ココで言っちゃって良いのか?」 ちらっとグレゴは書状を書いているヴィオールを見る。 「ま、待て、あとで…」 「私は邪魔かね?席を外せる場所も無いんだが」 二人と目が合いヴィオールは微妙な表情をし、鳩の足に丸めた書状を丁寧にくくり付けて空に放った。 「…」 「まあ、もうヴィオールにも分かっちまってるだろ。諦めろ、青年」 「青年って…」 「寝言で名前を言ってた。それだけだ。まあ、俺のせいだよなあ〜…、好きな子でも数えろって言ったんだからな」 「こ、ここで言うなよ!?」 ヴィオールに分かってしまっているとしても、あっさりここで言われてしまった事に動揺してしまう。 特に後半の下りは余計以外の何ものでもない。 「実践してくれるたあ、お前さんも可愛いトコあるじゃねえの」 「別に数えた訳じゃ…」 「じゃあ、逢いたいって気持ちが嫌な夢より勝ったって事だろうな。良かったじゃねえか、良い夢見れて。羨ましい〜ね〜」 「…」 確かに逢いたくて、夢も悪い内容ではなく、ヘンリーが登場する良い夢だった。だが、本当にヘンリーを数えた訳ではない。 「しかも、早めに逢えるかもしれねえんだぞ?愛しのヘンリーに」 「い、愛しいとか言うなよ!」 「おや、ガイア君とヘンリー君は仲の良い友達なんだと思っていたけど、恋人同士だったんだね」 「グレゴ…」 友達同士ですむハズだった関係が、グレゴの更なる余計な一言で一気に深くなってしまう。 その深い関係は間違っていないのだが、友達同士と思われているのなら、そのままにしておきたかった…。 「そう睨むなって。バレてた方が都合が良いと思はねえか?我慢する事なく、堂々と抱き合えるんだぞ」 「知られてたって、誰が人前でするかよ…」 「ホント、若ぇ〜なあ〜」 にやにやしながら、こっちを見てくる視線が耐えられない…。 そして、からかい半分に興味本位だけで絡んでこられるのは苦手だ。 「見せ物じゃないからな」 男同士が抱き合ってる所なんて見たいのかよ?と突っ込みを入れたくなる。 あと、また若いと言われたが、年配なら人前で抱き合えるのかと言いたい。もちろん男同士でだ。 「二人とも雑談はその辺にしておいて、野営の準備をしないかね?」 少し険悪になってしまった空気に、やれやれとヴィオールが口を挟む。 「おう、そうだな。ほら若ぇの、テキパキ働け」 「ちっ、二日酔いの奴に命令されたくない」 何度目かの「青臭い」言葉にイラッとして、つい舌打ちをしてしまう。 10も違わないだろと愚痴をひとつこぼし、荷物を道の端に放り投げ野営の準備を始める。 「二日酔いじゃないがなぁ」 「じゃあ、お前も働けよ」 二日酔いじゃない事ぐらい分かっていると、束ねた薪をグレゴの足下に転がす。 「わ〜ってるよ。ヘンリーが居ないからって、八つ当たりをしちゃ〜駄目だぞぉ?」 「誰のせいだと思ってんだ…」 溜め息まじりにガイアは呟き、黙々と作業を進める。 ヘンリーに逢えるまで、この不機嫌は治らないだろう…。 ------------------------------------- つづく 2に続きます>> UP |