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FireEmblem 覚醒:少しずつ 1
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FireEmblem覚醒

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軍で一番の低血圧という事で朝起きれないヘンリーさんと、メンドクサイけど面倒見の良いガイアさんのお話です。
マイユニットはあたし口調の可愛い系。あとフレデリクがいます。この二人は訓練熱心です。


イーリス軍では今後の戦闘に備え、度々全体での戦闘訓練が行われる。
訓練内容は、二人一組で実践的な戦闘をし、それぞれの戦い方や守備等を確認し合うという感じだ。
その訓練内容やスケジュール、組み合わせ等は、軍の副長となるフレデリクが管理している。

今日は、野営地での久しぶりとなる合同訓練だ。

「では、先ほど掲示した組み合わせで、訓練を始めてください」
合図とともに訓練は開始された。

訓練の総指揮を取るフレデリク自身も、ペアとなり訓練をする。
相手は女軍師のルフレで、既に彼女は間合いを取り魔道書を構えている。
フレデリクもルフレの様子を伺いながら剣を構えた。
尋常に勝負という所で、「ちょっといいか」と後ろから声をかけられ、フレデリクは戦闘態勢を解き振り向く。
そこには、菓子の棒を口にくわえ頭をかきながら、ちょっとだけ困った顔をした男が立っていた。
「どうしたんですか。ガイアさん」
ガイアと呼ばれた男は、誰もいない自分の隣を指差して言う。
「俺の相手がまだ来てないんだが…」
「ふむ…」
フレデリクは、一応ガイアの隣を見てから辺りを見回した。
確かに一人でいるのは、ガイアだけのようだ。
「ガイアの訓練相手は誰なの?」
そう言ってルフレも辺りを見回している。
訊かれたガイアは、腕を組み少し考えていた。
大人数ってほどでもないが、軍だけあってそれなりに人はいる。その中で親しくもない人の名前なんて、すぐには出てこない。
「確か、ヘンリーってヤツだったかな」
名前を聞き、ああ…。と、フレデリクは何か納得したようだった。
「ヘンリーさんですか…。彼は良くサボるんですよね。本人曰く忘れてるらしいんですが」
「そうそう、あたしの時も来なかったわよ」
ルフレが言い、フレデリクは溜め息をつき、剣を鞘に納めた。
「しょうがないですね。私が呼びに行ってきます」
そう言って天幕の方へ向かおうとするフレデリクに、ガイアは声をかけ彼を引き止めた。
「いや、俺の相手だし自分で行くよ。殆ど話した事もないし、良い機会だ」
「そうですか。少々個性的な方なのですが…」
「この軍にいるんだ、悪いヤツじゃないんだろ」
言ながら軽く手を振り、ガイアは訓練の場に使われている広場を後にした。

「確か、こっちの天幕だったか…」
ヘンリーが休んでいる天幕は、自分の天幕の近くだったハズだ。
確信は無いが、確かこの辺の天幕に入って行く所を数回見た記憶がある。
怪しい行動だが、近くの天幕を数カ所覗いてみる。もしかしたら天幕ではなく、外にいるかもしれないが…。
5カ所目の天幕で、やっと今日の訓練相手に会う事が出来た。
天幕内は薄暗かったが、中に人がいるのは分かった。
「…。寝てるのか」
他人の天幕だが、中に入り寝台で寝てるヤツに声をかける。
「おい。起きろ」
「ん〜…」
「…」
声をかけると、布団の中で体を少し動かした。だが、起きる気配はまったくない。
きっとコイツは低血圧だな。と勝手に決めつけ、少し大きな声で名前を呼ぶ。
「ヘンリー。起きろ!」
「ん…。あれー?えーと、おはよう〜」
もぞもぞと毛布の中から体を起こし、笑顔で挨拶をする。
寝起きだからか、彼もまた名前が出てこないようだ。
「ガイアだ。おはよう、ヘンリー」
「あはは、名前出てこなかったのバレちゃった。おはよう〜ガイア」
「まあ、お互い様だ…。それより、今日の訓練なんだが…」
まだ目が覚めていないのか、訓練?て、顔でヘンリーはガイアを見ている。
「俺となんだけど…て、理解してないよな。冷たい水持ってきてやるから、取りあえず目さませ。あと、着替えろ」
「はーい」

冷たい水を汲んで天幕に戻る。
ヘンリーはまだ着替え中だったが、着替えの途中で水を渡した。
「少しはスッキリするだろ」
「うん、ありがとう〜。訓練だったよね?今日は覚えてたんだけどな〜、寝過ごしちゃった。朝食も食べてないや。あはは」
いつもヘラヘラしてる印象はあったが、本当にいつもヘラヘラしてるんだなと改めて思う。
少々個性的というか、つかみ所が無い感じがする。
さてどうしたものかと深い溜め息をつき、ガイアは隣に座った。
「朝飯食べてないのか…。空腹じゃ訓練どころじゃないよな」
訊かれたヘンリーは、コップを持っていない方の手で、自分のお腹をさすって首を傾げた。
「減ってるのかな〜?まだ、食べなくても平気かも〜?でも、もう片付けちゃってるだろうから、昼食まで我慢するしかないよね〜」
「しょうがないな。訓練中に倒れられても困るし、今日は俺もサボるかな…」
言いながらガイアは寝台に横になった。
ヘンリーの寝台なのだが、ヘンリー自身も気にする様子はまったくない。
飲み干したコップを近くにあったイスの上に置き、ガイアの方へ視線を移す。
「ガイア一人で訓練したら?僕の事は気にしないでいいよ〜。訓練しなくても大丈夫だし〜」
「いや、俺もあまり訓練とか頑張る方じゃないから、サボれる時はサボるさ」
「あはは。じゃあ、一緒にサボりだね〜」
横になっているガイアの腹に頭を置き、ヘンリーも横になった。
「あ、おい!」
いきなり腹を枕にされ、ガイアは焦る。人の寝台を占領していたのが悪いのだが…。
頭をどかそうと頭と腹の間に手を入れようとしたが、寝息が聞こえてきて動かすのをやめる。
そして、溜め息をついた。
「寝付くの早いな…。冷たい水の効果無しかよ…」
どうしたものかと、寝てしまったヘンリーを眺める。
着替えも途中のままで寝ている姿は、ちょっと同性でも目のやり場に困ってしまう。
しょうがないなと、近くにあったヘンリーのマントをかけてやる。
「たく、自由すぎるだろ…」
気持ち良さそうに寝ている姿を見てると起こす気にはなれず、そのまま自分も寝る事にする。
腹や体の触れている部分から心地よい人の体温を感じ、すぐ睡魔は襲ってきた…。

「では、今日の訓練はここまでにしておきましょうか」
訓練の場となっている広場では、フレデリクが訓練終了の指示を出していた。
「はあ、やっと終わったわ…。もう、お腹ペコペコ」
魔道書を地べたに置き、ルフレ自身も地べたに座り込んだ。
そんなルフレを見て、フレデリクは木に掛けてあったタオルを彼女に渡した。
「ははは。少々頑張りすぎましたね。昼食までまだ少し時間がありますから、ゆっくり休んでてください」
「ありがとう。動けそうにないから、このまま座ってるわ。フレデリクはよく立っていられるわね…」
「体力には自信がありますから。それでは、お先に戻らせて頂きます」
忙しなく訓練の後片付けをして、ルフレに一礼する。
その動作をずっと目で追っていたルフレは、ちょっと呆れた表情をしていた。
「本当に休まないのね…。もうちょっとゆっくりしてったら良いのに」
「いえ、結局戻ってこなかったガイアさんが少々気になりますので…」
そう言われ、ルフレは「ああ!」と声を上げた。
「すっかり忘れてたわ。でも、あたし達が気づいてないだけで、ちゃんと訓練してたかもしれないわよ?」
「だと良いのですが…。ヘンリーさんのサボリ癖がうつったのではと…」
「それは心配しすぎよ。うつったというより、もともと盗賊って訓練とかサボりそうじゃない?」
「ルフレさん、流石にそれは偏見じゃないでしょうか…」

フレデリクは訓練の場を離れ、野営地中心部よりちょっと外れに位置する天幕の並びを目指した。
念のため、訓練の場からここまでは辺りを見回りながら進む。
そして、一つの天幕に声をかけ居ない事を確認する。
「ふむ。戻られてはいないようですね…」
フレデリクは辺りを見回し、他の天幕に近づきまた声をかける。
「ヘンリーさん、いますか?」
「あ…いや…」
中からは本人ではない者の声がした。
誰の声かは分からなかったが、天幕の入り口を開く。
「失礼します。おはようございます、ヘンリーさん。と、ガイアさん…」
「あ、ああ。おはよう…」
「先ほどの声は、ガイアさんでしたか」
ガイアは頭をかきながら、自分の腹を枕にして寝ているヘンリーをずらして体を起こした。
状況が状況なだけに、何から説明するべきかと考える。フレデリクがここへ来た理由は分かるが…。
「えーと…。訓練の事だよな…。コイツが朝飯食べてないって言うから、空腹じゃ無理だろうと思ってっつーか、言い訳にしか聞こえないよな…。」
「そうですね。今のその状況から言いますと、最善の回答とは言いがたいですね」
フレデリクは天幕に背中を向けて言う。
「そうだな…。何か勘違いしてるみたいだが、別に後ろ向いてなくていいぞ」
ガイアは言いながら、隣で気持ち良さそうに寝ているヘンリーを叩き起こす。
「いたた…。乱暴だな〜。えーと…」
「…ガイア。だ」
「あはは。寝たらちょっと忘れちゃった。おはよ〜ガイア」
「のんきだな…。おはよう」
「おはようございます」
フレデリクも、もう一度挨拶をする。向きも二人の方へ向き直っている。
「衣服は着るか脱ぐか、どちらかにした方が良いと思いますよ」
言われてヘンリーは、とりあえずとマントだけ下半身に掛け直した。
「そうだよね〜、ちょっと変な格好だったね。サボるなら着替えなくていいや〜て思って、そのまま寝ちゃった」
「一応、着替えて訓練に参加しようとはしていたんですね」
フレデリクはヘンリーに言ったのだが、それにはガイアが答える。
「まあ、俺はそのためにココへ来たんだしな…」
訓練に連れてくると言っておきながら、最終的なサボリの決定を下したのは自分だ。
責任は自分にあると思いガイアは言葉を続ける。
「結局サボってしまったのは、俺の責任だ。軍において集団行動が大事だという事は分かっているつもりだ。軽率だった。今後気をつけるよ」
言い訳になるような部分はすべて省き、自分なりに誠意のこもった言葉を並べた。
それに対してフレデリクは、ちょっと不本意だという表情をする。
「いえ、別に責めている訳ではないのです。訓練に参加したかどうかの確認と、参加出来なかった場合の理由を訊きに来ただけですので。大体は把握出来ましたから、これで失礼いたします」
フレデリクは一礼をして天幕を出た。
ちょうどそこにリズが通りかかったらしく、声が聞こえてくる。
「あ!お昼ご飯できたよー!」
「もうそんな時間ですか。ああ、天幕の方は大丈夫ですよ、聞こえてると思いますから。リズ様も食堂へ向かいましょう」
「え?そう?じゃあ、そうしようかな…」
そんな会話を天幕の中から聞いていたガイアは溜め息をつく。
「はあ、まさか人の天幕で昼寝しただけで、変な誤解されるとはな…」
「僕のせいだね〜。ごめんね」
反省してるかどうか分からない笑顔で、かなり前に中断していた着替えを再開させる。
その横に座っていたガイアは立ち上がり、天幕の出口へ向かった。
着替え終わるのを待って一緒に行っても良かったのだが、また誰か来たら厄介だ。
「先に行ってるから、忘れずに食べにこいよ」
「はーい。お腹減ってるから忘れないよ〜」

食堂に着き、昼食を配給係から受け取り、ガイアは適当な席に着く。
そして、皿の上に盛られた料理を少し眺めてからスープを口にする。
それから溜め息をつきながら、フォークでサラダをつついた。
「ずっと寝てたせいか、腹が減ってないな…」
ガイアはだるそうに呟き、サラダを少量フォークに乗せて口に運ぶ。
「だったらソールに分けてあげたら?彼、配給分じゃ足りないみたいよ?」
声がした方を向くと、ルフレが昼食を持って立っていた。
彼女はガイアの隣に座り、テーブルの上に昼食を置く。
「おはよう、ガイア。寝てたらしいわね」
「おはよう…」
「サボリは良くないわよ。大体はフレデリクから聞いたけど」
言いながらルフレは食事を食べ始めた。
それを隣で見ていたガイアの方は、まったく食事が進まない。
腹が減ってないのも確かだったが、一緒に食事をするほどの仲だとは思えないルフレが隣で食べている。
気にしないようにしようと思っても、やはり何か言われるのではないかと身構えてしまう。
「ねえ、ガイア。一つ提案があるのだけど」
ガイアの予想通り、ルフレは話しかけてきた。
提案と言うからには、ただの世間話ではない事が分かる。話の流れからして、昼前の事だろう。
「次の訓練も、ヘンリーと組んでみない?」
「はあ?」
提案の意図が全く掴めず、変な声が出てしまった。なぜ今日サボった二人をまた組ますのか?またサボるかもしれないのに…。
ガイアの反応を見て、ルフレは言う。
「自分と違う兵種との訓練は大事なのよ。今日サボったんだから、次はしっかり手合わせした方がいいわ」
「またサボるかもしれないぞ」
「そうね。その辺はガイア次第よ?」
言われて、ガイアは少し顔が引きつった。
「つまり、俺にアイツの面倒を見ろってことか…」
「ふふ、分かってるじゃない。サボった罰よ」
「はあ、面倒だな…」
大きな溜め息が出た。
そんなガイアを見つつ、ルフレは美味しそうにバターをたっぷり塗ったパンを頬張った。
ルフレとは対照的に食事の進まないガイアは辺りを見回し、少し離れた席で食事をとっているヘンリーを見つけた。
ちゃんと食べに来たんだなと思い、その食事風景を遠目で眺めつつ次の訓練の事を考える。
よく考えれば何も面倒な事でもない、ただ迎えに行けば良いだけだ。そんな結論を出し、ルフレに大分遅れて昼食を食べ終えた。

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続く 2

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