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FireEmblem 覚醒:少しずつ 2
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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訓練をサボってから二日が経ち、また合同訓練が行われる事になった。
体を動かすには丁度いい気温と湿度で、外で行われる訓練には相性が良さそうな天気だ。

朝食を終えたガイアは思いっきり伸びをして、今日の訓練相手の天幕へ向かった。
今日のと言っても、前回と同じ相手なのだが…。

天幕に着き、中に入りつつ声をかける。
「おい、行くぞ」
返事を待たずに他人の天幕に入る事は、普通に考えればかなり失礼なのかもしれない。
まったく常識がない訳じゃないが、ヘンリー相手ならそれくらい許されるだろうという気持ちがあった。
そして、寝台の上を見て溜め息をつく。
「はあ、迎えにくるタイミングを間違えたみたいだな…」
寝台の上では、毛布にくるまって気持ち良さそうに寝ているヘンリーの姿があった。
二日前とまったく同じだ。
「起きろ、ヘンリー」
「ん〜。あ、おはよー?ガイア」
「おはよう…」
前と違うのは、名前を呼ばれたという事くらいか。
後は、朝食は食べててもらいたいが…状況からして、そこは前と同じ気がする。
「一応聞くが、朝飯は食べたか?」
「あ、まだ。まだ間に合うかな〜?」
ガイアはさらに溜め息をつく。
「俺でギリギリだったからな…。もう、片付けられてると思うぜ」
「あはは、また朝ご飯逃しちゃった〜」
どうしたものかと、ガイアはヘンリーの横に腰を下ろした。
今日は朝飯抜きのまま訓練に連れて行くか…?
サボる事自体は嫌じゃない、むしろサボりたいぐらいだ。ただ、後で前と同じように小言を言われるのが少々面倒くさい。
「どうする?訓練行くか?」
「あ、訓練の日なんだね〜。またガイアとなんだ。迎えにきてくれてありがとう〜。でも、僕の事は気にしないで一人で訓練してきて良いよ〜。折角来てくれたのにゴメンね〜」
またしても、二日前と一緒だ。
ここでサボるかと言って横になったら、また腹を枕にされるのだろうか…。
「まあ、空腹じゃ訓練なんてまともに出来ないよな…。また、次の訓練も組まされそうだが…」
「じゃあ、今日もサボって次の訓練でがんばろう〜」
「それもアリか…。俺もサボるかな」
フレデリクやルフレに何か言われるかもしれないが、ヘンリーと話しているとそんな事はどうでも良くなってきた。
そして二日前と同じく自分の天幕には戻らず、ヘンリーの寝台で横になった。

この前と同じように、寝ている間に訓練の時間は終わった。
結局またサボってしまったが、今回は早めに体を起こす。
フレデリクが天幕に来ると思ったからなのだが、昼食の時間まで誰も来る事はなかった。
だが、昼にはルフレが待ち構えていて、しっかり小言を貰い次回の訓練の予定も告げられる。
案の定、また次の訓練も同じ組み合わせにされてしまった。
「次は朝食前に起こしに行くよ…」
「そうね。気づくのがちょっと遅かったわね」
ルフレは微笑んで言う。
その表情は笑顔だったが、ちょっと呆れた顔にも見えた。

最近は行軍の合間に訓練ばかりしているような気がする。
サボってばかりなので訓練をしている訳ではないが、最近やってる事と言えば、訓練のサボりか野営設置を手伝うくらいだ。
今日も訓練があるという事で、訓練相手の天幕へ向かう。
前回の失敗を生かし、朝食前に起こす。
「おい、朝だ。起きろ」
起こすのは三度目となる。まだ3回目とも言えなくはないが、起きてたためしがない。
「ん…」
いつもより時間が早いせいか、反応が鈍い。
ちょっと待ってみたが起きる気配がなく、寝顔を見ても今日は幸せそうというより寝苦しそうな表情だった。
元々色素の薄そうな肌をしているが、よりいっそう青白く見える。部屋が暗いからなのかもしれないが…。
熱でもあるのかと思い、おでこに手を当ててみるが熱いというよりは冷たく感じた。
「あ…、おはよう〜…」
触れられた手に気づき、ヘンリーは薄く目を開けた。
いつもの笑顔も弱々しく感じ、少し心配になってくる。
「調子悪そうだな、大丈夫か?」
「ん〜。ちょっと無理しちゃったかな〜…」
「無理?昨日は特に何もなかった気がするが…」
ここ数日は野営地に留まっており、特に忙しい事もなかったハズだ。
隠れて猛特訓とかそういうタイプでもないだろうし…。隠れてするくらいなら、普段サボるなと言いたい。
「何かあったのか?」
「呪詛返し。ちょっと手間取っちゃった。あはは」
「呪詛返し?」
魔法の事はサッパリ分からないが、呪詛返しという事は誰かが呪われそうになったのか?
「軍にね、呪いをかけようとしたヤツがいたんだよ。ほっとくと大変な事になっちゃうから、僕が呪いを敵に返したんだ〜」
「軍にって…そりゃ大規模だな。呪術使える奴に協力してもらえば良かったんじゃないのか?」
「サーリャだね〜、夜中に起こすの可哀想だと思ったんだ。これくらいの呪い一人で大丈夫だと思ったんだけど、失敗しちゃった。寝ぼけてたのかな?でも、ちゃんと出来たよ。心配しないでね〜」
「まあ、その辺は心配しちゃいないが…」
今の時点で何も騒ぎが起きていないのだから、彼の言う通り呪詛返しとやらは成功しているのだろう。
それより会話はしているが、一向に体を起こそうとしないヘンリーの方が心配だった。
「起き上がれるか?無理なら朝食をここに運んできてやるぞ」
「えー?我慢するから運んでこなくても良いよ〜。僕の事はほっといて平気だよ〜」
「いや、何で我慢するんだ…。俺はそこまで薄情な奴じゃないぜ?」
そう言いガイアは、ヘンリーの頭をポンポンと軽く叩き、朝食をもらいに食堂へ向かった。

「何をしているの?」
自分の分とヘンリーの分、二人分の食事を手に取っていると後ろから声をかけられる。
声の主はルフレで、彼女は既に食べ終わった食器を片付けに来たところだった。
「また…いや、よく会うな…」
またお前かと言いそうになった。最近良く声をかけられてる気がする…。サボリが原因だと思うが、監視されてる気分だ。
「そうね、偶然よ?」
その言葉さえ、白々しく聞こえる…。
「えーと、これはその…」
手に持った二人分の食事をどう説明しようかと考える。
ルフレの事だ。もう一食分はヘンリーの分だと分かっているだろう。ただ、ヘンリー本人は食堂に来ていないが。
「優しいわね、ガイア。寝坊したヘンリーのために、食事を天幕に持って行くのね。また食べ損ねたら、訓練どころじゃないものね」
説明する前に、ルフレに言われてしまった。本当に説明くさく…だ。
「まあ、そんなところだ」
少し事実とは違うが、訂正するのは面倒くさい。呪術とかサッパリ分からない自分が、ちゃんと説明出来るかも謎だ。
これ以上何か言われるのも厄介だと思い、適当に答え素早く食堂を出た。

天幕に戻ると、ヘンリーはまだ布団の中にいた。起きる気はまったくないようだ。
食事を手頃な台の上に置き、寝台の前に運ぶ。
「飯、持ってきたぞ」
「はーい」
返事だけは良い。ただ、その動作は鈍い…。こっちが想像ている以上に、疲労しているのかもしれない。
ちょっと待ってろと言い、布団と枕で背もたれを作る。そして、ヘンリーの背中と寝台の間に手を入れ、その背もたれに移動させてやった。
「あはは。なんか、病人みたいだね〜」
「自力で起き上がれないんじゃ、さほど変わりはないな。ホラ、食べるぞ」
「はーい、いただきまーす」
ヘンリーは、ご飯を少しだけ盛ったスプーンをゆっくり口に運んだ。
その動作を見ながら、ガイアも食事を進める。
「まあ…。今日もサボるしかないよな」
「んー、ガイアだけでも行った方が良いんじゃない?」
「いや、俺だけじゃ意味がないらしい。ルフレが言うには、違う兵種との訓練が大事なんだそうだ」
「ふーん。僕じゃなくてもサーリャがいるよ〜?」
「サーリャか…」
実のところ、名前を言われても誰だかピンと来ない。
確か、露出の高い服装でスタイルが良くて黒髪ストレート…案外覚えているな。兵種はヘンリーと同じだったのか。
容姿は覚えていて、兵種を覚えていないとか…女に言ったら軽蔑されそうだ。兵種は覚えていない訳ではなく、ヘンリーと同じだって事を知らなかっただけだが…。
まあ、サボった罰だともルフレに言われているし、他の奴とは当分組ませてもらえないのだろう。
「サボりコンビで何とかしろって事なんだろ…」
「そっかー。でもそれって、僕のせいだよね。ごめんね…」
「あ、いや。俺もサボるの好きだからな。それに今日は違うだろ?今日はサボるんじゃなくて休むんだ。理由もちゃんとある」
誰が悪いとか考えていた訳ではないのに、謝られて少し戸惑ってしまう。何かにつけて「サボる」と口にしていた自分だって悪い。
「そうかな〜?今日だって、僕が失敗しなければ休まなくてもよかったんだよね」
「一人で軍を守ったんだ、失敗をどうこう責められるより、労われるべきだろ。俺の事は気にするな」
まだ何か納得してなそうなヘンリーに、ガイアは言葉を続ける。
「失敗は誰にでもあるもんだ、その後はちゃんと成功したんだろ?今日の休みは成功報酬だ。しっかり食べて、しっかり休めよ」
「はーい。ガイアがそう言うならそうするよ〜」
朝食をゆっくり食べ、朝は過ぎていった。

昼食も天幕で食べる事にした。
ルフレに会わないように、念のためフレデリクにも…。二人分の食事を受け取って天幕に戻る。
朝から昼にかけて、しっかり睡眠を取っただけあってヘンリーはかなり元気になったように見える。笑顔なのは大体いつも同じだが。
朝食より美味しそうに昼食を食べながら、ヘンリーは口を開いた。
「軍に呪いをかけられそうになったのは、今回が初めてじゃないんだよ。気づいて呪いを返すのは僕かサーリャくらいだから、今日の事は誰にも言わないでね」
何を言っているか理解出来ず、食事の手が止まった。
呪い返し出来る人しか呪いをかけられた事を知ってはいけないのか?でも、それは何のためだ?
「どうしてだ?言わないと、またサボりだって思われるぞ…」
「ん〜。心配かけたくないからかな。知っちゃったら、自分が呪われちゃうかもって思っちゃうよね?今日みたいに失敗なんかされたら、心配で眠れなくなっちゃうかも〜?」
「優しいんだな。誤解されても良いって言うんなら、それでも構わないが」
「うん。今日の事は秘密だよ〜」
何気に人の事を考えているんだなと思う。
ただ、人の事しか考えていないような言動が少し気になるが…。
「了解。誰にも言わないよ」
取りあえずここは気持ちを汲んでやっても良いだろう。

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続く 3

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