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FireEmblem 覚醒:少しずつ 3
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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今日は朝から慌ただしく…正確には昨日からなのだが、戦の準備が進められていた。
作戦を確認しつつ、口頭で配置等が伝えられる。
流石にルフレは軍師だけあって、いつもより存在感があった。

そのルフレから、ガイアにも指示が伝えられる。
盗賊がする事と言えば、いつもと大した変わりはないのだろうけど。
「ガイアは、いつも通り宝箱漁りね。宝の中身は期待してないから、無理はしないで。戦闘にも期待してる」
「盗賊としては、宝の中身は気になるんだが…」
「偵察の報告では、敵の数はこちらより少し多いくらいだそうよ。問題なく漁れると思うわ」
ルフレはにこりと笑った。
そして次に、呪術士の方へ駆け寄る。
軍師は大変だなあと、ガイアは忙しく動き回るルフレを眺めていた。
「ヘンリーはこっち側ね。サーリャは反対側。リザイアはたんまり持ってってね」
地図を広げてルフレは配置場所を指す。呪術士の位置は、かなり敵寄りに配置されていた。
近くで聞いていたガイアには、リザイアが何の事かさっぱりだった。あと、呪術士は後衛ではないのか?と思う。
「なあ、呪術士を前線に立たせて大丈夫なのか?その配置図を見ると、前衛が近くにいないみたいなんだが…」
疑問に思い、横からつい口を挟んでしまった。
「あら、呪術士は意外と討たれ強いのよ。ガイアは呪術士と手合わせした事がないから知らなかったかしら?」
「ぐ…、いや…。前に敵の中には居たような気はするぞ…。多分、見た…」
ここでサボりの事を突かれるとは…。不意をつかれ、変な言い訳になってしまった。
何も言わなければ良かったと後悔していると、じっと見てくるルフレの視線に気づく。
なんとなく気まずく…目を合わせないように、適当な方角を見る。
「分かった。ヘンリーの事が心配なんでしょう?」
「はあ?」
何言ってんだ?と、ルフレの方に視線を移した。
「図星?」
自信満々に言うルフレの事がまったく理解出来ない。何を根拠に言っているのか…。
「いや、まったく考えてもいなかったぞ…」
「あら、そう」
…。何を期待してたんだ、この軍師は。
ずっとヘンリーと組ませて、面倒みさせたのは何処のどいつだと言いたい。まあ、サボりすぎてたのが原因ではあるが…。
「ねえ、ガイア。余裕があったら、ヘンリーの戦いぶりを観察してみたら?爽快よ〜色んな意味で怖いくらいに」
まだ心配してると疑ってんのか?それとも、サボってて知らないだろうから、呪術士の戦闘を見てみろって事なのか…。
ルフレの真意が分からず、無難に言葉を返す。
「余裕があったらな…」

準備が整い、クロムの合図とともに軍は動きだす。
軍師の指示に従い、敵陣へ突入して行く。
まださほど経過していないのに、どんどんこちら側が有利になってきているのが誰の目からも分かった。
改めて、ここの軍師の凄さを知った。

次々と敵は倒され、宝箱までの進路も難なく確保出来た。
「中身は…金塊(大)か。なかなかの収穫だな」
袋に金塊を詰めて次の宝箱を目指す。
ふと微かな閃光が視界に入り、足を止めて壊れかけた塀の奥に視線を向けた。
複数の敵と味方一人が戦っているのが見える。さほど近くもなかったが、その人物はヘンリーだと分かった。
「本当に一人でも戦えるのか。呪術士ってヤツは…」
攻撃を受けても次の自分の攻撃で受けたダメージが回復しているみたいだ。
数人相手にしているわりに殆どダメージが無い事が、ガイアのいる位置からでも確認出来た。
「確かに、心配はいらないな…」
まったく危なげない戦いぶりだ。
そして、凄く楽しそうに見える…。いつも微笑んではいるが、それ以上の笑顔だ。
「笑い過ぎだろ…。どんだけ楽しいんだよ…」
ルフレが言ってた事を思い出し、納得しながら眺める。
「確かに色んな意味で怖いかもな…」

宝箱の回収を後回しにして、ガイアは楽しそうに戦っているヘンリーを見ていた。
すぐ自分の仕事に戻るつもりだったが、何故か目が離せなくなっている。
別に心配だからじゃない。何か違う気持ちが、そうさせていると感じた…。

「危ない!」
後方から声がして、我に返る。
「!?」
先ほどとは違う方角から閃光が走り、次の瞬間激痛が体を襲う。
敵が何処にいるか確認しようとしたが、それより先に地面に体が落ちた。
すぐ人影が視界に入り、ここまでかと覚悟を決め目を瞑る。だが、自分のモノではない男の断末魔が聞こえ、目を開いた。
「意識はありますか?」
「しっかりして!ガイアさん!!」
視界に入った人影はリズで、敵を討ったのはフレデリクらしい。二人に声をかけられ、ガイアは状況を把握した。
「すまん、ちょっと油断してた…」
「そのようですね…」
フレデリクは言い、視線を倒れている敵に向けた。
敵は服装からして多分ダークマージだろう。少し、ヘンリーやサーリャとは違う格好だったが…。いや、サーリャは女だから違うのは当たり前か。
「私も油断しておりました。闇魔法は命中が低いと認識しておりましたので、盗賊のガイアさんなら回避出来るだろうと…」
「…。」
言葉が出でこなかった。
訓練をサボってるからだと思われたに違いない。
だが、指摘された訳ではないので否定する事も出来ない。だからと言って本当の事も言いづらい。
ヘンリーを見てて敵に気づかなかっただなんて、観察してみたらと言ったルフレにだって言いたくない事だ。
「ガイア?」
少し離れた所から名前を呼ばれる。
リズとフレデリクが至近距離にいるため、顔は見えなかったが声でヘンリーだと分かった。
返事をしようとしたが、ルフレが走ってきて先に声をかける。
「あ、ヘンリー。あそこの敵は一掃出来たのね。すぐで悪いんだけど、北東から来る敵の増援に備えてほしいの」
「はーい。行って来まーす」
「あたしも増援の援護に行くから、リズはガイアの傷の手当を。フレデリクは二人の護衛をお願いね」
「お任せください」
ルフレの指示に従いそれぞれ行動を開始する。
ヘンリーも既にこの場を離れており、声をかける事は出来なかった。
心配で来てくれたんだろうと思うと、大丈夫ぐらいは言いたかったが…。

結局、戦闘終了まで途中離脱という形で、軍の最後方で横になっていた。
終始イーリス軍のペースで戦は終わったらしい。
被害も殆どなく快勝と言っていい。ガイア一人を除けば…。
「ま、死ななかっただけでも良かったと思わないとな…」
野営地に戻り、寝台から天幕の天井を眺めて一人呟く。

「ガイア」
名前を呼ばれて、天幕の出入り口に目を向ける。
そこにはヘンリーが立っていた。
「大丈夫?」
「ああ、リズが杖を使ってくれたから傷はもう殆ど治った。ちょっと倦怠感があるくらいだ」
「よかった。でも、僕のせいだよね。ごめんなさい」
「いや…」
まったくもって、ヘンリーのせいではない。
しかし、ヘンリーの口調からして自分自身を責めているようだ。
本当は隠しておきたいが、ここはちゃんと説明をするべきなのだろう。
「突っ立ってないで、こっちに来いよ」
寝台の近くにある椅子に座るよう即す。
そして座ったのを確認してガイアは言う。
「お前のせいじゃないからな」
「でも、闇魔法で討たれたって…。ちゃんと訓練してたらガイア怪我しなかったかもしれないよね」
「いや、違うんだ…」
やっぱりと思った。訓練を怠った事で討たれたんだと思っている。
訓練した事が無かったんだ、お互いどれくらいの戦闘能力があるかなんて分かっちゃいない。
「ちゃんと訓練してても、俺は敵の攻撃を避けれなかったと思うぜ」
ヘンリーはじっとガイアを見ている。その表情には、いつもの笑顔はなかった。
「どうしてだと思う?」
ガイアは布団から体を起こし、ヘンリーとの距離を縮めて目を見て訊く。
「分からないよ…」
困った表情をしてヘンリーは目をそらした。
「分からないのが普通だと思うぞ。だから、聞いて欲しいんだ。避けれなかった理由をヘンリーにだけ」
「僕にだけ?」
「聞きたくなかったら、俺から離れても良いからな」
そう言って、ガイアはヘンリーにもっと近くへと、布団の上に腰を下ろさせた。
さらにお互いの距離が縮まる。
「恥ずかしいんだが、敵の攻撃にまったく気づいてなかったんだ。普段なら気づけたと思うし、回避出来たと思う。別に驕りじゃない」
ヘンリーは黙って聞いている。
「本当は誰にも知られたくなかったんだが…」
言いにくそうにガイアは天井を見上げて頭をかく。
そして、意を決してヘンリーに向き直る。
「ヘンリーを見てたんだ…。見入ってて敵の攻撃に気づかなかった。笑ってくれても良いぜ?」
「笑えないよ〜?結局、僕が原因なんじゃ…。どうして見てたの?僕、変な事してたかな〜…」
笑うどころか困った顔をしている。そりゃそうだ、自分を見てなきゃ討たれなかった事になるのだから…。
「変な事というか、凄く楽しそうだったな」
「あはは。戦争好きだからね〜」
そう言うヘンリーの顔には少し笑みが戻っていた。…本当に戦うのが好きなんだなと思う。
「勝手に見入ってたのは俺だし、別にヘンリーが気にする事じゃないからな」
「はーい」
「あと、楽しそうにしてるから見入ってた訳じゃない」
言いながら、ヘンリーの頬に手を添える。
「嫌だったら、さっきも言ったが俺から離れろよ…」
あまり感情を表に出さないヘンリーに念を押す。独りよがりにはなりたくない、だからと言って傷つけたくもない。
無理はさせたくないと、少し黙る。
まだ良く分かってないかもしれないが、直ぐ言われるよりは心の準備ができるだろうと…。

少しの沈黙の後、ヘンリーに伝える。
「好きだからなんだと思う。だから目が離せなくなって、敵の殺気にも気づけなかった」
「好き?」
「ああ、ヘンリーの事が好きだから、ずっと見てたんだ」
「あはは…。なんか恥ずかしいな〜」
少し頬を赤らめて、照れ笑いをする。笑顔ではあるが、いつもとは違う笑顔だ。
その笑顔を見て独りよがりではない事を確信する。
「ヘンリーは俺の事嫌いか?」
「好きなんだと思うよ」
随分あっさりと言ってくれる。これも、彼らしさなのか…。
その違う笑顔でヘンリーはさらに言葉を続ける。
「ガイアが倒れてから敵の増援と戦ってたんだけど、魔道書落としたり攻撃外したりしてサーリャに怒られちゃったんだよ。ルフレにも呆れられちゃった。あはは」
「へ、へえ…」
サーリャはともかく、ルフレの名前を聞き少し嫌な想像が頭をよぎる。
あいつの事だ、今度あったら絶対何か言ってくる…。
「それって多分、ガイアの事が気になってたからだよ。集中出来ないほど人の事考えたの初めてかも〜」
「俺もそうだ…」
先ほどから結構な至近距離にいたが、更に距離を詰める。
そして、軽くキスをして抱きしめる。

「あ、そういえば明日訓練するってフレデリクが言ってたよ〜。ガイアは参加出来る?」
「え?まあ、傷はもう治ったも同然だし参加出来るが…」
ここで訓練の話が出てくるとは、雰囲気も何もないなと少し溜息が漏れた…。
とりあえず抱きしめたまま離さず、そのまま話を続ける。
「じゃあ、また朝起こしてもらおう〜」
「構わないが、なんなら一緒に寝るか?起こしに行く手間が省けて、俺が楽だ」
「あはは、良いよ〜。でもガイアは面倒くさがり屋だね〜」
「お前には言われたくないんだが…」
「えー?」
じゃあ寝るかと、ヘンリーを抱いたまま横になる。
「あれ〜?もう寝るの〜?」
夕刻は過ぎているが、寝るのにはまだ早い時間だ。
もちろんそんな事はガイアも分かっている。
「ちょっと訓練の話で雰囲気がアレになっちまったが…」
「ああ、ごめんね。えーと…マントぐらい取った方が良いよね〜」

分かってるのか、分かってないのか…
この際、雰囲気は無視しよう。ガイアはそう思った。


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おわり。

最後が寸止めのような違うような…。
色々と捏造しているので、ゲームと違う所がいっぱいあります(いつもですが)

長々と長ーい駄文に付き合って頂き有り難うございます!



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続く 後日談(特に何もない話です)

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