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FireEmblem 覚醒:居る場所 前編
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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友達かな?な感じです。ナニの関係はありません。
「ダメ〜」と言わせたかっただけとか、そんな事は…。
腕の印が一応メインのつもりでしたが、違う気がします…。ガイアの過去話しではないです。



戦闘中は役割を全うするため、必要以上に味方への援護はせず、宝の箱に集中する。
宝の箱を発見し、鍵開けに集中している所で矢を受けてしまう。
「くっ!」
周りに敵が居ない事は確認していたが、予想以上に開けるのが手こずってしまったらしい。
開けるのを中断し、すぐ腕に命中した矢を抜き捨て、剣を構える。
幸い負傷したのは左腕で、剣を振るうのに支障はなかった。
だが激痛は絶え間なく押し寄せてきて、集中力を保つのにかなりの気力と体力を要した。
傷は思ったより深いようだ…。

自分が攻撃を仕掛けるより早く、敵の断末魔が聞こえてきた。
敵が崩れ落ちるのを確認して、辺りを確認する。
「ガイア、大丈夫?」
敵が転がっている所から少し離れて、ペレジアの装束を身に纏った呪術士が姿を現した。
とても味方とは思えない格好だが、ガイアは安堵の表情を見せる。
「ヘンリーか…」
「怪我してるね〜?」
そう言って、ヘンリーと呼ばれた人物は近寄り、ガイアの左腕を手に取る。
「つっっ!」
「あ、ゴメンね〜。少し我慢してね?」
左手の防具を取ろうと、ヘンリーは出来るだけ傷に触れないように、優しく腕に手を回す。
だが、その手にガイアは右手を乗せ、防具を取るのを阻止した。
「…大丈夫だ。手当てしなくても平気だから」
「ええ?凄い血が出てるよ??止血しないと駄目だよ〜?」
「戦いが終わったら自分で手当てするよ。だから、今はいい」
「ダメ〜」
ヘンリーはガイアの傷ついた腕をポンっと叩いた。
「痛っっ!」
何するんだと必死に痛みをこらえて、ヘンリーを睨みつける。
「わがまま言ったバツだよ〜」
口調とは裏腹にヘンリーの表情に笑顔は無かった。その表情から心配してくれている事が分かる。
ヘンリーは自分の服の袖を破き、更に縦に裂き包帯状にする。
そして防具を外して、破いた袖を手際良くガイアの傷に巻き止血をした。
「痛いけど、もう少しガマンだよ〜」
よいしょと、ガイアを支えて立ち上がった。
「どこへ行く気だ?」
「このまま居ても危険だし、ちゃんと手当てしないと。リズが向こうにいるハズだから、回復の杖使ってもらおう〜」
「いや…、そこまでしなくても…」
リズの所へ移動しようとするのを自分が止まる事で制止する。
歩みを止められたヘンリーは、負傷した腕に目線を落とした。
「僕の応急処置じゃ、血は止まらないよ?矢は貫通してたから、このままじゃ死んじゃうよ〜」
「死にはしないと思うが…」
「じゃあ、僕が殺しちゃうよ〜?」
「お前が言うと、冗談に聞こえないな…」
本気かどうか分からない会話をしつつ、ガイアは観念した様子で歩き出した。

敵に注意しつつ林を抜け、少し開けた所にリズと兵士数人が集まっていた。
戦闘が一段落ついたのか、リズは負傷者の手当を終えて、兵士達と談笑を楽しんでいる。
「リズ〜」
「あれ?ヘンリーどうしたの?」
声をかけられて振り向き、ガイアの腕に気づいて、リズは大きな声を上げた。
「わ!ガイアさんっ!!腕どうしたの??血が出てるよ!!」
「ちょっと怪我しただけだ、心配いらないよ」
「ウソだよ〜。リズ〜、回復の杖お願いしても良いかな〜?」
「うん、もちろんだよっ!」
言いながら慌てて駆け寄り、ガイアの負傷した腕に手を置く。
リズも怪我の深さはもう分かっており、ガイアの言葉は二人に放置された。
「ねえ、リズ。回復の杖って傷を診なくても出来る?布の上からとか〜」
「出来ると思うよ。リブローみたいな感じでやれば良いんじゃないかな?」
「本当〜?じゃあ、巻いてある布の上からお願いしても良い?」
「うん。まかせて!」
一瞬、何故?という顔をリズはしたが、無理なお願いでもなく拒否する理由も無いので、言われた通り杖を使う。
ヘンリーは杖ってスゴイね〜。と、うんうんと感心しながら回復の杖で癒されていく腕を眺めていた。
布が巻かれているので、回復してるかどうかは良くわからないのだが…。
「どう?ガイアさん、痛む?」
「いや…。痛みは無くなった。凄いな…ありがとう、リズ」
「えへへ。血も止まったみたいだし、傷も塞がってるハズだよ。ガイアさん、無理しちゃ駄目だよ!」
「ああ、助かった」
腕をさすりながら立ち上がり、リズに医療費だと言って飴玉を一つ渡す。
「よし、もう一度宝箱開けに行くかな。また負傷したら宜しく頼む!」
「え〜?危ないと思ったら逃げてよ!」
「ああ、忠告ありがとうな」
そう言ってガイアは颯爽と来た道を戻っていった。
「援護するよ〜?リズ、またね〜」
ヘンリーはリズに手を振り、ガイアの後を数歩遅れて歩き出す。
「うん、二人とも気をつけて!」

戦闘が終わった次の日。
野営地では、消耗した備品や手入れ等の補充や片付けに追われていた。
ただ軍全体で行っているのではなく、一部の隊士が自ら率先してやっている感じだ。
忙しく動く人たちを他所に、ヘンリーは木陰に腰を下ろし、辺りをぼーと眺めていた。
そして、一人の兵士がこっちを指差しているのに気づく。
何かな?と、その兵士を目で追っていると、少し離れた所から声をかけられる。
「ここに、居たのか」
あれ〜?と、兵士から目を離し、声をかけられた方を向くと、ガイアが近くまで来ていた。
「何か用〜?」
「ああ、昨日のお礼がしたくてさ」
「昨日の?別にいらないよ〜?」
ガイアは隣に腰を下ろして、自分の左腕に目をやった。
「いや、凄く助かったから…。何かお礼しないと俺の気が収まらないんだよ」
「ん〜。誰にも言わないよ?」
言われてガイアは頭をかき、まいったなと溜息を漏らした。
「はあ、ルフレと同じ事を言うんだな…。じゃあ、礼とかじゃなくて良いから、街行こうぜ」
「街?」
唐突な気がして、つい聞き返してしまう。何故?という顔を向けていると、ガイアは笑顔で立ち上がった。
「野営地の近くの街にさ、菓子屋が一杯あるんだよ。移動する前に全部まわりたいと思ってて、菓子見るの好きって言ってただろ?だから、一緒にまわれたらな と思ってたんだ」
「へ〜。そんなに一杯あるんだ〜。楽しそうだね〜」
「だろ?行こうぜ」
そう言って手を差し伸べ、座っていたヘンリーを立たせる。
「そんな遠くじゃないから、数日あれば全部まわれるハズだ」
「えぇ?数日かかるんだ〜…。凄いあるんだね〜」
「一軒一軒じっくり見たいしな」
子供っぽい笑顔をヘンリーに向けて、さあ行くぞ!と歩き出した。

街は野営地から歩いて1時間かからない所に位置していた。
なかなか大きな街で、行商人も多く立ち寄り、街の人口以上に人が行き来している印象がある。
そしてガイアが言うように、菓子屋が多いらしく可愛い店構えの建物が多くあった。
街全体の雰囲気はとても穏やかで、つい羽目を外してしまいそうになる。
街に入り、見つけた菓子屋に片っ端から入っていく。
焼き菓子専門の菓子屋や、飴細工ばかりの店、チョコレートという茶色い甘い菓子が一杯ある店なんかもあった。
見るのも初めてな菓子も多く、入る店の殆どで時間を忘れて長居をしてしまう。
「これ凄いな!まさしく菓子の家だ!」
「うわあ!中に動物がいるよ〜?これも食べれるのかな?」
二人が焼き菓子で出来た菓子の家に感動していると、店主が得意げに声をかけてくる。
「食べれますよ。パンを練って作った菓子で出来てるんです。あと、中の家具は飴細工でできていて、甘くて美味しいですよ」
説明を聞きながら、二人はまじまじと菓子の家を眺めた。
「細かいな」
「食べるの勿体ないよね〜。ガイア住んじゃえば〜?」
「もう少し大きかったら、住んでみたいよな」
「結婚したら菓子の家を建てて住めば良いんじゃない〜?」
「誰が一緒に住んでくれるんだよ…。お前くらいじゃないのか?」
「あはは。虫一杯来そうだからヤダ」
「…。それは俺も駄目だ…」
菓子談義は尽きないらしく、なかなか菓子の前から離れようとしない。
そんな菓子で盛り上がる男二人を菓子屋の店主は微笑ましく眺めていた。

それから毎日のように、街へ繰り出し菓子屋を巡る。
そして今日も菓子屋を目指して歩く。
「はあ〜。最近、血糖値が上がってる気がするよ〜」
「そうだな、たまには良いだろ?」
「うん〜。ガイアは鼻血に気を付けてね〜」
「そんな出してないぞ?多分…」
いつものように無駄話をしながら街を練り歩き、菓子屋に入る。
殆どの店を物色し終えて、もう一度見たい店を探して中に入った。
来店したのは、菓子の家で盛り上がった店だった。
「まだあるかな〜?それとも、もっと豪華なの出来てるかな?」
「どうだろうな。今回はココで何か買って帰ろうぜ」
その二人に気づいたのか、店主が声をかけてくる。
「いらっしゃい、この前も来てましたよね。今日もデートですか?」
「でっ???デート??」
ガイアは持っていた菓子を落としそうになりながら、慌てて店主の方を振り向く。
「あ…、違ったんですか?仲睦まじく感じたので…、失礼いたしました」
気まずそうにガイアは頭をかき、持っていた菓子を元の場所に戻した。
「いや、別に謝らなくても良いが…」
そう見えてしまったのかと、何となくヘンリーとの間に距離を置く。
気まずくしているガイアとは違い、ヘンリーは気にする様子もなく菓子を物色しながら笑っている。
「あはは。男同士だけどね〜?菓子を見るのが楽しくて、はしゃぎすぎちゃったのかな〜」
「はあ、別に菓子は女だけのモノじゃないぞ?」
「それはその通りですね。不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありません」
店主は二人に深々と頭を下げた。
「ああ、いや。頭上げてくれ。恋人とかではないが、仲は良い方だからな。俺も別に怒ってないし、ちょっと焦っただけで…」
「ねえねえ、ガイア。これなんか美味しそうだよ〜?」
棚から色鮮やかな丸い菓子をカゴに入れてガイアに見せる。
そんなヘンリーを見て溜め息まじりにガイアは言う。
「お前は良いよな…自由で…」
「ん?こっちの方が、美味しいかな?」
今度は、棒状の焼き菓子を手に取ってカゴに入れた。
そのカゴにガイアは手を伸ばして受け取り、申し訳なさそうにしている店主に渡す。
「全部でいくらだ?」
「ああ、はい!ただいま御会計を…」

店を出て、噴水のある広場まで来て、足を止める。
「ちょっとココで、数個味見してくか」
「いいね〜」
ヘンリーも賛成し、噴水の縁に腰を下ろして、菓子の袋を開けた。
袋を開けると、中から甘い匂いがあふれてきた。二人は袋の中をのぞき品定めをする。
じゃあ食べるかと手を袋に入れた所で、見慣れない男数人に声をかけられる。
「おい、話しがある。同行願えるか」
「なんだ?何かあったのか?」
不快な顔を男達に向け、菓子を袋に戻しヘンリーに手渡す。
「近くで盗みがあったのは知っているか?」
「ガイアはずっと僕と一緒に居たよ〜?」
男がガイアに訊いたのに対し、すぐヘンリーが言葉を返した。
「疑ってる訳ではない。それらしい人物に聞き込みをしているだけだ」
それらしいと言われ、あからさまに嫌な顔をする。
ヘンリーは何か言おうとしたが、ガイアに肩を軽く叩かれ口を閉じる。
「分かったよ。ヘンリー、ちょっと行ってくるから。俺が戻ってこなくても、暗くなる前には帰れよ」
そう言い、男達と一緒にガイアは通りの奥へ消えていった。

「……。」
その後ろ姿が見えなくなるまで、ヘンリーはじっと見つめていた…。



ーーーーーー

後編へ続く


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