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FireEmblem 覚醒:鍵2 カギから始まる。
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FireEmblem覚醒

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カギから始まる。
ここから始まる。の続きです。




ここ数日、とても天気が良い。
こういう日は、何もかも忘れてボ〜とお天道様と一緒に昼寝をしていたい。
欲を言えば兵士が行き交う野営地ではなく、菓子が行き交うような平和?な場所で惰眠を貪るのが希望だ。

…などと考えてはみるが、明日は行軍の予定があり、それに備えて準備をしなければならない。
既に敵の領内に侵攻しているため、交戦は必至だろう。
偵察の報告では、敵兵の数はイーリス軍と同等。砦に居る兵の数は多くないらしい。
軍師によると、戦力を割いてまで死守しなければならない砦ではないとの事。それは敵から見ての事らしいが、イーリス軍側から見ても普通に考えれば価値があ る砦だとは思えない。だからこそ、敵は兵力を温存して勝てそうになければ砦を明け渡すつもりでイーリス軍を迎え撃つのだ。
なら何故、イーリス軍は価値のない砦に攻め込むのか。そこには一般兵じゃ理解知り得ない戦略があるのだろう。
もちろんガイアにも分からない事で、ただ軍師の策に従うまでだ。

ガイアは軍事会議に参加する事はないが、明日の戦について軍師から軽く話しを聞いた。
まあ、やるべき事は鍵開けの一択で、余裕があれば遊軍としての活躍を期待されるくらいだ。
そんなに楽な戦いならと、ある提案をヘンリーにする。
今日は約束通り鍵開けを教えるため、一緒に茶をすすりながら午後を過ごしていた。茶より菓子の率が高いのは言うまでもない。
「明日の戦は楽勝だって話しだから、鍵開けの実践をしてみないか?」
「え〜、良いの?僕、ガイアの邪魔にならないかな〜?」
菓子を取る手を止めて、少し不安そうにガイアを見てくる。
「まあ、大丈夫だろ?ずっと見ててやるよ。何か不満か?」
「ん〜、ちゃんと出来るかな〜。ガイア、またイライラしちゃうかもよ〜?」
「あれは、お前が何もしないで鍵開けをじっと見てたからだろ…。やってみろって言って、出来ないからって怒ったりはしないぞ」
まだ気にしていたのかと、ちょっと意外に感じた。いつも笑顔のせいか、すぐ忘れてしまうタイプだと思っていたのだが…。
そして、どうも怒りっぽい人間だと誤解されているような気がする。別にどう思われても良いが、いちいち顔色をうかがわれるのは好きじゃない。まあ、好きな奴もいないだろうけど。
「じゃあ、やってみようかな〜」
怒らないと言われて安心したらしく、ヘンリーはいつもの笑顔をガイアに向けた。
「ああ、折角覚えたんだからやってみようぜ」


翌日。
予定通り、敵の砦に向けて進軍を開始する。
前日に聞いていた通り、さほど敵兵の数は多くはなく、難なく砦まで突入する事ができた。そこでも敵軍の配置は手抜きではないかと思えるほど手薄だった。
ガイアは宝箱を開けるため、本陣から離れて行動する。いつもなら単独行動だが、今回はヘンリーと共に動く。
他の奴に理由を聞かれたら、箱開けの援護を頼んだと言うつもりだ。まあ、楽勝だと最初から分かっている戦なので、援護なんて要らないのだが、他に言い訳が思 いつかない。
バレたとしても、楽な戦だからと注意はされないだろう。
ただ、なんでヘンリーが鍵開けしてるんだ?と変に思われるかもしれないが…。

そんな事を考えながら進み、ちょっと味方から離れすぎたかと辺りに気を配る。
「ガイア〜、あそこに宝箱があるよ〜」
言われて、ヘンリーの見ている方角に視線を移す。
そこには1つの宝箱あり、周りには障害になりそうな物は何もなかった。敵が近くを通れば直ぐ見つかってしまうだろう。
「少し厄介な場所にあるな…」
「僕、見てようか〜?」
「いや、まあ…平気だろ。敵に見つかったら戦うまでだ」
そう言い、宝箱の方へ歩き出す。もちろん、周りに注意を払いつつだ。
「よし、今んとこ敵は居ないな」
宝箱を前にして、ガイアは辺りを確認する。見晴らしが良いので確認は容易に出来た。その条件は敵も同じで、むしろ囲まれる危険性があるこっちの方が不利だ。
ガイアは手で合図を出し、ヘンリーに鍵開けをするように即す。
「え〜と…」
宝箱の前に座り込んで、ヘンリーは鍵穴とにらめっこを始めた。
その様子を横目で見つつ、剣を構えて辺りに気を配る。
「ん〜…」
ヘンリーは真剣に箱と向き合っている。横から軽く手順を言うのもアリだが、取りあえず訊かれるまで一人でやらせようと思う。
こういうのは親心とでも言うのだろうか?まあ、何事も最初は一人でやってみるのが良い。
悩みながら鍵穴と格闘しているヘンリーを見て、なんでここまでしてやってるんだろう?という疑問が不意に頭をよぎる。
確か最初は面倒くさく厄介な事だと思い、避けていたハズだ。
教えるまで、しつこく寄ってきそうだったからか?
だとしても、実践までさせてずっと見ててやるのは、らしくないような気もする。そして、ずっと側で見守ってるのは過保護すぎじゃないか?
いや、軍の仲間だし、自分が居ない所で鍵開けさせといて問題が起きても困る。じゃあ、自分自身の自己防衛か?
いやいや、だからなぜ鍵開けの実践なんてさせているんだ…。
喜ぶ顔でも見たいのか?
確かに、菓子を見て喜んだりしてるのは、ちょっと嬉しかったが。
あと名前を呼んだだけで、あんなに喜ぶとは思わなかった。あの満面の笑みは予想外で未だに頭から離れない。もう一度見たいとさえ思う笑顔だった。
つまりは、またあの笑顔が見たいという事なのか。そのため、無意識に喜びそうな事を探して…。

「ガイアッ!」
「ぐっ…」
名前を呼ばれたと同時に右腕に激痛が走り、考えていた事は一瞬にして頭から吹き飛んだ。
なんとか白くなりかけた頭の中を現実に引き戻し、必死に痛みをこらえながら周囲に目を向ける。
1、2、3…10人以上は居るだろうか。完全に、囲まれてしまっている。
「ガイア、腕大丈夫?」
「あ、ああ…大した事はない…」
まさか、敵に囲まれてしまうとは…。考え事をしていたとはいえ、油断し過ぎだ。
「ヘンリー、俺が援護してやるから、お前は逃げろ」
「ええ?ガイアはどうするの?利き腕、怪我してるのに…」
心配そうにヘンリーは怪我をした腕を見ている。なんとか剣は握っているが、殆ど感覚がなくとても振れる状態ではなかった。
だが、この状況で二人が無事に逃げきれる可能性は低い。一緒に戦うにしても、利き腕を負傷した自分は足手まといでしかない。
「お前が逃げる隙ぐらい作れるさ。時間稼ぎは任せて、早く逃げろ」
「駄目だよ〜。ガイアをおいて逃げれないよ?」
「いや、気づけなかった俺のせいだからな。責任は俺が取る」
そう言い、剣を左手に持ち替える。利き腕ではないので上手くは使いこなせないだろうが、今なら利き腕より頼りになるはずだ。
「ガイアのせいじゃないよ。僕が鍵開けに手惑ってたからだよ〜」
言いながら魔道書を手に取って、ガイアの前に立ち戦闘態勢に入る。
ヘンリーの背中が視界に入り、ガイアは守られる立場ではないと、肩を掴んで後ろに引っ張った。
「駄目だ!逃げろっ!俺のせいで、お前を傷つけるわけにはいかない!」
「大丈夫だよ〜。僕は戦うの大好きだし、痛いの慣れてるから平気だよ〜。ガイアは怪我してるんだし、僕に任せて」
肩を掴んでいるガイアの手に優しく触れ、にっこりと微笑む。
そして敵に向き直り早口に術を唱え、闇魔法を放つ。ヘンリーの唱える魔法は威力が大きく、討たれた敵は膝をついた。そこに、容赦なく次の魔法を打ち込 む。一対一なら余裕の勝利だ。
次の詠唱を始めたヘンリーに、別の方角から敵が襲いかかる。それに気づき詠唱を中断し斬撃を寸でで躱す。だが、その後ろから更に別の敵による攻撃が襲いか かる。
「ヘンリー!」
「心配しないで〜。大丈夫だよ〜」
攻撃を受けながら間合いを取り、違う魔道書に持ち替えて反撃をする。
反撃された敵はその場に崩れ落ちた。
「ガイア、見て〜。この魔道書はね、敵の生命力を吸うんだよ。そして僕の傷が回復するんだ」
いつもの表情で微笑み、魔道書をガイアに見せる。
「そんな魔法があるのか…。便利だな…」
「でしょ〜?だから大丈夫だよ。僕がガイアを守るよ〜」
「…見かけに寄らず、頼もしいな」
不本意ではあるが、そう言葉をかける。もう何を言っても、ヘンリーを止める事は出来ないだろう。
「ふふ、見かけに寄らずは余計だよ〜」
ヘンリーは微笑んで言うが、ガイアの表情は堅い…。

数人倒したが、まだ敵の数はこちらより多い。
魔道書により回復を補っているとはいえ、ヘンリーは一人だ。複数の敵を一人で相手にし、回復以上に体力を奪われていっているのが分かる。
ガイアは、いざという時は身を挺してでも守る覚悟で頼りない左手で剣を構え、ヘンリーの動きをじっと見つめた。

「はあ、これで終わり…かな〜?」
ヘンリーは肩で息をしながら、倒れた敵を見下ろす。
「凄いな」
「かなり、ギリギリだったけどね〜」
笑顔でガイアの側に行こうと歩き出したが、ふらついて上手く真っすぐ歩けず途中で止まる。
「あはは、疲れて歩けないや。ちょっと休んで良い〜?」
「ああ、無理はするなよ」
よいしょと、その場にヘンリーは座り込んだ。その後ろで、微かに黒い陰が動く。
ふとそれが視界に入り、声をかけるより先にヘンリーの方へ駆け出す。
「どうしたの〜?」
疲れで、ぼんやりとした表情で後ろを振り向こうとするヘンリーを素早く抱き寄せ、襲ってきた黒い陰を思いっきり蹴り飛ばす。
すぐヘンリーを解放し、両手で剣を構える。そして、起き上がろうとした敵に、力いっぱい頭上から剣を振り下ろした。
勢い良く鮮血が吹き出し断末魔の末、敵は完全に動かなくなる。
「止めさせてなかったんだね〜。ありがとう、ガイア。助かったよ〜」
「いや、礼を言わなきゃならないのは俺の方だ。俺の失態なのに、ありがとう。命拾いしたよ」
ヘンリーの方へ向き直り、真面目に一礼する。
「ガイア?」
ガイアの行動がらしくなく映ったのか、呼んだ名前の語尾が上がった。
「本当に、すまない」
今度は謝りの言葉を口にし、抱きしめる。
「ええ?どうしたの??」
「俺の軽はずみな行動が、お前を危険に晒したんだ。なのに、体をはって守ってくれて…なんて言ったらいいのか…」
無事を確認するように、腕に力を込めて強く抱く。
「ガイア、苦しいよ〜?あまり力を入れると、腕の傷が悪化しちゃうよ?」
「平気だ…」
そのまま少しの沈黙が流れた。

抱きしめていた腕の力が少し緩み、ヘンリーはちょっと体を離してガイアの表情を伺う。
「えーと、僕は大丈夫だよ〜?ガイア、ありがとう。僕のワガママ聞いてくれて、嬉しかったよ〜」
「いや、実践させたのは俺のワガママだ」
「?」
ヘンリーはガイアのワガママを理解出来ていないだろう。
全てがヘンリーの満面の笑顔を見るためだなんて、ヘンリー自身が気づくはずがない。ガイアもそれに気づくのに時間がかかったのだから…。
「結果、最悪な事態になってしまったが…、それも俺のせいだ」
「ん〜。良くわからないけど、悪いのはガイアだけじゃないよ?僕も悪いし、敵も悪いよ〜」
ヘンリーにそう言われ、自分の顔が緩むのがわかった。
「ありがとう。お前の言葉に救われるよ」
「お前じゃなくて、名前で呼んでね〜?」
「ああ、えーと…ありがとう、ヘンリー。て、かなり恥ずかしいな…」
特に何も考えず名前を呼んだはいいが、言われて名前を呼んでやるのは、性別等関係なく照れくさい。
口には出さないが、ガイアの沈みがちな気持ちを軽くしようと、言ってくれたのだろう。
言った本人も、少し顔を赤らめて笑っている。

少し休んで体力が回復したのか、ヘンリーは宝箱の前に移動する。そして、まだ開けていない宝箱をポンポンと叩いてガイアに声をかけた。
「ねえ、やっぱり鍵開けはガイアがやって?」
「ん、どうしてだ?敵はもういないし、今度こそちゃんと見てるから平気だぞ…」
やはり、まだ心配なのか。平気だと言われても、信用出来ないのは分かる。注意を怠り、危険に晒したのだから無理もないだろう。
そのヘンリーは笑顔でガイアを見ていて、とくに心配しているようには見えないのだが…。
「ガイアが開けるの見てる方が好きだから、見せて〜」
コイツが何を考えているかはサッパリだが、信頼されている…そう感じた。信頼されるような事は、何一つしていないと思うが…。だからこそ、ヘンリーの思考 がサッパリ分からないのだ…。
「そうか?まあ、良いが…。今は利き腕が使えないから、今回だけ頼んで良いか?」
「あ、そうだったね〜、じゃあ頑張ってみるよ〜」
「ああ、頼む」
今度は手が止まったら、ちゃんと手順を横から教えてやる。
少し黙って見ていると、鍵穴をのぞいてみたり宝箱を撫でてみたり…、なんか微笑ましい。自分が普段やっている鍵開けとは別物のように思えた。
鍵開けって、こんな可愛らしいモンだったか…?

カチャリ。
金属同士のすれる音がして、宝箱のフタが持ち上がった。
「やっと開いたよ〜」
「よし、これで立派な盗賊になれるぞ」
「え〜?じゃあ、剣術も習わなきゃ…」
「ああ良いぜ、いつでも教えてやるよ」
「さっき、鍵開けは見てる方が良いって言ったばっかりなのにな〜」
「そういえばそうだったな。まあ、気が変わったらな」
冗談のようなそうでないような、ゆるい会話を交わす。
さっきまで必死に戦っていたとは思えない、ほのぼのとした空間だ。

「さて、ヘンリーの鍵開け初の戦利品は傷薬だった訳だが…」
宝箱の中から傷薬を取り出して、二人でそれを見つめる。
そして、互いを見て笑う。それは疲労のせいか、乾いた笑いだった。
「はあ、苦労したのにね〜」
「そうだな、コレは罠だったのかもしれないな…」
「あはは、罠だったら見事にハマっちゃったね〜」
自ら宝箱に近づいて危険な目に合っているのだ。罠かどうかは分からないが、ハマったとしか言いようがない。まあ、自分の失態なのだが…。
「笑い事じゃなかっただろ…って、折角だし傷薬使うか」
「え〜?ルフレに勝手に使ったら怒られない?」
「平気だろ。負傷やら疲労で動けないんだから、使って怒ったらルフレは鬼だぞ」
そう言い、3つある傷薬を1つヘンリーに渡し、自分も1つ使う。残り1つのみを袋に入れた。
「回復したら、軍本体に合流しよう。もう、制圧してそうだが…」
「こんなにボロボロになってるの僕たちだけかもね〜」
「そんな気がするな…。ここであった事は黙ってるか」
本当にボロボロなのが自分たちだけなら、かなりの確率で不審な目を向けられ、問われるだろう。
だが、勝手な行動をとって危険な目に合ってしまったなんて、できれば言いたくはない。
「二人だけの秘密だね〜」
「ああ、そうだな」
「ふふ、なんか嬉しいな〜」
はたして、秘密に出来るのだろうか?
問われたら何て説明する?傷薬を2つ使ってる時点で、あの軍師なら気づくだろう。
どう誤摩化すかと作戦を練りながら、軍本体に合流するため歩き出す。

合流するまでの間、ヘンリーはずっと満面の笑みを浮かべていた。
その笑顔を眺めつつ、あーでもないこーでもないと二人で言い訳を考える。
ヘンリーはそれが楽しいらしく、言い訳を話し合って会話が弾んだ。もっとまともな会話で話しを弾ませろと思うが…。
「秘密を守るのって楽しいね〜」
「そうか?まともな言い訳が全く思いつかないけどな…」
「あはは。僕たち頭悪いんだね〜」
「そこ、笑う所か…?」
呆れた顔でガイアは言う。
ヘンリーはまだ笑っている。
その笑顔を見ていると、つい自分も笑顔になってしまう。

やっと満面の笑みをもう一度見れたと…




ーーー
おわり

また菓子が…。(ちょっぴりですが)

1話目よりは仲良くなっていると思います。
1話目はヘンリーからガイアでしたが。多分今回は、ガイアからヘンリーな感じです。
そんな感じが(どんな感じだ…)伝われば良いな〜と思います。

あと、ヘンリーがやたらガイアの顔色を伺ったりビクビクしてますが、ちゃんと理由があるのです。
それは3話目で…という事で。

そして、ガイアが注意力散漫です…。よくケガしてる気も…。(そしてヘンリーはよく寝込んでいる…)
私が書くと、戦闘ではいつもヘンリーの方が強い感じになってしまいます…。リザイア持った呪術士は強いですよね???
ガイアはキレ者のハズですが、言い訳とかは苦手だと思うのです…。

最後は、恋が始まる。かな…。

鍵3 恋が始まる。へ
タイトルヒドイな。

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