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FireEmblem 覚醒:フェリアにて 看病。 |
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フェリアにて。の3話目前半。看病。 「もうっ。やっと湯浴みから戻って来たと思ったら…」 ヘンリーは薬と水の入ったコップを両手に持ち、個人の部屋に続く廊下に出たが、ルフレに呼び止められてしまう。 手に持った薬の事を訊かれ、ガイアが風邪を引いたとだけ伝え、思った通りの小言をいただく。 早くガイアの元に戻りたいヘンリーにとって、ルフレの説教はとても長く感じた。 「ねえ、ルフレ、もういい?ガイアに薬持って行かないと〜」 「駄目よ、ヘンリー。あなたまで風邪を引いたらどうするの?薬はフラヴィア様にお願いして使用人に持って行ってもらうから、ヘンリーは御飯を食べて暖かくして早く寝てちょうだい」 「え〜。風邪引いちゃったの僕のせいだから看病は僕がするよ〜」 「だから風邪を引かれたら困るのよ。本当に戦力が厳しいんだから」 「ルフレは心配性だね〜?そんな簡単に風邪なんて引かないよ〜。あ、湯浴み終わった事を使用人さんに伝えるの忘れてた。じゃあ、ルフレ、また後でね〜」 まだまだルフレの説教は続きそうだったが、ヘンリーは思い出したかのように理由をつけて急いでその場を後にした。 「あ、ヘンリー!!っもう…」 まったく聞く耳を持たないヘンリーの態度にイーリスの若き軍師は頭を抱える…。 「本当に風邪を引いたらどうするのよ…」 一人で溜め息まじりに愚痴っていると、後ろから聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。 「あっはは、良いじゃないか!好きにさせておやりよ」 「フラヴィア様…、笑い事じゃないですよ。本当に戦力が厳しいんですって」 「だったらウチのバジーリオを貸してやろうか?」 確かに西の王が助っ人で参戦してくれれば、それは軍の志気も上がるだろうし百人力だろう。 とはいえ、自己管理も出来ず風邪を引いた者の代わりに来てもらうのは、如何なモノか…。 「えええ?確かに心強いですけど…。あまりウチの軍を甘やかさないでください…」 「たまには良いじゃないか。若いって良いね〜」 言って、また豪快に笑い出す。 そんなフラヴィアを横目に、ルフレはやはり溜め息しか出てこなかった。 「何が良いんですか…」 コト。 微かな物音がして、意識を失っていた事に気づき、ハッと目を覚ます。 「あ、ガイア起きた?薬、持ってきたよ〜」 「ヘンリーか…」 「気分はどう?」 「なんとか、少し楽になったかな…」 良かったとヘンリーは微笑み、薬とコップを差し出した。 「ハイ、水と薬だよ〜」 「ああ、ありがとう」 怠い身体を起こし、薬を受け取って水と一緒に口にする。喉が渇いていたのか、残りの水も一気に飲み干した。 「食欲はある?」 「ん?ああ…、そういえば今日は朝食以外、菓子ぐらいしか食べてないな…」 「あはは、薬は後の方が良かったかもね〜。御飯用意してあったから、こっちに持ってくるよ〜」 空になったコップを手に、ヘンリーは急いで部屋を飛び出して行った。 「ガイア、お待たせ〜」 「随分、早いな…」 「冷めちゃうと思って〜」 いつもの笑顔で息を弾ませながら答える。 看病が楽しい…という訳ではないだろうが、一生懸命なのは伝わってくる。その姿が微笑ましく感じ、自然に笑みがこぼれた。 寝台の横に持ってきたテーブルに二人分の食事を並べて、ヘンリーはスプーンを手に取る。 「準備出来たよ〜、いただきますしよ〜」 「お前もまだ食べてなかったのか…」 「うん。一人で食べると美味しくないからね〜」 「同感だな」 美味しそうに食べるヘンリーを見ながら、ガイアも食事を口に運ぶ。 「これ、フェリアの何て料理なんだろう?美味しいね〜」 「ん?あ、ああ、ウマいな。料理の名前は知らないが…」 実のところ美味しいと言われても、熱で味が今イチ舌に伝わらない。 だが、心配させたくなくて話しを合わせつつ、味の分からないフェリアの郷土料理を口にした。 食事を終え、ヘンリーは手際良く食器を片付ける。 普段ゆっくり行動している印象で、こんな奴だったっけ?と記憶を辿り、つい思っている事が声に出てしまう。 「意外だな…」 「ん〜?昔は毎日片付けてたからね〜、片付けるのが遅いと怒られちゃうんだ」 「すまん、また変な事言ったな…」 また昔の事を思い出させてしまったと、ヘンリーの顔色を伺う。 そのヘンリーは、ガイアの心配を他所に、いつもの笑顔を返してきた。 「あはは、僕だって後片付けくらい出来るんだよ〜」 「そうだな、すまない」 ヘンリーに気を使わせてしまった気がして、思わず謝ってしまう。 無意識なのかもしれないが、気にしない振りをしている。そう感じた。 「えーと、片付けてくるね?」 「ああ、ありがとな。俺の事はもういいから、お前もちゃんと寝ろよ。もう夜も遅いからな」 「もう一回、ここに来ても良い?冷たい水とタオル用意したいんだけど」 「いや、気持ちだけで十分だよ。薬も飲んだし、ほっとけば熱も下がるだろ」 「駄目だよ〜。ちゃんと冷やさないと熱下がらないよ?今、用意してくるから待ってて」 片した食器を持って、また急いで部屋の出口に向かう。 「…。忙しない奴だな…」 らしくなくテキパキ行動するヘンリーの後ろ姿を見て、ひとりガイアは呟いた。 次にヘンリーが戻ってきたのは先ほどより遅く、日付をまたいでからだった。 少し疲れを感じて目を閉じていると、静かに近づいてくる気配を感じる。 その気配は寝台の隣で止まり、遠慮がちに声をかけてきた。 「遅くなっちゃった。寝てたかな?ごめんね」 「いや、起きてたよ」 心配そうに覗き込んでくる顔に、笑顔を向ける。 「本当〜?」 「ああ。だけど、もう寝ないとな?」 「…うん」 小さく返事をして、ヘンリーは持ってきた桶にタオルを浸した。 そして絞ったタオルをガイアの額に乗せる。 「っ!!凄い冷えてるな」 予想以上の冷たさに思わず身体が跳ねた。先ほど飲んだ水が、ぬるま湯に感じる程だ。 「あはは、ビックリした?早く熱が下がって欲しいからね〜。頑張ったんだよ〜」 ヘンリーは無邪気に笑った。だが、ガイアの表情からは笑顔が消えてしまう。 そしてタオルを乗せた手を引っ込めようとしたヘンリーを真顔で制止する。 「手、見せろ」 厳しい口調でガイアに言われたが、そのまま隠すようにヘンリーはマントの中に手を入れてしまう。 「ヘンリー、手を出せ」 もう一度、命令口調でガイアは言う。 「…ヤダ」 「ヤダじゃない。怒らないから、ほら」 「…」 じっとガイアに見つめられて、ヘンリーは渋々手を差し出す。 ガイアはその手を取り、ぎゅっと両手で握った。 「痛いよ…」 「当たり前だ。無茶したんだろ。凍傷にでもなったらどうするんだ?」 握った手は雪のように冷たく、触れていても人肌は感じられなかった。 「大丈夫だよ」 「分かってるのか?凍傷になったら指が無くなってしまうかもしれないんだぞ?風邪どころの騒ぎじゃないからな」 握った手をそのままに、ガイアは身体を起こしてヘンリーとの距離を縮めた。ヘンリーが額に乗せたタオルは下へ落ちてしまう。 「こんなに冷たくして…、素手で雪を触って溶かしたりしたんだろ。しもやけくらいで済めば良いが…」 そう言い握っていたヘンリーの手を自分の顔に近づけ、首にあてたり唇を寄せ暖かい息をかけたりして大事に温めた。 「心配かけてゴメンね…。でも早く元気になってもらいたくて…」 「分かってるよ、お前の気持ちは凄く嬉しい。だが自分を犠牲にするのは駄目だ。そんな事されたら俺は…、お前と一緒に居れなくなる…」 一瞬、何を言われたのか理解する事が出来ず、ガイアの言った言葉を一つずつ頭の中で繰り返す。 最後の言葉を繰り返した瞬間、ヘンリーの身体が強張り目から涙がこぼれ落ちた。 「やだよ、そんなの…。居なくならないで…」 そんなつもりじゃなかったのにと、ヘンリーは自分がした事を責めた。 ガイアの言葉だけが頭に残り、どうして良いのか分からなくて涙だけが溢れてくる。 「泣くなよ。まだココに居るだろ?」 優しくヘンリーの手を握り直して、頬にその手を寄せる。 「僕は、どうしたら…」 「いつも通りで良いんだ。いつものヘンリーで良い。ただ自分を傷つけるな。良いな?」 「…うん」 「よし、もう大丈夫だな?」 ガイアは優しく微笑み、落としたタオルを拾い自分の額にあてて、寝台に寝直す。 「もう夜も遅いし寝るぞ。ヘンリーもちゃんと暖かくして寝るんだぞ」 握っていたヘンリーの手を解放してやって、数回優しくヘンリーの膝を叩く。 「ほら、ルフレに怒られるぞ」 「ねえ、ガイアが寝るまでココに居たら駄目?」 「駄目だ。だいぶん部屋の気温も下がってる。お前まで風邪引くぞ」 暖炉はあるが、既に火は消えている。部屋の温度は氷点下とまではいかないが、かなり寒い。 「もう少し一緒に居させて?」 「風邪引くって、さっき自分を犠牲にするなって言ったばかりだろ?」 「ガイアの嘘つき」 「え?」 いきなりの嘘つき呼ばわりに、思わず変な声が出てしまう。今の話しの流れで、何か嘘を言ったか? 「ずっと一緒に居てくれるって約束したのに…」 言われて、そう言う事かとすぐ理解した。だが嘘はついただろうか? 「いや、居るだろ?隣の部屋なんだし。何処にも行かないぞ?」 「もっと近くに居たいから、見えないの嫌だよ…」 もう涙は出ていないが、ヘンリーは今にも泣きそうな顔をしている。 「どうしたんだよ?フェリアに来てから変だぞ…」 フェリアに来てからのヘンリーは明らかにいつもと違う。昔を思い出す回数も多く、一人になるのを嫌がる。そして、雪や闇を怖がっているようにみえた。 「分かんない。分かんないけど…、不安でどうして良いのか分からなくて、全部無くなってしまいそうで…、僕は…」 「ヘンリー、落ち着け。雪は孤独にならないって言っただろ?闇もここには無いんだ。不安になる事なんて何もない。俺が守ってやるから、な?」 「…」 返事は返ってこないが、じっとガイアの顔を見つめている。 安心させるために言った台詞だったが守ると言った以上、ここで追い返すのは薄情だろうと…。 「しょうがないな…、腹をくくるか」 そう小さく呟き、身体を起こして寝台の半分を空ける。 「寒いだろ?布団に入れよ」 「いいの?」 「しょうがないだろ…、一人で居れないんじゃ。一緒に寝てやるから」 泣きそうだった顔は、やっといつもの表情に戻る。 早速、布団に入り、ヘンリーはガイアにくっついて満足そうに微笑んだ。 「お前、冷たすぎだぞ…」 「ガイアは温かくて気持ち良いよ〜」 「熱を全部持ってかれそうだな」 呆れ顔で言い、冷えきったヘンリーの頬を撫でる。 口では嫌そうに言ったが、その冷たさを熱で火照った身体が求めているのは分かった。 「じゃあ、風邪もちょうだい?」 「はぁ?それは駄目だろ…。ルフレに何回、怒られる気だよ…」 何を言い出すんだと、今度は理解出来ないという顔を向ける。 「だって討伐に行ったらガイアと一緒に居れなくなるから」 「しょうがないだろ。つーか、俺が居なくてもルフレや他のみんなが居るだろ。もっと他の奴らも頼らないと駄目だぞ」 らしくないヘンリーのワガママが続き、無意識のうちにルフレのような説教口調になってしまう。 「そうだけど、フェリアに居る間は…」 「困った奴だな…。そんなんじゃ終戦後にココへ旅する事なんて出来ないぞ?」 ガイアは、かまくらで交わした約束を口にする。あの時この土地で、ここまで感傷的になるなんて、誰が予想出来ただろうか…。 「今回だけだよ〜」 「本当か?」 「うん、初めての土地だからね〜」 「俺が言った台詞だろ、それ」 「ふふ」 さっきまで泣いてた奴はどこへ行ったのか…、今度は笑顔でワガママを言うヘンリーに観念し、小さく息を吐いた。 「はあ、しょうがないな…。目を閉じろ」 「ん?」 閉じろと言ってはみたものの、既に閉じてるなと頭の中でツッコミを入れ、唇の先が触れるだけの簡単なキスをする。 そして少し唇を離し、優しく囁いた。 「風邪を引くように、おまじないだ」 「これで風邪引くの?」 「絶対とは言えないが…。まあ、後は祈るしかない。引かなかったら諦めて討伐に行ってこい」 おまじないだなんて、がらじゃない。言ってから恥ずかしく感じ、つい突き放した言い方をしてしまう。 そんなガイアの態度に、ヘンリーは不満の声を漏らした。 「え〜。もっと良い方法ない?」 「…。あるにはあるが…」 流石に言いにくく、言葉を濁してしまう。とはいえ今のヘンリーが引き下がるとも思えない。 「どんな方法?」 訊かれて、しょうがないなと口を開く。 「浴室での続き、とかだな…」 「いいの?」 「え?あぁ?いや、お前こそ良いのかよ?嫌がってただろ…」 拒否された行為なだけに、それはないと思っていたが、予想外なヘンリーの言葉に動揺してしまう。 「でも、風邪引けるなら我慢するよ〜」 「我慢って…、そんな事言われたら、やりにくいだろ」 「じゃあ、我慢しないから続きしよう〜」 「言ってる事がおかしいぞ…お前。まあ、誘ってくれる事なんて滅多にないから、嬉しいっちゃあ嬉しいんだが…」 嬉しいとはいえ、本当に風邪を引かす訳にはいかない。だが折角の誘いを断るのも惜しい気がして、駄目だと思いながらも返答に困ってしまう…。 「駄目?」 「俺は風邪を引いて熱があるんだぞ?」 「無理?」 「いや、お前相手に無理なんてないけど…」 本当に良いんだなと念を押すように耳元で囁き、そのまま抱きしめた。 誰に言われるでもないが根性無しだなと自嘲気味に笑う。 こうなってしまっては、風邪がどうのこうのは、もうどうでも良い。 体力の限界まで夜を楽しむまでだ…。 ーーーーーー つづく。 おセンチヘンリー大爆発?の巻です。 すみません、続きます。 ナニっぽいトコロから始まりますので、18禁です。スミマセン。 3話目後半に続きます>>フェリアにて。(18歳未満閲覧禁止です。) UP |