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FireEmblem 覚醒:幸せになろう。中編 |
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-翌日- 前日は夕飯前にヘンリーの体調も回復し、いつも通り夕飯を共にし、夜も一緒に過ごした。 そして次の日も、朝食を食べ、昼食の後もいつも通り行動する。 「じゃあ、またあとでな」 「うん」 大事な話しを忘れてる訳じゃないが、気にしない振りをして別行動に移る。 正直に言えば、とても気になるのだが…。訊く勇気はなく、悪い事じゃないと自分に言聞かせる。…良い事なら、躊躇う事もなく話しそうではあるが…。 「駄目だな、悪い事しか想像できん…」 ヘンリーと別れ、ガイアは独りごちる…。 昨日と同じく野営地を離れて、ヘンリーは小高い丘を目指して歩く。 今日も天気は良く、散歩やひなたぼっこに最適な午後だ。 こんな日は何も考えたくない。そう思ってしまうのは、悩みがあるからなのだろうか…。 「あら、ヘンリーさん。今日も内緒話ですか?」 「あはは、今日も通じないけどね〜」 昨日と同じ丘の上で、今日もペガサスに話しかける。でも言葉は通じず、自分の迷いに気づかされてしまう。 「ねえ、スミア」 「なんでしょう?」 「二人目はまだ〜?」 「子供の事ですか?」 「うん、シンシアは、いつ産まれてくるのかな〜て思って〜」 訊かれて、今日も少し恥ずかしそうにスミアは答える。 「いつでしょうねえ…。今は戦時中ですから、数年先じゃないでしょうか…。もう少し平和にならないと、安心して子供は産めないと思います。これでも私は戦闘要員ですしね」 「そっか〜、そうだよね〜。スミアの言ってる事は正しいよ〜。偉いね〜、スミアは〜」 「ヘンリーさん?」 一人で納得しているヘンリーを不安げに見つめる。 「あの、ヘンリーさん。私の言ってる事は正しい訳ではありませんよ。何が正しくて間違っているかは私にも分かりませんし、こんな世の中だからこそ産む幸せもあると思います。見解は人それぞれで、私のお話はその中のひとつと思って聞き流してください」 「スミア、ありがとう。なんかスッキリしたよ〜」 相変わらずの笑顔で礼を言う。 どう納得してスッキリしているのか、スミアには見当もつかなく、有り難うの言葉に違和感を感じてしまう。 「本当ですか?昨日も、そう言ってましたが…」 「あはは、そうだったっけ?でも、もう大丈夫だよ〜。またね〜!」 丘を足早におりて行くヘンリーの後ろ姿を心配そうにスミアは見つめる。 「はあ…、ヘンリーさん戻るの早いです…。私のお話は、ちゃんとヘンリーさんのお役に立っているのでしょうか…」 また明日も通じないと笑いながらペガサスに話しかけているヘンリーの姿をつい想像してしまい、スミアは小さく溜め息をついた。 丘から野営地までの距離はさほど遠くはなく、道も坂道ではあるが整備されていて歩きやすい。 その道を足早に歩いていたヘンリーだったが、少しずつ動作が鈍くなり、野営地に着く前に完全に脚が止まってしまう。 「あれ?大丈夫だと思って…のに、うっ…」 我慢出来ず、苦しそうに呼吸をし、その場に座り込む。 そのままじっと目を閉じて耐えていると、元気な声をかけられ何とか顔を上げる。 「ヘンリー!」 「ノ、ノ…?」 「どうしたの?ヘンリー。どこか痛むの?」 小さなノノはしゃがんで、さらに小さくなり、下からヘンリーの顔色を伺った。 「少し休めば、大丈夫…だ、から…」 「苦しそうだよ?ノノが竜になって、お医者さんまで運んであげるよ!」 「あ、はは…。駄目だよ〜ノノ。お医者さんが潰れちゃう…」 竜になろうと竜石を握ったノノに、ヘンリーは苦笑いをした。いつもの笑顔のつもりなのだが…。 「むー、変身しないと、ノノはヘンリーを運べないよー」 「じゃあ…、ガイ、アを…。ガイアを呼んできてもらえるかな?」 「ガイア?うん、良いよ。ちょっと待ってて!」 ノノは頭の上にハテナマークを浮かべつつ、急いで野営地へ戻って行った。 コッコッ。トントン…。 ガイアの天幕からは、微かな鉱物を削ったり叩いたりする音が聞こえてくる。 「ふっ」 手に持った小さな鉱石に息を吹きかけ眺め、また器用に持ち替えて削りだす。 少し削っては角度を変え、それを何度も繰り返し、小さな鉱石は美しい姿に変わっていく。 「こんなもんかな…」 ガイアは、それを太陽の光にあて、満足そうに眺めた。 「ガイアーーーーーッッッッッ!!!」 「ぐわあっっ!?」 不意に天幕の外から大声で呼ばれ、持っていた鉱石を落としそうになる。 なんとか見失う事無く、小さな鉱石を無事キャッチし、天幕の出入り口を睨みつける。 「ノノッ!そんな叫ばなくても聞こえてるから、もっと静かにだな…」 削った鉱石をポケットにしまいつつ、ノノに文句を言う。 「いいから!早く来て!!」 「いいからって、なんだよ?」 ガイアの袖口を引っ張るノノに、これだからガキはとウンザリした表情を向ける。 「もうっ!早く来てって!!ヘンリーが大変なんだよ!」 「ヘンリー?」 いきなり言われて、名前だけは理解したが何の事か分からず、名前を反復する。 「うん、動けないって!ガイアを呼んできてって言われたんだよ!だから、早く!」 「な、それを早く言えよっ!!どこだ?早く案内しろ!」 自分を呼んできて欲しいだなんて、ただ事ではないと取り乱してしまう。いつもなら、他の奴の目があるからと… 「むー!ガイアのバカーッ!!さっきから、ノノは早く来てって言ってるのにーっ!!!」 「わ、悪かった。謝るから、早く頼む!」 ノノに怒鳴られて、考えている場合じゃなかったと、急いで天幕を出る。 「こっちだよ!!」 小さいわりにノノの足は速かったが、素早さが自慢の盗賊に比べれば遅い。 ガイアは焦る気持ちを抑え、ノノに歩調を合わせ走り、ヘンリーの所まで案内してもらう。 「ヘンリー!!連れてきたよ!!」 「大丈夫か?!」 ヘンリーを見つけ、すぐ隣に腰を下ろし顔色を伺う。 「うん。座ってたから、だいぶん楽になったよ〜」 「本当か?」 訊かれてヘンリーは頷き、ガイアに微笑みかける。そして、その笑顔のままノノに声をかけた。 「ノノは何処か行くところだったんじゃ?ごめんね、僕のせいで…」 「街に行こうと思ってたんだよ。でも、ヘンリーが苦しそうだったから」 「ありがとう、ノノ。もう大丈夫だから」 「ノノ、あんまり遅くなると、夕刻まで野営地に戻って来れなくなるぞ」 口には出さないが、二人きりになりたい。そういう雰囲気がヘンリーから伝わってきて、遠回しにガイアはノノに告げた。 「あーっ!また、ノノを子供扱いする!」 「な?今のは違うだろ?夜になると治安が悪くなるから心配して…」 何故そうなる?と、慌ててガイアはノノを宥めた。 「もういいもん、ガイアなんかしらない!ヘンリー、早く元気になってね!ノノ、街に行ってくるー!」 すっかりヘソを曲げてしまったノノは、ガイアの言葉に耳を貸す事なく、さっさと街へ続く道に走って行った。 「気をつけてね〜」 その後ろ姿に聞こえるかどうか分からないくらいの声で、ヘンリーは声をかけた。 そして、ノノの姿が見えなくなり、ガイアは大きな溜め息をつく。 「はあ、ノノの取扱説明書が欲しいくらいだな」 「あはは」 笑うヘンリーを見て、今度は安堵の息が漏れる。 「もう、大丈夫そうだな。どうする?天幕に戻るなら、背負ってやるぞ」 「ええ?歩けるよ〜」 「折角、呼んでもらったんだ。それくらいさせろよ」 そう言えば、なんで呼ばれたんだろう?と疑問に思う。瀕死なのか?と焦ったが、会ってみるとそこまでの状態ではなく…。 ただ会いたかったからとか…、そんなワガママのためにノノを使うとも考えにくい。 「じゃあ、ちょっとココで、お話ししよう〜」 考え込んでいると、ヘンリーがそんな事を言ってくる。 「前に言ってた、大事な話しってヤツか?」 「うん」 何となく、それで呼ばれたのか?と納得して、ヘンリーが話しだすのを待った。 心地の良い風が吹いてくる。 まだ日は高いが、日差しはそれほど強くもなく、黙っていると睡魔に捕まってしまいそうな陽気だ。 なかなかヘンリーが話しださないため、ついウトウトしてしまう…。 「えっと…、出来ちゃったかも…」 「ん?何がだ?」 準備の出来ていない頭に、ヘンリーの言葉が入ってこず、考える前につい訊いてしまった。 「赤ちゃん」 「え?」 「妊娠…したかも」 妊娠と言われて、やっと理解する。 ただ理解はできたが、それがヘンリーにとって幸せな事なのかどうかが分からなくて、複雑な表情になってしまう。 「ほ、本当なのか?」 「絶対とは言えないけど、医者に診てもらってないから…」 「そ、そうだよな…、女だって分かっちまうもんな」 頷いてヘンリーは自分のお腹に手を当てた。 「このまま降ろしちゃった方が良いのかな…」 「はあ?なに言ってんだよ?!」 思いもよらないヘンリーの言葉に、思わず大きな声が出てしまう。 「だって、戦時中だし、僕たちは闘うために軍に居るんだよ?こんな身体じゃココに居れないよ…」 「だからって、そんな簡単に言うなよ。お…俺たちの子、だろ…」 初めて言う台詞に、ついどもってしまった。 「じゃあ、どうするの?」 そうだなと腕を組み、ヘンリーを見やる。考えるまでもなく、女だって言うしかないのだが…。 「ヘンリー、クロムやルフレに…いや、軍の奴らに女だって言うのは駄目か?」 少し考えて、ヘンリーは口を開く。 「…駄目じゃないかも。イーリス軍はペレジアと違うって分かったから。それにガイアもいるし…」 最後の言葉を聞き、何も言わずガイアはヘンリーを抱き寄せた。 ペレジアでの生活がどういうモノだったかは知らないが、女では自分を守る事の出来ない環境だったのだろう。それは、男に対する恐怖心があるからだと想像出来た。 同じ男として許しがたい何かを感じ、「絶対守る」とガイアは心の中で誓いを立てる。 そして身体を離し、ヘンリーの前に背を向け、背負ってやるからとしゃがむ。 「とりあえず、クロムとルフレに報告しよう。まずはそれからだ」 「でも…」 まだ不安を隠せないでいるヘンリーに、ガイアは振り返り真剣な眼差しを向ける。 「大丈夫だ。あいつらは呆れる程のお人好しだからな。それでもヘンリーにとって辛い話しになれば、俺はお前を連れて軍を抜ける」 「ガイア…」 「安心しろ。俺がついてる」 「うん」 ずっと目の前にあったガイアの背中に身を預け、首に後ろから手を回す。 「なんか、懐かしいね…」 「そうだな、もう驚きはしないが」 「ふふ」 女だと知ってしまった、あの日の事がよみがえってくる。そして、あの時、背中で感じた感触も…。 「ヘンリー、巻いてるヤツ緩めてたりするか?なんか、前より感触が…」 「え〜、いつも触ってるのに?」 「い、いつもとか言うなよ…」 言われて毎日ではないと否定する。いつもだなんて、自分が欲求不満の塊みたいに聞こえるじゃないかと。 「ん〜、妊娠すると胸が張るって聞いた事があるよ〜?」 「そうなのか…」 フォローのつもりなのかもしれないが…、妊婦の知識などないから、そのまま鵜呑みにするしかない。 「さあ?聞いただけだけどね〜。ガイアが触るからかもだし〜」 「…」 結局そうなのかと、自分が残念な人間に思えてきた。そんなに欲求不満は溜まっていないつもりだが…。 胸好きだねと言われた時の事まで、思い出してしまう…。 「なあ、ヘンリー」 「ん〜?」 背中にぴったりくっついて、ヘンリーは眠そうに返事をした。やはりまだ、調子が悪いのだろうか。 「もしもだが、俺がヘンリーを女だって知らないままだったら、お前は俺に気持ちは伝えないって言ってたよな」 「うん、迷惑かかると思って、隠してたと思うよ〜」 少し身体を起こして、ガイアの耳元で答える。 「じゃあさ、女だって知らないまま、俺がヘンリーを好きになって告白してたら、お前はどうしてた?」 「え〜と、それってガイアが男を好きなるって事〜?」 「まあ、そうだな。だが、あり得ない事じゃないだろ?ヘンリーには変わりないんだ」 言われてヘンリーは小首を傾げる。自分はガイアじゃないので、あり得るかどうかが分からない。ガイアは男色家だったのか?とさえ思えてしまう…。 「ん〜、ちょっと想像出来ないけど、隠したまま付き合っちゃうかな?ガイアの事好きだし」 「隠したままなのかよ…」 「え〜?だって男の僕を好きになるって事でしょ?」 「抱かれたら隠しきれないぞ?」 「ええ?男とするの?ガイア…」 さらに疑いの目を向ける。もしかして、男の方が良かったのかと…。 「いや…、愛してるなら抱くかもしれないだろ。ヘンリーは女だったから、そんな覚悟は要らなかったが」 「えっと、つまり…?」 「あの時、女だって気づかなくても、俺はヘンリーに告白したんじゃないかと思う。好きだったんだよ、性別関係なく、お前の事が」 その想いを確かめる切っ掛けがなかっただけで、ずっと気になってはいた。 最終的には、一線を越える前に女だと分かり、気持ちが一気に膨れ上がってしまった訳だが…。 「知らなくても、両想いだったって事〜?」 「そう言う事だ。女だから好きになったんじゃない。ヘンリーだから好きなんだよ」 「あはは、何か照れちゃうな〜。告白みたいだね〜。でも、嬉しいな〜」 男の方が良いとかそんなんじゃないと分かり、ホッとして照れ笑いをする。 「続きはまた後でな」 「つづき?」 この話に、どんな続きがあるのだろうとヘンリーは気になったが、ふと顔を上げると野営地の入り口まで来ていて、続きはまた後でと言う台詞を理解する。 「とりあえず、俺の天幕で休んでてくれ。クロムとルフレに空いてる時間を確認してくる」 ガイアは天幕に入りヘンリーを降ろして、外に出て行った。 ーーーーーー つづく。 ノノが多いですね!? ガイアとノノが仲悪そうに見えますが、仲は良いです。 仲が悪かったら、ガイアのノノに対する態度は、口数も少なく態度も冷たい気がします。 ノノもムキにならないと思います。 書いてて楽しかったガイアとノノの会話なのであります。 後編へつづく。 UP |