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FireEmblem 覚醒:幸せになろう。後編
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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寝台の上で横になり、ぼ〜と天幕を見渡す。
見慣れたガイアの天幕で、野営地が移動しても内装は、ほとんど変わらない。
今は毎日訪れる天幕で、自分の天幕に居るより長い時間をココで過ごしている。
この天幕に初めて入ったのは、まだ女だって知られる前だったが、まさか男でも良いと思ってたなんて…と、天井を見上げた。
そして、さっきのガイアとの会話を思い出して、何とも言えない気持ちになってしまう。
「もしかして…、抱きたいとか思われてたのかな…」

「おい、ヘンリー、起きてるか?」
「あ、うん〜」
身体を起こして、出入り口の方を見る。
「クロムとルフレが来てくれてる」
「え?」
少しビックリして、ガイアの後ろに目を向ける。てっきり、明日だろうと思っていた…。
「ヘンリーの体調が良くないって言ったら、来てくれたんだよ。今、平気か?」
「うん〜。ちょっと心の準備は出来てないけど、平気だよ〜」
「そっか、じゃあ入ってもらうからな」
そう言い、ガイアは天幕から顔を出して、外で待っている二人に声をかける。
「体調悪いって聞いたけど、大丈夫?」
先に顔をのぞかせたのはルフレだった。
「うん、横になってたから、もう大丈夫だよ〜」
「お邪魔する」
ルフレに次いでクロムも天幕に入る。
ガイアは二人の隣に椅子を用意し、菓子と茶の用意を始めた。
「いや、気を使わないでくれ…」
「相変わらず、王族らしくないな…。茶菓子くらい遠慮するなよ」
それとも、甘い菓子は嫌いか?と、ちょっと不機嫌な顔をする。
「私は頂くわよ?ガイアの選ぶお菓子はハズレがないから楽しみだわ〜」
「ハズレが無い訳じゃないぞ?不味いのは人に出さないだけだ」
「だから、ハズレが無いって言うんじゃない」
「俺の舌を褒めてくれてると思って良いんだな?」
「ええ、もちろん」
じゃあ食えとテーブルに菓子を盛った皿を置き、紅茶を人数分入れる。
「流石、手慣れてるわね〜。良いお嫁さんになれるわよ?」
「俺は嫁じゃなくて婿になるぞ」
「誰のよ?」
ガイアとルフレの会話を残りの二人は黙って聞いていたが、なかなか止まらない会話にクロムは呆れて口を開く。
「話しって、菓子の事じゃないだろうな…」
「ああ、すまん。菓子の事になるとついな」
「クロム、この砂糖菓子おいしいわよー?」
「ルフレ…、お前は何しにきたんだ…」
菓子に夢中になっているルフレにクロムは溜め息をついた。
そのクロムは茶菓子に一切手をつけていない。
「クロム、お前もしかして、人の天幕に来て緊張してんのか?」
「いや、そうじゃないが…。大事な話しがあると言ってきたのは、そっちだろ」
「確かに、そうだな…。今から話すよ」
クロムに言われ、ちらっとヘンリーの方へ視線を移す。
視線に気づいたのか、ヘンリーは頷いてガイアのマントの裾を引っ張った。
「えっと、僕から話すから」
ずっと黙っていたヘンリーが口を開くと、ルフレは食べかけの菓子をテーブルに置き、話を聞く体制に入る。
流石ウチの軍師は空気が読めるなと、ガイアは感心した。

「…」

「……」

沈黙の時が流れていく。

「何があったのかは知らないけど、無理しないで。話せないなら、また今度でも…」
いつ話しだすかと、菓子に手をつけず黙っていたルフレだったが、痺れを切らしヘンリーに声をかけた。
「ううん、ごめんね。ちゃんと話すよ〜」
いつもの口調でヘンリーは答えるが、どこか緊張したような、そんな印象が表情にはあった。
「えっとね、僕…じゃない…。わたし…は女で、今まで隠してて、ごめんなさい」
「なに?」
やっと言葉にしたヘンリーに、最初に声を発したのはクロムだった。
ふざけてるのか?とまでは思ってないだろうが、信じられないという顔をしている。
「いきなり言われても、信じられないよね」
そう言って服の中に手を入れ、ガイアの時と同じように巻いてある布を外す。
もちろんガイアの時と違って、触らすような事はしないが…。衣服の裾を引っ張って、身体のラインを少し見せる。
「これで…、分かるかな?」
ルフレは、まじまじとヘンリーの胸元を見つめている。が、クロムは一瞬見ただけですぐ横を向いてしまった。
「クロム、お前、嫁いるくせに、うぶすぎるだろ…」
ガイアは呆れた顔で言うと、クロムは落ち着かない態度で反論する。
「よ、嫁とは違うだろ…、他の女は…」
「はいはい、クロムとガイアは黙ってて」
ルフレが口を挟んで、二人の会話を止める。続けさせた所で、くだらない内容なのは明らかだ。それどころか、ヘンリーの話しにくい空間になってしまう可能性もある。
「まだ話す事あるのよね?どうして、このタイミングで?」
「それは、俺から話す」
黙っててと言った相手が話だし、ルフレはアレ?という顔をガイアに向ける。
「そういえば、なんでガイアがいるの?」
「…それは、今更だろ」
言うならもっと早く言えよと、呆れた表情をルフレに返す。
そして、ずっと立っていたガイアだったが、寝台に座っているヘンリーの隣りに腰を下ろした。
「俺はヘンリーの事を知ってて、内緒で付き合ってたんだ」
二人で話しがあると言うのだから、あり得ない事ではないだろう。ルフレは驚く事なく、次の言葉を待った。
「妊娠したらしい」
「ガイアの子?」
「ルフレ、この流れで違ったら、俺は何なんだよ…」
さっきから俺にだけ冷たくないか?と、ガイアは不満げにルフレを見た。
結婚前で女だと隠しているのに孕ませる、女からすれば印象が悪いという事なのか…。
「医者には?」
「診てもらってないらしい。女だって隠してたからな」
「そう…。でも、自覚症状があるのね?えーと…、専門医が一人常駐してると安心よね、お願い出来る?クロム」
「え?あ、ああ。それなら、イーリス城に産まれるまで居てもらっても構わんぞ?」
いきなり話をふられたクロムは変な声が出てしまう。どう対応するかなんて、まったく考えが纏まっていない。
「それは駄目よ、二人が離れて暮らす事になるわ。野営地での生活は妊婦には大変だと思うけど、出来るだけサポートするから。出産時はイーリス城にみんなで 戻りましょ。その時は、出来れば休戦状態にしておきたいわね、戦闘があってもガイアとヘンリーは城に残っててもらって。あ、ヘンリーは野営地に居ても、編 成には組まないから安心してね」
ルフレは一人で、どんどん話を進める。
だが、その話は二人にとって悪い話ではなく、軍を抜ける覚悟は必要のないモノとなっていた。
「ルフレ、それって…」
「どうしたの?ヘンリー。闘いたかった?でも、駄目よ。大事な身体なんだから」
「軍に居ても良いの?」
「もちろん。二人の子供が楽しみだわ〜。明日にでも、ちゃんと医者に診てもらいましょ」
そう言って、ルフレはヘンリーに優しい笑顔を向けた。
「話してくれて有り難う。私たちはヘンリーの味方よ」
「ルフレ…」
「疲れたでしょ?調子悪いって言ってたし、もう休んだ方が良いわ」
もう一度ルフレは微笑で席を立った。
「そうだな、俺たちはそろそろ戻るか」
クロムもルフレの後に続き、出口へ向かう。
「ガイア、ヘンリーを大事にね」
「ああ、分かってる。あ、菓子持ってけよ」
ガイアは菓子をルフレに投げて渡した。
「あら、ありがとー!」


二人っきりになり、少し狭く感じていた天幕は、いつもの広さに戻る。
その空間に安堵し、ヘンリーは小さく息を吐いた。
「どうした?どこか痛むのか?」
「え?」
いきなり訊かれて、どうして?という顔をヘンリーはガイアに向ける。
「いや、涙…」
ヘンリーの横に座り、指で涙を拭ってやる。
「あ…」
「なにかあったか?」
「ううん、大丈夫だよ〜」
心配そうにヘンリーの顔を覗き込むと、相変わらずの返事が返ってきた。
「お前の大丈夫は心配なんだよ…」
「本当に大丈夫だよ。嬉しかっただけだからね〜」
にっこりとヘンリーは微笑み、その笑顔を見てガイアはホッと一息つく。
「ならいいが…」
「もう無理だと思ってたから」
「え?」
一瞬、聞き取れなかった。いや、聞き取れなかった訳じゃないが、そのまま理解するのを少し躊躇ってしまった。
「妊娠…、初めてじゃないんだよ。施設に居た時に…何回か…、数えてないけどね。あはは…」
笑顔のままヘンリーは話しだす。
もう涙は出ておらず、いつもの笑顔なのだが、今は辛く感じ見るに耐えない…。
「ヘンリー、無理に話さなくても…」
「施設を出て、男としてペレジアの軍に入ったけど…それでも怖くって。戦争に没頭してみたけど、何一つ忘れる事は出来なくて…」
「もう、いいから…」
笑顔で話し続ける姿を見てるのが辛く、ガイアはヘンリーを強く抱きしめた。
「イーイスに来れて良かった…、ガイアに会えて本当に良かったよ…」
「ヘンリー…」
耳元で優しく囁き、何度も繰り返し頭や背中を撫でてやる。

撫でていると、少しヘンリーが上体を起こして、ガイアに笑顔を見せる。先ほどまでの、痛々しい笑顔とは違う。
「大丈夫か?」
「うん、話せてスッキリしたよ〜。ごめんね、変な事言って…、嫌いになっちゃったかな…」
「いや、嫌いになるわけないだろ。俺も覚悟ができたよ」
「覚悟?」
「まあ、決めてた事ではあるんだが、今じゃないと駄目だと思った」
「何だろ〜?」
「ヘンリー、これを」
ポケットから、削り込んだ小さい鉱石を取り出し、ヘンリーに見せる。
「ん?指輪?」
「俺の手作りだから世界でひとつの指輪だぞ」
その指輪は、銀色に輝き可愛らしい花と二羽の小鳥が立体的に彫られている。そして内側には「Henri」の文字が見える。
「わあ、ガイアが作ったの?凄い細かいね〜、小さいのに奇麗だよ〜。もしかして、婚約指輪かな〜?」
「気に入ってくれたか?それと、婚約じゃなくて、結婚指輪だ」
「結婚…」
「貰ってくれるか?」
「うん、もちろん。凄く嬉しいよ〜」
頷いてヘンリーは満面の笑みをガイアに向けた。
その笑顔にガイアは満足し、ヘンリーの手を取って指輪をつけてやる。
「ありがとう、ヘンリー。幸せになろうな」
ヘンリーは自分の指とガイアを交互に見て、恥ずかしそうに微笑む。
「こちらこそ、ありがとう〜。三人で幸せになろう〜」
「ああ、三人だな」
そう言って、ガイアはヘンリーのお腹を撫でた。
「あはは、まだペッタンコだよ〜?」
「いるんだろ?」
「多分ね〜?妄想妊娠だったりして〜」
笑えない冗談を言ってくる…。確かに医者にはまだ診てもらっていないから、あり得ない事でもないのかもしれないが…。
「…、さっきまで泣いてたヤツは何処へいったんだ…」
呆れた口調で言い、もしかしたら不安から出た冗談なのかもしれないと、もう一度ぎゅっと抱きしめる。
「ん〜?もう泣かないよ〜」
「泣いて良いんだぞ?泣いたら、その分もっと幸せになればいいんだ」



まだまだ長い人生だ、泣く事もあるだろう。
泣けないほど辛い事だってあるかもしれない。

それでも幸せは必ず訪れると信じている。

もっともっと幸せになろう。



ーーーーー
おわり

ほっともっと幸せになろう(違)
こんなに長くなるとは、想定外でした…。

女体の続きと言えばコレだろうと、妊娠話し。というか、プロポーズ話しです。色々と詰め込みすぎました。
勇気を振り絞るヘンリーさんを書こうとしましたが、なかなか勇気を出してくれず、長引きました。
後押ししてあげるハズのスミアも…躊躇わせているような…。
噛み合ない人たちです…。

あとは、ややこしいですが、もしもヘンリーが男だったら話しが入ってます。
つまりは実際のガイアとヘンリーの事となりますが…、女体話しでありながら、普通のガイヘンでもあるのです。
なんともメンドクサイ!
メンドクサイ、ガイヘン話しで、どうもすみません。

女体ヘンリーの過去は…かなりオブラートに包んでみましたが、分からなかったら分からないままで…、読み流してください。

長い駄文に付き合って頂き有り難うございました。
誤字脱字は…(以下略


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