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FireEmblem 覚醒:絆の夏からの
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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絆の夏。からの〜捏造です。
絆の夏末プレイでも分かるように…分かると良いなあ〜と、一応そんな気持ちで書きました。
二人の関係は何も無いところからです。





「いっそ海に還してやる…とかは…」

「ダメ〜」

そんな会話をしたのは数日前の事。

その日は異界で海水浴という、滅多にない優雅な?休日だった。
だが、お決まりのように屍兵が大量に出現し、平和な海辺はあっという間にいつもの光景に戻る。
屍兵を排除するのもお決まりだが、お決まりじゃない出来事もあった。
異世界の海パン…は、まあアンナの悪ふざけとして流すとしよう。
そしてペレジアの菓子は…、はたして悪ふざけとして流す事が出来るだろうか…。


それから数日が過ぎ、今日は異界ではなく現実世界での平穏な休日をすごす。
今回の野営地は海より山に近く、現実世界でも海水浴…と言うわけにはいかないが、やはり屍兵が現れない休日が一番良い。
ガイアはゆっくり木陰に腰を下ろし、袋から菓子を取り出して甘いひと時を楽しむ。

「ガイアー!」
「げっ、ヘンリー」
誰に名前を呼ばれたかすぐに分かり、つい嫌な声が出てしまう。
その人物は近づいてきて、笑顔でガイアを見てくる。
「ペレジアの菓子の感想、訊きに来たよ〜」
「はあ…」
やっぱりその事かと大きく溜め息をついてしまった。
ペレジアの菓子とは、ヘンリーが持参していた菓子で、異界での海水浴の時に貰ったブツだ。
じーとこっちを見てくるヘンリーが気になり、声をかけたら菓子に興味があると言い、ならばと秘蔵の菓子を披露した。
菓子を披露して終わるはずだったが意外にも意気投合してしまい、ヘンリーは持参していたというペレジアの菓子を分けてくれた。
くれるだけなら良かったのだが、食べた事がないからと感想を求められてしまう。
その菓子は見た目が非常に悪く、屍兵の一部みたいで食べる気にはなれなかった。
だが、会うたびにヘンリーは感想を訊いてくるのだ。
なんとか話しをそらしたりして、食べずに今日まで頑張ってきたが…。
「海が駄目なら、山に…」
「ダメ〜」
そろそろ限界を感じる…。

ハッキリと「食べる気は無い」と言えたら良いのだが、あの謎な笑顔で見つめられると断れなく…。
悪気も感じられず、食べたと嘘をつき適当な感想を述べるのも気が引ける。
いつまでこんなやり取りが続くのかと、ヘンリーに声をかけられるたびに思ってしまう。

さらに数日が過ぎ、今日も菓子を片手に木陰で寝そべっていると、ヘンリーに声をかけられる。
「ガイアー!」
「ぐ、まだだぞ…」
最近は訊かれる前に言葉を返すようになってしまった。
相手も「感想を〜」と言わずに、次の言葉を返してくる。
「えー、腐っちゃうよ〜?」
「もう、腐ってんじゃないのか?コレ…」
持っていた包み紙を広げ、屍兵の一部みたいなブツを眺める。
ヘンリーも一緒に眺め、首を傾げながら言う。
「腐ってないと思うけどな〜。それより、ずっと持っててくれてるんだね〜」
「捨てたと疑われても嫌だからな…」
「僕は人を疑ったりしないよ〜。素直な子だからね〜」
相変わらずの笑顔だが、素直な笑いなのかどうかは判断しかねる。
「自分で言うなよ。まあ、食べるのはもう少し後で良いか?まだ、その…勇気が…」
「うん、分かったよ〜。じゃあ、またね〜」
そう言って、笑顔のまま何処かへ行ってしまった。
本当に感想を聞きたいだけなんだなと、思わず苦笑いをしてしまう。
そして、いつまでこんな日が続くのだろうと、今度は大きな溜め息が出た…。

野営地の移動や屍兵との戦いを繰り返し、疲労を感じ始めた頃に休日はやってくる。
いつも通り菓子袋を手に少し野営地を離れ、寝心地の良さそうな場所を見つけて腰を下ろす。
今日もアイツは来るのかと、少し身構えながら菓子を口にするが…。
姿を見せる事はなく、日は西に傾き始め、誰にも会わずにガイアはその場を後にした。

何となく溜め息をつき、夕食をとるため広場へ出向く。
配給係から食事を受け取り適当な席に座り、斜め前に座っているヘンリーと目が合う。
「あ…」
位置を誤ったなと思わず声が出てしまった。
そんなガイアの態度に嫌な顔をせず、いつもの笑顔でヘンリーは声をかけてくる。
「今日も野営地の外で、お昼寝〜?」
「あ、ああ…」
「ふふ」
また訊かれるだろうと言い訳を考えたが、ヘンリーは微笑むだけで次の会話は無かった。
そのまま無言で食事を食べ終え、ふとヘンリーの方を見ると、まだ飯を頬張っている。
自分が食べるのが早いのか、それともヘンリーが遅いのかと、つい考えながら眺めてしまう。
その視線に気づいたのか、ヘンリーは手を止めて食事からガイアの方へ視線を移した。
「僕の顔に何か付いてる〜?」
「あ、いや…」
そんなに見つめていたかと気まずく感じ、すぐに言葉を返せず吃ってしまう。
「その…」
じっと見てくるヘンリーに、何か言葉を返さないとと思うが…。
「今日は訊かないのか?」
言う言葉が見つからず、墓穴を掘ってしまった。
しまったと思ったが、今更言った言葉を取り消す事もできず、ヘンリーを見たまま硬直してしまう。
「うん?」
そのヘンリーは相変わらず、じっと笑顔で見つめてくる。
「いや、その…」
「訊いて欲しいの?」
「…」
何故か否定する事ができない。もちろん、あんな菓子を食べる気はないが…。
「そうじゃないんだが…。その、落ち着かなくて…、いつの間にか訊かれるのが日課になってたみたいでさ…」
頭をかきながら、そんな事を告白してしまう。
ほぼ毎日訊かれていたんだ。日課になったっておかしくないだろう?と、ガイアは頭の中で自分に言聞かせる。
ヘンリーは食事をやめたまま、少し考えてから口を開いた。
「僕もね、落ち着かなかったんだよ〜。でも、ガイアが少し待てって言うから待ってたんだ〜」
「そうか、そうだよな。俺から訊いてたんじゃ世話ないよな…」
待てと言っておきながら、結局自分から訊いて困ってしまうなんて…。そんな自分が可笑しくて、つい鼻で軽く笑ってしまう。
ガイアは自嘲気味に笑ったつもりだったが、ヘンリーも一緒になって笑っている。
「あはは、落ち着かなかったのは、お互い様だったんだね〜?えっと…じゃあ、ペレジアの菓子はもういいよ〜」
「いいって?」
まさかの食べなくていい発言に、聞き間違いかと思い訊き返してしまった。もちろん、聞き間違いじゃない方が嬉しいが…。
「ガイアが食べる気ないの分かったから」
「ぐ…、バレたか」
嫌がってたのがバレたのかと少し気まずく、自分の顔が引きつるのが分かった。
そして、ヘラヘラ笑ってるわりに、ちゃんと人を見ているんだなと変に感心してしまう。
「その代わり、珍しい菓子を食べたら感想を聞かせて〜?」
相手に引きつった顔をされても、ヘンリーは嫌な顔ひとつせず笑顔を見せてくる。
そんな笑顔を見せられると、こっちまで笑顔になってしまう。
「ああ、いくらでも聞かせてやるよ」
「本当?楽しみだな〜」
「どうせなら一緒に菓子でも見に行くか?ウマそうなのがあったら買って、一緒に茶でもしようぜ」
「いいの〜?」
「菓子を見るの好きなんだろ?そんな奴と一緒に買いに行くのは、俺も誘い甲斐があるってもんだ」
「ふふ、嬉しいな〜」
満面の笑みでガイアを見つめてくる。
その笑顔に答えてやりたくて、日も沈みかけた街へガイアはヘンリーを誘う。
「よし、まだ夜まで時間があるし、これから街へ行くか」
「いまから〜?」
「まだ店も開いてる時間だしな。夕食後の良い運動にもなるぞ?時間があれば、店で甘い物を食べながら茶をすするのも良いな」
「なんか、デートみたいだね〜」
少し照れくさそうにヘンリーは微笑んで、そんな事を口にする。
ガイアは言われて少し考え、二人分の食器を纏めて持って席を立ち、ちらっとヘンリーの方を見た。
「まあ、悪くはないな」
「デートなら、手でも繋いで行く〜?」
ヘンリーも席を立ち、手を振りながらガイアの横に並ぶ。
「それは…、他の奴らの目があるから、野営地を離れるまでは…」
本気か?と、思いながらも悪い気はしなかった。ちょっと照れてしまっている自分に気づいて足早に席を離れた。
そんなガイアに気づいているかどうか、ヘンリーはニコニコしながら後をついてくる。
「野営地から離れたら良いの?」
「別に良いが…」
「じゃあ、野営地を離れてからデートだね〜」
「そうだな…」
デートなんて連呼されると、更に恥ずかしさが増す。
ガイアは手早く食器を片して、急いで野営地を後にした。

野営地を離れて辺りを確認し、ガイアはヘンリーに手を差し出す。
「じゃ、ココからな」
そう言われてヘンリーは少し戸惑たような表情をガイアに向ける。
「ねえ、これって付き合うって事になる?」
「ん?ああ、えーと…、嫌なら繋ぐのやめるか」
結局は冗談だったのかと手を下ろしかけたが、ヘンリーはその手を掴んでギュッと握ってきた。
「僕は嫌じゃないよ〜。ガイアはどうなのかなって、ちょっと心配だったんだ」
「俺は…」
ヘンリーの「嫌じゃない」という言葉は、手を繋ぐ事だけの意味なのだろうかと疑問に思い、次の言葉に詰まってしまう。
そしてギュッと手を握られると自分の気持ちに気づかされ、思わず感情のままに手を握り返した。
「ガイア?」
「俺も嫌じゃない。その、手を繋ぐ事じゃなくて…、もっと先の…」
「じゃあ、一緒だね〜」
ガイアが握り返した手を見つめて、ヘンリーは笑う。
その笑顔につられて、ガイアも控えめに笑った。
「よし、じゃあデート再開だ」
「はーい」

どんな関係になろうとペレジアの菓子を食べる気はない。
ペレジアの菓子の味なんて、一生分からないままだろう…


でも案外、甘いのかもしれない


幸せそうに手を繋いで歩いていると、
そんな馬鹿な事を考えてしまう。



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おわり。

相変わらずの菓子だらけですが、ガイヘンは甘いお菓子で出来ています。みたいな感じで…。
たまには手を握るだけの、ゆるーい?のも良いかなーと。

誤字脱字は…まあその…無いと良いな〜。
相変わらずの読みにくさはあるかと思いますが、最後まで読んで頂き有り難うございます。


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