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ここは、ギヴァウェイ。 この地は雪に覆われ、民家も白い衣を身にまとっている。 民家の煙突からは白い煙が天へ向けて上ってゆく・・・中では暖炉に火を付け部屋の中を暖めているのだろう。 部屋の中はきっと暖かいんだろうな。 「クロード、半袖で寒くないんですの?」 後ろから声を掛けられて振り向くと、そこにはセリーヌが立っていた。 彼女の格好は、いつもの露出の高い奇抜な格好で見ているこっちが恥ずかしく、そしてココでは寒く感じた。 彼女自身も寒いらしく腕を組んで背を丸め、小刻みに身体を震わせている。 その姿を見てクロードは苦笑いを浮かべて言った。 「セリーヌさんほどじゃないですよ」 そう言われたセリーヌは何か納得したようで「それもそうですわね」と、言い残し道具屋へ入っていった。 道具屋に入ったのは道具を買うためではなく暖まりに入っただけ。 店の中から聞こえる店主とセリーヌのかすかに聞こえる会話で、それは分かった。 「何か上着を着ればいいのに」 そう一人呟き、自分も何処か暖かいところへ移動しようと身体を反転させた。 その瞬間、鼻がムズクなりクシャミ。 どうやら、クロード自身もその格好は寒かったらしい。 「鼻水が出てるぞ」 言葉と共に、背中に暖かい物が触れた。 「ディアス」 暖かい物はディアスのマントで、振り返るとマントの主が立っていた。 「あ、ありが・・・と・・」 マントを掛けて貰ったお礼を言おうとしたがクシャミに邪魔されて言葉にならない。 それを見てディアスは無表情でありながら、何処か呆れた表情を浮かべクロードに言った。 「暖かいところで休んだ方が良いな」 ----------------------- 宿屋に入りディアスはカウンターで今日の宿の予約を入れる。 「今日、四部屋ぐらい予約を入れたいのだが空いているか?」 「ああ、あいているよ」 「ひと部屋直ぐ使いたいのだが・・・」 「構わんよ。どうぞ使って下され」 そういう会話が交わされて、宿の店主はディアスに部屋の鍵を一つ手渡した。 ディアスは鍵を受け取りクロードを連れ、渡された鍵の部屋を目指す。 「ディアス、勝手にギヴァウェイに宿を決めたらみんなが・・・」 部屋に着く前にクロードがディアスに言う。 「今日は、これ以上どこにも行けないだろう」 「?そうなの」 クロードは鼻水を垂らしながらディアスに聞いたが、彼はその事には振れずに話を進める。 「後でレナに言っておくから心配するな」 「う・・・うん」 深くは聞かなかったがディアスが誰のためにココに宿を取ったのか、分かったような気がした・・・。 そして、少し嬉しく感じる・・・。 部屋に着き、クロードはディアスのマントを羽織ったままベットに横になった。 あまり表情には出してはいなかったが、だるかったのだろう。 寒いところから暖かいところへ入るとボ〜としてしまうのも手伝っての事だとは思うが。 「薬を貰ってくるから休んでろ」 ディアスは、そう言い部屋を後にした。 ・・・カタン。 物音で目が覚め、人の気配を感じた。 「ん・・・ディアス?」 ディアスが部屋を出ていってから、すぐ寝てしまっていたらしい。 「薬だ」 ディアスは薬と水の入ったコップを乗せたトレィをクロードに差し出す。 「ありがとう」 クロードは礼を言い、薬と水の入ったコップに手を掛けた。 「汗はかいていないか?」 「?、あせ?」 いきなり聞かれ即答できず考えていたら、「分からないならいい」とディアスは言い、さらに言葉を続ける。 「とりあえず、楽な格好になった方が良いだろう」 「え?でも着替えなんて・・・」 「借りてくる」 そしてまた、部屋はクロード一人だけとなった。 「下は?」 ディアスが宿主からパジャマを借りてきてクロードに渡したときの彼が漏らした一言が「下は?」だった。 「これでは、すぐに脱げるだろう」 ディアスは言いながらパジャマのズボンを広げて見せた。 確かにズボンのウエストはかなり広い・・・これがピッタリくるのはバーニィくらいだろう。 「じゃあ、どうすれば」 クロードがそう言ったのに対しディアスは溜息混じりに答える。 「別に出歩くわけではないんだ、上だけで充分だろ。何も心配する必要はない」 「べ、別になにも心配してないけど」 確かに心配はしていないが、人に言われると自分がそう考えていたと思われたようで恥ずかしく感じてしまう。 「だったら、つべこべ言わず着替えろ」 彼の気持ちを知ってか知らずか、ディアスはそう言ってまた部屋の出口に向かった。 「少し出かけてくるから大人しくしてろよ」 「え?」 ディアスが看病をしてくれるとは思ってはいなかったが、もう少し側にいてくれるかと思った。 「すぐ戻る」 ディアスはクロードの気持ちを察してか、一言そう言い残し部屋を出ていった。 ・・・・・・。 どれくらいの時間が経ったんだろう。 ディアス戻ってこないな、すぐ戻るって言ったのに・・・。 僕のこと、忘れてるのかな? ・・・・・・。 雪の降る音が聞こえてくる・・・。 みんなでいるときは聞こえない音。 独りはこんなにも静かなモノだったのかと思う。 雪の降る音と共に時計の針の音・・・いつもは気にならないのに独りでいると気になる音。 独りでいる時に聞こえる音は、彼の孤独な心を演出し始める。 この音達が聞こえているということは独りだという証拠・・・。 「戻ってこないな」 時計を見ながらクロードは一人呟く。 ディアスが部屋を出て行ってから長針は二周以上している。 どうでもいいのかな?僕のこと・・・。 そんな思いが心を過ぎる。 少し経ったら、すぐ忘れてしまうくらいの存在でしかないのかな? ディアスにとって・・・。 他のみんなはどうかな? レナは? どんどん孤独が自分の中で広がっていく・・・。 僕なんか・・・ 僕一人くらいいなくてもどうにでもなる。 僕はエクスペルの人でもネーデの人でもないから・・・ 居なくてもいいんだ ・・・・ここに。 父さん・・・ 母さんに逢いたい・・・ あれから、どれくらい経ったんだろう・・・ 約束破って父さん怒ってないかな? 3分って言ってくれたのに、戻らないで。 エクスペルが崩壊して生きてないと思っているかも・・・ 僕はもうこの世界にいないって。 そして、忘れていくのかな・・・ みんな 僕のこと忘れて・・・ ベッドを離れ、窓際に立ち町並みを眺める。 そうすれば、一人くらい知る顔があるかもしれない。 知ってる人が歩いていれば、自分が独りではない事を確認できるような気がした。 でも、見知った顔は何処にもなく、不安はよりいっそう深まっていくだけだった・・・。 本当に僕は独りになってしまった。 そんなことを考えてしまう。 本当に僕は見知らぬ土地で独り放り出されて・・・・ 今更ながら自分のやったことに後悔する。 父に逆らったばっかりに・・・ 悔しくて、 そして、寂しくて涙があふれてくる・・・。 「クロード?」 彼の後ろで扉が開く音がして、名前を呼ばれる。 部屋に入ってきたのはディアスで、手にはタオルと水の入ったボール。 クロードの熱を下げるため用意してきたのだろう。 そのクロードは布団を出て立っているため、少し不審に思っているようだ。 それは彼の次に口にした言葉で分かった。 「何してる?」 「べ・・・別になにも」 泣いてたのを悟られないため顔を話し相手からそらした。 「泣いてるのか?」 「なっ!泣いてなんかっ」 ライバルだと考えていた相手に泣いていたなんて知られたくもない。 必死に否定するクロードだったが、ディアスはその彼の気持ちを知ってか、さりげなく「熱のせいかもな」と言い、クロードの額に手のひらを当てる。 そのディアスの行為は今までのクロードの不安を取り除いていった。 「ディアス、戻ってこないのかと思った」 これは、クロードの本音だ。 「?ああ、すまない。レナに買い物に付き合わされていたんだ・・・」 ディアスはクロードがどれくらい待ったか、どれほど不安に思っていたか知るハズもなくクロードの本音にちょっと動揺してしまう。 「お前のために美味しいものを作ってくれるそうだ」 「レナが?」 ディアス以外の人の名前・・・。 「レナも忘れてなかったんだ・・・僕のこと」 この世界に自分の存在がよりいっそう大きく確認できたような気がした。 「何を言ってる。誰もお前を忘れる訳ないだろう。」 「ディアスが戻ってくるまで、凄く不安で・・・みんなに忘れられてるんじゃないかって」 ディアスが戻ってきて安心したせいか、本音が次々と口にでる。 「フッ、くだらんな」 確かに本人以外には分からない感情だろう・・・。 そして、クロードにベッドへ戻るように促しようとした瞬間、クロードはその場に崩れてしまった。 らしくなく慌てたディアスだったが、意識を無くしたクロードを抱き上げベッドへ向かう。 カチャ と、後ろで扉の開く音がした。 振り向くとそこにはアシュトンが立っており彼の眉は八の字になっていた。 そして一言「ご、ごめん!!」と言い慌ててその場を出て行ったのであった。 なんなんだ、あいつは・・・。 ディアスには分からなかったようだがアシュトンは何か誤解をしてしまったらしい。 「は〜ビックリした〜。ノックぐらいすれば良かったよ〜」 アシュトンが部屋の扉を閉め、ディアス達のいる反対の扉の前で嘆いた。 そして、ちょっと落ち着こうとしているアシュトンの横で閉じた扉が開く。 「おい」 ディアスに呼ばれ硬直する。それは見てはいけないものを見てしまったという自己暗示のせい。 「クロードの側にいてやってくれ」 「え?」 ディアスにいきなり部屋に入ったことを怒鳴られるのかと思ったアシュトンは一瞬ディアスの言葉が分からなかった。 「俺はレナに料理を手伝うと約束してるからな」 「・・・・。」 ディアスはアシュトンがディアスとクロードの事をどう誤解して慌てたか分かっただろうか? その誤解を悟られなかったか、心配しながらディアスが階段を下りていくのを見送った。 そして、クロードの寝ている部屋へ移動した。 ----------------------- 宿屋の厨房ではレナとディアスが夕食の支度をしている。 もちろん、宿主の許可を取って使用しているのだ。 「クロードの様子はどう?」 レナは忙しく手を動かしながらディアスに話しかける。 「熱のせいで少し感傷的になっているようだな」 「へえ?クロードが?」 レナは想像できないという態度を少し笑って聞き返した。 それにつられてか、ディアスも遠慮がちに含み笑いをする。 そのディアスの遠慮がちではあるが普段見せない笑顔を見て、話題をクロードからディアスに移した。 「ディアス、クロードに会ってやっぱり変わった」 「急になんだ?」 いきなり、そんなことを聞かれればディアスでなくても戸惑うだろう。 そしてレナは話を続ける。 「今までのディアスはこうやって、お話もしてくれなかったもの」 「そう、だったか?」 「そうよ、セシルも喜んでると思うわ」 セシルとはディアスの妹の名で、今はこの世にいない。昔、両親共々賊に殺されているのだ。 その事件をきっかけにディアスは人との接触を避け孤独に生きてきた。 その彼が今、人とコミュニケーションを取るようになり、助け合いながら旅を共にしている。 レナは、孤独に生きるディアスを良く思っていない。 セシルも良く思っていないはず、レナにはなんとなく分かった。 そして、ディアスが変わったのはクロードに会ってから、これも勘ではあるのだが両方とも多分、間違いではないだろう。 「クロードに会ってか・・・」 思い当たる節でもあるのか、ディアスはレナの言葉を反復させた。 「ディアス?」 そんなやり取りをしているとセリーヌが厨房へやって来た。 「美味しそうですわね」 「あっ、セリーヌさん。味見します?」 レナは試食を勧めた。セリーヌの視線が料理にいっていたからだ。 「まあvよろしいんですの」 遠慮なしにセリーヌの手が料理に伸びる。期待していた証拠。 それから少し時間が過ぎ。出来上がった料理がテーブルへ並べられた。 「ねえ、クロード君は何処で食べるの?」 チサトは料理を器へ分けながら聞く。 「起きてくるのは無理だな」 一番、クロードの様態を把握していたディアスが答えた。 「じゃあ一人で部屋?」 レナは心配そうにディアスに言う。 「いや、俺が向こうで食べよう」 「そうね。独りよりは良いわ」 ----------------------- 部屋には、アシュトンとクロードが居る。 アシュトンはベッドの隣で、クロードの様子を伺いながら額のタオルを定期的に取り替えていた。 そこへ、ディアスが夕食二人分を運んで部屋に入ってきた。 「まだ、目が覚めないんだよ」 ディアスが入ってきたことを確認してアシュトンが困った顔で言った。 「良く寝るな」 ディアスはそう言ってからアシュトンに夕食が出来た事を告げ、食事をしに行くように指示した。 「ディアスは?」 「俺はこいつと食べるさ」 ディアスはそう言いベッドの近くへ行き、アシュトンは「後は頼みます」と、部屋を出て行った。 食事をテーブルの上に置き、クロードの頬に手を置く・・・まだ、熱は引いていないようで熱い・・・。 「ん・・・」 クロードが少し目を開ける。 「起きたか?」 「あっ」 クロードは起きあがり、意識を無くす前の記憶を辿った。 ―倒れたんだっけ・・・僕。 「食事はとれるか?」 「うん」 熱があるときの食事は味をあまり感じないモノだが、凄く美味しく感じた。 これは、レナが自分のために作ってくれたため?それとも独りじゃないから? そんなことを考えながら食事をして、食べ終える。 「はあー。凄い美味しかった。こんなに食べれるなんて僕って本当に風邪かな?」 今のクロードの正直な感想だ。 「バカしか引かない風邪かもな」 これは、ディアスの正直な感想。 空になった食器をディアスは片付け始める。そして彼の仕草をクロードは目で追う・・・。 その視線に気付いてるだろうか? 食器を片付けたディアスは、その食器を置きに行くため部屋の出口へ向かった。 「ディアス・・・」 「食器を置きに行くだけだ。すぐ戻る」 「うん」 クロードは小さく頷いた。 また独りになる。そんな思いが彼の心の中を支配していく・・・。 ―本当に戻ってくる? 本当にすぐに・・・。 独りになるのが怖い・・・。 「クロード」 ディアスに呼ばれ次の瞬間、クロードはディアスの腕の中に居た。 さらにディアスはクロードの耳元で囁き始める。 「絶対、お前を独りにしない。だから、そんな顔をするな」 いきなりのことで、理解できずにいるクロードの顔にディアスは手を伸ばし軽く口づける。 その行為は二人の距離を短くする・・・。 ----------------------- ながしではレナが後かたづけをしている。 食器を洗っていたのだが不意に手を止めディアスの方へ向く。 「ディアスどうしたの?ボーとして」 食器を置きに来たディアスにレナは、そんな印象を受けたらしい。 ふと我に返り「いや」とディアスは一言答えた。 「クロードの口に合わなかった?」 レナは不安そうにディアスに聞く。ディアスの態度が彼女を不安にさせたらしい。 しかし違うことを考えていたディアスは、レナの言葉でらしくなく慌てた。 「クロードの口?」 「う、うん。スープの味・・・とか」 ディアスの態度がなおさら彼女を不安にさせる・・・。 それに気付いたのか、ディアスはレナに告げた。 「いや、すごく美味しいって言っていた・・・」 「本当?よかった」 レナはホっとして笑顔を見せる。 ・・・・・。 いきなりキスは、まずかったか? しかし・・・。 ----------------------- 片づけを終え、ディアスはクロードの寝ている部屋へ戻ることにした。 部屋の扉を開けるとクロードは横になっておらず、片付けに行く前と同じ姿勢でベッドの上に座っていた。 「横になってないと疲れるぞ」 ディアスは言いながらクロードをベッドに寝かせようとした。 「あの、ディアス。僕を独りにしないって本当?」 「何度も言わすのか?」 そう聞かれクロードは恥ずかしくなり頭をかいた。 「いや、その、僕の空耳かなーと思って」 「空耳はキスをするのか?」 ディアスに言われ恥ずかしさが倍以上にふくれ上がる。 「いやっあの・・・そのっ」 恥ずかしさのあまり、あたふたしているクロードをディアスは優しく抱きしめ、囁いた。 「お前を孤独にはしない。悲しい思いもさせない。だから俺をおいて先には逝かないで欲しい」 そう、ディアスに言われ身体に暖かいものを感じた。 「ディアス・・・」 「出来るだけ守る」 「うん」 この先、独りにはならないだろう・・・。 何となくそんな気がする。 ディアスが側にいるから・・・ 彼が僕を孤独から守ってくれる。 そして僕も・・・ これからずっと ずっと END ----------------------------------------- 1999年夏に出した物の小説版です。 いらないアホな場面やセリフは省略しています。 ----------------------------------------- #UP |