EBI-EBI
FireEmblem 覚醒:キミ、想う 1
絵と文とか

FireEmblem覚醒

TOP
INDEX

輪廻転生ネタ。
「死」という言葉がいっぱい出てくるお話です。そして15禁くらいのナニがあります。






今日は何月何日だろうか?
ふとそう思ったが、調べる意味を見いだせず、黙って白い壁を見つめる。
そこには時の止まったカレンダーが一つ下げられていた。
いつからめくっていないのか、それすら忘れてしまった。

だからこそ、いいんじゃないかと思う。
自分には何の価値もない。此処には自分以外もう誰も居ないのだから。

だからこそ、この人生に幕を下ろしたい。


永遠は残酷すぎる。


愛した人は年を取り、老いて死を迎えた。
なのに自分は若いままの姿でピンピンしている。
そんな俺を笑いながら見つめ、愛した人は笑顔のまま息を引き取った。

永遠が必要だというならば、それは肉体的な事ではない。
強い精神力だろうか?
それとも愛だろうか…?

永遠の命ってヤツは、そんなに素晴らしいモノなのか?



毎日同じ事の繰り返しで、やるべき事は何もない。
命を絶つ事が出来るなら、それは今すぐにでも実行したいが…。

「ガイア?」

誰もいないはずの室内に声が響く。
…ガイア。
確かそれは自分の名前。

「ガイア!」

「お前は…」
近づいて来た人影に息をのむ。

もうそんなに経ったのか…。
年老いて亡くなり、再度若い姿で現れるくらいの時の流れ。
常識では考えられない事だが、この場に常識は通用しない。

誰がこんなデタラメな実験を始めたのか…。

「ねえねえ、ガイアでしょ?」
もう一度名前を呼び、袖を引っ張ってくる。
見上げてくるその姿は、確かに愛したことのある人物だ。
だが…、
「いや、知らないな」
「あれ?おかしいな〜」
突っ立っているこちらの姿を 首を傾げて色んな角度から眺めてくる。

また逢える事は分かっていた。
お互い実験体で、特殊な身体だって事も。
だから、こんな姿で再会しても何の疑問もない。

「他のみんなは?」
「俺は…、何も知らない」
「え?」
裾を掴んでる相手の手を払い、振り向くことなく個室のドアを開け中に入る。
「ついて来るなよ」
「でも…」
「…」
バタン。
無言でドアを閉め、鍵を掛ける。

コンコン。
すぐドアをノックする音が聞こえてきた。
だが、開ける気にはなれず、閉じたドアに背中を預け力なくその場に座り込む。
コンコン。
「…」
背にノックする振動を微かに受け、頭を抱え丸くなる。
そして大きく息を吐いた。

何が悲しくって、愛した奴が老いて朽ちていく姿を何度も見なければならないんだ?
自分は若いままでピンピンしてるのに、相手はどんどん衰えていき不自由な身体になっていく。
一緒に年を取って老いていくなら、それは素晴らしい人生だろう。愛する者と人生を共にするといのはそういう事だ。
だが、俺たちは一緒に居ても生きている時間がバラバラで、人生が揃うのは長く生きている間のほんの一瞬だけ。
すぐアイツは俺の人生を追い越して死んでいく。そして、何事も無かったかのように笑顔でまた逢いに来る。
そんな出逢いの繰り返しは、もうウンザリだ。
普通の人生を歩みたい…。
共に生きられるなら、普通の人生を一緒に…。



ピピピッ、ピピピッ、ピピ…

「ん…」
一日三回、飯時に鳴る時報。
いつの間にか寝ていたらしく、扉の前で横になっていた身体を起こす。
窓が無く、朝昼夕のどの時間帯か、寝起きの頭で理解するには少し時間がかかる。
飯は何処からか勝手に用意され食堂に並ぶが、別に自分は食べなくても死にはしない身体だ。
味気ない食事を一人で食べる気にもなれず、ここ数日は何も口にしていない。
「そういえば、ヘンリーのヤツ…」
ふともう一人の存在を思い出し、ドアの向こうに聞き耳を立てる…が、ドアを叩く音はもうしない。
腹でも減って食堂に向かったか?と、鍵を外しドアをゆっくり開ける。
「…あ」
声がした方に視線を移すと、そこには膝を抱えて座っているヘンリーの姿があった。
笑顔を向けてきているが、目尻から頬を伝って流れた涙の後が残っている。
「ごめんね。でも、他に誰もいないみたいで…」
「みんな死んだよ」
「そっか」
死んだと告げてもコイツは笑顔を崩さない。そういう奴なんだ、ずっと前から、ずっと…。
「寿命で死んだ奴。自害した奴。色々だ」
「じゃあ研究は失敗しちゃったんだ」
「俺とお前が生きてる時点で、失敗とは言いきれないがな…」
ここの研究テーマは『永遠の命』だ。
すべてを手に入れた人間が、最後に望む事と言えばコレだろう。
年を取らずに生きている自分と、繰り返し生き続けるヘンリー。
今のところ問題なく生き続け、永遠を望んだ研究は成功したと言えるが…。
「望んでた奴が居なくなっちまったから、やっぱり失敗だよな」
「あはは、残念だね〜」
「残念か…、確かに残念だな」
研究成果を手に入れる前に寿命で死んでりゃ、そりゃ天国でガッカリしているだろう。地獄かもしれないが…。
そして永遠の命を絶つ方法を残してくれなかった事を残念に思う。

色々と考え込んでいると、壁際で座り込んでいたはずのヘンリーが立ち上がって、こっちを見てきていた。
「じゃあ、僕は戻るね」
「戻る?」
「んーと、生まれた所って言うのかな?」
「…」
場所を訊いた訳じゃなかったのだが…。
再会して直ぐ突き放した言い方をしてしまった事に、今さらながら後悔する。
「腹減ってないか?さっき、飯の…」
「気にしないで〜。僕はガイアとは違うけど、死んでも生まれ変わっちゃうから」
もちろんヘンリーの身体の事は知っている。
身体が朽ちても生きた記憶は保存され、新しく生まれてくる身体に記憶は移る。
何処で新しい身体が作られ、死んだ身体から記憶が送られるのかは、研究者ではない実験体の身では知る由もないが…。
「死ぬ気か?」
「ん〜、死んでも生き返っちゃうけどね〜。けど、ガイアの事を想うと僕は無神経だったな〜て、僕は一人で居た方がいいって分かったから」
「すまない…」
考えるより先に謝りの言葉が口をついて出た。
そんな姿をヘンリーは首を傾げて不思議そうに見つめてくる。
「何で謝るのかな?ガイアは僕の事、覚えてないんでしょ?」
「…」
自業自得だが、何も言葉が出てこない。
「じゃあね〜」
「待て、ヘンリー」
またヘンリーが死ぬまで一緒に過ごす勇気はない。
でも、もう一度名前くらいは…。
「あれ?僕の名前…」
呼ばれたヘンリーは一瞬驚いた表情をしたが、すぐいつもの笑顔に戻る。
この笑顔は生まれつきなのか、生きて行くうちに身に付いたものなのか…、気づくといつもヘンリーは微笑んでいる。
その笑顔に嘘をついた時は、いつも罪悪感にかられ後悔したが…。
「…嘘ついてたんだ」
「そっか、あはは。覚えててくれてたんだね〜、ホッとしたよ〜」
やはりヘンリーは笑顔のままで、嘘をついた事にまた罪悪感を感じてしまう。
「すまない…」
「変なガイアだね〜。そんな顔しないで?ガイアが辛い思いをしないように、僕は自分の部屋に戻るから」
「…」
とはいえこれ以上、引き止めるなんて今の自分にはできない。

今は謝るだけで、それだけで精一杯だ…。



誰もいない部屋で、誰が最後に見たのか分からないファイルを手に取って棚に戻す。
掃除をする者はもういないが、塵ひとつ落ちていない。
これも永遠に生きるための施設だからなのか?そういう機能が備わっているんだろう。

元々やる事はないが掃除すら必要のない部屋で、ぼんやり天井を眺めヘンリーの事を想う。

別れを告げた時、また再会する事は分かっていた。
そして変わらず愛してしまう事も…。
本当は抱きしめて名前を呼んでやりたかった。
だが頭をよぎるのは、年老いて腕の中で息を引き取った時の事…。
後を追いたくても自分の身体じゃ無理で、狂いそうな孤独な時間をじっと耐え、何もかも忘れかけた頃にヘンリーはまたやって来る。
再会は嬉しかったが、ウンザリだった。
この繰り返しは拷問でしかない。





-------------------------------------
つづく

2に続きます>>

UP