EBI-EBI |
FireEmblem 覚醒:キミ、想う 2 |
絵と文とか FireEmblem覚醒 TOP INDEX |
輪廻転生ネタ。 ―永遠をぶっ壊したい― 「…出来るか?」 頭の中によぎった言葉に、声を出して自分に確認をとる。 永遠の命、つまりは不老不死だ。 この施設での研究で自分は作られた。 だが不死を夢見た施設の者は、みんな死んでしまっている。 誰も成功したとは言っていない。己の身体で試そうとした者もいない。 「何か方法があるかもしれない」 断言はできないが、自分もまた完成された不老不死ではない。証明できるモンは何ひとつないが、成功したという証明もない。 確かに自分より前の試作は欠陥が見つかって処分されたり、気が狂い自害して死んでいったりで、不老不死とは到底言えない完成度だった。 それに比べれば自分は完成された不老不死だ。 だが絶対死なないなんて、断言するのは早すぎる。 「まだ試してない事があるハズだ」 そう思った途端、身体は勝手に動き、気づくと部屋を出て歩き出していた。 そのまま身を任せ進んだ先で、見覚えのある扉の前に立ち、躊躇う事なく名前を呼ぶ。 「ヘンリー」 先ほど突き放したのに、会いにきてしまうなんて…。 「ガイア?」 扉が少し開き、中から顔を覗かせる。 「良かった…。まだ、生きてたか…」 「うんうん、死んでも繰り返すだけだからね。お互い、苦労するよね〜」 「すまない…」 「あはは、また謝った」 相変わらず笑っている。 だが、楽しくて笑ってる訳じゃない事ぐらいは分かっている。 「いや、自分の事だけだったから…。辛いのは一緒だよな」 「ん〜?またガイアに逢えたから、僕は辛くないよ。嬉しいよ〜」 「そうか、辛く当たってゴメンな」 「だから、謝らないで〜。それで、どうしたの?」 コイツの性格に救われる。 今回だけの事ではない。 先に老いていくヘンリーにどれだけ辛く当たり引き止め困らせてきたか…。 自分だけ先に老いて死に直面する方がずっと辛いはずなのに、いつも微笑んで悲観する俺を慰めてくれたんだ。 「ヘンリーは、ずっと生き続けたいか?」 「ん〜、僕は死ぬけど…」 「でもまた生き返るだろ?どういうシステムかは知らないが…」 「僕の場合は新しい身体を作る所があって、僕の記憶もそこに送られてるんだよ」 「そうか」 これ以上、掘り下げて訊く気にもなれず、納得してみせる。 新しい身体や記憶の送信なんて、説明されても理解できない自信がある。 「だから、そこを壊せば僕は本当の死を迎える事が出来るかも」 「ヘンリー…」 「僕だって分かってるよ。僕が逢いに来るからガイアが辛くなっちゃうって。でも、生きてるなら逢いたいって思っちゃうから。だから僕は消えた方がいいって」 「…」 確かに生き返ったヘンリーに逢って、最初に抱いた感情は『それ』だ。 だがそれは最初だけで、今は違う。辛いのは自分だけじゃないのだから…。 そんな事は最初から分かっていたはずだが、何処かヘンリーに甘えていたんだろう。だから辛く当たってしまったんだ。 「今から壊しにいく?」 「いや…、それだけじゃ駄目だ」 「ん、予備とかががあるのかな?」 「そうじゃなくて、問題は俺だ。俺を殺す方法を知らないか?」 「ガイアを…?」 名前を口にして、きょとんとした顔を見せてくる。 相変わらず自分の事は後回しで、こちらの想いを優先してくる。ただそれは間違った想いだが…。 「ああ、お前だけ消えたんじゃ意味が無い。追いてかれるのはもうたくさんだ」 「ガイア…」 「お前と一緒に生きて、一緒に老いて、一緒に人生の幕を下ろしたいんだ」 「うん、僕も同じ気持ちだよ。一緒に逝こう〜」 今度はいつもの笑顔を見せる。 やっと自分の想いが通じた気がした。いや、ずっと同じ気持ちだったんだと思う。 お互いを大事に想うあまりすれ違っていたんだ…。多分それは自惚れじゃないだろう。 「それには何か方法を…」 「んーと、ここの施設は国の許可を取ってないから、いざって時は証拠隠滅できるようにって、自爆装置があるって聞いた事があるよ」 「自爆装置は初耳だな。まるで悪の組織だ…」 安っぽい施設だなと呆れ口調で呟き、その実験体が自分だと思うと腹が立ってくる。 「あはは、間違ってはいないかもね〜。不老不死を目論む人間に、まともな奴はいないよ」 「確かにそうだな、ここで生きてりゃ分かる事だ」 「誰もいないし探してみる?マザーコンピューターっていうのが、あっちの奥に…」 いかにも何かありそうな真っすぐ続く暗い廊下の奥をヘンリーは見つめた。 「本当に壊しちまっていいのか?」 「死ぬの怖い?」 廊下の奥を見つめていたヘンリーが振り返る。 じっと見てくるその視線に覚悟が揺らぐ。別に死ぬのが怖い訳ではない…。 「い、いや。本当に俺は死ねるのかなって、俺だけ生き残るんじゃないかって」 「大丈夫だよ〜。自爆装置は証拠隠滅が目的だから、実験の証拠となる僕たちも施設と一緒に消えちゃうんだよ。だから、もう一緒に過ごせないかもね。自爆装置を押したら、きっとすぐ死んじゃう」 「少し、このまま生活するか?」 なんとも甘い考えだが、急いで死ぬ必要も無いんじゃないかと若い姿のヘンリーを見て思う。 お互いの年齢がずれるまで、まだ時間はあるんだ。 だがヘンリーは困った顔で袖を引っ張ってくる。 「だめ、死にたくなくなっちゃう。また僕だけ年を取って、ガイアを一人にしちゃうよ…」 「ヘンリー…」 甘いのは自分だけか…。 分かってはいるが、だからこそもっと大事に今の時間を過ごしたいと思ってしまうが…。 「ねえ、輪廻転生って知ってる?」 「ああ、生まれ変わってもってヤツだろ」 「ガイアは信じる?」 「どうだろうな…、確かめようが無いから何とも言えないが…」 「僕はね、信じてるんだよ。愛し合っていれば、別の世界でも出逢えるって」 満面の笑みで見つめて、そんなことを言ってくる。 現実的な言葉を返してしまったが、ヘンリーの言葉を否定する気にはなれなかった。 だったら良いなという気持ちは自分にもある。 「なかなかのロマンチストだな」 「ふふ、信じる者は救われる〜♪」 「そうだな。信じなきゃ何も始まらないな」 そして笑顔のヘンリーに自分も笑顔で答える。 「よし、じゃあ行ってみるか」 「はーい」 長い廊下を進み、真っ白い大きな扉を持っていたカードキーで開ける。 「お邪魔しま〜す」 中に入りヘンリーは辺りを見回した。 「本当に誰もいないんだね〜」 「ああ、全員亡くなったのは俺が確認してる」 「そっか、ガイア辛かったよね。一人で…」 小さな声でヘンリーは言う。 申し訳なさそうに下を向いているが、別にヘンリーのせいじゃない。 「いや、そうでもない。一人は気楽でいい」 「…」 「もちろん、ヘンリーが隣に居るのが一番だよ」 言葉の選択を誤ったかと、言い直してヘンリーの頭を撫で回す。 そして撫で回され頭髪をくしゃくしゃにしたヘンリーは笑顔で見上げてくる。 「あはは、言い直した〜」 無機質な広い室内の棚からファイルを取り出し、片っ端から中身を確認していく。 ファイル名と照らし合わせて、モニターの画面を見つめる。 「えーと…、どれかな?」 「きっとDangerとか書いてあるに違いない」 そう言って、どこかに赤や黄色のボタンは無いかと、白い壁を隈無く探す。 「あはは、ガイア、テレビの見過ぎだよ〜」 「この施設自体、幼稚っぽいだろ」 今度は溜め息をついて、落書きの書かれた壁を擦る。 壁には『不老不死』『神』と書かれていた…。 「中はかなり高度な技術だけどね〜」 「知ってるか?天才は変わり者が多く幼稚な奴が多いって」 「なるほど〜」 思う所があるのか、ヘンリーは大きく頷く。 納得する姿を眺めて、ガイアは壁の窪みに触れる。 「これじゃないか?」 「どれどれ」 窪みにある赤いボタンを指差し、ヘンリーはガイアにピッタリくっついてボタンを眺める。 隣から身を乗り出して窪みを見つめる姿が愛らしく、つい指差した手をそのままにヘンリーを見つめてしまう。 そのヘンリーは躊躇う事なくガイアの手の上からボタンを押し込む。 「ん〜、何も反応無いね?」 「い、いきなり押すなよっ!?起動したらどうするんだ…」 自害しようと探しまわってはいたが、流石に心の準備というモンがある。 自分にピッタリくっついてくるヘンリーを愛しく感じている、このタイミングでだ…。 「ごめんね〜」 「いや、まあ、起動するのに何か必要みたいだな」 「パスワードとか、なんかカードキーとかかな?変な穴もあるね〜」 ボタンの横の細い縦長の穴をヘンリーは指でなぞりながら言い、その縦長の穴の下にはもう一つ丸い穴があった。 この部屋に入るためカードキーは使ったが、それ以外は鍵になるような物を持っていない。 「よし、遺留品でも漁ってくるか」 「遺留品?」 「死んだ奴らの持ち物な。一応、取っておいたんだ」 自分たちのような実験体ではなく、研究員ならそれくらい持っているだろう。 ここの責任者の持ち物だってある。 「…」 「死体の処理は残ってる奴らの義務だろ」 何か言いたげなヘンリーの背中を押して部屋を出る。 「ほら、行くぞ」 「うん」 ヘンリーが言いたい事は分かっている。だが、自分だけ慰められるのはもう十分だ。 遺留品の置かれた部屋に向かい、誰の物かも分からない品を物色する。 「これなんてどうだ?」 「うーん、こっちは?穴にちょうど入りそうな鍵だよ〜」 「じゃあ、それも持っていくか」 それらしい物をいくつかチョイスしてポケットに押し込む。 その横でヘンリーも何個か手に取る。 「ねえ、暗号とかは?」 「ん〜、ファイルとかデータを探せば…」 「なんか時間かかりそうだね〜」 溜め息をついてヘンリーは手にしたカードを見つめる。 「その分一緒に居れる時間が長くなる」 「あはは、そうだね〜」 ------------------------------------- つづく 3に続きます>> UP |