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FireEmblem 覚醒:異界から来た子供 1
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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異世界の子供マーク
ガイアとヘンリーの関係は既にナニソレです。その関係をルフレは知っています。
ルフレの旦那は謎のままです。






「ガイアー、ガイアー」
満足そうに自慢の菓子を眺めていると、天幕の外から名前を呼ばれる。
声の主は毎日のようにやってくる人物だ。しかし今日は見慣れないモノを腕に抱えている。
「ヘンリー、その抱えてるのはなんだ?」
「ん〜、この子はね〜」
ガイアに指摘され、ヘンリーは抱えている子供の頭を撫でた。
近隣の村の子にしては違和感を感じる服装をしているが…。
「その服装、ペレジア人か?」
「あ〜、やっぱり分かる?僕やサーリャに似てるよね〜」
「いや、お前らにというか…ルフレのコートに似てないか?」
「さすがガイアだね〜」
「何が流石なんだ…」
呆れてガイアはヘンリーに言葉を返す。
ヘンリーの抱えている子供は、服装からしてペレジアに縁のある者だろう。とはいえ、ここはイーリス領だ。
今のペレジアは、ギャンレルに輪をかけて得体の知れない危険な人物が王の座についている。その王、ファウダーの側近はギャンレルの時と同じ女。そして最高司祭はルフレと瓜二つの顔。
警戒せずにはいられない国の存在で、そのペレジアの装束を身に纏った子供というのは…。
「誰の子なんだ?」
「えっとね、異界の近くで生け贄を探してたんだけど、どこからか声が聞こえて来て、あれ〜?と思ったら上からこの子が降って来たんだよ〜」
「すまない、ヘンリー。まったく状況がつかめないんだが…」
「多分、異界から来た子だよ。それで、ルフレの子供だと思うんだ。未来のね」
「…未来」
なに言ってんだヘンリーのヤツ、頭でも打ったのか?なんて思ったりはしない。
未来の存在は、同じく未来から来たというクロムの子、ルキナが証明している。
ただ、ルキナの居た未来は滅びの一途をたどっていると聞く。
その絶望の未来から来たというのだろうか?
「ルキナと同じか?」
「ん〜可能性はあるかもだけど、違う気がするよ〜」
「違う?」
「聞こえたんだよ、異界からルフレの声が。この子を守ってって。ルキナと同じ未来からなら、ルフレはもう…」
ルキナの居た未来で起きた事は詳しく知らないが、クロムや周囲の者たちは既に命を落としていると聞く。
ルフレの事に関しては言葉を濁してはいたが、ルキナと一緒に居たとは考えにくいだろう。一緒に居たのなら、未来で今どうしてる?って話しだ。
「それを先に言え、守ってって言ったんだな?」
「うん、必ず迎えに来るって言ってたよ」
「どうやってだ?ルキナは、もう戻れないかもって言ってたよな…」
確かルキナは、戻れないのを覚悟でナーガの力を借りて未来からやって来たと言っていた。
もし同じ力でやってきたのなら、この子も戻れない可能性が高いはずだ。なのに必ず迎えにって、どういう事だ?
「えーと、ルキナが来たのはナーガの力を借りた未来から。この子は…あ、マークって言うんだけど、異界から落ちて来たんだよ」
「未来と異界は別ってことか」
「正確に言うと、ナーガの力と異界の力…かな?」
「異界の力って…アンナの力か、じじぃの力か…」
異界でまず頭に浮かぶのはアンナとじじぃだ。あの二人…アンナは不特定多数だが、異界を牛耳っているとしか思えない。
異界に行くと必ずどちらかと顔を会わす事になっている気がする。
「あはは、どっちでもないと思うけど〜」
「今イチ分からんな」
「僕も理解してるわけじゃないんだけど〜、異界からは異界にしか戻れないんだと思う」
「それだと、未来のルフレもマークも異界の住人って事になるぞ?」
異界はひとつではなく、いくつかの空間の集まりだという事は、何回か行き来した事で何となく理解できている。
その中のひとつにルフレとマークが居る世界があるというのだろうか?
「ん〜、でもナーガの力を借りて異界から別の未来へ行って、別の世界のルキナ達を助けた事があったよね」
「じゃあ、結局ナーガの力が関わってるってことか」
「かなあ〜?」
「未来も異界も関係なく…、なんでもアリって感じなのか?」
頭の中がこんがらがってくる。
結局、異界ってなんなんだ?未来とどう違うんだ?
「さあ?その辺はサッパリ〜」
「まあ…、その未来のルフレが裏で動いてんだろうな」
あの軍師の事だ。自分たちの想定外の事をやってのける力を持っている。
どんな策を使ったとかは知る由もないが、きっと何かルフレならではの裏技でも使ったんだろう。
「僕たちの出来る事は、マークを守ってあげることだけだね〜」
「それなんだが…、いつまでだ?」
「さあ?時が来たらって言ってたよ?」
「だから、いつなんだよ…。討伐に出てる間とか、誰も面倒見れないぞ?」
ある程度大きな子なら、少し離れていても大丈夫だろう。
しかし今ここに居るマークは、まだおむつの取れない赤ちゃんだ。
「ん〜、ルフレに事情を話せば良いんじゃないかな〜?」
「いや、それは絶対駄目だろ」
「どうして?」
「この時代のルフレは、子供どころか旦那も居ない。それどころか恋人…いや、浮いた話しすらないんだ。そのルフレに、お前の子供だなんて言ったら警戒するだろ?下手したらマークの存在が気になり、恋が成熟しないなんて事も…」
最悪、未来ががらっと変わってしまう可能性だって、あるかもしれない。
「それって、マークが消えちゃうってこと?」
「消えるというか、この世界で産まれるはずだったマークの存在が危うくなるかもな」
「うわっ、それは一大事だね〜」
「だろ?だからルフレに言うのは駄目だ」
「ねえ、この子の父親って誰だろ?」
ヘンリーはマークを抱き直し、じっと顔を見つめる。
その横でガイアもじっとマークを見る。
「それも分からないから、安易に協力も仰げないんだよな」
「髪の色からして僕たちじゃないよね?」
「そうだな。ただ、この色からは一人に絞れないな」
そう言って、ガイアは唸りながらマークの髪に触れる。
橙色でもなく銀髪でもない。まあ、それは無いだろうなとは思っていたが…。
「やっぱり俺たちはずっとこのままか」
「ん?ガイア、子供欲しかった?」
「い、いや。そう言う意味じゃなくてだな…、まあホッとしたかな」
「あはは、僕たちのどっちかが旦那だよ〜なんて言っても、ルフレは絶対信じないだろうね〜」
「だろうな…」
ルフレにバレてしまっている関係なだけに、どちらかがお前の旦那になるなんて言っても、信じてもらえないだろう。
実際、髪の色で違う事は分かるのだが、そうじゃなくてもルフレの前では冗談にしかならない。
「討伐の時は僕が残るよ。仮病とか使って〜」
「お前が嘘付けんのか?それより、町の孤児院とかで預かってもらう方が良いんじゃないか」
「孤児院…」
「討伐で野営地を離れる時だけで、毎日ちゃんと様子を見に行けば問題ないだろ?守るったって、こっちの世界で危険な目に遭うなんて考えにくいしな」
安全な世界だろうと見越して、未来のルフレはこの時代にマークを送ったんだと思う。
ギムレーの存在がある限り絶対とは言いきれないが、未来よりはマシなのだろう。
「…」
「こっちのルフレにバレて、この世界でのマークの存在が危うくなるよりは良いだろ」
「うーん…」
「明日、孤児院に行ってみようぜ」
「うん…」
ヘンリーの返事は、何処か不安げで不満がありそうだった。
だが他に良い案は思いつかず、しょうがないだろとヘンリーの背中をポンと押し、天幕の中でくつろぐように即す。
「マークが退屈そうだぞ?遊んでやろうぜ」
「うん」


-翌日-
朝霧のかかった人通りの少ない時間帯に、ガイアとヘンリーはマークを連れて野営地を離れる。
外はまだ肌寒く、ヘンリーはマークをぎゅっと抱きしめながら道中を歩く。
「大丈夫か?代わるか?」
「平気だよ〜。マークは温かくて気持ちいいよ〜」
言いながらヘンリーはマークに頬をすりすりする。
「親子みたいだな」
「あはは、じゃあガイアはママだね〜」
「逆だろ逆、お前の方がママっぽいだろ」
「え〜、違うと思うけどな〜」
「まあ、両方違うよ」
「あはは」
くだらない話しをしたり、異界について考察したり、町へ着くまでずっと喋り続け、町に着くと喉が渇いたと孤児院を探す前に、取りあえず近場の飲食店へ入る。
店内に入り席に着くと、ヘンリーは膝の上にマークを乗せ、飲み物の入ったコップを手にする。
マークにせがまれ飲み物を与えるヘンリーの姿が微笑ましく、つい顔が緩む。
そんな空気に、なんとなく幸せを感じてしまうが…。
「さて、そろそろ行くか」
飲み干したコップをテーブルに置き、ガイアは立ち上がってヘンリーを見る。
そのヘンリーは膝の上のマークをぎゅっと抱きしめ、不安げな表情でガイアを見上げた。
「…もう少し、だめ?」
「いつまでもこうしていれないだろ。早く野営地に戻らないと怪しまれる」
「…」
黙って座ったままのヘンリーに、ガイアは小さく溜め息をつく。
「しょうがないだろ」
「うん」
孤児院に預けるなんて、本当は自分もしたくはない。
自分たちがマークを見守ってやれるなら、それが一番だろう。マークにとっても、そして未来のルフレにとっても…。

町の広場で聞いた孤児院の場所は町外れにあり、子供の声が聞こえてこなければ誰も住んでいない廃屋と勘違いしてしまいそうな所だった。
「元気な子供の声が聞こえてくるな」
「うん、そうだね〜」
子供の声に安心したのか、ヘンリーの表情は飲食店を出た時より穏やかになっている。
何を心配していたのかは大体分かる。もしそんな孤児院なら、誰だって預けたくはないだろう。
「何か用か?」
後ろから声をかけられ振り向くと、中年の男が一人たっていた。
じろじろと不審な目で、こっちを見てきている。
「あ、ああ。預かって欲しい子供がいるんだが」
「…」
「ちょっと事情があって、養えないんだ。毎日、様子は見に来るから頼めないか?」
「毎日来るだと?」
「駄目なのか?」
「ねえ、ガイア…」
迷惑そうな顔をする男を見て、ヘンリーはガイアのマントを引っ張る。
毎日様子を見に来るのは、孤児院運営の邪魔にでもなるのだろうか…?

「うわあああああん!!」
「泣いてねえで、さっさと歩けっ!!」
「きゃあー!」

何かを叩く音と共に子供の鳴き声と叫び声、そして大人の怒鳴り声が建物の奥から聞こえてきた。
何事かと目線を声の方に向けると、男は小さく舌打ちをしヘンリーに手を差し出す。
「預かってやるよ。今ちょっと取り込み中でな。ガキ置いて、さっさと帰ってくれ」
男にマークを渡すよう即されたが、ヘンリーは男に背を向ける。
「ヘンリー…」
大体ヘンリーの考えている事は分かる。
「ゴメンね、ガイア。やっぱり、駄目だよ」
言ってヘンリーはマークを抱きしめ、孤児院から走り去ってしまう。
「あ、ヘンリー!」
「おい、素見しか?こっちは暇じゃねーんだよ」
「すまない、悪いが今の話しは無かった事にしてくれ」
軽く頭を下げ、ガイアはヘンリーを追って孤児院を後にする。
さっき聞こえて来た音や声は、子供が大人に戯れて発したモノじゃない。十中八九、虐待だ。
大人に虐げられてきた過去を持つヘンリーには耐えられない空間だったのだろう。

町中を抜け、ヘンリーを探しながら野営地まで戻る。
探しながら戻ったせいか、ヘンリーの天幕を覗くと、既にマークを抱きかかえ先に戻って来ていた。
「帰って来てたのか…」
「行くとこないし…」
天幕の隅っこで、ぼそっとヘンリーは言う。
孤児院へ連れ戻されると警戒しているのか、ガイアが天幕に入って来ても近づこうとしない。
「誰にも見られてないか?」
「うん、大丈夫。ちゃんと隠したよ」
「このまま何事も無いと良いんだがな」
さてどうしたものかとガイアは腕を組む。
「ゴメンね」
「いや、俺もお前と同じ気持ちだ。あそこは有り得ない」
「孤児院の子たち、幸せになって欲しいな…」
「将来、きっとな」
「うん」
マークを見て頷くヘンリーに、ガイアは少し顔が緩む。
「なんだかんだ言って、お前は優しいよな」
「うん?僕は優しいよ〜」
「戦争大好き〜とか言いながらな」
「ん〜、僕だって死んじゃっていいのと駄目なのがあるんだよ〜」
「死んじゃっていいほうに入らないように努力するよ」
冗談気味に言ってみる。
一緒の軍で、さらに仲間以上の関係なんだ。
死んじゃって良い方に入る時は、浮気とかそんな時だろう…。いや、浮気なんかする気はないが。
あとは、どっちかが軍を裏切る時か…。
「あはは〜」
まあ、両方有り得ないなと、笑うヘンリーを眺めながら思う。
ずっと笑っていられるような、そんな幸せな時間を二人で過ごせたら良い。それだけで良いんだ、他は望まない。

だからマークが居ても何も起こらない事を祈る。
そしてマークが未来のルフレの元に無事戻ってくれれば良い。

それは贅沢な願いだろうか?





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つづく

2に続きます>>

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