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FireEmblem 覚醒:異界から来た子供 3
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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異世界の子供マーク
ガイアとヘンリーの関係は既にナニソレです。その関係をルフレは知っています。
ルフレの旦那は謎のままです。






野営地での屍兵襲撃から一夜が明ける。
少し緊張感のある夜を過ごしたが、夜中に来襲はなくホッと胸を撫で下ろす。
だが、もう襲われないなんて保証は何処にもない。

「流石にそれは理由を聞かせてくれないかしら」
ルフレは自分の天幕で、訪ねて来た来客に問いかける。
「言わないと駄目か?」
「当たり前でしょう?まだ戦争中なのに軍を抜けたいって、理由も聞かないで『さようなら』なんて言えるわけないじゃない」
強い口調でルフレは言う。
当然と言えば当然の態度だ。いきなり軍を抜けるという事は、戦力がいきなり減るという事。
軍師のルフレが二つ返事で送り出してくれるなんて、ガイア自身も思ってはいない。
「理由はもちろんあるんだが…」
どうにか本当の理由を言わず、軍を離れたい…。
「なら言ってくれないかしら。どうしてヘンリーと二人で抜けたいの?」
「また屍兵が襲ってくるかもしれないからだ」
「貴方たちが軍を離れると野営地は襲われないの?それこそ説明が欲しいわ」
「えーと…、まだ確信はないんだが、ちょっと気になる事があってな。少し軍を離れて調べたいんだ」
「気になる事?」
「それだけじゃ駄目か?」
ルフレに言えない事は色々とあるが、言える範囲で説明をする。
マークが居るからだなんて、ルフレには口が裂けても言えない。
「うーん、調査のため少し離れたいんだったら、あと数人同行してもらった方が良いんじゃないかしら」
「いや、二人ぐらいの方が行動しやすい」
「ヘンリーと二人っきりになりたいだけじゃないでしょうね?」
疑いの目で見るルフレの視線が痛い。
ヘンリーとの関係をルフレは知っているが、ヘンリーの苦し紛れの嘘で、かなり印象が悪くなっている気がする。
「お前な…、そんな理由で軍を離れたいって、俺をなんだと思ってんだよ」
「あはは、ごめんごめん、冗談よ。でも、ちゃんとクロムには報告しないとね」
「その事なんだが…、俺だと説得力ないから、ルフレから説明してくれないか?」
絆を大事にしているクロムに軍を抜けたいと言ったところで、すんなり承諾してくれるわけがない。しかし、ルフレの言葉になら、耳を貸す気がする。
いや、自分が信用されてないなんて思ってないが、クロムが一番信用している人物はルフレだろう。一心同体だとまで言ってのけるクロムだ。
だがルキナの母親はルフレではない。そして、マークの父親もクロムではない。一心同体であっても、愛と友情は違うらしい。
「ちゃんとした理由は知らないままだけどね?まあ、良いわよ。ただし黙って野営地を出て行くのは駄目よ。挨拶はしていってね」
「ああ、分かってる」
「さようならじゃないわよ?いってきますだからね?」
一瞬、ルフレは自分の母親じゃないかと思ってしまった。
「分かってるって、ちゃんと戻ってくるよ。事が片付いたらな」
「何を片付けるのよ…」
「あーいや、まあ、調べごとが片付いたらな!」
頭の中で愚痴り、つい余計な事を口走ってしまう。
「本当、あやしいんだから」
「断じて自分の欲のためじゃないからな」
ここだけは自信を持って言える。
ヘンリーと一緒に居たいだけなら、別に野営地の天幕で十分だ。
「もしそうだったら、タダじゃおかないわよ」
「違うって言ってるだろ…」

なんだかんだ言って、ルフレのおかげでクロムも納得し、ヘンリーと共に軍を離れる事ができた。
ルフレがどこまで納得しているかは謎だが…。

言いつけ通り挨拶をして野営地を離れたわけだが、別れ際のルフレの目はモソモソうごめくヘンリーのマントに向けられていた。
大事な生け贄だよ〜なんてヘンリーは笑いながら言っていたが…。
まさか自分の未来の息子がマントの中に居るだなんて、夢にも思っていないだろう。

「しかし、人の息子を生け贄だって、よく言えたな…」
「あはは、嘘だよ〜」
「嘘じゃなかったら、怖すぎだろ…」
呆れ口調で言ってヘンリーを見ると、抱っこしているマークと二人で笑い合っている。
「マークが小さくて良かったな」
「でも、未来じゃ本当に生け贄だったかも〜?」
「考えたくはないが、有り得ない事じゃないな…」
ルフレの子供なら、邪竜の血を受け継いでいる。生け贄じゃないにしても、なんらかの利用価値があるに違いない。
「だから、ルフレは隠したんじゃないのかな〜?」
「必ず迎えにくるってことは、ギムレーを倒す方法を見つけたって事か」
確かに、この世界でも打倒ギムレーは掲げられているが、まだハッキリとした未来は見えてこない。
ナーガの力を借りてクロムが聖王の儀を行ったのにだ。
「かも?こっちより時間が進んでるしね〜」
「大団円は、未来が先か」
つい未来を少し覗いてみたいなんて思ってしまう。
確実なギムレーの倒し方があるのなら…。
「あはは、当たり前の事だね〜」
「まあ、確かにそうだな」
『ハッピーエンドは必ず来る』そんな自信が欲しい。
軍に入るまで、そんな事を思った事は一度もなかったが、今は強く願う。
「ねえねえ、三人で並んで寝よう〜。えーと異界で何て言ったかな、かわのじだっけ〜?」
「ほかに寝方が思いつかないぞ」
「あはは」
いつもより質素な天幕に、毛布を敷いて床にゴロ寝をする。
横になってヘンリーの方を向くと、そこには笑顔が二つあった。
その笑顔を眺めていると、本当の幸せを手に入れたいと思ってしまう。
今も小さな幸せなら、ここにあるが…。
ギムレーを倒し、本当の平和を手に入れて、ヘンリーと幸せな老後を…。

…老後?

昼間に体力を使いすぎたせいか、眠くて思考がおかしくなっているようだ。
老後なんてまだまだだろ。なんて、停止寸前の頭で自分に突っ込みをいれる。
まあ、二人で幸せな生活を送れたら良いな〜なんて、らしくない事を考えつつ夢の中に誘われてゆく…。

夢の中でもヘンリーとマークと三人で一緒に過ごす。
現実と大差ない空間で寝た記憶があるのに、三人で草むらを歩いている事を不思議に思わない。
草むらを抜け、川に入って反対側の岸を目指す。
川は浅いようだったが、何かに足を掴まれ、びくっと身体が跳ねる。

「ん…」
「あ、起こしちゃった?」

声が耳に入り薄目を開ける。
最初に目に入ったのは天幕の天井だった。草むらを歩いていたんだから空が見えるんじゃ…?
そして横を向くと、寝ているマークの顔があり、そのすぐ隣にヘンリーの顔もあった。
「夢か」
「ん?」
「いや、なんでもない。お前は何やってんだ?」
草むらを歩いて川を渡っていたのが夢だったと、マークの布団を直しているヘンリーを見て納得する。
「マークの寝相が悪かったからね〜。あと、ガイアの足も出てたから布団の中にしまってあげたよ〜」
「まるで母さんだな」
「ガイアの?」
「そう言いたいところだが、マークのって事にしといてやるよ」
寝相を直してもらうなんて、実の親にだってしてもらった記憶が無い。
まあ、マークのついでなんだろうが。
「ガイアが足出したりしちゃうのって珍しいよね〜」
「お前を蹴飛ばしたら殺されそうだからな」
普段は隣がヘンリーだが、今日は小さいマークなので、足を出しても当たらない。
隣がヘンリーではないからと、無意識に足を出してしまったのだろうか…。
「ねえねえ、マークの顔ってルフレに似てる?」
「どうだろうな…、ルフレの寝顔なんて見た事ないからな…」
「ん〜、誰に似てるかな〜」
唸りながらヘンリーはマークの寝顔を眺める。
「またその話題か…」
「だって気になるよ〜」
言ってヘンリーは更に顔を近づけて、じーーーっとマークの顔を見つめる。
そんな姿を見ていると、ついマークの顔に穴が空いてしまうんじゃないかと心配してしまう…。
「気にしてもしょうがないだろ。ほら、寝るぞ。マークが起きちまうだろ」
「は〜い、おやすみなさ〜い」
「おやすみ」

もう一度幸せな老後を考えながら眠りにつく。

…老後?

また同じ事を繰り返し考えている自分の頭に呆れてしまう。
でもまあ良いかと、逆らう事なく幸せな老後を考えながら、ゆっくりと眠りにつく。


いつまで三人だけの生活が続くのだろうか…。







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つづく

4に続きます>>

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