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FireEmblem 覚醒:マカロン1
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FireEmblem覚醒

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何処にもマカロン出て来ません。
書いてる途中で食べたくなって…。





ちょっとペレジア軍に飽きてきて、屍島で敵対するイーリス軍に声をかけてみたんだ。
理由はペレジアより、こっちの方が戦争を楽しめそうだったから。
案の定、ペレジア軍は王を失い壊滅し、イーリスはペレジアより長く戦争が続いている。

ただ、そこに居た者全員が、ペレジアの人間を素直に受け入れる事ができただろうか?いや、できないだろう。そんなこと、声をかけた呪術士だって分かってる。
総大将のクロムが受け入れるってんだから、軍の者は従っているだけだ。軍師のルフレだってそうに違いない。
だけど、なんでこんなにイーリス軍は居心地が良いんだろう…。

「オイ、落としたぞ」
声をかけられ下を向くと、呪術の道具が一つ転がっていた。
拾おうとしたが、自分より声をかけた者の方が落とした物に近く、先に拾われてしまう。
「ありがとう〜」
いつもの笑顔でにっこりと礼を言うと、その者は拾ったそれをじっと見つめた。
「これ、何だ?菓子か?」
「え?」
何処をどう見たら、菓子に見えるのだろう?
この橙色の頭髪の男が菓子好きだとは聞いていたが、呪術の道具を菓子だと思うだなんて…。
「甘い匂いがするぞ」
「お菓子の匂いに似てる?」
「ああ、食べたいくらいだ」
なんという素直な感想だ。ただ、理解は出来ないけれど…。
「食べても良いよ〜」
「食べ物じゃないんだろ?」
「うん、呪いの道具だよ〜」
「じゃあ、食べられないじゃないか」
そう言いながらも、まだ呪いの道具を手に持ったままだ。
まだ何か期待しているのかもしれない。
「うん、でも食べたいなら、どうぞ〜」
「呪われるんじゃないのか?」
「どうだろう〜?お腹は壊すかも?」
もちろん食べた事が無いから、壊すかどうかなんて分からない。
でも食べて腹を壊すのは自分じゃないし、食べたいなら無理に阻止する理由もない。
自分の事じゃないから、好きなようにどうぞと言葉を返すだけだ。
「じゃあ要らない。つか、食べられないの知ってるくせに勧めるなよ…」
ここでやっと、呪いの道具を手渡される。
食べられるという期待を完全に失ったのだろう。
「ん〜?食べたそうだったから、良いかな〜て思って」
「変な奴だな」
「あはは、よく言われるよ〜」
「だろうな」
甘い匂いがすりゃ何でも菓子だと思う人間も、大概変な人間だと思う。
思っただけで口に出して言ったりはしないけど。その言う相手ももう何処かへ行ってしまった。
こんな感じで、いつも独ぼっちなんだ。
変な人間は自分だけじゃないと思うんだけどなぁ…。

でもイーリス軍は居心地が良い。

今日もひとり、呪術書を片手に木陰で暇をつぶす。
たまに目の前を通る人は、こちらの存在に気づいているのかいないのか、こちらが見つめていても目が合う事はない。
無視とかそんなんじゃない事は分かる。ただ近いけど遠くにいる存在なんだ。
「ん、なんだ?」
「?」
なんとなく目に入ったお菓子を眺めていたら、声をかけられてしまう。
近いけど遠くに感じていた人は、ちゃんとこっちに気づいていたらしい。
全員が全員じゃないだろうけど、菓子好きのこの人は気づいてくれたんだ。
「えーと、ヘンリーだったな。何か用か?」
「僕の名前、知ってたんだ」
「一応軍の仲間だしな。菓子でも欲しいのか?」
そう言って抱えていた菓子袋の中に手を突っ込み、袋の中をゴソゴソし始めた。
「お菓子の匂いの事を考えてなんだよ〜」
「ああ、前に言ってたヤツか。多分、お前が持っていた呪いの道具がらしくない匂いだったんだと思うが、菓子の匂い嗅いでみるか?」
「いいの〜?」
「もちろん」
袋の中から手を出し、ヘンリーに数個菓子を渡す。
手渡された菓子を鼻に近づけ、匂いをくんくんと嗅いでみる。
「あ、ほんとだ。あの呪いの道具と似てる」
「だろ?これが甘い匂いって言うんだ。そして食べても甘いぞ。美味いから食べてみろよ」
即され菓子を一つ口の中に入れ、噛み砕きながら舌で味を確かめる。
今まで食べ物の「味」を気にした事はなく、食べ物は腹を満たすだけに食べるものだと思っていた。
だから、味なんて分からないし気にした事もなかった。だけど今、口に入れた食べ物は、お腹以外も満たされる感じがする。
「食べた事のない味がするよ〜。イーリスの食事もそうだけど、色んな味があるんだね」
「甘くって美味しかったろ?」
「うん、これが甘いって言うんだね。美味しいね〜、ペレジアの料理で美味しいなんて思った事なかったよ〜」
「損してるな、お前」
「あはは、おいしい御飯食べてる人も居たとは思うけどね〜」
「いや、お前がさ」
「ん?」
「まあ、いいや。これもお前にやるよ。味わって食えよ」
「こんなにいっぱい良いの?」
「菓子の素晴らしさを身を以て体感してみろよ。ペレジアに戻れなくなるぜ」
菓子を詰めた小袋をヘンリーに渡し、また自身も菓子を食べつつその場を離れていった。
その背中を見つめ、ヘンリーは菓子の甘い匂いを堪能する。

ペレジアに戻る気なんてもちろんない。裏切ったのだから戻りたくても戻れないだろうけど。でも、そんな事はどうでも良いんだ。
ただただイーリスの方が居心地が良いだけ。
味気ない食べ物より、甘くて美味しい菓子も魅力的に感じる。
イーリスにはペレジアに無いモノが揃っているんだ。
でもまだ何かが足りない…。
イーリスに来てこんなにも心は満たされているはずなのに…。
この物足りなさは何だろう?


行軍中の食事は、野外にテーブルと椅子を並べ、用意された食事をいただく。
時間帯は大体決まっていて、その時間内に済ませれば良いだけ。
席が人数より少ないという理由もあるが、この軍はとにかく自由だ。
食事の時間が終わるギリギリに席に着いて、ゆっくり食べるヘンリーもそんな自由な軍の一員だ。
ペレジアより美味しいイーリスの食事を堪能しつつ、自由って良いな〜なんて思ってしまう。
「おい、ヘンリー」
ひとりでゆっくり口を動かしていると、横の席に座った人物が声をかけて来た。
食事の匂いとは違う、ふわっと甘い空気が流れ込んでくる。
「あ、えーと」
「ガイアだ。やっぱり名前知らなかったのか」
「あはは、知らないんじゃなくて忘れてただけだよ〜?」
本当は忘れてたんじゃなくて、紹介してもらっていないだけ。
ふらっとイーリス軍に入ったようなものだから、軍の自己紹介なんてろくにしてもらっていない。
ガイアがこっちの事を知っていたのは、後から入った人間だから。今日から仲間になった呪術士ヘンリーですって紹介されれば、何となく覚えていてもおかしくはない。
「まあ、どっちでも良いけどな」
「何か用〜?」
「飯残ってないか?」
そのガイアの視線は、あと一口分しかないヘンリーの食事に注がれていた。
「僕ので最後だよ〜。僕が貰いに行ったとき、もう片付け始めてたからね〜」
「はあ…、そっか」
そして最後の一口をパクッと食べたのを見て、ガイアはガックリと肩を落とした。
「食べてないの?」
「正解。街から戻って来るのが遅れてな…」
「それは残念〜」
口をもぐもぐさせながら、ヘンリーは薄っぺらな笑顔で言う。
ガイアは特に嫌そうな顔を見せなかったが、溜め息まじりに腹を擦った。
「まあ、菓子で満たすか…」
「あ、僕もお菓子食べたいな〜」
菓子と聞き、つい身を乗り出して催促してしまう。
そこまで甘い物が好きなわけじゃないが、条件反射と言うヤツだろうか?
「飯食っただろ、お前は…」
「ん〜、もっと色んなお菓子を見てみたいな〜」
確かに食べたばかりで腹は減っていない。
でも菓子に興味を示す。いや、興味のあるふりかもしれない。
どうしてそんな事を言ってしまったのか、分かるような分からないような…まだ自分の中で整理がつかない。
「ほう、菓子に興味を持ったか。なら見せてやるよ」
「ありがとう〜」
でもこのやり取りは、心が満たされていく感じがして心地が良い。
もっともっと満たされたい。

この足りない心を埋めれるような気がする。




いろんな色や形をした菓子は、思った以上に奇麗でおいしくて興味のそそる物だった。
最初は興味のあるふりだったかもしれない。でも今は本当に興味が沸いている。
そして心の足りなかった部分が満たされていくのがわかる。
菓子が満たしてくれているのか、それとも…。

もっと心を満たしたくて菓子に興味があるからと、暇さえあればガイアに菓子談義を申し出るようになった。
相手の都合は考えていなかったが、嫌な顔一つせず菓子談義に付き合ってくれる。
菓子の話題だからだろうか?それとも本当に暇なのか…?
どうしてだろうと疑問に思うけれど、ガイアと一緒に居る時間がとても楽しくて、そんな疑問はすぐに忘れてしまう。

今日もガイアと話しをしようと、ちらっと天幕を覗いてみる。気配が無く居ない事はすぐに分かった。
じゃあ、何処に居るのかな?と陣営内をぐるりと一周してみたが、やはり姿はない。
別に約束をしていたわけじゃないので、時間が合わないときがあるのは当たり前だ。
分かってはいるけど、ぽっかり心に穴が空いたような、そんな虚しさを感じてしまう…。
「あら、ヘンリー」
「ん?セルジュ、おはよう〜」
やる事をなくし、ぼーと突っ立ていると、後ろから名前を呼ばれる。
振り向くとそこには、ミネルバという竜といつも一緒にいる竜騎士のセルジュが立っていた。
「おはよう。どうしたの?キョロキョロして、探し物?」
「ん〜、ガイアを見なかった?」
普段から竜に乗って移動しているセルジュなら、視野が広く空からガイアを見ているかもしれない。
「ガイア?さあ、今日は見てないけど」
「ふ〜ん、そっか〜」
なんて、そう都合のいい話しはないか…と、ヘンリーは肩を落とす。
その様子を見てセルジュは小さく笑った。
「ふふ、仲が良いのね」
「仲が良い?」
「最近よく一緒に居る所を見かけるから」
「そうかな〜?」
確かにいつも一緒だったかもしれない。でもそれだけで仲が良いってことになるのだろうか?
仲が良いってどういう事だろう…。
「ええ、あのガイアがって思うけど」
「ふ〜ん」
「これからも、ガイアと仲良くしてあげてね」
「セルジュは変な事を言うね〜、ガイアのお母さんみたいだよ〜」
仲良くという事は、友達になってねという事か。と、何となく理解した。
でもそれをセルジュが願うのは何かおかしな気がする…。
「あら、そう聞こえちゃった?仲間として言ったつもりだったんだけど、確かに変だったかもしれないわね」
「僕がガイアと仲良くするとセルジュは嬉しいの?」
「そうね、嬉しいかも」
「やっぱりセルジュは変だね〜」
他人が仲良くするのが嬉しいなんて、やっぱり理解できない。
「そうね、変よね。でも、ガイアがこの軍に留まる理由が必要だと思っているの」
「ん〜?」
「あまり部外者の話しに耳を傾けたくはないのだけれど、ガイアは盗賊だから有り得ない事じゃないのかもって心配になってしまって…」
「よく意味が分からないよ〜?」
「軍にとって良くない噂よ。そんな噂がガイアの耳に届いたら、軍を抜けてしまうかもしれないと」
「え〜、それは嫌だな〜」
理解できないと思っていたセルジュの言葉だったが、今の言葉だけは分かる。
どんな噂かは知らないけれど、ガイアが軍を抜けるなんて嫌だ。そこだけを理解して、いつもの薄っぺらな笑顔が歪んでしまう。
「だから、この軍に留まる理由が出来れば、ガイアは軍を抜けようなんて思わないんじゃないかって思ってしまったの。ヘンリーを困らせるつもりは無かったのだけど、ゴメンなさいね。気を使わせてしまうような事を言ってしまって」
「ううん〜、困ってないよ〜、気も使ってないよ〜」
「そう?なら良いんだけど…」
「うんうん。それじゃあ、もう一度ガイアを探してくるよ〜」
申し訳なさそうにしているセルジュに手を振り、もう一度ガイアを探し始める。
セルジュの言葉を鵜呑みにするわけじゃないが、ガイアの側に居なきゃなんて変な使命感に駆り立てられてしまう。
もちろんそれだけじゃなく、最近はガイアと一緒にいたいって思う。
一緒に居たい理由は、菓子談義が楽しいからってだけじゃない、それはもう自分でも分かっている。

だからガイアが軍を抜けるなんて、絶対に嫌なんだ。


セルジュに言われたからじゃなく、そして噂を意識してるわけでもない。
ただ一緒に居るのが楽しいから、今日もガイアを呼び止めてしまう。
そのガイアは街から帰って来たばかりで、両手に荷物を抱えていた。
「おかえり〜」
「ああ、ただいま」
「お菓子買って来たの〜?」
「お前、タイミング良いな」
「ふふふ」
タイミングが良のではなく、本当は待ち伏せしていただけ。
ガイアは知る由もないだろうが、セルジュあたりは遠くからこの光景を微笑ましく眺めていた。
一歩間違えればストーカーだが、軍師に迫るサーリャが居る限り、ヘンリーの行動はまだまだ微笑ましいモノだ。
「いっぱい買って来たね〜」
ガイアが両手に持っている荷物を眺めて、ヘンリーは言う。
全部菓子だとしたら、一日で食べきれる量ではない。
「こっちのは菓子じゃないぞ」
「え〜?お菓子以外なんて、ガイアらしくないね〜」
「どういう意味だよ?って、まあ、これは菓子の材料だ。このまま食っても美味くないモンばかりだぞ」
「もしかして、作るの?」
お菓子を作る事がいまいち想像できず、ガイアの手荷物をじっと見つめる。
この袋の中には一体どんな物が入っているのだろう…。
「欲しい菓子があったんだが品切れててな、じゃあ自分で作ってやろうと思って材料を買って来たんだ」
「へ〜、ガイアは食べるだけじゃなく、お菓子も作れるんだね〜」
「無けりゃ自分で作って食べる。飯と一緒だ」
「あはは」
ここまでお菓子の事ばかりだと、もう笑うしかない。
お菓子さえがあれば、他の事なんてどうでも良いに違いない。ある意味、羨ましい人間だ。
「良かったら、一緒に作ってみるか?今日はもう時間無いが、興味があるなら今度誘ってやるぞ?」
「本当〜?楽しみだな〜」
「よし、じゃあ、準備ができたら声かけるからな」
「うん、よろしく〜」
そんな約束をしながら、ガイアは袋から菓子を取り出し、ヘンリーに数個渡す。
「本当にタイミング良いよな。お前に会うと菓子を渡さないといけないという衝動が…」
「別におねだりはしてないんだけどな〜」
「まあ、菓子が好きという奴には渡したくなるんだよ」
「じゃあ無くなったら、またガイアに貰おう〜」
「良いぜ、そう簡単には無くならないくらいストックはあるからな」
得意げな表情をして、ガイアは菓子を口にした。
「あはは、まるでお菓子屋さんだね〜」

そう、無くなったらまたガイアの所に行けば良いんだ。今度は待ち伏せとかじゃなくて堂々と。

ペレジアで失った心はそう簡単には戻らないけど、きっとお菓子なら足りない心を満たしてくれる。

いや、ガイアなら…。


今日菓子を作るからと予告され、その日は食事以外ほとんど何もしないで、呼ばれるまで野営地をウロウロしていた。
ガイアの姿はまだ見えないが、きっと準備をしているのだろう。
「ん?」
ウロウロしながら待っていると、普段は気にしない他人の会話が耳に入ってくる。
その者達は名前も知らない人たちで、きっとセルジュが言っていた街からのお手伝いさんだろう。
なぜ聞き流せなかったのか、それはある人物の名前が聞こえてきたからだ。
つまりはセルジュが言っていた噂だ。
ガイアが軍を抜けようとする噂が、どんな内容か気になってついつい聞き耳を立ててしまう。

「…知ってるか?あの盗賊と一緒に居る…」

しかし、その内容はセルジュが言っていたのとは異なるものだった。
詳しい内容はしらなかったが、これではガイアと自分が一緒に居るのは逆効果な気がする…。
だけど、セルジュが嘘を言う分けないし、ガイアを追い出そうとするはずもない。
考えられるとしたら、ずっと一緒に居ようとした自分のせいだ。その行動が更なる噂をつくってしまったんだ。
もちろんセルジュは何も悪くない。セルジュに言われる前から、執拗にガイアの後を追いかけていた自分のせいだ。
もし、ガイアが軍を抜けたら、それは僕の責任。
ただ男同士が仲良くしてると言われるくらいじゃ、ガイアだって軍をぬけようと思わないだろう。
でもこの噂は違う。噂に背びれ尾びれが付いていて、耳を覆いたくなってしまう内容だ。
こんな噂になってしまったのは、そう思われるような行動をとったから?いや、そんな事をした記憶はない。
じゃあどうして?と考えてみるがサッパリ分からない。
だけど分かる事が一つだけある。それは、これ以上ガイアと一緒に居てはいけないということ。
はやく噂の原因を取り除かなければいけない…。


「よう、ヘンリー」
「あ…」
声をかけられる前に何処かへ隠れようとすると、何の悪戯か大抵タイミング悪く先に声をかけられてしまう。
名前を呼ばれたからには返事をしなきゃいと思うけど、さて何て言おうか…。
「あ〜、ガイア〜、え〜と何かな…?」
「準備できたから、呼びにきたぞ」
「え〜と…」
「忘れたか?菓子作り。約束してただろ」
「そうだったっけ〜、最近忘れっぽくてね〜あはは」
今までの僕なら相手の気持ちなんて考えないで、はっきり断る事が出来ただろう。
でも今の僕はそれが出来ない。嫌われるのが怖いから…。
「大丈夫か?暇なら来いよ」
「ん、ん〜。ちょっと忙しいかな…」
「そうなのか?じゃあ、また今度にするか」
「あ、僕の事はほっといて良いよ〜。ガイアが食べたいお菓子なんだから、作っちゃって〜」
「そう言われてもな…、お前と作る気で用意してたから、お前に合わすよ」
「僕、多分ずっと暇じゃないよ…」
「なんだそれ」
自分でも思う、なんだそれって。本当は一緒に作りたいのに…。
でもこれ以上一緒に居たら、また噂されてしまう。そして、ガイアがその噂を聞いたら、この軍を出て行くに違いない。
「だから、作っちゃって…」
「お前、あの笑顔はどうした?」
「え?」
指摘され変な声が出てしまう。
みんなが言う薄っぺらな笑顔以外の表情が分からない。
「なんで苦しそうな顔して話すんだ?」
「僕、笑ってない?」
「まったく笑ってないな。むしろ泣きそうだ」
「…」
自分がどんな表情をしているのか、まったく想像できない。
僕は今、どんな顔をしてるんだろう…。
「俺、お前を傷つけるような事を言っちまったか?」
「言ってないよ…」
「菓子作るのが、そんなに嫌だったのか?」
「まさか、誘ってもらえてすごく嬉しかったよ」
やっぱり嘘はつけない。すごく困らせているのが、ガイアの表情で分かる…。
でも一緒にいると、もっと困らせてしまう。
「じゃあ、日時はヘンリーに合わすよ」
「い、いつになるかは…」
だからもう、誘われても約束は出来ない。
「いつでも良いぜ。ずっと待っててやるよ」
「ええ、でも…」
でも断るのが心苦しい…。
「迷惑か?」
「だって…」
「凄くうれしそうだったのに、どうしたんだよ?」
「だって…」
言葉が出てこない。
理由を言ってしまうと、ガイアは出て行ってしまう。
自分からあんな噂も言いたくはない。
「はあ、何か俺がヘンリーをいじめてるみたいだな…。周りの視線が痛い」
「あ!ご、ごめんね!また噂されちゃうね!?」
「ん?」
「あ…」
しまったと思ったが、時既に遅しだ。
聞き逃してはくれず、疑いの目でガイアはこっちを見てきている。
「噂って?」
「な、なんでもないよ!ガイアが僕をいじめてるって噂が…」
「いや、それは今だろ?お前は『また』って言ったぞ?」
「う…」
またしても言葉が詰まってしまう。
ガイアの方が自分より一枚上手だ。隠し事をするなんて無理なんだ…。
「まあ、知ってたけどな」
「え?」
「その噂」
「いじめ?」
「違う」
「…僕との?」
まさかと思いつつ、分かるか分からないかくらいの単語を並べて訊く。
「それも知ってる。あと、俺が盗賊だから軍を抜けるんじゃないかとかってな」
「じゃあ、どうして…」
なぜ嫌な顔一つせず話しに付き合ってくれたり、菓子作りに誘ってくれるんだろう。
どうしてガイアは軍に居てくれるんだろう?
「ただの噂だからだ」
「嫌じゃないの?」
「いちいち他人の噂に振り回されていられるかよ。しかも、短期間しか居ない手伝い部隊だ。すぐ居なくなる連中だし、好きなように噂させとけよ」
「なんか意外だな〜」
ガイアの事はまだまだ知らない事だらけだが、居心地が悪くなったらフラッと軍を抜けてしまう印象があった。
クロムとかが良く言う『絆』って言葉も、ガイアには似合わない。まあ、僕の勝手なイメージだけれど。
「俺が噂さぐらいで軍を抜けるようなヘタレな奴に見えるのか?」
「そうじゃないけど〜」
「ああ、そうか。俺と噂になるのが嫌だってことか?」
何を納得したのかと思ったが、すぐ意味は理解した。
でも、どうして不機嫌そうな顔をするのかが理解できず、慌てて否定してしまう。
「ち、違うよ!?嬉しいよ?」
「嬉しいのかよ?」
「あ、間違った」
ガイアの表情で嫌われてしまうと思い、咄嗟に嬉しい何て言ってしまった。
言葉を反復されすぐ否定はしたが、何でガイアが不機嫌になるのかが、まだ良くわからない…。
「はは、やっぱり変な奴だな。まあ、噂が立つほど仲良く見えたって事だろうな」
「僕のせいだね、これからは気をつけるよ〜」
「いや、別に気をつけなくても良いだろ?これからも仲良くしようぜ。菓子仲間が居なくなるのは寂しいからな」
「お菓子仲間ってだけ?」
先ほどの不機嫌になったガイアを思い出し、もしかして…と思いつつそんな事を訊いてしまう。
だって不機嫌になった理由は、たぶん噂を避けようとした僕に対してで、それってつまりは…。
「そうだな、それ以上でも別にかまわないが…。噂が噂じゃなくなっちまうぞ」
「本当に良いの?」
やっぱり思い違いではなく、そう言う事なんだ。
「お前は嫌じゃないのかよ?」
「さっき、嬉しいって僕は言ったよ〜」
慌てて言った言葉が、こういう結果になるなんて…。
告白のつもりではなかったけど、告白が成功したみたいな感じでなんか嬉しい。
「そう言えばそうだったな…。そっか、じゃあ良いか」
「ガイアは良いの〜?」
「あんな態度取られて、意識しない方がおかしいだろ。嬉しいって言われて、何かこっちまで嬉しくなっちまったし…」
「あはは、ガイアも変な人だね〜」
照れくさそうに言うガイアを見てると、こっちまで恥ずかしくなってしまう。
ああ、これが友達以上の関係なんだなって、改めて脳内で納得した。
「お互い様だ」
「そうだね〜」
「よし、じゃあ、菓子作りにいくか」
「うん〜」

もう足りないモノは何も無い。
満たされた日々が、これからはずっと続いていくだろう。

ずっとガイアと一緒なら…。




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つづく。

2に続きます>>
2となってますが、後日談的なモノです。菓子を作ってるよ〜な内容です。

終始人の行き来がありそうな野外で話しています。
視線が云々言いながらも場所を移動せず話してます。
お前ら聞かれてんぞ?という突っ込みを誰かにされそうな…


相変わらずの読みにくい文ですが、最後まで読んでいただき有り難うございます。

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