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銀 魂:銀さん誕生日
絵と文とか

銀魂

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銀さんのお誕生日。
すでに仲良しな感じから〜。しかし、テキトーな二人で。
誕生日なのでベタな内容です。


いつも通り起床し朝飯を食べ、なんとなく万事屋の営業を始める。
直ぐ依頼者が来る訳もなく、椅子に座り天井を眺めそのまま目を閉じた。

何処からか昼の時報が聞こえてきて、すっかり寝入っていた事に気づく。
よっこらしょと体を起こし、昼飯になりそうな物を台所で探す。
冷蔵庫にちょうど良い賞味期限切れのパンを見つけて頬張る。二日切れたぐらい平気だろう。
パンを食いつつ、コップにイチゴ牛乳を注ぐ。
そして、ソファに腰掛けてテーブルの上の汚いメモに気づいた。
「ギンチャンヘ。アソビニイッテキマス。カグラ」
読み上げてから即まるめてゴミ箱に放り込む。
「おかしくね?俺ずっと家にいるのに何でメモ?」
訳わかんね。と、あくびをしてソファに横になった。

うとうとしかけた時に電話が鳴り体を起こす。
久々に依頼が来たかと、ソファを離れて受話器を取った。
「もしもし、よろず…新八かよ。どうした?」
「あ、銀さん?おはようございます。今日休み貰えますか?姉上が目の日だから目の検診受けるってきかないんですよ…。僕も一緒にって言うんで、断りきれなくて…」
「目の日?何言ってんの??体育の日だろ?つーか、目の検診って何?そんなに目が心配なら取って大事にしまっとけよ。まあ、神楽も遊びに行っちまったし、休んで良いぞ。俺も休むわ」
そう言って、銀時は受話器を置いた。
「目の日?体育の日?違うだろ?俺の日だろ?」
アレ?体育の日って、今は第二月曜日なんだっけ?まあ、何でも良いか…。
銀時はひとりでブツクサ言いながら、チラシの裏にミミズの這ったような字を書き、家の出入り口に貼った。

『今日の万事屋はお休みします』

これでよし。と、銀時は自宅を後にした。

外は夏も終わり、あのじっとりした風も空気も無く、秋らしい風が吹いていた。
まだ紅葉は始まっていないが、これからどんどん秋らしくなっていき、気づくと冬になっているのだろう。
それは年を取るごとに早く感じ、正月なんてあっという間だ。
「はあ、年は取りたくないね。取っちまうもんはしょうがねえけど、だったらせめて祝って欲しいよなァ。薄情だよなアイツら」
言いながら街を練り歩く。特に目的は無い。
「しかし、誰にも会わねえな…。マダオくらい歩いてないのかよ。アレか?俺の誕生日だから皆俺の事避けてるのか?つか、誕生日忘れてるんじゃね?むしろ知らねェか?」
愚痴りながら公園まで来て、何となくベンチに座る。
「何やってんだ、俺…」
良い年こいて、誕生日祝って欲しいってか?
そんなつもりはないが、神楽と新八ぐらいは気づけよと正直思った。
「そういや、沖田くんは知ってたっけか…」
「知ってますぜ」
不意に後ろから声をかけられる。
振り向くと、予想通りの人物が立っていて思わず顔が緩む。
「運命を感じるね。沖田くんの事考えてたら現れたよ」
「運命じゃないですぜ。見回りでココ通りかかっただけなんで。たんなる偶然です」
「偶然は運命だよ?偶然会う事に運命を感じるモノなんだよ?お互いココで会うなんて思わなかっただろ?」
「まあ、どーでも良いです。そんな事は」
言われて銀時は、じゃあ俺もどうでもいいや。と、ベンチに横になった。
沖田はそんな銀時を立ったまま見ている。
それに気づいた銀時は顔を上げた。
「仕事してたんじゃねーの?なに突っ立ってんの?」
「旦那見つけたんで、仕事はサボりますぜ。ケーキでも食べに行きましょ?おごりますんで」
銀時は勢い良く起き上がった。
「やっぱ沖田くんだわ。旦那は嬉しくて涙出てきたね」
「なに言ってんですかィ。まったく涙出てねェじゃないですか。さっさと行きますぜ。土方さんに見つかると厄介なんで」

少し歩き、一軒の洒落た喫茶店に入った。
内装も西洋の調度品で飾られていて雰囲気がある。
「店構えも良いですが、味も一級品ですぜ」
「こんな店、よく来るの?」
席に座りながら銀時は沖田に訊いた。
沖田が雰囲気等で店を選ぶなんてしそうにない。一人で来るとも思えない。じゃあ、誰かと来た事があるのか?
「いえ、屯所でリサーチしたまでですよ。正直、俺も旨いか不味いかは分からないんでさァ。聞いただけなんで」
つまりは、真撰組の誰かの行きつけの店ってことか。しかも、デートのだろう。
「ま、メニューの写真も旨そうじゃないですかィ」
「メニューが不味そうな分けないだろ?」
言いながら、ケーキを選びウェイターを呼ぶ。
「これで」
銀時は、生クリームとチョコレートがクレープ生地で何層にも重なって、上や回りにフルーツが一杯飾られたケーキを選んだ。
「旦那。1個で良いんで?好きなだけ頼んで良いですよ?なんなら1ホールでも」
「どんだけ食わす気?まあ、取りあえず1個で。沖田くんは頼まないの?」
「そうですねィ」
そう言って、沖田はチーズケーキと紅茶を注文する。
ウェイターが厨房へ戻るのを確認してから沖田は言葉を続けた。
「で、旦那は1個で足りるんですかィ?遠慮しなくて良いんですぜ」
「そう?でもね、誕生日プレゼントは別に欲しいからね」
誰も誕生日プレゼントとは言っていないが、タダで食える=プレゼントという図式に銀時はなっている。
あと好きな物を誕生日プレゼントにするのが当たり前と考えるなら、当然甘いものとなる。
きっと沖田もそう思って喫茶店に連れてきたんだろう。
その沖田は腕を組み、少し考えているようだった。
「旦那。誕生日プレゼントはまだ決めてないんですよ。ケーキは誕生日に食べる物だと思っただけなんで、プレゼントじゃないですぜ」
「じゃあ、何くれんの?」
「だから、まだ決めてないって言ってるでしょ。何か欲しいものありますかィ?御上の首とかは無理ですが」
「んなもの欲しがる訳ねーだろ。そうだな、何が良いかな…」
今度は銀時が腕を組み考える。
程なくして、注文したケーキや飲み物がテーブルに並べられた。
「ま、食べながら考えてくだせェ」
沖田はそう言い、ケーキをつついた。

どうせ見た目だけじゃね?と、思っていた洒落た喫茶店のケーキは見た目通りの美味しさだった。
真撰組のリサーチはなかなか使えるようだ。
食べ終わると、早々にウェイターが皿を片付けに来た。
食べ終わったら早く帰れってことなのか?忙しない店だなと、ちょっとだけ店の評価を脳内で下げた。まあ旨かったが。
「欲しいものは決まりやしたか?」
沖田に訊かれて、脳内評価を閉じる。
甘い物以外に欲しいもの。考えてはみるが、なかなかこれといった物が思いつかない。思ったより自分は欲が無いのか…。
多分、欲が無い訳ではない。沖田から貰える物と考えるから、欲しい物が出てこないのだろう。
物じゃなければ、欲しいモノはあるのだ。
「何でも良いの?」
「俺で買える物ならなんでも良いですよ」
「値段のついたモノじゃないと駄目?」
言われて沖田は首を傾げる。
「どういう事で?土方さんの命とかですかィ?」
「それは、沖田くんじゃね?」
「ま、言ってみて下せィ。あげれる物かどうかは聞いてから判断しますよ」

少し間が空く。
ウェイターがレジからこっちを見ている。どんだけ早く店から追い出したいんだ…。
「まだ決まらないなら、後でも良いですぜ。ココ出ますかィ?」
なかなか銀時が言わないので、沖田が先に口を開いた。
出るかと訊かれ、ちょっと待ってと銀時はやっと欲しいモノを告げる。
「いや決まってる。沖田くんをください」
「は?」
伝票を手に取ろうとした沖田の動作が止まる。
「すいやせん旦那。意味が分からないんですけど」
「え?アレ?分かんなかった?ちょっと待って、さすがに説明しにくいんだけど、どうしよう?」
分からないと言われ、銀時も動作が止まった。

変な沈黙が続く。
まだウェイターはガン見してくる。食べ終わった客が店にいるのがそんなに嫌か。
さてどうしたものかと銀時は天井を見上げる。
沖田とは付きあってるとかそういう関係ではないのは確かだ。
ただ、好きだの愛してるだの言ってないだけで、同性ではあるが友達以上の関係だとお互い認識しているハズだ。
だからこそ、あの沖田がリサーチまでして洒落た店で一緒にケーキを食べようと誘う。
体の関係こそまだ無いが…無いからこそ、そろそろ良いんじゃないかと思う。
ずっと天井を見ている銀時に沖田は声をかけた。
「旦那、大丈夫ですかィ。なんか追加注文でもしますかィ?」
沖田はウェイターが気になるらしく、追加注文してウェイターの気を逸らしたいようだ。銀時も気にならない訳ではないが、それより誕生日プレゼントの方が大事だった。
相手の質問には答えず銀時は話しだす。
「よくさ、ドラマとかの告白シーンで君が欲しいとか言うよね?そしてその後だいたいアレだよね?」
「…。」
沖田は黙って聞いている。多分アレの意味は分かったのだろう。
「もう一度言って良いかな?沖田くんをください。いや、欲しい」
「……。」
まだ無言だ。今度は完全に理解出来ているハズだ。
「そろそろ駄目かな?それともまだ分かんない?単刀直入に言おうか?」
こんな所で単刀直入って何を言う気だ。慌てて沖田は言葉を返す。
「いや、分かりやした意味は。取りあえず、場所変えましょ…」
そう言って、伝票を持って素早くレジへ向かう。銀時も数歩遅れて席を立った。

やっとウェイターの視線から解放された沖田は溜め息をついた。
「いい店でしたけど、あのウェイターは駄目ですねィ。ゆっくり談話もしてられねェ」
「談話ねえ…。行くあてもねえし俺んち来る?今、誰もいないから」
誰もいないと言われると、嫌でもさっきの会話が頭をよぎる。
このまま家に行くと受け入れた事になる気がして、素直に返事が出てこない。
「沖田くん?」
「え?いや、先に誕生日の…」
「それ、家行ってからでも良くね?立ち話もなんだし」
銀時の言う通りである。
断る理由が無くなり、銀時の家へ行く事となった。

出る時に貼った張り紙は、そのままに家に入る。
ソファに座らず、立ったまま銀時は喫茶店での会話を再開させる。
「他に欲しいモノ思いつかないんだけど、駄目?」
訊かれた沖田も立ったままで答える。
「駄目というか…。俺、経験無いですぜ?男とはもちろん、その…女とだって」
男はともかく女性経験が無いのを少し気にしているようだ。
さすがに恥ずかしいらしく、銀時から視線を外して下を向いてしまった。普段見せない仕草が、たまらなく愛しく感じる。
あの環境で年齢もまだ若い、無くたって恥ずかしい事でもないだろう。銀時にとっては想定内の事だ。
「良いじゃん別に。むしろ俺は嬉しいけどね。沖田くんの初めての人になれるんだから」
そう言って、沖田を抱き寄せる。
「ちょ…、本気で?今じゃないと駄目なんですかィ?」
「うん、今が良い。今日、俺の誕生日だからね?」
「本当にプレゼントそれで良いんで…」
「他に欲しいモノ無いからな」
「欲が無いですねィ、旦那は」
「俺は欲の塊だよ」
そう言って唇を重ねる。
少しの間ソファで抱き合っていたが、初めてなら…と居間から自室に移った。
朝起きた時から敷きっぱなしの布団を軽く整え、沖田を手招きする。
そして自分の下に組み敷いたところで、声をかけられた。
「旦那」
「なに?」
「誕生日おめでとうございやす。まだ、言ってなかったんで」
「ありがとう、沖田くん」
恥ずかしそうにしている沖田に優しくキスをする。


「プレゼントいただきます」



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おわり。

雰囲気も何もない…。
旦那は強引ですね?

後日談という補足があります。


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