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銀 魂:銭湯3 前編
絵と文とか

銀魂

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銭湯の続編です。
18禁のようなそうじゃないよーな、でも18禁とさせていただきます。






夕飯を終え、隊士達は仕事の疲れを癒そうと風呂場に向かう。
今日も風呂場は男の熱気でムンムンだ。

風呂場に人が集中しているせいか、屯所の広間は閑散としている。

『♪♪♪〜』
プチ。
『どうも〜、○△□〜』
プチ。
『×××!!××!?』
プチ。

「沖田隊長、何やってんですか…」
めまぐるしく変わるテレビの画面を見て、山崎は沖田に声をかける。
「見たい番組が見つからねぇ」
「だったら、風呂にでも入って来たらどうですか?今日は副長と隊士数十人が勤めに出てますから、いつもより空いてますよ」
「見たい番組があるから、風呂は後でいい」
山崎に声をかけられ番組を変える手を少し止めたが、またリモコンをいじり始める。
「さっき、見たい番組が無いって言ってたじゃないですか」
「いちいち五月蝿ェな。ジミーはあんぱんにでも挟まってろよ」
「え?何か言いましたか?」
「あんぱんにでも食われてろって言ったんでィ」
「ちょ、なにホラーなコト言ってんですか!?」
「食われてそのまま居なくなっちまえよ」
そう言って沖田はテレビのチャンネルを変えまくる。
「はあ、分かりましたよ。副長達が戻ってくると、また混むから風呂は先に入っちゃった方が良いと思いますけどね〜」
「ご忠告どーも」
沖田がテレビを占領しているせいか、広間に隊士達の姿は殆ど無い。
山崎も居なくなり、沖田は独りで広間のテレビを見つめている。手に持っていたリモコンは既に床の上だ。

じっと見ていたテレビから目を離し、沖田は時計を見る。
「おせェ」
ひとつ呟き、またテレビを見つめる。
「…」
どうでもいい番組が終わり、今日の放送に終わりを告げる案内が流れ始める。沖田はリモコンに手を伸ばし、また別の番組に切り替える。
それを数回繰り返し、テレビの映し出す画面は砂嵐のみになってしまう。
「総悟」
「お疲れさまです」
声をかけられ、振り向く事なく労いの言葉を言う。顔は見なくても声で誰かは分かる。
「ああ、お前は何やってんだ?」
「テレビ見てるんです」
「砂嵐は面白いのか…」
その声の主は沖田の横に立ち、テレビを見る。
「土方さんが遅すぎるんですよ」
「少し手こずっちまってな」
「そりゃ大変でしたね」
ちらっと横を見て、沖田は大きく息を吐いた。
もちろん、大変だったね。と、同情するような溜め息ではない。
「風呂は入ったのか?」
制服のままテレビを見ている沖田に、土方は疑問を投げかける。
時間的に違和感のある服装だ。いつもなら寝間着や普段着になっている時間帯だろう。
「見たいテレビがあったんで、まだです」
「砂嵐が見たかったのか」
「あんたが遅すぎるからだって言ってるじゃないですか」
横に突っ立っている土方を睨みつけ、目が合った土方は少し呆れた顔を沖田に向ける。
「俺が居なくなったら、お前は一生風呂に入らない気か?」
「銭湯に行きますよ」
「出入り禁止だろうが」
「誰のせいだと思ってるんでィ。まあ、旦那んとこに行きますよ」
また大きく溜め息をつき、沖田はテレビを消して立ち上がった。
その様子を呆れた顔ではなく、少し不機嫌に見つめ土方は口を開く。
「それは許されないな」
「なんでですか?」
「よろず屋は真撰組の敵だ」
「組のかよ」
吐き捨てるように言い、沖田は土方の前を横切る。
確かに旦那は真撰組の敵かもしれないが、他に言い方があるだろうと土方を横目で見た。
「何だ?」
「いいえ、何も」
この人の頭ん中は本当にくだらない。
少しくらいは旦那に嫉妬でもしろってんだ。
「風呂にでも入るか」
「今からですかィ?」
くだらないくだらないと頭の中で連呼していると、風呂へ誘われる。
待っていたと思われたくなく、わざと時計に目をやる。短針は3時を回ったところだった。
「朝になりますよ?」
「風呂なんざ30分くらいだろ」
「まあ、そんなもんですね。じゃあ、行きますか」

一度部屋に戻り、二人は準備をして風呂場に向かう。
土方と一緒に勤めに出ていた者達の姿は常に浴場にはなく、いつぞやの銭湯のように静まりかえっている。
こりゃ30分も入ってねーなと、誰もいない脱衣所を眺め沖田は呟く。
「どいつもこいつもカラスの行水だな」
「この方が都合いいだろ」
「なんの都合でィ…」
二人きりの浴場は、嫌でも銭湯での事を思い出してしまう。
土方が何を思って言っているかは知らないが、もし同じ事を想像してるとしたら…。
「誰もいないんだったら、一人で入れますけどね」
「俺にも入らせろ」
ガララ…
「「ん?」」
浴場の扉とは逆の引き戸が開けられ、二人は脱衣所の入り口に目をやる。
そこには一人の隊士が申し訳なさそうに立っていた。
「あ、まだ居たんですね…」
「これから入る所だ」
「すみません、薪の火を消してしまいました…」
「平気だ。長湯はしねえ」
「じゃあ、消灯は副長に任せて良いですか?」
「ああ」
「では、お願いします」
「点検ご苦労」
「…」
ささっと隊士が去って行き、また二人だけの空間に戻る。
「気にくわねェ」
去り際の隊士の目が気に食わない。何を想像してるか100パーセント分かる視線だ。
噂は銭湯で事実にされてしまったが、隊士は誰も知らないはずなんだ。なのにそんな目で見られるなんて納得がいかない。
「どう思われようと構わないだろ。もう噂じゃないんだ」
「そう言う問題じゃねーだろ。噂とかじゃくて、そう思われてるのが嫌なんでィ」
「ほら、ぐだぐだ言ってないで入るぞ。湯船が冷めちまうだろ」
「…」
人事のように言う土方も気に食わない。
最初は確かに人事だったかもしれないが、今や隊士達の噂話にこの人は欠かせない存在だ。

冷める前にとパパッと掛かり湯をして湯船に入る。
「はあ…」
大した気分は良くなかったが、湯船に入ると満足げな声が出てしまう。
やはり風呂は疲れを取るのに最適な場所だ。
ゆったりと湯船を堪能していると、じっと見てくる視線に気づく。
ここには自分と土方しか居ないはずだが…というか、これは土方の視線だろう。
「何見てるんで?」
「いや、思い出してた」
「それで?」
主語は抜けてるが、十中八九間違いなく銭湯の事だろう。
とはいえ、自ら銭湯の事かと訊く気は無い。
「二人っきりで風呂場に居るせいか、色々と考えてしまってな」
「…」
「どうだ?」
「なにがですかィ」
言って沖田は土方との距離をあける。
「嫌じゃなかっただろ」
「はあ?何言ってるんでィ!」
銭湯での教訓を生かし、蹴らずに距離をさらにあける。
しかし、どんどん寄って来る土方に、浴槽の端まで追いつめられてしまう。
「…本気ですか?」
「一度っきりで終わりにしたくないんだ」
「まったくムードってもんがないですね、アンタは」
「男同士にそんなのは必要ねえだろ」
言いながら腰に手を回し、至近距離で顔を見つめてくる。
逃げ場が無く、威嚇のつもりで黙って顔を見返してやるが…、つい身体を許してしまいそうになる。
女が黄色い声を上げるだけあって、男の自分から見ても土方はカッコいいと思う。
その視線に負けてしまいそうになる。が…、でも。
「やっぱり、嫌です」
「そんなに俺の事嫌いか」
「そう訊かれりゃ嫌いって言うに決まってんでしょ。それより、なんで湯船なんですか?」
「ここに湯船があるからだ」
「あんた、アホだろ」
呆れた表情で土方を見る。
何に素直と言うべきか…この場合は性欲にってところか?普段から感情に素直と言うか一途な所はあるが、性欲と普段を一緒にしちゃあ駄目だろう。
「じゃあ、どうしたら良いんだ」
「土方さんは知りませんけど、俺はアレが初めてだったんです。一度くらいは普通にしてくだせィ」
「普通って布団の中か」
「まあ、湯船ではないですね」
湯船でのエッチが一般的だなんて聞いた事がない。
他に経験はないが、寝台の上が普通なんじゃないかと思う。そんなシーンをドラマで何回か見た記憶がある。
「布団で抱かれたいのか」
「言い返してんじゃねーやッ!」
「いや、そう言う事なんだろ?」
「少しは気ィ使えよ!?初めてが浴場で、次も浴場っておかしいだろ!俺だって普通にして…みたい…」
土方のデリカシーのない言葉にキレかけ、つい本音が口をついて出てしまう。
普通に抱かれたいなんて、女みたいで恥ずかしいじゃないか。
男同士はただ欲望を満たすだけで、穴がありゃそれで良いんだって思ってたのに。これじゃ、まるで…。
「笑いたきゃ笑えよ…」
「何を笑うんだ?少し、ぬるくなってきたな。総悟、早く身体洗って戻るぞ」
「…土方さんは先に戻っててくだせィ」
「そうか」
やっと土方の身体が離れ、ホッと息が漏れる。
湯船を出て行く土方の背中を目で追いかけ、ゆっくり浴槽の真ん中に戻る。
沖田の位置が戻ったのを確認してから土方は身体を洗いながら口を開いた。
「総悟、部屋で待ってて良いのか?」
「あとで土方さんの部屋に行きます」
「分かった、あまり遅くなるなよ」
「へい」




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後編へ続く。

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