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銀 魂:沖田誕生日三夜目 4
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銀魂

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2012.2013年の沖 田誕生日の続編です。
『引くも引かぬもアンタ次第』←サブタイトル。





治療を終えた沖田を預かり、部屋へ続く廊下を無言でゆっくり進む。
「どうして黙ってたんだ」
「それ、今訊くんですかィ?」
肩を貸し身体を支え歩調を合わせて歩くが、 まだ痛むのだろう。姿勢を変える事なく、前を向いたまま沖田は不満げに口を開いた。
その沖田に土方も不満げに答える。
「気になってしょうがない」
「ま、辛いんで、後で」
「自業自得だろ」
「へいへい、小言は後で聞きますよ」
瀕死のくせして調子の良い奴だ。そう小さく土方は呟いた。

部屋へ入り、沖田を布団に寝かせる。
血だらけじゃないのか?と思っていた寝具はちゃんと取り替えられていた。
つまりは誰かが取り替えたって事で、怪我の事を知らなかったのは鬼の副長だけだったというわけだ。
「大人しく寝てろよ」
「おやすみなせィ」
「まだ寝るな」
沖田の寝ている布団の横に土方はどっしりと腰を下ろす。
「どっちで?」
「さっきの質問に答えてから寝ろ」
「あー、まっ、心配されんの嫌だったんで。死ぬ程の怪我でもなかったですしね」
「そういう問題か?」
「そういう問題ですよ」
「本気で言ってんのか?お前だけの問題じゃないんだぞ。すぐ手当てしてりゃ、もっと軽い怪我ですんだだろ」
死ぬ程の怪我じゃないと言っても、放置してりゃどうなっていたか分からない。
いや、現に放置しての今の状態だ。確かに死んじゃいないが、放っといて治る怪我でもない。最悪、失血死という可能性もあっただろう。止血せず、血だらけのまま寝たのだから。
「はあ、だから言いたくないんでしょうが」
「言わなきゃバレないとでも思ってんのか?」
「アンタにバレなきゃそれでいい」
「なに?」
バレてるだろ?と思ったと同時に、隊の中で一番最後に知ったという事実もある。
つまりは偶然ではなく、本当に隠されていたのか?
「話す事はもうありやせん。寝ても良いですかね」
「じゃあ、黙ってろ。ただし、寝るな」
「命令ばっかだな」
「俺にだけバレなきゃいいってのは、俺に気を使っての事か?」
知られたくないというのなら、その理由は限られてくるだろう。
自惚れかもしれないが、まず頭に浮かんだのはコレだ。
「…」
「隠し通せると思ったのか?」
気の使い方が不器用なのが総悟らしい。
「…」
「俺が、お前の心配しちゃ駄目なのか?」
心配されたくないなんて、可愛いワガママだ。
「…」
「お前を大事に想っちゃ駄目なのか?」
そんなんだから放っとけなくて、大事な存在になっちまうんだ。
「…」
「喋って良いぞ」
「命令ばっかり…」
「これは命令じゃねぇ、俺のワガママだ」
言ったところで黙ってる奴じゃないが、らしくなく本当に沈黙していた。
命令だからか、それとも喋る気がないだけか、総悟の心情が読めない。
「心配とか、大事とか、俺は姉上じゃないです。心配される道理がありません」
「そんな事は分かってる」
多分、言葉を探していたんだろう。
ただその言葉は、今の自分には必要ない。
「そうですか?じゃあ、なんで俺なんかを抱くんです?」
「だ、抱くって…、もっと言い方があるだろ」
「俺、男ですから」
「お前が言いたい事は、よーく分かった」
どうせ俺は変態だよと、土方は頭の中で愚痴る。
「やっぱりそうなんですか?姉上の代わりですか?」
「んなわけあるか!」
変態だとしても代わりだなんて、そこまで堕ちちゃいない。
「でも、姉上の事、好きでしたよね?」
「もう良いだろ、ミツバの事は…」
「姉上はアンタの事好きだったんですよ。アンタだって好きだったんでしょ」
「…」
「今さら後悔してません?俺は姉上の代わりにゃなりませんよ」
「誰が代わりだって言った」
吐き捨てるように言い、土方は沖田の上に覆いかぶさる。
横を向いていた沖田の顔を自分の方に無理矢理向け、さらに言葉を続けた。
「代わりで弟なんて抱けるか」
「痛いです、離してくだせィ…」
布団の中でどんな姿勢を取っていたのか、覆いかぶされ沖田は苦痛の表情を見せる。
「お前の代わりなんて、誰にも勤まらねェよ」
「俺の?」
「もちろん、ミツバの代わりも居ない。だがそれは、お前も然りだ」
「言ってる意味が分かりません」
「お前はお前だ。だから、お前を好きになった。副長の座を狙われてたって構やしない」
他の誰かなんて関係ない。血の繋がりももちろん関係ない。顔が似てても似てなくてもだ。
副長の座を狙ってくる姿も、何かもう愛情の裏返しにすら思えてくる。ドSの本心は知らないが。
「ドMですねィ」
「なんとでも言え。愛しちまったんだからしょうがねーだろ」
「モノ好きですね」
自分の下で呆れた表情をする沖田に顔を近づける。
「お前もだろ」
「違いねぇ」
お互い軽く笑い、さらに顔を近づけ口付ける。







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5へ続 く。

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