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銀 魂:トッシーとオレ。 |
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感謝祭の文です。 天気が良く庭の雑草が青々と生い茂っている。 そろそろ誰かに雑草駆除を命令しなければ…。 縁側で煙草を吹かし、そんな事を考える。 だが、ふと視線を横にずらすと、そこから目が離せなくなり、考えていた事も吹っ飛んでしまう。 そこには沖田の姿があり、動きも異様だったが、その位置は確か…。 「手なんて合わせて、なにやってる」 「おや、土方さんじゃないですか。一緒に儀式しますかィ?」 「儀式って何だ?」 沖田が手を合わせている場所は、金魚の墓とかではない。 墓には違いないが、土の中に埋まっているのは遺骨ではなく遺品だ。遺骨があっちゃ大問題な存在…。 「トッシーの復活です」 「あ?何の復活だって?」 「トッシーですよ。土方さんの本体」 「どれが本体だって??本体はこっちだろッッッッ!!!」 ぶわっと忘れかけていた、トッシーの記憶が蘇ってくる。 既に成仏しているので、もう乗っ取られるような事はないハズだ。だが、トッシーが本体と言われると、さすがにそれは聞き流す訳にはいかない。 「あいつはもう居ねえよ」 そして、もう完結している事だ。 今さらトッシー復活なんてありえない。 「それは残念ですねィ」 「何企んでんだ?」 「別に何も。土方さんがつまんないんで」 「つまらんだと?」 もちろん楽しい奴だとは自分自身も思っていない。 「夜もトッシーの方が男らしいです」 「今なんつった?」 つまらない奴だと言う事は自覚している。 しかし、男らしいかどうかに関しては違う。その辺の男よりは男らしいと自負している。過剰評価だとは思わないし、自惚れでもないつもりだ。 だがしかしだ、トッシーより男らしくないというのは聞き捨てならない。 どっからどう評価したって、あんなヘタレより鬼の副長の方が男らしいだろ? ていうか、夜って…。 「夜ってなんだ…?まさかお前、あのヘタレと…」 「あれ?トッシーの時って、記憶無いんですかィ?」 「いや、ある…。あった…と、思う…」 だが、トッシーが夜、総悟を抱いていたなんて記憶は無い。そんな事が出来る奴だとも思わない。あいつはタダのヘタレなヲタクだ。 「なら問題ないですね。さっさとトッシーになってください」 「言われてなれるモノでもないだろッッ!!」 そしてパパッとなれるモノではない。いや、やっと成仏したヘタレに戻ってたまるか。 「つまんねー野郎だな。ま、仕事にでも行ってきまァ」 「だからつまんねーってなんだよ…」 仕事に向かう沖田の背中に土方はひとつ呟く。 総悟の言葉が何一つ理解できない。 つまらない奴で悪かったなと頭の中で愚痴ってみるが、トッシーの方が男らしいというのは納得いかない。 納得はできないが『総悟はトッシーと一緒にいたい』そう言う事なのだろう…。 つまりは倦怠期ってコトか? 「なあ、山崎」 「は、はい?」 仕事を終え、食堂で遅い夕食を口にする。 そこに沖田の姿はなく、数人の隊士が食事をとっているだけだった。 その内のひとり、斜め前に座って食事をとっている山崎に問う。 「俺はつまらないか?」 「は?」 「楽しくないか?」 「そ、そうですね…。鬼の副長といて楽しいとなると、ちょっとどうなんでしょうね」 山崎は箸を置き、頭の中で楽しそうな土方を想像してみる。 花畑でウフフアハハしている副長はかなりヤバイ…。 「トッシーのほうが良いか?」 「え?トッシー?どうしたんですかいきなり。確かにトッシーのほうが気は楽かもしれませんが、それじゃあお先真っ暗ですよ真撰組の」 局長がストーカーのゴリラで、一番隊や三番隊の隊長もあんなんだ。副長も『アレ』になっちゃあ誰が組を纏めるんだと…。 山崎が「言わなくても想像つくでしょ」と呆れ口調で言うと、土方本人も山崎の言葉にひとつ頷いた。 「だよな…」 「どうしちゃったんですか?副長。トッシーはもう成仏したんですよね?」 「いや、なんでもない。たまにトッシーになれたら、楽しいのかもしれないと思ってな」 「副長、楽しくなりたいんですか?」 「俺じゃない」 言って土方は味噌汁をすする。 いぶかしげに見ていた山崎は、土方の後方から近づいてくる人物に気づく。 「誰が…て、訊くのは野暮みたいですね。ごちそうさまです」 そして、そそくさと食事を片付ける。 「あ?」 山崎が席を離れ、背中に視線が当たっている事に土方は気づく。 振り向かなくても山崎の態度で、大体誰かは想像がついた。 「総悟か」 「どうせ総悟ですよ。早くトッシーになってくれませんかね」 雑に飯の入った食器をテーブルに置き、沖田は面白くなさそうに呟く。 「なれねーって言ってるだろ。アイツは成仏したんだ。だいたいアイツじゃ真撰組を纏められないだろ」 「わかっちゃいねーですね、土方さん。成仏したって、なれますよ」 「なんだと?」 別になりたい訳じゃないが、つい訊き返してしまう。 こいつの事だ。もしトッシーを復活させる方法があるなら、本人の意思を無視して実行してくるだろう。行動が見え見えなだけに、警戒せずにはいられない。 「なりきりってヤツですよ。トッシーになりきれば良いんでさァ」 「なんのためにだ…」 「土方さんのためです」 「俺?んなわけあるか。俺は俺でいるのが自分のためだ」 考え過ぎだったようで、復活させる方法は無いようだ。 だが、なりきりとか、それこそトッシーの得意分野だろう。 「随分、自意識過剰な事で。じゃあ良いですよ、俺のためで」 「お前のためになるのか?」 「なりますよ、だからヨロシク」 「よろしくって言われてもな…」 期待の眼差しで見てくる沖田の目は…とても純粋だ。 それはあくまで見た目の事で、相変わらず腹ん中はどす黒いんだろう…。 いくら考えたって、誰のためになるとも思えない。 まあ、テロリストの役には立つか?鬼の副長が役立たずになるんだからな。喜んで真撰組を潰しにくるだろう。 「たく、アイツは攘夷派か」 夕食を終え部屋に戻り、トッシーに繋がるモノを探す。 すべて処分したつもりだが、総悟のためになるなら少しくらいは…、トッシーに歩み寄っても良いのかもしれない。 少しくらいなら…。 「…やっぱり無いか」 隅々まで部屋を探しまわって、最後の部屋の真ん中で煙草を吹かす。 土の中に埋まっているだろうが、掘り起こすほどの事でもない。 「ふぅ…」 部屋に何かトッシーに繋がるモノが残ってるんじゃないかと思ったが…。 まあ、モノがなくてもやれなくはないだろう。認めたくはないが、トッシーは自分だったんだ。 「いや、違うな。俺は取り憑かれてただけだ」 「なに一人でブツクサ言ってんですか」 煙草を吹かしながらトッシーを思い出していると、部屋の襖が開けられる。 入って来たのは沖田で、手にはノートのようなモノを持っていた。 「いや、お前こそ何の用だ」 「これ」 沖田は手にしていたノートを土方の目の前に差し出す。 よく見ると、やたら薄っぺらくヘタクソな絵が描かれている。 「おま…それ…」 「思い出しやしたか?土方さんが描いた同人誌ですよ。『とらぶる』のね」 「なんでおまえが持ってるんだァァァッッッ!!!?」 「記念に一冊、貰っといたんです」 そう言って沖田はペラペラと同人誌を捲る。 ちらちら見れえる中の漫画が表紙以上に酷く、目を覆いたくなる。 「つか描いたの俺じゃなくて、トッシーッッッ!!!」 「ま、ま、ま、ま、落ち着いてくだせィ」 「落ち着いてられるかッ!!今すぐ捨てろッッッ!!!」 「探してたんじゃないんですか?トッシーのモノ」 「やっぱりいらん!そんなモンは必要ないッッ!」 破り捨ててやろうと手を伸ばすが、沖田は素早く土方の手をかわす。 かわされた手をもう一度伸ばし、消し去ってしまいたいトッシーの形見?を掴む。 「離しやがれッ!」 「ぐはッ!」 破ろうと両手で持ったところに沖田の蹴りが飛んでくる。 その蹴りは両手の塞がっている土方の腹にクリーンヒットした。 激痛のあまり膝をつき顔を上げると、沖田が見下ろしていた…いや、見くだしていた。 「ザマーみやがれ。トッシーの思い出を壊そうとしたバツですぜ」 「そんな思い出いらねーだろ…」 「良い思い出だったんですよ。二言目には仕事仕事のつまんねーあんたと違ってね。トッシーは見てて飽きませんでしたよ。プリキュアだのアニメに萌えたり、へたくそなくせに漫画描いて。あと原稿手伝うのも楽しかったですね」 「仕事サボって、そんなくだらん事手伝ってたのか」 まったく記憶に無いわけじゃないが、ところどころしか記憶がない。 トッシーペースで何もかも制御不能になってしまっている時は気を失っていたのだろうか?同人誌を総悟と一緒に作っていたなんて…。 「ほらみろ、二言目には仕事」 「お前がサボりすぎてんだろーが」 「はあ、もういいや。少し土方さんと遊びたかっただけなのにな…。たまには息抜きも必要ですぜ」 沖田は溜め息をつき、襖を開ける。 「なに?」 「なんでもねーですよ、さっさと仕事にでも行ったらどーですかィ」 「…」 「行けって言ってんだろ?俺はあんたの言う通りサボってますよ」 「何言ってやがる、今日の仕事はもう終わってんだろ」 開けられた襖から外を見る。 夕飯も食べ終わった後だ、もう日は沈み外は真っ暗だ。 「残業でもすれば?」 「お前が命令すんな」 廊下に出ようとした沖田の肩を掴み、自分の方へ抱き寄せる。 「!?」 「トッシーになってやるよ」 そして沖田の耳元で囁く。 まったく雰囲気も何も無い言葉だが…。 「え?」 「ただ、なり方がわかれねぇ。どうすればいい?」 「本当になってくれるんで?」 「二度言わすな」 「じゃあ、同人誌作りやしょう!この続きが気になってたんですよねィ」 少し不機嫌だった沖田の顔がパッと明るくなる。 その沖田の顔にホッとしたが、その言葉で土方は不安の表情を浮かべた。 「つ、つづき?」 「へい、読んでみて下せィ。絵はへたくそだけど、なかなか読み応えある内容なんですぜ」 そう言って、薄っぺらな同人誌を土方に手渡す。 さっきまで渡すのを拒んでいたトッシーの形見だ。受け取っても、もう破く気はなく、土方はペラペラと無言でめくる。 「…」 目を覆いたくなる出来だが、これも総悟のためだ。 「まずはネームってやつを作るんですよ」 「ま、まて…、俺が描くのか?」 「当たり前でしょ。トッシーが描いたモノですよコレ。土方さん以外に誰が描けるって言うんですか」 「そ、そうか…」 総悟のためだ。 腹をくくってやってみるのもアリか…。 寝静まった屯所の一室に明かりが灯っている。 襖の隙間から覗く明かりは副長の部屋からだ。厠へ行く隊士が通りかかれば「夜遅くまでお仕事お疲れさまです」と思うだろう。 「楽しみですねィ、コレを読む旦那の反応が」 出来上がったネームを眺め、沖田はニヤニヤする。 「あ?いま何か言ったか?」 「いいえ、何も。土方さんと二人っきりで机を囲んで、仕事以外の事が出来るなんて楽しいなって」 机に向かって慣れない絵を描く土方を見て、沖田は嬉しそうに微笑む。 手を止め顔を上げた土方は、その笑顔を見て思わず顔が緩んでしまう。 「そ、そうか」 「ヘイ」 「悪くはないな」 やはり、ふてくされた顔より、笑っている顔の方が数倍良い。 「でしょ?」 沖田はニッコリ笑う。 コイツがドSだって事を忘れてしまいそうな笑顔だ。 腹の中ではどんだけ黒いことを考えているか計り知れない。 だが、どんなに振り回されても、嫌いになんてなれない。 なんだかんだでやっぱり、コイツは可愛い。 決してドMじゃないが…、総悟に振り回されるのは嫌いじゃない。 -------------------------------------------------------- END 問題です、完成した同人誌はどうするのでしょうか? 1:無料配本 2:即売会で売る 3:部屋に山積み 感謝祭の作文ですが、リクエスト通りだったかどうか…; 小悪魔というか、トッシー復活を目論むとか、ただの悪魔ですね。土方さんにとって…。 期待に添えたかどうか謎ですが(いつもですね;) 最後まで読んで頂き有り難うございます。 そして、リクエスト有り難うございました! #UP |