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FireEmblem 覚醒:ナクシモノ 1
絵と文とか

FireEmblem覚醒

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メイン部分は一応、ガイアへの疑いを晴らそうとするヘンリーです。
結局ガイア視点です。
2を抜かしても話しは繋がるハズ。



ここはイーリス聖王国の王都。
戦時中ではあったが、城下町を行き交う人々の表情は明るい。今は亡きエメリナ王女の説く平和が息づいている証拠なのだろう。
大陸全土を巻き込んだ戦争は、まだ続いていたが、現在は休戦状態にある。
軍は一旦国へ引き上げ、長引く戦争に疲労した兵士達は、束の間の休息を過ごす。

イーリス城内の回廊に、太陽の日差しが直接降り注いでいる。
黄金に輝く柱や壁に光が乱反射し、より一層神々しく見える。

そんな光に満ち溢れた回廊を、聖王国に相応しくない呪術士が歩いていた。
呪術士は邪竜を信仰する国、ペレジア王国の装束を身に纏っている。
魔道書を光の射す方に掲げて、視界に入る光を減らす。
「はあ、眩しすぎて疲れちゃたなあ…。何処かに日陰ないかな〜」
キョロキョロと辺りを見回しながら、ひとり呟く。その口調は軽く、呪術士らしさに欠けている印象があった。
回廊を抜けて螺旋階段に差し掛かった所で、やっと建物に光が遮られ薄暗くなる。
光が届かなくなった城内には、微かなランプの明かりが灯り、先ほどの神々しさとはまた違う気品が漂っていた。
そこで足を止め、心地よい暗さに一息つく。

ぼーっとしていると、少し離れた所から声が聞こえてきた。
聞く気はなかったが、「盗賊」という単語が耳に入り、つい聞き耳を立ててしまう…。

「いくら探しても見つからないんだよな」
「そうだなあ。こんだけ探して見つからないと、つい疑っちゃうよな…」
「この軍には居るからなあ。まあ、不注意な俺が悪いんだろうけど…」

そこまで聞き、元ペレジアの呪術士は、会話をしている兵士達に声をかけた。
「ねえねえ、兵士さん。探し物〜?」
「あ、ああ…ハイ、そうです」
「ヘンリーさん…でしたよね。こんにちは」
兵士達はぎこちなく答え、挨拶をする。
忌まわしきペレジアの格好をした者に、イーリス城内で声をかけられると、分かっていても一歩引いてしまう。
だが、ヘンリーと呼ばれた呪術士は、そんな態度を取られても、気にする様子はまったくなかった。
「僕が呪いで探してあげようか〜?」
「の、呪い!?」
「うんうん。無くし物を見つける呪いだよ〜。無くした物の特徴とか、どの辺で落としたとか〜、教えてもらえれば〜」
「本当ですか?助かります!実はフィアンセに渡す婚姻の指輪が…」
呪いと聞き少し戸惑ったが、禍々しさのない雰囲気に安心し、兵士はヘンリーに探すのを手伝ってもらう事にした。

ー数日後の夜ー
イーリス城は、月明かりに照らされて、昼間とはまた別の姿を魅せる。
昼間の城は存在感があり厳格な雰囲気を醸し出していたが、夜はとても幻想的だ。
軍宿舎の窓からも見る事ができ、寝付けない時に窓から眺めて、安らぎを求める者も多い。

宿舎の一室で、開け放たれた窓から幻想的な城を一望し、それとは似つかわしくない呪術を行う者の姿があった。
床には得体の知れない道具が散乱している。きっと、呪術に用いる道具なのだろう。
「は〜、また失敗〜。情報が少なすぎるのかな〜」
そんな事を呟きながら、使用済みになった呪術の構築を崩し、再度準備をする。

コンコン

扉をノックする音が聞こえ、呪術の準備をしていた手を止める。
「誰〜?」
「起きてるか?俺だ、ガイアだ」
「開いてるよ〜、どうぞ〜」
言われて中に入ると、いかにも呪われてそうな得体の知れないモノに囲まれて座っているヘンリーがこっちを見ていた。
かなり禍々しい雰囲気を背負っているが、久しぶりに会う事ができ、自然と顔が緩む。
ここ数日、見かける事があっても忙しく動き回っているか部屋に籠っていて、なかなか声をかける事すら出来ていなかった。
「何をやってるんだ?」
部屋の状況と彼が呪術士だという事で、呪術中だと大体は分かる。だが、彼の笑顔と呪いは似合わなく、分かっていてもつい訊いてしまう。
「呪いだよ〜。兵士さんの無くし物を探してるんだよ〜」
「無くし物?」
「うん。困ってるみたいだったからね〜」
「めずらしいな」
普段、名前も知らないヤツの手伝いなんて、自らやるような奴じゃない。
頼まれたら大抵の事は嫌と言わずやってくれるが…。相手が知らない兵士だからか、何からしくない気がする。
「そう?僕は優しいよ〜」
笑顔でそんな事を言われると、何も言えなくなってしまう。
らしくない気はしたものの、悪い事をしてる訳じゃないんだ。呪いが良い事かどうかは知らないが…。
「まだ、かかりそうなのか?」
散らかった部屋の状態からして、ずっと籠って呪いの儀式をしていたのだろう。
最近、忙しそうにしていたのは、このためだったのかと納得する。
「手がかりが少なすぎて、もうちょっと頑張らないと駄目かな〜」
「そうか…」
呪術がどういうモノか知らないため、見つける事が可能なのかどうかさえ分からない。
もうちょっと頑張ればという言葉も、どう頑張れば解決するのかサッパリだった。
いつまでこの状況が続くのかと、つい不満そうな顔をヘンリーに向けてしまう。
その表情に気づいているかどうかは分からないが、彼もまたガイアを見ていた。
「こんな時間に、ガイアはどうしたの?」
「え、ああ。いや、その…起きてるかなって思って」
「うん、起きてたよ〜?」
呪術に集中しているせいなのか、態度が素っ気ない気がする。
早く呪術を終わらせて欲しいという気持ちもあるが、それが何時終わるのか?という疑問もある。
たまには一緒に過ごしたいと思ったわけだが、ヘンリーにその気がないのは態度から何となく分かった。
「久しぶりに会話できて安心したよ。あんまり根を詰めるなよ。じゃあ、また明日な。おやすみ」
これ以上居ても邪魔になるだけだと思い、簡潔に言葉をまとめてヘンリーの部屋を後にする。
部屋を出る際ちらっとヘンリーを見たが、ただこっちをじっと見ているだけだった。

自室に戻り、寝台の上に横になる。そして、大きく溜め息をついた。
おやすみの言葉すら聞けなかったわけだが…、呪術に集中しているせいだと思いたい。
あっちの方もご無沙汰なのはもちろんの事で、ヘンリーとの関係に不安がよぎる。
何気に倦怠期ってヤツだったりするのか…?
考えていてもしょうがないと目を閉じるが、睡魔が訪れる気配はなかった。
寝るのを諦めて、窓際にイスを置き外を眺める。窓から見える城は相変わらず幻想的で、心が癒されるような気がした…。

窓から城を眺めていると、扉の向こう側から声が聞こえてきた。
「ガイア、起きてる?」
かなり控えめな声だったが、ヘンリーだと分かる。
「開いてるぞ」
「良かった、起きてた」
扉を少しだけ開けて、ホッとした表情を覗かせた。おやすみの挨拶を言えなかった事でも気にしていたのだろうか…。
「見つかったのか?」
「ううん、手詰まりかな〜。明日もう一度、兵士さんに会って聞いてこようと思ってて、だから今日はもうやめちゃった」
言いながら部屋に入り、扉を閉める。
「そっか、お疲れさま」
また明日も探し続けるのかと思うと、こうやって来てもらっても素直には喜べなかった。
そんなガイアの表情に気づいたのか、不安そうに声をかけてくる。
「もう寝ちゃう?」
「ん?いや…寝付けないでいたところだ」
「一緒だね〜。何か焼き菓子でも持ってくれば良かったな〜」
「こんな夜遅くに食べる気かよ…」
夜這いではないのかと脳内で突っ込みを入れて、健全な突っ込みを口に出して言う。
それには気づけないらしく、いつもの笑顔をガイアに向けている。
「久しぶりにゆっくりお茶したいな〜て思って」
「お茶も無いが…」
真夜中にお茶しにくる奴がいるか?と思ったが、もうこれ以上は気にしない方が良いだろう。
ずっと扉の前で突っ立っているヘンリーに手招きをする。
「まあ、こっち来て座れよ」
「イスが無いよ〜?」
「じゃあ、膝の上で」
「足しびれちゃうよ?」
「平気だ」
近づいてきたヘンリーを自分の両脚の間に立たせ、腰に手を回し左膝の上に座らせる。
ヘンリーの体は窓の方を向いており、座ってすぐ城が視界に入る位置だ。
「ずっと、城を眺めてたの〜?」
「ああ、気分が優れなくてな」
「僕のせいだったりする?」
「え?いや…」
訊かれて、すぐ否定が出来なかった。言い訳も出てこない。心の何処かで気づいて欲しいと思っているのか、気の利いた言葉も出てこなかった。
そして、黙り込んでしまう。
「ごめんね?」
「え?」
突然謝られて、変な声が出てしまう。
「せっかく部屋に来てくれたのに、気づけなくて…」
「あ、いや、別に、そんなつもりで部屋に行ったんじゃ…ない」
「本当?」
「その…、すまない。少しは思ってなかった訳じゃないのは確かだが…。す、少しだからな…?」
裏表の無いヘンリーに本当?と訊かれて、流石に嘘がつけなくなってしまう。
だが、真夜中に焼き菓子だのなんだの言ってるような奴に、下心をハッキリ伝えるのは罪悪感があり、少しだとちょっとだけ嘘をつく。
少しと言われ、ちょっと恥ずかしそうにヘンリーは微笑んだ。

そして、軽くキスをする…



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続>2(18禁)  続>3
※2を抜かしても話しは繋がるハズです。

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