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銀 魂:お月見。
絵と文とか

銀魂

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沖田が倒れる〜なお話ですが、別に病気とかではないです。
相変わらず前半はラブのラの字もありません。
山崎が変な想像してる部分がありますが、多分この話の中では、ナニの関係がない二人から始まってると思います。いや、想像にお任せしますが。



毎日最高気温を更新しているような、そんな錯覚までしてしまう。
毎年暑い日が続くと、「今年の夏は非常事態だ」などと言う奴がいるが、もちろん非常事態なんて滅多に無い。
だが、こうも炎天下が続くと体調を崩してしまいそうになる。

ここは真撰組屯所の食堂。
仕事前の食堂は混雑している。
炊き出しと人ごみで、食堂の気温はグンと上がる。ただでさえ暑いというのに。
「おはようございます。沖田隊長」
「ん…。山崎か。おはよう」
「どうしたんですか?あんまり食べてないみたいですけど」
「食欲ねェ…」
沖田はそう言って、殆ど手つかずの朝食を下げようと席を立った。
山崎は意外だなと見ていたが、人影が増えたのに気づき食事に集中した。
「殆ど食べてねェじゃねーか」
その人影は副長だ。
「食べたくないんで」
「そんなんだから細いんだぞ」
「そんなんで悪かったな。いつもは食ってるだろーが」
細いと言われたのが気に障ったのか、不機嫌に答え沖田は残した食事を片付けて食堂を出て行った。
「仕事中、空腹で倒れてもしらねーぞ」
沖田の背中に向けて言い、土方は溜め息をついた。
「副長。沖田隊長、どこか悪いんじゃないんですか?」
山崎は朝食をとりながら言う。
「人の心配はいいから、オマエも早く食って仕事にいけ」
「ハイ…」
鬼の副長とはよく言ったモノだ。
いつもと違う事に気づけないのかこの人は。そう山崎は思った。
もっと沖田隊長の事は気にかけていると思っていたのだが、周りが思っているほど仲は良くないのか。
それとも食欲の無い理由を知っているとか…。例えばなんだろう。
…ヤベ、今一瞬変な想像してしまった。
想像をかき消そうと、慌てて山崎は食事に集中した。

食事を終えて屯所の出口まで行くと、沖田が柱にもたれて立っているのに気がついた。
「あれ、沖田隊長。まだ居たんですか」
「まだ居て悪かったな」
こっちを見たので、顔色をうかがったがやはり顔色は悪い。具合が良くない事がすぐに分かった。
「休んだ方がいいんじゃないですか?顔真っ青ですよ」
「うるせェヤツがいるから休む気にはなれねーや。心配は要らねェ、途中でサボるから」
「…」
そう言うわりには、一歩も動こうとしない。
「動けないんじゃないんですか…壁に寄りかかってないと立ってられないんじゃ?」
「ほっとけ」
「はぁ、分かりましたよ。じゃあ、俺行きますからね」
そう言って山崎は外に出ようとしたが、物音がして振り返った。
壁に寄りかかりながらも立っていたはずの沖田が床に座り込んでいた。
「あー、もう。だから言ったじゃないですか」
山崎は駆け寄って、沖田の体を起こす。
「大丈夫ですか?動けます?」
返事は返ってこなかった。意識はあるようだが、息づかいが荒く苦しそうだ。
「動けないですよね…。部屋まで運びますから、ちょっと我慢しててくださいよ」
途中、通りかかった隊士に医師の手配をしてもらう。
担架はいるか?と聞かれたが断った。
沖田は自分と同じくらいの体型だ。山崎にもそれくらい担げる体力はある。




部屋の障子は少し開けられている。
換気を良くするためだ。
日も暮れ、涼しい風もかすかに流れてくる。

「………」

「いつまで人の部屋で寝てるんでィ」
刀を手に取り、寝てる奴の鳩尾に鞘をグリグリ押し付ける。
「イダッ、イダダダダダダダダ」
「おはよう。退くん」
「あ、あれ?沖田隊長、具合の方は?」
「大分楽になった。ありがとな。ザキ」
山崎は起き上がって、辺りを見回した。
外はもう暗い。
「どうして起こしてくれなかったんですか…」
「気持ち良さそうに寝てたから。ザキもサボれて良かったじゃねーか」
「はあ、すみません」
看病してたつもりが爆睡してしまうなんて、何やってるんだか…と山崎は溜め息をついた。
しかもかなりの時間がたっている。
腹の虫がなり、朝食を食べてから今時間まで何も食べいてない事に気づく。
「そういえば、夕飯食べました?」
「一応食べた。近藤さんが、くだものとか軽いもん持って来てくれたんでね」
「ええええ?局長来てたんですか?起こしてくださいよォ!!」
「寝かせとけって言われたんでねィ」
「完全に俺サボってるって思われましたよね…」
山崎はガックリと肩を落とした。
「良いじゃねェか。サボれる時にサボっとけ。近藤さんは怒ってねーよ」

ドタドタドタ
廊下の方から慌ただしい足音が近づいて来る。多分あの人だろう。
少し開けていた障子がいきおいよく開けられた。
「お疲れさまです。副長」
朝の事を思い出して、山崎は形だけの挨拶を部屋の前に立っている人物にした。
「あ、ああ」
気のない返事が返ってくる。
呼吸を整えようと肩で息をしている。
時間は遅いけど、急いで仕事から戻って来たのだろう。
朝あんな事言っときながら、結局は心配してたんだなと山崎は思った。
「ザキ。夕飯まだだろ。食べて来たらどうでィ?」
沖田は一度土方の方を見たが何も言わず、山崎に声をかけた。
「そうですね。それじゃ俺はこれで。体は大事にしてくださいよ」
「おう。ザキもちゃんと睡眠取れよー」

山崎が部屋を出て行き、入れ替わりで土方が部屋に入ってくる。
彼の呼吸はもう落ち着いていた。
土方は布団の隣に座り、沖田の様子を伺う。
「大丈夫なのか?」
「ただの貧血ですよ」
「命に別状はないんだな?病気とかじゃないんだな?」
「大げさ過ぎ…。夏バテぎみで食が細かったのがいけなかったみたいですねィ」
呆れて沖田は貧血の原因を説明した。
「そうか…。悪かったな気づいてやれなくて」
「土方さんは何も悪くないでしょ。俺の自己管理がなってなかっただけです」
「いや…。すまない」
「謝るのもおかしいですぜ。土方さんが言った通り、朝ちゃんと食べてれば貧血で倒れたりしなかったかもしれやせん。忠告聞かなかった俺のせいですよ」
「そう言ってもらえると助かる」
「…」
朝の自分の言動が引っかかり、そして沖田が倒れたと聞き心底自分を責めた。
その沖田と言葉を交わして幾分か気持ちは和ぎ、懐からタバコを取り出して火を付けようとする。
だが、沖田によってそれは制止される。
「一応病み上がりなんで、俺の部屋は禁煙でおねがいしやす」
「了解…」

土方は縁側に出てタバコを吹かした。
部屋の布団から沖田はその姿を眺めている。
「今日は満月か。奇麗だな」
土方は空を見上げて言った。
「まんまるですかィ?」
布団の中から少し頭を下げて縁側の方を見る。
「丸いから満月だって言ってんだろうが。そっからじゃ見えねーのか?」
「見えませんねィ。土方さんが邪魔で」
「邪魔じゃねーだろ!普通に見えてねェだけだろーが。まあ、いいや。月、見るか?」
「お月見ですか?良いですねィ」
「酒もなにもねーけどな」
そう言って土方はタバコの火を消して、部屋に戻って来た。
そして、沖田の背中に手を回し、布団をめくり脚の下に手を入れる。
「土方さん。自分で歩けますんで」
「たまには大人しくしてろよ」
縁側まで沖田を運び、抱いたまま腰を下ろす。
「下ろしてくだせィ。もう大丈夫なんで」
「床は冷たくて固いから、俺の上に居ろ」
「むしろ暑いんだけど。それに重いでしょ。人に見られるのも困るし」
沖田は恥ずかしい気持ちは棚に上げ、暑いだのなんだのと文句を言い早く下ろすように即す。
「夜はこれから冷える。ろくに飯食ってねえガキなんざ軽すぎるくらいだ。それにこんな時間に人なんて通らないだろ」
等と言葉を返し、その気持ちを知ってか知らずか、まったく下ろす気配はない。
まだぐちぐち言ってる沖田に「いいから静かに月を見てろよ」と言う。
「奇麗だろーが」
土方は満足げに月を見て言った。
「そういや、ゆっくり月なんて見る機会なかったですねィ」
「露天風呂で一杯飲みながら見てェな」
「贅沢ですねィ」
そう言い、丸い大きな月を見上げた。

少し会話を止めて月を眺める。
月明かりで、部屋の照明が届かなくても十分に縁側は明るい。
人の表情もはっきり分かるくらいに。

土方は月から視線を外し、沖田を見て口を開いた。
「本当に、何事もなくて良かった…」
そう言われて、沖田も視線を土方の方へ移す。
「まだ言ってるんですかィ。らしくないですぜ」
「らしくない…か。倒れたって聞いた時、ミツバの事が真っ先に頭に浮かんだ」
「…」
何か言おうとしたが、姉の名前に反応し言葉を返すのをやめた。
「柄にもなく取り乱してな。大丈夫だって頭に言い聞かせるんだが、やっぱり姉弟だからか…」
そこまで聞き、沖田は土方の言葉を止めた。
「土方さん。心配してくれてありがとうございやす」
確かに心配はしたが、それは最悪な事態を想像しての事で、ありがとうなんて言われる立場ではない。
「…ありがとうなんて言うなよ」
土方は何とも言えない表情で言葉を返した。

沖田は月を見上げた。
その瞳はまっすぐ満月を見つめている。
「姉上は全部持っていってくれたんです。だから俺は丈夫なんですよ」
土方は何も言わず、月を見つめる沖田を見ている。
「それに俺は侍です。死に場所は寝床じゃない。戦の中なんです。それ以外の場所では死ねない」
月を見ていたそのまっすぐな瞳は、今度は土方に向けられた。
「土方さんもそうでしょう?」
「ああ…」
「それに、姉上の分も生きなきゃならねェ。そう簡単には死ねやしませんよ」
「ああ…」
「俺だけじゃなく、土方さんもですよ」
「オマエはいつも俺に、先に死ねとか早く死んでしまえとか言ってるだろーが」
「本心じゃねーですよ、多分。あと土方さんも良く俺に言ってますケドね」
「売り言葉に買い言葉だ。大体はテメーから言ってるだろ」
そうでしたっけ?などとテキトーに返し、沖田はまた月を眺める。

月明かりは少し青白く、そこに映し出されるモノは神秘的で奇麗だ。
月に照らし出された沖田の肌は、淡く白い光を放ち何とも言えない色っぽさがある。
その肌にふれてみたくなり頬に手を添えた。
暑いと言ってたわりに、肌は少し冷たく感じる。
頬に触れられ、沖田の顔は土方の方へ向き直る。
目が合いドキっとする。色っぽい等と考えていた事がバレないように、土方は言葉を探した。
「さ、寒くないか?」
「暑いくらいですぜ」
「それなら良いんだが…、少し頬が冷たかったから」
「土方さんの手は暖かいですねィ」
そう言って沖田の手が、その暖かい手に添えられた。

月明かりも手伝ってなのかもしれないが、やっぱり奇麗だと思う。
相手は男なのに、体の奥から沸き上がる感情にブレーキがきかなくなる…。


気持ちを抑えきれず、相手の顔に自分の顔を近づける。
沖田は土方をじっと見ているが、拒絶する気配は感じられない。
もっと顔を近づけると、ゆっくり瞳が閉じられ、どちらからともなく唇を重ねた。

「あ…」
重ねた唇を離れ、首筋から鎖骨へ…肌の感触を確かめながら土方の唇は移動する。


満月は人の心を狂わせる…。
ふと頭にそんな言葉がよぎった。
まさに今がそうなのかもしれない…。

このまま快楽に身を委ねるのも良いかなと思う。



すべてを満月のせいにして…。






ーーーーーー
終わりで。

何が何でも寸止め劇場。
最後は…妄想でお願いします。
18禁サイトじゃないので。という言い訳の文才ナシオなだけですが。
ボキャブラが乏しくて残念です。

夏バテから始まり、月見で終わるという…。
もっと長くなるかな?と、思ったんですけど…そうでもなかった。
頭で妄想してた時はもっと長かったような…何か端折ってしまっているのかもしれない。


#UP